インフィニット・ストラトス-GRD/GHOST IN THE BULLET- 作:REDALERT
六月頭、例の謎のISによる襲撃事件による騒ぎも落ち着いた頃、今度は学年別個人トーナメントで学園は盛り上がっていた。
一週間丸まる使って行われる全学年全生徒強制参加の大規模トーナメントは、各学年によって意味合いが違ってくる。一年生はこの二ヶ月間で行われた訓練段階での先天的才能評価、二年生は更にそこから訓練した状態での成長能力評価、そして三年生はより具体的な実戦能力評価となっている。特に三年生は各IS企業のスカウトや国家のお偉い方も見に来るそうだから大変だ。
そんな中俺は、第三アリーナで何時ものように一夏達と自主練習に取り組んでいた。打鉄を借りた箒、二組で中国の代表候補生の鈴も加えた五人でわいのわいのと模擬戦等を繰り返している。
「えーそれじゃあ、本日のMVPと最下位を発表しまーす」
そして何時の間にか恒例行事と化していた反省会のようなものを、食堂で行う。今日の発表者は俺だ。その日の模擬戦の最下位以外にもう一人、一番頑張った人を独断で決めるのだ。因みに最初の頃にセシリアが何度かMVPを自分にしようとしたため、自分以外のメンバーを選ぶようになっている。
「じゃあ今日のMVPは、見事鈴に黒星をつけた箒ということで。鈴は箒以外には全員勝ってたけど、打鉄で頑張った箒に譲る形でな。それで最下位は一夏だ、全敗ってお前……」
俺が哀れむような視線を向けると、不貞腐れた顔で一夏はテーブルに突っ伏した。今日の模擬戦でセシリアに焼かれ、鈴に殴られ、俺に溶かされ、箒に斬られ、一夏は全敗した。白式が射撃戦に弱いのは分かっていたが、まさか近接戦闘で量産機を操る箒にまで負けるとは思わなかった。流石剣術道場の娘といったところか、まだ一夏の腕が鈍っているままなのか。
「何か最近、俺ばっかりやられてるような気がするよ……とほほ」
「だーかーら、このアタシが直々に教えてあげるって言ってあげてるのにぃ」
「全くですわ。代表候補生二人のお誘いを無碍にするなんて、どうかしていらっしゃいます」
鈴とセシリアの両名に挟まれる形で座っていた一夏に苦笑しながら隣に座っていた箒を一瞥すると、向こうも丁度同じタイミングでこっちを見ていたらしく、弾かれるように俺達は正面へと視線を戻した。妙に高鳴る心臓に、顔が熱くなる。クラス対抗戦の後、保健室で勢いで箒の頭を撫でてしまった時から、何故か俺は箒と二人で話す事に気まずさを感じるようになってしまっていた。今みたいに複数人でいる時は全く問題ないのだけれど、時折視線が合ったり手が当たったりするだけで互いに過剰反応してしまう。幸いセシリア達に気付かれていないようだからいいのだが、未だ対応策が掴めていないでいる。
「けどまさか、このアタシが負けるなんて思わなかったわよ。本当近接戦強いよね、箒って。油断しちゃってた」
「ん、そ、そうだな。やはり実家が道場という意地があるからな。刀を使った勝負で負ける訳にはいかないのだ」
「流石ですわね、前に行った近接戦のみの勝負では完敗でしたから。……インターセプターの練習もした方がいいのでしょうか」
「お、じゃあまたやるか。近接戦だけなら俺だってセシリアくらいには勝て……いでっ!?」
急に一夏が顔を顰め、セシリアが額に青筋を浮かべる。チラッとテーブルの下を覗くと、グリグリとセシリアが一夏の足を踏んでいた。おお、怖い怖い。
「一夏さん、何かおっしゃいました?」
「……いえ、何でもないです」
ふふふと笑うセシリアに乾いた笑みを浮かべる一夏、その二人をいぶかしむ様にみていた鈴が、今度は俺に話を振ってきた。初めて会ってからそう月日は経っていないのだが、彼女の人懐っこさというか行動力にはただ驚かされる。
「近接戦と言えばさぁ、京介って腰のビーム砲以外の武器っていったら叢雲の何とかっていうのしかないけど、近接装備は持たない主義とかな訳?」
「え? いや、そういう訳じゃないけどさ……何かこう、何かを振るうより拳を振った方が速い気がするんだよな俺」
「何処の漫画のヒーローよそれ……。けど触れないと熱が伝わらないんでしょ? じゃあナイフなり何なりインストールしてもいいと思うけどな」
「ナイフなぁ、それが当たる距離なら確実に拳の方が速い自信はあるぜ。……けど近接武器か、確かに何かインストールしといた方がいいかもなぁ。今度担当官に頼んでみるよ」
まあ考えるだけね、とお茶を濁しながら笑ってみせる。すると、食堂の閉店を知らせる放送が鳴り響いた。他のテーブルに着いていた生徒達もゾロゾロと談笑しながら席を立ち始め、俺達もと同じように席を離れた。
「明日って何かあったっけ?」
「明日、というより明日から本格的なISの実戦訓練が始まりますわね。私達専用機持ちは兎も角、箒さんや他の生徒さん達は自分のISスーツを注文し出す時期ですわ」
適当に聞いてみたのだが意外と大真面目な返答が返ってきてしまい、俺は「お、おう」と返事に詰まってしまった。女子のISスーツは水着のようなもので、しかもIS学園にはそれなりにスタイルの良い生徒が沢山いる。即ち全員がISスーツを着た状態になると非常に目のやり場に困ることになるのだ。まあ胸の大きい人のISスーツ姿は山田先生で見慣れているのだが、やはり同年代の子達となると話は別だ。
「けどこれから実戦訓練ってことは、箒ってかなり有利な位置にいるんじゃないか? 訓練機借りて俺達とずっと模擬戦とかやってるんだし、かなり実力もついてるはずだろ?」
「ああ、そうだな。みんなには感謝している、ありがとう」
「あら、お礼なんていりませんわ。このセシリア・オルコット、イギリスの代表候補生として当然のことをしているまでですわ。人の努力を手伝うのも、いいものですから」
そう言ってチラッと俺を見てきたセシリアに小さく頷いてやると、彼女はやや満足そうな顔をして鈴と話し始めた。初めこそ高飛車なキャラで一部の生徒から顰蹙を買っていたが、最近の彼女は大分友達が増えているように思える。クラス唯一の国家代表候補生だし、元々の彼女は自信家の気はあれどとても良い奴なのだ。ただ聞いた話によると彼女は一夏が好きとか何とか。鈴が一夏を好きなのは今までの言動から分からないという方が無理だ。そして箒も一夏と幼馴染だったらしいし、何かしら思うところはあるのかもしれない。ただそう考えると、何故か精神的に苦しくなる。
(……今日は部屋に戻ったらさっさと寝るか)
ポリポリと頭を掻いていると、途中で鈴が分かれた。次にセシリアが分かれ、一夏が分かれる。そういえば最初の頃は部屋割りの関係で一夏と箒は同じ部屋だったらしい。予備として割いていた一人部屋に俺を入れてしまった所為でそうなったらしいが、何故先生達は女子一人部屋に入れて俺と一夏を同じ部屋にするという考えに至らなかったのだろうか。まあ今になって考えても仕方ないのだが。
そうやって考えながら歩いていると、いきなり裾をクイッと引っ張られた。振り返ると、そっぽ向いた箒が遠慮がちに俺の裾を摘んでいた。見てみると、丁度彼女の部屋の前だった。
「……? 入らないのか?」
「そ、そのだな。さっきの近接戦闘の話なんだが……」
「おう、それがどうかしたか?」
「よ、良かったら私が京介にも剣術の指導をつけてやろうかと思ってな! どうだ!?」
何故か語尾を強めて聞いてきた箒に若干驚きつつも、俺は二つ返事でお願いした。箒が教えてくれるのなら、それなりどころかかなりの力が付きそうだ。今の状況を改善する切っ掛けにもなるだろうし、是非お願いしよう。
「おう、それじゃあ宜しく頼もうかな」
「そ、そうか! ……こほん、任せておけ。その代わり、条件がある」
「条件?」
首を傾げてみせると、箒は妙な間を開けた後にビシッと俺に向かって人差し指を突き出してきた。何だろうか。
「今度のトーナメントで私が決勝戦まで勝ち進めることが出来たら、付き合ってくれないか!?」
意外と大きかった声が廊下に響き、一瞬の静寂が生まれる。そして次の瞬間、廊下中のドアというドアがバンッ! という音と共に開かれた。その開かれた空間からは出るわ出るわ沢山の頭。何故か一部が血走った目を覗かせる中、俺は箒の発言に完全に面食らっていた。
(いきなり付き合ってくれって……、え、何、まさか……は? いやいやいや、待て待て流石にそれは無いだろうよ……。あ、そうか)
「あ、ああ、買い物だな! 別にそんくらいなら、何時だって付き合ってやるよ。教えてもらう代わりに、荷物持ちしてくれってことだろ?」
「……え? ッ、そ、そうだ、買い物だ。剣術を教えるのだから、京介も自分の竹刀を持たなくてはならないからな。それを買いに行くぞ! うん! それじゃあ!」
一瞬呆けたような顔をした箒は、すぐに力強く何度も頷いて見せた。そしてそそくさと廊下から顔を出していた生徒全員を睨みつけると、ダッと自分の部屋へと入ってしまった。一人残された俺は首が引っ込んだドア郡を一瞥してから、部屋へ歩を進める。
そして道中箒に言われた言葉を思い出し、もしあれが告白だったならと考えるとそれだけで顔が熱くなるのが分かった。流石にそれはないと必死で頭からさっきの言葉を振り払おうとして、俺は部屋で何度も顔を洗った。そしてベッドに背中を預け、天井をジッと見つめる。俺は多分、篠ノ之箒のことが気になっているのだと自覚した。それが好きなのかは分からない、判断したくないが、あの襲撃事件の時から俺の中で彼女に対するイメージが変わったのは確かだ。凛としていて、強くて、誰よりも冷静。そんなイメージを抱いていた。
けど俺の思っていたより、篠ノ之箒という女の子はやはり
「女の子の扱いなんて、分かる訳ないだろ……」
一人、誰に向けてもない愚痴を呟いて、俺は眠ったのだった。
翌日、クラスの女子達が自分のISスーツをどんなデザインのものにするのかワイワイと盛り上がっている中、俺は一人何をするでもなく虚空を見つめていた。夜中何度も目が覚めてしまい、結局良く眠れなかったのだ。欠伸混じり涙混じりに首を掻いていると、ガラッと教室の扉が開かれた。現れるは我らが
「諸君、おはよう」
織斑先生の挨拶にざわついていた女子生徒一同が一瞬にして静まると、ちらほらと先生への挨拶が聞こえてきた。ぼやけた頭で織斑先生の連絡事項を聞き流していると、何時ものように山田先生にバトンタッチされる。何処か楽しそうな山田先生の表情に首を傾げると、何故か俺と一夏をそれぞれ見てきた後グッと親指を突き出してきた。
「……?」
互いに訳が分からないと一夏と顔を見合わせると、遂に山田先生が口を開いた。
「何と、またこのクラスに転校生がやってきます! しかも二名ですよ、二名!」
「……はぁ?」
ざわつくクラスメイト達と、再び顔を見合わせる俺と一夏。鈴の時は兎も角、こんな時期に転校生、しかも二人共一組に来るなんて変じゃないか。普通流れで考えると三組とか四組に回す気がするが。だが開かれた扉から入ってきた二人組を見た途端、ざわついていたクラスメイト達が一瞬で静まる……というより固まった。
「三人目の……男?」
人懐っこそうな顔、中性的な、パッと見女子と見間違える顔立ち、濃く長い金髪を首の後ろで束ねている。華奢な体付きをしているその
「シャルル・デュノアです、フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、宜しくお願いします」
丁寧なお辞儀と共に放たれたその言葉に、何人かの女子が「はぁん……」と語尾にハートマークでも付いてそうな声を上げる。言うなれば貴公子とか、そんなのがお似合いなのだろうか。そしてそのフランスから来たのだというシャルルが再び笑みを浮かべると、クラスの女子達が一斉に
「五月蝿いぞ貴様ら、静かにしろ」
そしてその騒ぎをただの一声で鎮めさせる織斑先生も凄い。シーンと耳が痛くなるような静寂に包まれた教室で、山田先生はオロオロとしたまま苦笑しているシャルルともう一人の転校生を一瞥した。まだ紹介がもう一人分残っている。
シャルルとは正反対の輝くような銀髪、腰近くまでおろしているそれに、左目にある異様な黒眼帯。開いている右目の瞳は赤く、冷たい。まるで俺達全員を見下しているかのようだ。彼女は口を開かない、頑なに閉じている。まるで必要が無いとでも言うように、興味なぞ無いと言うように。
「………挨拶をしろ、ラウラ」
だが織斑先生のその一言で、彼女の表情はバッと切り替わった。まるで命令を受けた
「はい、教官」
「ここでは教官と呼ぶな。私は教官ではないし、貴様ももうここの一般生徒なのだからな。織斑先生と呼べ」
「了解しました」
するとラウラと呼ばれた少女はビッと姿勢を正し、口を開いた。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
そして再び訪れる沈黙。自らの名を放った後、彼女は何も語らずまた口を閉ざしてしまう。
「あ、あの、以上、ですか?」
「以上だ」
「あう……」
何とかしようとしたのであろう山田先生が敢え無く撃沈すると、クラス中を見渡すようにしていたボーデヴィッヒの視線が一夏を捉えた。
「貴様が------」
するとボーデヴィッヒが急に前へと歩き出し、その振るわれた右手が一夏の頬を打った。乾いた音が響き、一夏の頭部が揺れる。
「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」
そう言ってスタスタと空いている席に着こうとしたボーデヴィッヒを、俺は立ち上がって妨害した。やや小さめの身長の彼女を見下ろす様にして立った俺を、彼女はその赤く冷たい眼で睨み上げてくる。
「邪魔だ、退け」
「嫌だね。人の友達の顔勝手に引っ叩いといて、そのまま一方的に終わらせる訳にはいかねえんだよ」
「理由はある、私は奴を認めない。あんな奴が教官の弟であるなど、教官の恥だ」
「やって来て行き成りグダグダ分からねえことほざいてんじゃねえぞ手前。初対面の相手の顔を引っ叩いた挙句、そいつを否定するような常識外れの言動をするのが
「貴様っ!」
刹那、俺とボーデヴィッヒの間の床に黒い出席簿が
「二人共放課後に大量の反省文を書かされたくなければ、今日はこれ以上の問題を起すな。いいな」
「……はい」
「了解しました」
「よし、ではデュノアも自分の席に着いて荷物を置け。この後すぐに着替えて第二グラウンドに集合しろ、いいな。二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」
微妙な雰囲気を残したまま各人が立ち上がると、俺は一夏とも誰とも話さずにそそくさと教室を出て行った。ISスーツは制服の下に着ているから、グラウンド近くのアリーナの更衣室で制服だけ脱げばいい。そうやって授業に臨んだもののHRでの出来事が頭から振り切れず、昼休憩の時まで俺は何処か落ち着かなかった。
「……ったくよぉ、何で俺がここまで苛々しなきゃならないんだっつの」
屋上でシャルルを新たに加えたメンバーで昼飯を食べていると、鈴が酢豚を掻っ込みにながら俺に朝の話を聞いてきた。大体のあらましを説明すると、明らかにゲンナリした様子で鈴はため息をついた。
「なぁにそれ、千冬さんが教官って……どゆこと?」
「あ、そうか。みんな知らないんだよな」
「知らないって、何のことですの?」
首を傾げる俺やセシリアに、一夏がボーデヴィッヒが織斑先生を教官と呼ぶ理由を教えてくれた。何でも織斑先生はとある事情で一年程ドイツで軍隊教官として働いていたことがあるらしい。その後更に一年程の空白期間を置いて、このIS学園の教員になったそうなのだ。最も一夏も山田先生や他の先生から聞いた話らしいから、どの程度まで正しいかは分かっていないらしいが。
「それで何がどうしたらアイツが一夏をビンタすることになるんだ? 普通に一年間の約束だったんだろ?」
「あー、そのな、そのとある事情って言うのが俺に原因があって、その所為で千冬姉は第二回モンド・グロッソの決勝戦が不戦敗になっちまったんだ。多分、それでアイツは怒ってるんだと思う」
「凄く慕われてたんだね、織斑先生って」
シャルルが心底感心した様子で言うと、俺は背を預けていたフェンス越しに外を見た。食べ慣れた焼きそばパンの包装をクシャクシャと丸め、持ってきたビニール袋に詰め込む。
「それでもお前をいきなり打っていい話じゃねえだろ」
「まあな。けどありがとう京介、代わりに怒ってくれて」
「あれが良かったのかどうか分からねえけどな。まあ、気にすんな」
「ふふ、浦城君って優しいんだね」
クスクスとシャルルが口元に手を当てて笑うと、俺はどうも背中が痒くなる気がした。同じ男なのだが、どうにもその顔立ちや立ち振る舞いからして違うものだから違和感を感じてしまう。
「君付けしなくても、京介でいいって。同じ男なんだし、気を遣う必要なんざないしな」
「うん、分かったよ。宜しくね、京介」
そうしてのんびりと昼休みを過ごしていると、腹一杯になったことと陽射しが心地良いことが相まって大きな欠伸が出てしまった。一気に眠気が襲ってくる。
「何だ京介、眠いのか?」
「ん? ああ、いや……そうだな、結構眠……ふぁ」
「ああ、こら、こんなところで寝ると風邪を引くぞ。ほら、教室まで着いて行ってやる」
眼を擦っていると何故か箒に立たされて、そのまま俺は教室まで箒に引き摺られるように運ばれて行った。その後俺は教室に着くなり机に突っ伏して熟睡し、午後の授業一発目から織斑先生の出席簿による粛清を受けてしまうのだった。
それから数日が経ち、シャルルも含めた俺達の特訓の内容はより高度なものとなっていた。やや難易度の高いセシリアや鈴の指導よりも遥かに分かりやすいシャルルの指導により一夏の実力も少しずつ向上していて、俺自身もまた付け焼刃の近接武器である刀を箒との模擬戦で練習している。
シャルルの機体はフランスのデュノア社------シャルルの父親が社長の大企業------の開発したラファール・リヴァイヴをカスタムしたISで、基本装備を幾つか外した上で二十にも及ぶ火器を装備している正に火薬庫だ。二回に一回は模擬戦で穴だらけにされてしまう。
「京介のビーム砲は威力も高くて出力の調整も効くから結構脅威なんだけど、発射間隔が少し長い上にすぐに撃とうとする癖があるんだよね。折角射程距離も調整出来るんだから、もう少し近接戦でも十分立ち回れるようになろうか。叢雲の拳も当たると怖いからね、三種類の攻撃を自由自在に切り替えていけるようにしよう」
「ふむ、となると中距離が得意な奴とやった方がいいのか。セシリア! 相手してくれるか!?」
「宜しいですわ! 少々お待ちください!」
「それじゃあ一夏は射撃武器の特性を掴む練習をしようか、僕と鈴で交代で相手をするね」
「おう、宜しくな」
「わ、私は……?」
「あ、箒は京介達の方に行って上げて」
「分かった」
「コォラ一夏ぁ! さっさとやるわよ!」
バタバタと慌しく準備し、グループに分かれて互いの欠点や癖を補うことを重点に置いて模擬戦を行っていく。俺はセシリアからの射撃、箒の斬撃にそれぞれ即座に対応出来るように武装の切替え、立ち回りを意識して凱龍を動かして行く。新たに装備された日本刀型の近接ブレードで箒のブレードを受け止め、遠距離からこちらを狙うセシリアを牽制する為に腰のビーム砲を放つ。
そんな中、突如飛来した砲弾が俺の頭部に直撃した。
「ごっ!?」
シールドバリアーを貫通した砲弾が頭部装甲を砕き、絶対防御により生身への怪我は無いものの俺の身体は凱龍ごと地面に叩きつけられ転がった。センサーが多数の警告ウィンドウを表示し、攻撃が飛来した方向を即座に割り出し、映像を拡大する。そこにいたのは、漆黒のISをその身に纏うラウラ・ボーデヴィッヒだった。恐らく俺に直撃したのは、その左肩に装備されている大型実弾砲だろう。
「大丈夫か京介! 怪我は!?」
「だ、大丈夫だ、心配すんな。それより……」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ、いきなり酷いことをしますわね」
セシリアと箒の肩を借りて立ち上がると、一夏とシャルル、鈴が俺とラウラの間に壁のように立ち並んだ。
「どういうつもりだ! ラウラ!」
「私と戦え織斑一夏。同じ専用機持ち同士、そうした方が話が早い」
「俺はお前と戦う理由なんかない!」
「今作ってやっただろう。お前が戦わないのであれば、お前のその貧相な仲間とやらを一人ずつ倒して行く」
冷ややかなボーデヴィッヒはそう言うとすぐに、左肩の大型実弾砲を一夏に向けて放った。すると大きな金属同士の激突音が響いたかと思えば、シャルルがその手に大型のアサルトカノンを持って一夏を庇うように立っていた。先の金属音は、シャルルの持つ物理シールドで砲弾を防いだものなのだろう。
「そんなに織斑先生に怒られたいのかな、ドイツ人がマゾヒストだったなんて話は聞いてないけど」
「ふん、フランスの
「量産の目処も立たない試作段階の第三世代型よりかは動けるだろうからね」
シャルルとラウラの一触即発の睨みあいは、騒ぎを聞きつけた教師によって強制的に解除させられた。ボーデヴィッヒは一人その場を立ち去り、俺達はISを解除して集合した。解除した途端、直撃の衝撃で脳が揺れていたのか、PICの補助を無くした俺はその場に座り込んだ。
「あぁ、クソ。まだ視界がクラクラする……」
「無理するな、すぐに濡れタオルを持ってきてやる。待っていろ」
「じゃあ、壁際に行きましょ。動ける?」
「何とか……」
箒が一人その場を離れ、鈴とセシリアに肩を持ってもらいアリーナの壁際まで移動すると、俺は壁に背を預けて項垂れた。視界が回転しているような感覚がして、気分が悪い。
「あのサイズの砲弾が直撃したんだ、絶対防御があったとしてもダメージはあるよ。篠ノ之さんを待って、京介の回復を待とう」
「クソッ、ラウラの奴、関係無い奴まで巻き込むなんて……」
珍しくイラついた様子の一夏が壁にドンと拳をぶつけると、俺の瞳孔等を覗き込んでいた鈴が考え込むように口を開いた。
「もしかしたらアイツ、まだアンタとの勝負を諦めてないかもね。また仕掛けてくるかも、アンタが戦う気になるまで何度でも」
「しかも狙うのは一夏さんでは無く私達かもしれませんわ。専用機持ちは兎も角、もし箒さんが狙われれば……」
「危険だね。暫くは最低でも二人組で行動した方がいいかもしれない。勿論、一夏がボーデヴィッヒさんとの勝負をするのなら早い方が良いんだろうけど」
シャルルの言葉を聞いて、一夏はグッと拳を握り締める。表情も、何かを決意したような険しいものになっている。
「やっぱり、やるしかないのか? 学年別トーナメントまで待ってくれれば、そこで当たれば、俺は絶対……」
悩む一夏に声を掛けようとした時、何処からか山田先生がすっ飛んできた。遅れて、水入りのペットボトルとタオルを持った箒がやってくる。どうやら途中で見つけた山田先生に助けを求めてくれたようだ。
水で濡らしたタオルを首筋に当て、少し気分が良くなってから俺は保健室へと送られた。傷は無かったものの安静にするよう涙目で山田先生に言われれば、それに従うしかない。後のことを一夏達に任せた俺は、あのラウラ・ボーデヴィッヒのことを考えていた。
(二人を相手にしてたにしても、全く気付かずに攻撃を受けた。流石軍人ってところなんだろうが、次やり合うことになれば絶対に負けねえ。もしアイツが誰かを不要に傷つけやがったら、その時は必ず俺が……)
心の内でそう決心を固め、俺は濡れたタオルを目の部分に被せた。ヒンヤリとした感覚が広がり、気持ちが良い。明日の朝、教室で俺達と顔を合わせたら奴はどんな顔をするのだろうかなんてくだらないことを考えながら、俺は小さく息を吐いた。この時俺は気付いていなかった。左手にある待機状態の凱龍が小さな音を立てていたことに。
黒一色であるはずのグローヴの色に僅かに青が混じり、そしてまた黒へと戻る。ラウラ・ボーデヴィッヒよりも更に深く、濃く、底の見えない闇を体言しているかのような黒へと。
遂にヒロインが出揃いました、一応
最初の頃はシャルロッ党でしたけど、少し前から私ファース党にも片足を突っ込んでおります←
流石にあれだけ専用機持ちが集ればそれなりに鍛錬を行っていると思ったので、みんな原作と同じ時点より僅かに強くなっています
まあ僅かですので、そこまで大きな違いはないのですが(汗
次回は学年別トーナメントと例の三人の戦い、そして遂にあるISがその姿を現します!
お楽しみに!