MOD盛り盛りのスカイリムでドヴァキンの従者プレイ~雇い主が万年発情期なんだが~ 作:Ingwelsh
~ホワイトラン東部・ホワイト川流域~
Ingridに背中を押され、俺とBeatriceはホワイトランの街を出て街の東部に南北に流れる川、ホワイト川を下るように歩いていった。
チルファロウ農場を越え、バトル・ボーン農場を越え、どんどん北上していくBeatriceに、俺は遅れまいと着いていく。
「Beatrice、Ingridは一体俺達に何をさせたいんだ?」
ホワイトウォッチ・タワーを過ぎた辺りで、俺はBeatriceに声をかけた。
ここまで北上してきて、何も起こらないし、誰に出会うでもない。疑問のひとつも湧こうというものである。
Beatriceはこちらを一瞬振り向くと、すぐに前方に視線を戻して川の方に視線を向けた。
「もうそろそろ分かるわ。あそこの川岸、見える?」
Beatriceが指し示した川岸を、目を凝らしてよく見ると、なるほど何かがそこにはいた。
いや、ハッキリと何かがいることを認識したわけではない。ただ、そこだけ明らかに空気が違うのだ。
何か、次元の違う何かがそこにはいる。そんな確信が持てるくらいの『何か』が川岸に立っていた。
そしてBeatriceが駆け出していく。その『何か』の方へと。
「あっ、おい!?」
声を上げつつ慌ててBeatriceを追いかける。
バックパックを揺らして駆けて、駆けて、川岸に着いた俺を出迎えたのは、『半透明の人型』だった。
体格は、普通の人間と同程度だ。頭に仮面か、獣の骨を被っているのか、頭部に長い角が二本見える。
その姿を認識した瞬間、俺は反射的に地面に膝をついていた。俺の眼前ではBeatriceも、同じように膝をついている。
そしてBeatriceが口を開くことには。
「呼び声に応じ、馳せ参じました。ハーシーン様」
ハーシーン。
タムリエルの外側、オブリビオンの領域に住まうデイドラロードの一柱。
その信望者はウェアウルフへと変じ、死後狩人及び獲物として永遠の狩りに興じることとなると言われる、狩猟を司る神。
そのデイドラロードが目の前にいるという。
俺がその現実に恐れを抱いたその時に、『何か』――ハーシーンはざりっと足元の砂を踏んだ。
「畏まらずともいい、面を上げよ、信者Beatrice」
目の前に立つ神からの言葉に、弾かれたように顔を上げるBeatrice。その顔に視線を投げ掛けると、次いでハーシーンはその後ろへ――俺へと目を向けた。
「お主も顔を上げるとよい、トージ・アマヤ……それとも天谷桐士と呼んだ方が馴染みがあるか?」
ハーシーンに呼ばれたその名に、俺の目がハッと見開かれる。
こちらに来てから呼ばれることのなかったその名前。俺の本来の名前を、ハーシーンは口にした。
何故それを知られているのか、それを口にする前に、ハーシーンが右手をこちらに向けてくる。
「疑問を抱くのも尤もだが、ここは場所が悪い。ついて来い」
ハーシーンの言葉を受けた次の瞬間に、周囲がぱぁっと光に包まれた。
同時にふわっと身体が浮き上がり――草地の上へと身体が投げ出される。
俺の隣にはBeatriceが、俺と同じように草地の上に座り込んで、辺りを見回していた。
そして、そこに。
「ようこそ、我が領域――『ハンティング・グラウンド』へ。
歓迎しよう、私の信者たちよ」
鹿の頭骨を仮面として被った、半裸の男性――ハーシーンその人が草を踏みしめて現れたのである。
~ハンティング・グラウンド~
俺とBeatriceはハーシーンに誘われるまま、ハンティング・グラウンドの一角にあるあばら屋にて、椅子に腰かけていた。
ハーシーン曰く、狩りの際の拠点と出来るように、このようなあばら屋が何ヵ所か領域に点在しているらしい。
「さて、私がこうしてお前たちを呼びつけたのは他でもない……天谷桐士、お前のことについてだ」
ハーシーンに名前を呼ばれ、視線を向けられ、俺の身体が緊張でびくりと強張る。
Beatriceが俺を針で突き刺すような視線で見てくるのもあって、地味にむず痒い。
「あの、ハーシーン様……俺を、いや私を、その名前で呼ばれるということは、つまり……」
「把握している。お前がニルンの、ひいてはオブリビオンの外からやって来たということはな」
ハーシーンの言葉を聞いたBeatriceが、信じられないと言うかのように目を見開いた。
無理もない、Beatriceのようなスカイリムの住人にとっては、ニルンが世界であり、オブリビオンが外世界なのだ。その更に外側に別の世界がある、などと言われて、信じられるはずもないだろう。
「おおかた、シェオゴラス老かサングイン殿あたりがやってくれたのだろうとは思うが……お前がBeatriceを眠りにつかせたその最中に、なにがしかの力が働き、お前をニルンに呼び寄せた。
ニルンに呼ばれたお前の身体は、Beatriceと共に山賊に襲われ、破壊された馬車の中で目覚めたというわけだ」
「そんな……それでは、私がロリクステッドで雇ったトージは?」
Beatriceが俺の肩に手をかけ、揺すりながら言葉を投げ掛けてくる。
問われても、俺には答えられなかった。目覚める前の話なのだから無理もない。
その様子を見てハーシーンは呆れたようにふっと息を吐いた。
「それは天谷桐士がニルンに降りてくるために用意された、肉体の器に過ぎん。勿論、今ここにいる桐士の身体はオブリビオンの外からやって来た当人のものになっているがな。
世界は辻褄の合うように働き、動いてゆくものよ。それがどのような形であろうとな」
それを聞いて、Beatriceは椅子に座り直して押し黙った。自分が雇った人間である以上、責任感も感じていたのだろう。
その申し訳無さと困惑は、俺にも痛いほど伝わってきた。
大人しくなった二人の姿を見て、ハーシーンはくいと顎を上げた。その視線の先には、俺。
「何にせよ、桐士は元の世界に帰りたいのだろう?
帰るのは出来ないこともない、数々の条件が必要だがな。何れにせよ、悲観する必要はあるまいよ」
ハーシーンのその言葉に俺は思わず身を乗り出した。
元の世界に帰るのが、出来ないこともない?
「俺は元の世界に帰れるんですか!?」
「帰れる。だが言ったであろう、数々の条件が必要だと。
私一人の力でどうにかできるものでもないし、お前自身にも資質が必要だ」
両手で俺を制するハーシーンの言葉に、俺は大人しく椅子に座るしかなかった。
だが、帰れる。条件や資質がどのようなものかは不明だが、帰れる。
その言葉だけでも、俺にとっては大きな力になった。
俺はぐっと、膝の上の両の拳を握り締めるのだった。