※この作品はR-18です。

インフィニット・ストラトス-GRD/GHOST IN THE BULLET-   作:REDALERT

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最終編
賽は投げられた


 

『あー、あー、マイクテスマイクテス。これちゃんと映ってる? あっそう、なら良いや。やっほーみんな、久しぶり! 大天才束さんだよー! みんな元気かな? ま、どうでも良いけど。そういえば最近、色々大変らしいね! ISを使ったテロリストとか、無人機を使ってIS学園を襲わせる人とかいるみたいだし、怖いなぁ。束さんは悲しいよ、そんなことをさせる為にISを創ったんじゃないのに。けどみんな、ISをスポーツにしようとしてる割には軍とかで開発してるみたいだし……おかしいよね? 軍用ISなんてカテゴリがあるなんて束さん聞いてないよ? どーしてみんなそんな勝手なことばかりするんだろうね。だから私、決めちゃった。こんなつまらなくてどうしようもない世界、いらない。だから、壊しちゃうね。みんな一回死ねば、次生まれ変わった時には良い世界になってるはずだよ。だってその時はもういっくんと箒ちゃんだけの世界になってるからね。ふふふっ。バイバーイ!』

 

 

 

 

 

 

 

篠ノ之束による世界への宣(・)戦(・)布(・)告(・)。その翌日、IS学園の全校生徒が収容出来る体育館では全教員達とその全生徒が集っていた。物々しい雰囲気の中校長や警備担当の教師の話等が行われ、次に壇上に上った生徒会長である更識楯無は生徒全員と教師達を見回して口を開いた。その視界に、織斑千冬と織斑一夏の姿は無い。

 

 

「生徒会長の更識楯無です。既に昨日のニュースや先生達のお話で知っている生徒もいるとは思いますが、昨日行われた篠ノ之束博士による宣戦布告とも取れる発言、同時にアメリカ、中国、EUをタッグマッチトーナメントの際にIS学園を襲ったものと同型のISが襲撃したことから、世界は篠ノ之束博士を危険人物と見做し対応することを決定しました。既に襲撃したISは各国家代表の手により破壊されていますが、今後とも篠ノ之博士が何かしらの攻撃を行ってくることは明らかです。……なので私は、今まで皆さんに黙っていたある事実を公表しようと思います」

 

 

ダンッと扇子を壇上に叩き付けた楯無の鋭い目つきに、会場にいた全ての視線が向けられる。その中でも特に、セシリア達一年生の専用機持ち達の視線は険しいものだった。

 

 

「今現在この場におられない織斑先生、彼女は篠ノ之博士の友人であり世界で唯一ISを操れる男性・織斑一夏君のお姉様でもあります。その織斑先生ですが……皆さん、浦城京介君を覚えておられるでしょうか。世界で二番目にISを操れる男性としてこの学園に入学し、そして不幸にも保健室の火災事故で亡くなってしまった彼の事を。彼は死んではいません、生きています。ですが彼はあの保健室で殺され掛けていました、他の誰でもない、織斑千冬の手によって」

 

 

一瞬にしてざわざわと騒ぎ出した教師や生徒達の目の前で再び楯無は扇子を叩き付け、声を荒げた。

 

 

「これは事実です! 現に浦城京介は亡国機業の一員として何度もこのIS学園にやって来ています、あの黒い装甲をしたISを駆って! 彼は既に織斑一夏や他の代表候補生と接触し、その時の映像も残されています。そして私が織斑千冬が浦城京介を殺害しようとしたと断言出来るのは、私がその時の様子を実際に見て録画していたからです。私も責められるべきなのは分かっています、ですが私にはどうしても織斑千冬の悪事の証拠を掴まなければならない理由がありました! 既にこれらの証拠はこのIS学園を守っている国連軍を通して提出しています、今日中か、若しくは明日にでも! 彼らは織斑千冬の身柄を拘束するでしょう! 我々がすべきことは------」

 

「小娘が、随分とコソコソと嗅ぎまわっていたようだな」

 

「っ!」

 

 

楯無の言葉を遮るように突如体育館のドアが吹き飛ばされたかと思えば、複数の人間大の何かが中へと転がり込んできた。正確には、首の無くなった人間そのものだったが。その首の無い人間達の着ていたものは国連軍の兵士達が着用していた戦闘服で、彼らの遺体を足で退かしながら体育館に現れたのは、例の織斑千冬その人だった。その後ろには、俯いて表情の見えない織斑一夏の姿もある。

 

 

「これは織斑先生。その様子だともう隠すのは止めたようですね」

 

 

「隠す? 私は何も隠していた覚えなどないぞ、ただ言わなかっただけだ」

 

 

悪びれもしないその一言と共に、千冬の身体が橙色の粒子に包まれていく。その中から現れたのは、鎧と着物を左右で分けたかのような姿をした異様なISだった。左手には、日本刀のような近接ブレードが握られている。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ここで行動を起すつもりですか? いくら世界最強と言えど、多勢に無勢では?」

 

 

言うが早く、楯無もまた水色の粒子を身に纏いISの装甲を展開した。ミステリアス・レイディ、大型ランスと水のヴェールに包まれた姿が特徴的な彼女手製のISだ。それに合わせ、生徒側にいた全ての専用機持ちが自らのISを展開し織斑姉弟を取り囲む。そして二人が開いたドアからは、派遣されていた国連軍のIS乗り達がアメリカ製第三世代型IS【ファング・クエイク】のカスタム機を展開して塞いでいた。

 

 

「手際が良いな生徒会長。だがこれっぽっちの戦力だけで勝てるとは思わないことだ。なあ、一夏」

 

 

千冬の言葉に、今まで俯いていた一夏がバッと顔を上げた。その顔は怒りのような感情に染まっており、周囲にいる生徒達全てを睨みつけるようにしている。

 

 

「一夏……アンタ一体どうしちゃったっていうのよ!」

 

 

「一夏さん!」

 

 

鈴とセシリアが呼び掛けるも、一夏は反応することは無かった。千冬は展開したISの手の甲で一夏の頬を撫でると、うっとりとした表情で耳元へ顔を近づける。そしてある言葉を囁いた時、一夏の目が更に開かれた。

 

 

「なあ一夏、私を守(・)っ(・)て(・)く(・)れ(・)な(・)い(・)か(・)」

 

 

「……ああ、千冬姉は俺が守る。誰にも傷つけさせやしない、例え相手が誰であっても……俺が守ってみせる!」

 

 

刹那、一夏の右腕のガントレットから眩い閃光が放たれた。まるで太陽の光のようなそれはその場にいた全員の視界を奪い、ISによる遮光フィルターが作動したことにより視界を取り戻した専用機持ち達が見たものは、白式の面影を残しつつも全く違う白亜の装甲を身に纏う一夏の姿だった。その手には細長く鋭い刃を持つ刀が握られており、それを構える一夏の顔は邪悪な笑みに歪んでいる。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「行くぞ、白騎士!」

 

「ッ! 鈴、一夏を止めろ! 他の者は生徒を守るんだ!」

 

「言われなくても! この、馬鹿!」

 

 

一夏の動きを察したラウラが声を上げると同時に、既に動き出していた鈴は稲妻の模様が描かれた近接ブレードを呼び出して一夏の刀を受け止めていた。鈴の背後には、腰を抜かしていた一般生徒が隠れている。その生徒をすぐに上級生が引っ張り、セシリアとシャルロットが壁になるように並んで千冬に大量の銃口を向けた。教員達もすぐに行動を開始しており、戸惑いながらも生徒を逃がす為の誘導を始めている。

 

 

「やはり織斑君は自分の指揮下に置けるようにしていたようですね、織斑千冬」

 

「大事な弟だからな。薄汚い女狐に誑かされては敵わん」

 

「よく言う!」

 

 

壇上から飛び降り千冬の前に降り立った楯無は、鋭く息を吐くと同時に手に持ったランスで鋭い突きを繰り出した。それを千冬は軽いステップで避けると、すぐに手にした刀で素早い斬撃を繰り出してくる。それを楯無が水を纏ったランスで受け流していると、千冬の背後から三機のファング・クエイクが接近して来た。彼女を捕獲する為だ。だが千冬が楯無の方を向いたまま背後に刀を一閃しただけで、その三機のファング・クエイクは一瞬にして体育館の端へ向けて吹き飛ばされてしまう。

 

 

そうして楯無と千冬が一進一退の攻防を繰り広げている隣では、一夏と鈴が壮絶な斬り合いを展開していた。一夏の太刀筋は今までのものよりより洗練され、力強く、複雑で、鈴は何とか新型のハイパーセンサーの補助を受けてその斬撃を受け止めるのに精一杯だった。だがそれでも鈴は果敢に攻撃を繰り出しながら、一夏に呼び掛けている。

 

 

「一夏、アンタ本当にどうしちゃったのよ!? 千冬さんが何をしようとしているのか分かってるの!?」

 

「うるさい! 千冬姉を傷つける奴らは、例えお前らでも許さねえ!」

 

「この馬鹿一夏! 正気に戻んなさいよー!」

 

 

ガシャッという音と共に麒麟の背部ユニットが両脇に周り、鈴が横向きに構えたブレードに刀を押し付けていた一夏の身体を吹き飛ばした。甲龍の時点に肩に装備していた衝撃砲を背部に固定し出力を上げた新型衝撃砲だ。吹き飛ばされた一夏は空中で体勢を立て直すと、眼下で未だ逃げ惑っている生徒達を見下ろす。その右手に雪羅と同じ砲門が展開されると、一夏は当然のようにその砲門を生徒達へと向けた。だがそれを妨害するように飛来した砲弾を、一夏は砲門から切り替えて雪羅から展開したエネルギーシールドで防ぐ。その視線の先にいるのは、シュヴァルツェア・シュタールを展開したラウラとラージュ・ミストラルを展開したシャルロットだ。二人共有りっ丈の重火器を手にし、一夏と対峙している。

 

 

「行くぞシャルロット、アイツを捕え正気に戻す!」

 

「うん。何をされたのか分からないけど、流石にオイタが過ぎるからね」

 

「お前らも……!」

 

 

一夏がグッと刀を握り締めた時、体育館の屋上を突き破って新たなISが乱入してきた。それはあの、タッグマッチトーナメントの際にやって来た黒いマネキンのようなISだった。その黒いISは全部で六機おり、一夏を囲むように並び立っている。

 

 

「チッ、束め。やはり手を出してきたか」

 

 

それを見た千冬がバッと楯無から離れると、追いかけようとした楯無の目の前に更に三機の黒いISが現れた。その三機が振るうブレードへの対処に追われた楯無は、一夏のところまで下がる千冬を睨みつける。だがすぐに無人機へと意識を集中させ、その内の一機の胸部を即座にランスで貫いた。砕けたコアの破片が背中側から開いた穴から飛び出し、ランスから放たれた水の濁流が無人機を粉々に粉砕する。

 

 

「このっ……! 待ちなさい、織斑千冬ッ!」

 

「ならここまで飛んでくるが良い。ああ、そういえば前に白鷺とかいう少年について聞いてきたことがあったな。よく覚えているぞ、私が最初に倒した男だからな。生きているのか死んでいるのか興味は無いが、貴様の様子からあまり良い状態にはならなかったようだ。お気の毒に」

 

「ッ! 貴女だけは!」

 

「残念だが今日はここまでだ。次に会う時までに貴様が死んでいなければ相手をしてやろう。ではな。行こう、一夏」

 

 

そう言って千冬が一夏を連れて体育館から飛んでいくと、後に残された無人機との戦闘に専用機持ちは追われることとなった。既に教員と生徒達の体育館からの避難は終了しており、鈴と楯無以外の上級生は体育館を飛び出して三機の無人機を外へと連れ出して行く。残ったのは楯無、ラウラ、シャルロット、セシリア、そして楯無の妹である簪であり、残った四機の無人機を五人でそれぞれ相手にしている。成長した彼女達にとって無人機の相手はそれほど難しいものでは無かったが、それは新たな無人機が現れるまでの話だった。新たに現れた無人機に彼女達は分断され、一対一での対決を余儀なくされる。

 

 

「まさかこの学園を破壊し尽すつもりなのか、教官は!」

 

「それよりもここまでの数、このまま相手にし続けるのは危険ですわ!」

 

「早いところ鈴達に続いて外に飛び出したいところだけど……ふっ! 難しいね!」

 

「みんな無理しないで! いざとなれば、お姉さんが隙をつくってあげるから! 簪ちゃん!」

 

 

無人機のブレードを腕から斬り落とした時、楯無は自らの妹が無事かどうか視線を動かした。だがその視界に飛び込んできたのは、無人機に吹き飛ばされ地面を転がる妹とそのIS【打鉄弐式】の姿。簪が一夏や友人達と共に完成させたISの装甲が無残に砕け、苦し紛れに突き出した薙刀はブレードに弾き飛ばされてしまう。

 

 

「簪ちゃん!」

 

 

楯無の叫びに簪は姉へと視線を向けると、追い詰められている状況だと言うのに簪は笑みを浮かべてみせた。その機体に装備されているマルチロックシステムを搭載したミサイル【山嵐】、それが起動している。既にこの無人機がシールドバリアーに障害を起させる機能を持っているのは皆が知っている。簪と無人機の距離で大量のミサイルが爆発すれば、一気にエネルギーが無くなりその装甲は砕け散るだろう。勿論、操縦者は一たまりも無い。それを分かっていて、簪はミサイルを暴発させようとした。楯無は叫び、助けようと手を伸ばす。だがその行く手を無人機が阻み、楯無はギュッと目を瞑った。

 

 

だが簪がいざ捨て身の攻撃を行おうとした時、その男は現れた。

 

 

「そんなことはしなくて良い!」

 

 

「え……」

 

 

聞き慣れぬ少年の声と共に簪が目を開くと、目の前でブレードを振り上げていた無人機の胸を、黄色い装甲をしたISの腕が貫いていた。その腕がゆっくりと抜かれていくと思えば、次の瞬間にはその穴から無人機は左右に真っ二つに引き裂かれる。そこに居たのは、頭部から牛のような角を生やした無骨な全身装甲のISだった。黄色と黒のカラーリングが施されたそのISには、クロスした黒い稲妻のマークが描かれている。そのISは簪の腕を掴んで引き起こすと、背後から急接近してきた別の無人機の頭部を難なく右手で掴み、そのまま握り潰す。圧倒的パワーを見せ付けた謎のISに無人機の注意が向く中、新たに二機のISがその場に現れた。真っ赤な装甲と、真っ黒な装甲をした全身装甲のISだ。真っ赤なISはまるで鎧武者のようで、両腰に日本刀のようなものを納めた鞘を下げている。

 

 

「全員ここから出るんだ! ここは俺達が引き受ける!」

 

 

「言う通りにした方が良いぜ? ほら、こっちだ! 逃げ道は作ってやるよ!」

 

 

真っ赤なISは少年の声を響かせると右手を右の鞘に添えて、一気に体勢を低くしたまま楯無の傍で固まっていた三機の無人機の間へと乱入した。そして柄と鞘の間から一瞬火花が散ると、次の瞬間にはそこにいた三機の無人機の胴体が分断されバタバタと崩れ落ちて行く。その間に大柄な真っ黒のISは両腕を前へと向けると、シャルロット達が相手をしていた無人機に向けて掌を突きつける。その行為に無人機が注意を向けると、次の瞬間には真っ黒なISから放たれた閃光がその装甲を焼きドロドロに溶かし始めた。

 

 

「この熱量は……ッ!」

 

 

その光景に一瞬呆気に取られていたラウラだったが、すぐに意識を集中させるとシュタールの両肩に装備されているレールカノンの照準を熔けて行く無人機に向けた。そこから放たれた二つの砲弾はドロドロの装甲にめり込み、派手な爆発を起こして無人機を粉砕する。そして次の瞬間には、ラウラとシャルロットはほぼ崩壊し掛けていた体育館から飛び出して行った。遅れてセシリアが続き、黒と黄色のISもまた簪を脱出させると迫る無人機を力任せに叩き潰しながら楯無の傍へと駆け寄る。

 

 

「刀奈!」

 

 

そしてその黒と黄色のISから自らの本(・)名(・)を呼ばれた時、楯無は珍しく驚愕の表情を浮かべ動きを止めた。彼女の本名を知っているのは彼女の家族か布仏家の人間くらいのもので、それ以外には一人しかいなかった。しかもその一人は男性で、本来この場にいるはずのない人間である。懐かしい声色が耳朶を打ち思考を停止していた楯無を、黒と黄色のISは腕を引いて引き戻した。

 

 

「行くぞ」

 

 

「えっ、あっ」

 

 

そのゴーグル型のハイパーセンサーが赤と黒のISを一瞥すると、黒と黄色のISは楯無の身体を展開していたISごと抱え上げて体育館を飛び出した。それを見送った後、真っ黒なIS------天照を展開していた一文字真は、背中合わせに立っていた真っ赤なIS【素戔男尊】を展開しているクラウ・アガトラムに大丈夫なのかと問うた。その声はやや上ずっていて、クラウにはそれが真が初めての実戦で緊張しているからということが分かっていた。だからクラウは真に対し、励ますような言葉を送る。

 

 

「大丈夫だ、真、こいつらは俺より強いがお前より弱い。もう二機も倒しているんだ、あと四機くらいは倒せるはずだろ」

 

「へっ、嫌味にしか聞こえねえが自信はつくな。四機と言わず十機でも二十機でもぶっ倒してやらあ!」

 

「行くぞ!」

 

 

刃と砲門が煌き、IS学園の体育館は完全にその姿を消した。

 

 

 

 

 

 

体育館を脱出したラウラ達は既に戦闘を終えていた鈴達三人とアリーナで合流し、避難している生徒達を誘導していた山田先生と連絡を取っていた。どうやら生徒や教員の中で重傷を負った者は一人もいなかったようで、彼女達はそのまま国連軍の保護下のもと自衛隊の施設に収容されるらしい。その報告に安堵したのも束の間、楯無を抱えて現れた黒と黄色のISと、更にその後現れた赤と黒のISの登場により彼女達は再び緊張が走った。皆一様に武器を構える中、それを止めたのは抱えられていた楯無だった。

 

 

「みんな待って! 彼ら……というより、私を抱えてる彼は絶対に敵じゃないわ!」

 

「楯無さん……て、え? 彼、ですか?」

 

「うん、彼」

 

 

そう言ってスッと地面に降り立った後ろで、黒と黄色のISは同じ二色の粒子へと装甲を変えていった。そうして後に残されたのは、ジーンズに黒い革ジャンを羽織った一人の少年だ。彼は背中から腰に掛けて何か機械のようなものを装着しており、その整った鋭い目つきの顔を僅かながら顰めている。そんな彼を支えるように楯無は隣に立ち、少年は楯無に寄り掛かる様に動く。その様子を見ていたラウラ達は、皆一様に頭の上に『?』マークを浮かべていた。

 

 

「……紹介するわ、彼は白鷺アキラ。世界で初めてISを起動した男性であり、一番最初に織斑千冬に消された人間よ」

 

 

「世界で初めて……、どういうことだ?」

 

 

首を傾げて見せるラウラに楯無が答えようとすると、それを遮って彼女に支えられていたアキラが口を開いた。落ち着きながらも、何処か冷めた印象を持たせる声だった。

 

 

「世界で初めてというのは若干語弊があるかもしれないが、少なくとも織斑一夏や浦城京介より早く俺がISを扱えるようになったのは事実だ。今から二年前、俺はIS技術者だった父親の実験によって薬漬けにされた挙句機械を身体に埋め込まれた。ISコアと人間の神経を接続し反応速度の向上を目指す、なんていう研究の為のモルモットにされたんだ」

 

「何故男であるお前にそんなことを?」

 

「大事なテストパイロットに同じことをして死なないか、俺で試したそうだよ。その結果色々と弄くっていた大事なコアがイかれて、俺に反応した。正に奇跡だと持て囃されていた中で、俺の存在を世界へ公表する前に謎のISが現れた。……アイツが誰か、もう判明したのか? 刀奈」

 

 

アキラの問いに楯無が頷くと、アキラはそうかと短く答えて言葉を続けようとした。だがそれを、少し離れたところに立っていた例の赤いISが止める。その顔は遠くを見ているようで、声にも少し焦りが見えていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「自己紹介中のところ悪いが、ここを離れた方が良い。ゴーレムの増援が来ている」

 

「何ですって?」

 

「詳しい話は後でする。悪いが今は俺達を信じてくれとしか言えないんだ、行こう」

 

 

そう言って赤いISが飛び上がると、黒いISが楯無達を促し周囲を警戒し始めた。そして赤いISの言葉を証明するかのように、突如空中に大量の無人機が姿を現し始める。何も無い空間から続々と現れてくる無人機の軍団は異様で、青い空を黒く塗りつぶしていくような光景を前に楯無達は思考する暇を奪われてしまった。そうして、黒いISが焦った様子で空中へと浮かび上がる。

 

 

「言わんこっちゃない! 早くアイツに着いて行け、あの数は相手に出来ないぞ!」

 

「っ……今は信じるしかないようね。みんな、急いで行きましょう。アキラ君、悪いけど------」

 

「気にするな。行こう」

 

 

次々とIS学園へと降り立つ無人機の軍団に背を向け、楯無達は謎の二機のISに続いて学園を脱出する。つい昨日まで普段と変わらない日常を過ごしていた場所が不釣合いなモノに蹂躙されていくのをただ見ることしか出来ず、彼女達は皆悔しさに耐えつつも怒りに燃えるのであった。

 

 

 

ある者は悪の道へと走り、ある者は謎の変貌を遂げ、ある者はその姿を消し、ある者は何も出来ない自分を恥じ、ある者は屈辱を耐え再起を図り、ある者は仲間の為に出来る事を考え、ある者はかつての恩師の変わりようを受け止めきれずにいる。

 

 

そしてある者は長として、一人の女として歪み、ある者は受け入れたばかりの現実が歪んでいくのを唯見つめていることしか出来ない。

 

 

そして彼の者は愛する者の為に自らに鞭を打ち、彼の者は自らの信じる道を友と行き、彼の者は友の為に妹の為にその身を危険に晒す。

 

 

その女は歪みを好み、その女は歪みを愛し、その男は歪みそのものとなる。

 

 

 

そしてその少女は決して自らに向かぬ愛を胸に秘め、亡霊と共に戦場へと向かう。

 

 

 

篠ノ之束、織斑千冬、織斑一夏の三名により引き起こされた人類史上初のISによる戦争、後に【兎の戦争(ラピッド・ウォー)】と呼ばれることとなる泥沼の戦いが、今始まった。

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