インフィニット・ストラトス-GRD/GHOST IN THE BULLET- 作:REDALERT
復活
世界で二番目にISを操れる少年がこの世を去ってから、一週間が経過した。世界はその事実に大いに落胆し、そしてすぐに織斑一夏へと視線を向ける。まるで最初から、彼が存在していなかったかのように。
「なあ、クロエ」
格納庫に設置されていたモニターに流れるニュースを見ながら、もう一人の
「何ですか」
「あのニュースでやってる焼死した少年って、俺のオリジナルなんだよな。どうして殺した」
「束様の邪魔になる存在だったから。だから邪魔になる前に始末する必要があったからです」
冷淡に言い放つクロエに、もう一人の京介は深くため息をついた。少年は、自分がクローンであることを知っていた。というよりも、目覚めてすぐに自分の出生の理由を聞かされていたのだ。
【
結局オリジナルの京介が伊弉諾を覚醒させてしまい始末された為、クローンの京介はそのまま尖兵としての訓練を受けることとなった。自分の意思を持たされ、自分と同じ顔をした少年が仲間に殺されたという現実を直視させられた上にだ。
「オリジナルが殺されたこと、不満ですか?」
「良い気分じゃないよ、俺が殺されたんだぞ。それでよく自分に為に戦ってくれると思うよな、篠ノ之束もさ」
「束様は絶対ですから。貴方の人生も、束様が組んでくれたレールに沿っています。あの方を裏切ることは、大罪なのです」
さも当然のように言い放たれたクロエの言葉に、もう一人の京介は小さく呟いた。その声色には、侮蔑が含まれている。
「自分の人生を仕組まれて、何が面白いものかよ……」
「何です?」
「何でもねえ。それより、もう良いか?」
目の前に複数のウィンドウを立ち上げてシステムチェックを行いながら、もう一人の京介はクロエに問うた。コア稼働率、武装一覧、エネルギー数を表示するウィンドウの中に、一つだけ機体状況と関係の無い情報が上がっている。それはもう一人の京介が黙って機体にインストールしたもので、彼の覚悟を示すものだった。
「調整は完璧です、何時でもどうぞ。それと搭載するように頼まれていた例の大型粒子砲ですが、きちんとコアも内蔵して装備させておきました。威力過多には気をつけてください」
「ああ、ありがとうよ」
そう言いながら機体から離れていくクロエの黒い眼球、金色の瞳、綺麗な銀髪を視界に入れ、もう一人の京介は口元の開いた頭部装甲を展開し素顔を隠した。ゴーグル型ハイパーセンサーに緑色の光が灯り、紺色の装甲をした細身のISはゆっくりと歩き出す、そしてそれに連動し正面の格納庫扉が開いていく。その先にはカタパルトが伸びていて、二つの下駄のような固定具がISを待っていた。
「成る様に成るしかないんだよな……、これで正解なんだ」
ぶつぶつと呟きながら、もう一人の京介はカタパルトに機体を接続する。目の前に広がるのは、廃墟を模した見慣れた訓練区域。大きな壁で四方を囲まれている。今からここで、京介は模擬戦闘訓練を行う予定だ。
「実験機、発進準備完了しました。続けて無人機の発進準備を」
クロエの声が耳朶を打ち、もう一人の京介はギリッと歯を喰いしばった。何が正しくて、何が悪いのか自分には判断がつかない。だが自分と同じ顔をした少年を簡単に殺してしまうような人間の下にいるのは、何となく間違っていると思った。それは自分が必要最低限の教育だけを受け、道徳とかいうものを学んでいないからか、それとも人は皆こういう思考回路をしているからなのか。それすらも分からずに、もう一人の京介はグッと膝を曲げて体勢を低くする。
「ラクヨウ、出ます!」
機体名を叫ぶと共に機体がカタパルトで打ち出され、グッと強いGが全身に圧し掛かる。やがて機体がカタパルトから離れPICによる慣性に乗ると、もう一人の京介は指定のルートを離れてそのまま真っ直ぐ上昇して行った。そして右手に大型の荷電粒子砲を呼び出せば、その砲門を天井へと向ける。
「確かめさせてくれ、俺に! 何が正しいのかを!」
放たれた光条が煌き、天井を撃ち抜いた。落下する破片を避け、もう一人の京介は自分が作り出した穴から差し込む日の光に歓喜し、そのまま一気に機体を加速させる。
小さな綻びが、生まれた瞬間だった。
正面には血溜り、後ろにも、左にも右にも、上にも下にも一面に血・血・血。目の前で白刃が煌けば中を鮮血が舞う。足元に炎が巻き上がれば全身を瞬く間に包み込む。血と刃と炎に支配された世界の中には、ボロボロの死体だけが積み重なっている。その中から黒ずんだ腕が何かを求めるように伸びてくると、煌いた刃がそれを切り落とした。呻き声を上げながら死体の山から抜け出そうとする黒ずんだ何かを、炎は容赦無く業火に包み込む。
切り落とされた腕は一人でに動き出し、業火に包まれた何かは悶え苦しむような動きをしながら悲鳴一つ無く死体の山から転がり落ちる。それを刃と炎は何度も何度も切り刻み、燃やし続ける。切り落とされた腕が手首だけになり、親指が無くなり、小指と薬指が無くなり、最後には燃やされ灰と消える。燃え盛る何かはその全身を刃で切り刻まれ、細かくなり、同じように燃やされ灰となる。
やがて刃も噴出す炎も現れなくなると、死体の山から一つの丸く白い球体が転がり落ちて行った。ころころと転がっていく球体はやがて壁のようなものにぶつかった。するとその壁のようなものは急に傾きだし、白い球体、人の眼球を押し潰してしまう。再び静寂が訪れると、ずるり、ずるりと何かを引き摺るような音が死体の山から聞こえてくる。一つ、また一つと死体の山から腕や足、眼球、爪、内蔵、人体を構成するありとあらゆるものが飛び出していく。それらは再び現れた刃や炎、そして壁に切られ燃やされ潰されていった。
他の
「良かった、本当に良かった……! 目が覚めて、覚めて……生きていてくれた、京介……! 良かった……!」
目が覚めた俺の耳に届いたのは、聞き慣れぬ少女の涙の叫びだった。初めて見る天井も薄汚れていて、何処かからオイルのような臭いも漂ってきている。そして何よりも、俺は俺を誰が抱きしめてくれているのかが分からなかった。唯一分かっているのは、俺が知らないところにいて、さっきまで眠っていて、そして誰かが横になっている俺を泣きながら抱きしめているということだけ。
「ぃ、みは……ぁれ?」
君は誰、そんな短い言葉すら発せれないことに、俺は驚いた。掠れた空気のような声が喉から絞られるように漏れ、俺は俺が何を言ったのか一瞬分からなくなる。すると俺を抱きしめている誰かが、すっと首に回していた腕を解いて顔を見せてくれた。目を真っ赤に腫らしているが整った顔立ち、綺麗な肌、セミロングの艶やかな栗色の髪。俺は彼女を知っている。昔箒と共に買い物に行った帰りに、俺のファンと言って握手を求めてきた彼女だ。何故彼女が居て、俺の隣にいるのだろうか。
「私のこと覚えてる? 記憶ははっきりしてる? 身体は何処か痛む?」
彼女は興奮した様子で続けざまに質問をぶつけてきたが、突然のことで俺の方も混乱していて上手く頭が回ってくれない。すると彼女はハッとした様子で俺に謝ると、一度俺から離れて行った。そしてすぐに、その手に水の入ったコップを持って戻って来る。
「ごめんなさい、起きたばかりで京介も混乱してるよね。喉渇いてないかな、お水持ってきたよ」
コップを一度ベッドの隣にある小さな机の上に置くと、彼女は俺の背に手を入れて上体を起こすのを手伝ってくれた。上体を起こし座るようにすると、僅かに腹が痛んだ。感覚で包帯がぎゅうぎゅうに巻かれているのだと分かる。目の前の少女から渡された水を一口飲むと、既にカラカラになっていたのか、俺はすぐに中身を飲み干してしまった。潤いが全身に行き渡るようで、ホッと口からため息が漏れる。
「っ……つつ、ありがとう」
「ううん、いいの。それより、何処か身体におかしいところとかは無い?」
「少し腹が痛……む、だけ……」
問われ、答え、俺は思い出す。思い出してしまう。あの日の出来事を、裏切りを。家族の仇を。織斑千冬、姉さんを殺したと暴露し俺すらも手に掛けようとした悪魔。そして姉殺しを共謀した篠ノ之束、その二人の存在を。グッと両拳に自然と力が入り、俺は歯を喰いしばって全身に怒りを充満させる。そうだ、俺はあの二人を、姉さんを殺したあの二人に罰を与えなくてはならない。自分達の楽園を創るなどとのたまうあの二人を、この手で……。
と、俺の意識は突然左手を握ってきた少女によって現実へ引き戻された。
「お腹が凄く痛むの? お医者さん、呼んでこようか?」
言いながら顔を覗き込んでくる少女に圧されるようにして、俺は頭を左右に振った。少し冷静になってみれば、次に疑問に思ったのは彼女のことだった。かつて一回だけ会っただけの彼女がどうしてここにいて、俺にここまで献身的にしてくれているのだろうか。
「だ、大丈夫だよ。ただ……どうして君がここに? 前に一回駅で会ったの、君だよね?」
俺の言葉を聞くや否や彼女は突然目を輝かせ、彼女は再び俺に飛びつくように抱きついてきた。衝撃で持っていたコップを落としてしまい、ガシャンというガラスの割れる音が耳朶を打った。だがそれよりも、彼女の柔らかさと甘く良い匂いが鼻腔をついて気が気でない。そんな俺を他所に、彼女は頬を俺の首筋に押し付けながらゆっくりと喋り始めた。
「覚えていてくれたんだ……。私、マリーダっていうの。マリーダ・ヒューゴ。ずっと貴方が目覚めるのを待ってた……」
「俺、を? そりゃどうしてって……ここは何処なんだ? それに、俺はどうしてここに?」
「そこからは私から説明するわ」
べったりと引っ付いてくるマリーダに気恥ずかしさを感じていると、新たに響いた第三者の声に俺は僅かに身体を跳び上がらせた。正面に見える壁にあったドアが開かれ、黒いスーツを身にまといブロンドの髪を靡かせた一人の女性が入ってくる。その姿に俺は、何故か懐かしさを感じていた。そう、あの姿を俺は前に見たことがある。そしてその人は------。
「無事で何よりね、京介君」
「スコールさん……? スコール・ミューゼル!?」
ご名答と言わんばかりに髪を手で靡かせた女性の名は、スコール・ミューゼル。姉さんと同じ研究所で働いていた女性で、俺も何度か世話になったこともある人だ。彼女がどうしてここに……。
「貴方をね、見守っていたのよ。私達はずっと」
「見守っていた……?」
「ええ、夏希の遺言でね。貴方を守ってやって欲しいって」
「姉さんが……」
腕の中でマリーダがもぞもぞと身体を動かすと、再び腹が痛んだ。一瞬険しい表情を浮かべたことに気付いたのか、スコールさんがパンッと手を鳴らす。その音を聞くと、マリーダはハッとした様子で俺から離れた。
「マリーダ、下がってなさい。あとは私が話すわ」
「え、けど……」
「いいから。交代でエムを見張りなさい、今の彼を彼女と会わせる訳には行かないわ」
「あっと……了解。じゃあ後でね、京介」
パタパタと手を振って去っていくマリーダを見送ると、スコールさんはふっと一息つくように壁に腕を組んで寄り掛かった。静寂に包まれた部屋の中で、俺と彼女の息遣いだけが響いている。その状況が少し居心地悪くて、俺は自分から話を切り出した。
「俺を見守っていたって、一体どういうことなんですか。スコールさん」
「スコールでいいわよ、京介君。……そうね、遠まわしに喋っても仕方のないことだから単刀直入に言うわね」
スコールさんはそう言うと、視線は目の前の壁に向けたままゆっくりと口を開いた。
「
「テロリスト……?」
「第二次世界大戦前より存在する秘密結社が元となり、現在は各方面に様々なパイプを持っている巨大組織よ。PMC運営も含めた軍需産業を初め、IS産業にも大きく関わっているわ」
「そんなデカイ組織の幹部に姉さんが? 冗談きついよ……」
頭を振る俺に、スコールさんは当然とでも言うようにため息をついた。いきなり貴方のお姉さんは大規模テロ組織の幹部でしたなんて話、信じられる訳が無い。
「なら、まずは自分が今何処にいるか確認してもらいましょうか」
そう言ってスコールさんは何処かから車椅子を持ってくると、それに俺を座らせた。部屋を出てすぐの廊下はとても狭く、まるで大型船の中のようだった。スコールさんに車椅子を押してもらいながら、俺は今思っている中での最大の疑問を彼女にぶつける。
「その、姉さんが亡国機業とかいう組織のメンバーだったって話は俄かに信じ難いですけど……それ以前に、どうして俺はここにいるんですか? その説明をまだ受けていません」
「あら、ごめんなさい。さっき見守っていたって言っていたでしょう? 我々は常に君の行動を把握出来るように諜報員を学園に配置していたの、だけどあの事件があった日に諜報員全員からの報告が突然途絶えた。そこで私が直々に向かってみれば、貴方は織斑千冬に重傷を負わされていて、更に炎に包まれ命を失いそうになっていた。だから私は貴方を助け、奴らに気付かれないようにここまで運び込んだのよ。この私達の
「母艦……?」
途中エレベーターに乗り込むと、スコールさんは一番上と思われる場所のボタンを押した。扉が閉まり、上へ籠で運ばれていく感覚が肩を押し付ける。やがてエレベーターが止まり扉が開くと、そこは船橋だった。正面には背中からでも分かる程屈強な体つきの男が腕を組んで立っており、他に数名の男女が作業を行っている。ただ不思議に思ったのが、普通の船の船橋とは違い、ここは何処か軍艦のような、寧ろ空想世界のような近未来的構造になっていた。正面に立つ男の向こう側に見える大きな窓からは青空が覗いている、が、その窓枠の少し下のへこみのようなところには操舵席があり、左右の端にはこれまた複数のモニターにシートが二つずつ向かうように設置されている。
「船長、お客様よ」
スコールさんがそう声を上げると、背を向けていた屈強な男がバッとこちらを振り返った。ボロボロの青いダウンジャケットを羽織っているその男はラテン系を思わせる顔立ちで、背はゆうに2m近く感じる。それは俺が車椅子に座っていて普段より低い視線で見ているからかもしれないが、兎に角その男は大きかった。
「おう、例の子供か。無事だったのか」
「さっき目覚めたばかりよ、この船のことを見せに来たの」
低く酒に焼けた声を響かしながら、その船長と呼ばれた男はずいと身体をしゃがませて俺と視線を合わせた。無精髭を生やし少し不潔そうな印象を持っていたが、意外にもその船長は優しい笑みを浮かべて俺の頭にその大きく無骨な手を置いて撫でてくれた。
「若いのに色々大変だったな、坊主。俺はラシード・アルマジード、このULCCを改造したタンカー船【ヴァリアント】の船長をやっている」
「あ、と……浦城京介です。よ、宜しくお願いします」
「おう、宜しく。俺のことは船長でもキャプテンでも好きに呼んでくれな。で、船を見せたいんだったか」
船長、ラシードは俺の頭から手を離すと俺の後ろに周り車椅子を押し始める。正面の窓の近くまで来ると、何と彼はいきなり車椅子ごと俺の身体を持ち上げた。かなりの重量だというのに小石でも持ち上げているかのような顔のまま、ラシードは顎で窓の向こう側を示す。そっちへ視線を向けた俺の目に飛び込んできたのは、形容しがたい大きな甲板を持つ超大型船の姿だった。
「ULCCっつーのは、30万トン以上の超大型石油輸送船のことだ。それを内部から何まで手を加えて改造して造ったのがこのヴァリアント、この船以外だと他にあと二隻ある」
「このサイズの船が三隻もあるのか!?」
「おうよ、タプファーとブラーヴってんだが……これは機会があったら見せてやるよ」
「すっげぇ……改造って、一体どう改造してあるんだ!? っ……ですか?」
思わず興奮して叫んでみると、俺は急に恥ずかしくなってすぐに言いなおした。それをラシードは笑って流してくれて、すぐに船の説明をし始めてくれた。
「通常は普通の大型タンカーのままで中身もちゃんと積んでいる。だが実際はIS用の電磁カタパルト二基があの甲板の裏に隠してあって、両舷にもIS用兵器が積んである。中にもIS用のハンガーやら何やらの機材を上手く隠してあるからばれるこたぁねえ。まあ簡単に言やIS空母ってとこだな。勿論ステルス機能もあるんだが……これはまだ秘密だな」
「それが三隻……亡国機業って、そんな……」
「胸張ってお天道様の下歩けるような堅気の仕事はしてねえがな、俺達にはこの道を進むしかねえのさ。お前も色々大変だったろうけど、暫くはこの船でゆっくり休むと良いさ」
車椅子を下ろすと、ラシードはまた俺の頭を撫でてくれた。姉さんにはよく撫でられていた感覚はあったものの大人の、しかも男性に撫でられたことのなかった俺にはそれがとても心地良かった。
「これで自分が何処にいるのか分かったかしらね。じゃあ次は、何処に行きましょうか」
スコールさんが再び車椅子を押してくれて、俺はエレベーターに乗せられた。今度は最初に乗り込んだ階と最上階の丁度間の部分で、さっきまで上で見ていた甲板に繋がるところだった。さっき知ったばかりだったが船は航海中で、海の匂いと強い風が俺の全身を駆け抜けていく。
「貴方をここに運んで来て、もう一週間になるわ。首も胸も切られていて、全体的に酷い怪我だった。それでも治療も上手くいって、無事に目覚めてくれて、本当にありがとう」
ふと頭の上からスコールさんの声が聞こえてきて、俺の両肩にその手が載せられる。彼女は俺の命の恩人だ。そして同時に、彼女は俺の姉さんの死の真相を知っているのか疑問に思った。俺も知らない姉さんの遺言を聞いていたような人だ、もしかしたら……。
「その、スコールさんは……俺の姉さんが何故死んだか、知っているんですか?」
「……ええ、最初から夏希が死んだ理由は知っていたわ。あの子も、自分が何時か殺されることは分かっていた」
「ッ! 知っていたって、分かっていたって、じゃあ何故何もしなかったんですか!」
「貴方を守る為よ」
「っ!」
スコールさんから放たれた言葉が、俺の脳天を直撃する。
「計画に気付いていたのがばれていたのは、夏希だけだった。もし最初の工作が失敗していれば、あの二人は貴方に手を出していたかもしれない。夏希はそれだけは嫌だと言って、自ら罠に掛かりに行ったの。何時ものように何とかなると笑いながらね、そして彼女は殺され……そして巻き込まれ、死に掛けた貴方の命を繋ぎとめた」
「けど、結局俺だって……こんな目に合って……右目だって……何で俺達
「京介、貴方はこれから何を望む? 私達は亡国機業、貴方を奴らの手の届かないところで安全に暮らしていけるように出来る力がある。そして奴らと戦うのなら、それを手助け出来る力もある。最後に選ぶのは、貴方自身よ」
「俺は……」
脳裏に大切な友人達の姿が浮かんでいく。セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、クラスの女子達、山田先生に……そして箒と一夏。彼女達は織斑千冬と篠ノ之束が何を考えているのかを知らないはずだ。そして奴らの行動原理は、一夏と箒の二人にある。あの二人を恨んでいないかと聞かれれば、俺は違うとは言い切れない。知らないとはいえ、あの二人は俺の仇の家族だ。それを知らずにのうのうと暮らしていて、そしてある日自分達の存在が引き金となり世界が滅ぼされる。
(迷惑ってもんじゃねえよな……)
どのみち学園に戻るのはもう無理な話で、どう動くにしろ俺はたった一人で行動しなくてはならない。スコールさん達の支援があってもだ。それならば、俺のやらなければならないことは何か。奴らの真実を知っているのは俺とスコールさんだけ、あとは誰も知らない。世界の為と言えば聞こえは良いかもしれない、けどそんな素晴らしい思考回路を俺は持っていない。なら俺のすべきことは------。
「……復讐だ」
「え?」
「織斑千冬と篠ノ之束に俺は復讐する。姉さんを殺し俺から全てを奪って行ったあの二人を、絶対に許さない。奴らがこれから何をしようとも、俺はそれを全力で叩き潰してやる。俺はあの二人を------」
一筋の風が頬を撫でていく。それはまるで、俺の引き摺っていたものを何処か遠くへ運んでいってくれたようだった。
「必ずこの手で殺す!!」
亡国機業編、始まります