※この作品はR-18です。

オバロキャラとスケベする話   作:ENE

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※当話、長文に御注意下さい。


第十話 中二病患者と路地裏セックスする話

最近のこの街には暗い雰囲気が漂っている、と全ての王都民は思っているだろう。

 

まず始めにガゼフ・ストロノーフ戦士長の失踪。ほぼ間違い無く死亡したと見做されている彼の不在から始まり、最も近く知られているのはやはり、夜間におけるロ・レンテ城への襲撃及び王女ラナーの誘拐だ。民衆からの多大な支持を得ていた二人の人物が連続して姿を消して、今や王都は火が消えたかのような静けさを得ている。

 

誰も彼も、民衆の顔が暗く沈んで見えてしまう。

王都内の活気もどこかしら陰り、炎天下の下でさえ聞こえてくる声が小さく思えた。

 

私、ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラもまた、姿を消してしまった友人を想い、気落ちした心を奮い立たせるための熱意に欠けていた。

 

正体不明の何かがロ・レンテの城壁に大穴を開け、同時に王女も姿を消した。

部屋の中は瓦礫の山で、何者かの血痕が多量に残された状態だった、らしい。

それは死亡していると見做されるほどの出血量。王女のものだ、というのが大方の見解だ

完全なる同時期に行われた王女付きの兵士クライムの失踪から、彼が王女誘拐の幇助、あるいは実行を行ったのではと言われているが、その意見自体は何の意味も持たないものだ。

だって彼は只の孤児で、後ろ盾と呼べる人物も、居なくなったラナー王女ぐらいのもの。責任を追及すべき当のクライムは既に居らず、ならばと娘可愛さに出自の知れない孤児を引き立てる許可を与えた国王ランポッサ三世にこそ責があるのではとの意見すら飛び出た。

 

暴論だ。

 

誰でも良いから責任を押し付けてしまいたい、という貴族達(ひと)の弱さが目に見える。

しかし同時に、それは更なる王派閥の弱体化を目論んだための言い掛かりでもあった。

 

――かくして先の意見は罷り通った。通ってしまった。既に周知のものとして、王都内には先の噂が蔓延している。

こんな無茶な話が民の耳にさえ届いてしまうくらいに、今現在の宮廷政治は貴族派閥側にその天秤が傾いていた。

 

これ以上の詳しい内情はラキュースの耳に届いてこないが、きっと碌なものではないだろう。信頼する戦士長と愛娘、その二人を喪い失意にくれた、日に日に痩せ細るランポッサ王の姿が容易く思い描けるほどだ。

 

このまま貴族派閥が国の権勢を握ってしまえば、一体どうなってしまうのだろうか。

 

冒険者として如何に名を上げようと、打ち倒せるのは人に牙を向く魔物だけ。ラナーが居なくなった事で八本指への度重なる攻勢も止んでしまった。彼女からの情報と依頼が無ければ人間社会における悪と向き合う事さえ出来ない事実に、確固とした筈の己が揺らぐ。

政治への介入など叶わない。戦うべき敵さえ目に見えない。

明日をも知れぬという域には無くとも、王女誘拐を切欠として、王都を中心に広がり続ける民の嘆きが心を苛む。

 

国の壊れる音がする。

 

それが錯覚であって欲しいと、私は毎夜 月を見上げながら願ってやまない。

願うだけ、なんて。そんなものは、かつて憧れた冒険者の姿ではない筈なのに。

 

「ラナー……」

 

友人の名前を幾ら呼んでも、目の前の現実は変わらない。

暗い思考ばかりが次から次へと湧いてくる。これではいけない。一人で居ては、本当に心が折れてしまう。

早く仲間の下へ戻ろう。単独行動などするから嫌な考えに思考が囚われ暗くなるのだ。

強引に胸中の澱を否定して、意識して顔を上向けて。足を動かし宿へと向かう。

 

――私が彼と出会ったのは、そんな時の事だった。

 

 

「俺だ」

 

其処は既にして黄昏時。王都の薄闇、雑踏の中。

足首まで覆う黒い外套に身を包んだ美しい銀の髪を持つ青年が、長方形の何かを耳に当てて言葉を紡ぐ。

 

「どうやらアインズは俺達とやる気らしい……」

 

見れば耳元に添えた何かからは、円形の魔方陣が空中にはみ出す形で生じていた。

非常に精緻で目を引くソレは、常に回転しながら稼動し続け、耳に届く彼の物言いから推察するに、囁いた言葉を恐らくは何処か遠くへと届けているのだろう。伝言(メッセージ)の魔法の応用だろうか。

 

「ああ、わかってる。あいつなりの考えだな」

 

声が、酷く良く通る。まるで私の耳に直接届けているかのように。

 

そして気付いた。

周囲の雑踏。ラキュース以外の全ての人間が、これほど目立つ姿で大通りの中央に立っている彼の事を、一切注視していないではないか!

明らかにおかしい。だが動けない。圧倒的な存在感を醸し出す彼から、どうしても視線が離せなかった。

 

首を巡らせた彼の視線が、ゆっくりとこちらへ向けられる。

 

視線が絡んだ。

呼吸が止まる。

 

銀色の下には、目と鼻を覆う黒の仮面(ドミノマスク)。そこから覗く二つの瞳は赤と青の奇妙な、――否、神秘的に過ぎる虹彩異色(ヘテロクロミア)。揺らめく両眼の輝きは美しく、宝石のそれにも劣らない。

 

そして呟く。

 

 

「ラ・ヨダソウ・スティアーナ」

 

 

まるで意味の掴めない、しかし間違い無く強い意思が篭められた三節の呪文。

彼が告げて、右手が小さく動くと、手にした長方形の物体へと魔法陣が収束し、やがて消える。

 

そして、私に向けて歩き出した。

 

正面から向かい合うと、彼の姿がよく見える。

前を留めずに開かれた、風に揺れる外套の内側もまた黒一色。外套も含む全身、多数のベルトが衣服越しの肉体を締め付けて、まるで彼自身を拘束しているかのようだ。所々に輝く銀の鋲、揺れる細い鎖(チェーン)が薄闇の中で鋭く光を跳ね返す。

日常にそぐわない特徴的過ぎる装いなのに、誰もが彼を見ていない。気が付いているのは私一人。

まるで彼と私だけがこの終わった世界から浮かび上がっているかのようだった。

 

そして、そのまま通り過ぎた。

 

ちりちりと小さな金属音が耳朶を擽り、背後で足音が遠ざかっていく。

自分を見ている、と思った。自分を目指して歩いてくるのだ、と思ってしまった。なんて自意識過剰。恥ずかしくて思わず大きく膨らんだ己の胸を押さえてしまう。

 

抑えた片手に、胸の鼓動が強く響いた。

顔が熱い。きっと真っ赤に染まっているのだろう。

堪らなくなって己の背後に振り返るが、そこに求める姿は無かった。この世界から、彼という存在が忽然と消えてしまったかのよう。

 

「あなたは、いったい……」

 

呟く声は、届かない。

それでも。歯車が回るような金物の音が、私の耳奥をずっと揺らし続けていた。

何かが始まる。始まってしまう。そんな予感を、確かに覚えた。

 

 

 

 

「ラ・ヨダソウ・スティアーナ」

 

だってお!!!!

 

もう一度例の定型句を呟いて、俺は思わず噴き出した。堪え切れなくなって路地裏の壁をバンバン叩く。

仮面を外すと両目の色が元に戻って、使い捨ての染色アイテムで銀色に染め上げた頭髪を、片手で軽く掻き回す。路地裏の上空で鳥が かあかあ鳴いていた。

 

あー、イタイ。俺イタイ。今生において最も痛々しい姿を晒した自覚があるぞ。

だがこれも必要な事なのだ。途中から段々と楽しくなってきた気がしたけど、やりたくてやった わけではない。ないのだ!

これで第一段階は完了だ。あとはこの調子で運命の出会いを繰り返すだけ。

 

待っていろ、すぐに無垢なる白雪(ヴァージン・スノー)を着れない身体にしてやるぜえっ!

さあ、中二病患者(ラキュース)よ! 闇の炎に抱かれて消えろっ!!! (精一杯の口説き文句)

 

 

 

 

――それから、幾度も彼の姿を目撃した。

 

宿泊する宿の自室から見上げた夜空、高い尖塔の上に立つ、風に揺らめく黒の外套。

降りしきる雨の中で王城をじっと睨み付ける、秘めた憤怒を隠しきれない後ろ姿。

月を見上げて輝く銀髪、仮面で隠されたその切なげな横顔。彼が口にした世界の選択とは、一体。

 

路地裏から人の倒れるような音を聞き駆け付ければ、倒れ伏す一人の男と、全身を痣と傷痕に覆われた半死半生の女性を抱えた、何時も通りの、影が独りでに立ち上がったかのように真っ直ぐな背中。

 

「これも運命か、なんて。……ごめん、遅くなった」

 

まるで失敗した子供のような呟きに、胸を締め付けられる程の切なさを覚える。

だと言うのに私は、拷問染みた陰惨な傷痕を抱える女性に対し、義憤と哀れみ、そしてきっと、彼に宝物のように優しく抱き上げられている姿への羨望があった。

 

そこまでを意識してようやく、立ち尽くす私に彼が気付いて視線を向ける。

 

「お()――っ」

 

おまえ、というまるで飾り気の無い雑な呼び方に少し驚く。

貴族の生まれと、アダマンタイト級という最高位冒険者の立場。それゆえに仲間以外からはまず使われないだろう乱暴な、しかし先程の独り言と合わさって、男の子らしい言い方だな、と好意的なものさえ感じてしまう。

 

だが、私が何かを告げるだけの猶予は無かった。

舌打ちをした彼はすぐさま身を翻し、傷だらけの女性を抱えたまま行方をくらませる。

勿論 後を追いかけたが、一つ目の角を曲がった時点で完全に撒かれてしまった。忽然と消えたかのような、その余りの速さに仲間の双子以上ではないかとさえ考えてしまう。

 

「……私だって、治療の手伝いくらいなら出来たのに」

 

一人呟いて、それがまるで拗ねた子供のようだと恥ずかしくなる。

数日前まで表面を取り繕いながらも王都の現状に対する気落ちを隠しきれず、青の薔薇の皆からも心配されるくらいだったというのに、今はこんなにも生きた感情に満ちている。不謹慎だと己自身を戒めても、心だけは偽れない。

 

全て、彼に出会ったせいだった。

胸が高鳴る。仲間と共に街を歩く時も気付けば視線を巡らせて、彼の身に纏う黒を探してしまう。

まるで、まるで――恋をしているかのよう。

 

「ぅきゃーっ!!!」

 

まさか。まさかそんな。そんな馬鹿な。

確かに劇的な出会い、物語のような邂逅だったが。

考えれば考えるほど首から上に熱が集まって胸中の動揺が増していく。

 

そのまま、合流が遅いと探しに来た双子に発見されるまで、一人悶え続ける私であった。

 

 

 

 

ツアレ忘れてた。

 

彼女に関しては別に俺に何らかの責任があるわけでも無いのだが、順当に進めば助かっていた筈の人が気が付けば死んでしまう寸前だった、というのは若干ながら動揺するものがあった。

ごめーん遅れちゃった☆ と取って付けたような言い訳を口にしたが、その実態は単にド忘れしていただけである。ごめんツアレ、俺ってば堂々と嘘吐いたんだ。

 

ちなみに彼女の救世主になる予定だったセバスだが、今現在はナザリックとカルネ村を往復する日々を過ごしている。村の御婦人方からの熱い視線を浴びる姿に、男として嫉妬しなくもない。

いやっ、俺にだってシャルティアが居るもんね! 他にもパワハラ前提の秘密な関係だけど、ユリとナーベラルも。ルプスレギナは顔を合わせる度に視線が泳いで、微妙に避けられているような気もするが。

 

話を戻すがツアレの件だ。

と言っても、特に悩むほどの事でもない。身体の治療はナザリックのペストーニャに任せて、後はカルネ村送りで十分だろう。困ったらとりあえずカルネ村、面倒事はシモベに任せる。これが俺の知り得る至高の判断。

 

今の俺の最優先目標はラキュース。あの中二病患者を口説き落とす事なのだ。

 

ラキュースといえば中二病。人工的な銀髪オッドアイと全身黒尽くめも、全て彼女一人のために用意した伝説級(レジェンド)装備である。伝説級なのはレジェンドという響きが中二病っぽくてカッコイイから。

 

濁流の如き大量の中二設定を利用した騙されックス。――それが今回の目的だ。

 

この異世界では公的に認知されていない思春期特有の妄想体質、中二病。原作設定と合わせて、俺には彼女に対する圧倒的な情報の優位性(アドバンテージ)がある。つまり、マウントを取れる。

 

――そうだ。この姿の時の俺は大いなる光に導かれし闇の戦士。人知れず世界の裏側で運命と戦う美しき影!

 

カルネ村への支援を始めて、俺も少し開き直った。なので今回は協力者の姿もある。

八肢刀の暗殺蟲達に最重要極秘任務だという嘘八百を厳命した上で、ラキュース以外の青の薔薇メンバーの動向を監視してもらい適時報告を義務付けて、単独行動時のみを狙い打ちながら俺の意味深な振る舞いを目撃させていく。

これだけで、きっと会う度に好感度爆上がりである。俺の中学生時代なら、絶対心がときめいた。

 

偶然ツアレを廃棄する場面に出くわし、娼館の下っ端を殴り倒した姿を見られたのは失敗だった。あれでは闇の戦士として失格だ。直接的な暴力など振るえば、カッコイイ俺の神秘性が下がってしまうじゃないか。せめて課金エフェクトを使用してそれっぽい演出をするべきだったと深く反省する。

 

だがこれだけイベント回数を重ねれば、そろそろイケるのではなかろうか。

 

正直そろそろ飽きてきた。何でちょっとセックスするだけで一週間近くも王都で暗躍(笑)しなければいけないのだ。俺のちんこも既にラキュース戦へ向けて気持ちが固まり、この作戦期間中は他の誰ともシていない。そろそろ我慢汁の限界だった。

 

だから。

 

「次で、決める……!」

 

決意を新たに、王都における最終決戦が幕を上げた。

 

 

「何故俺を追う、――答えろッ!!」

「違う、わ、わたしはっ!」

 

ラキュースの両手を壁に押し付け、間近でオッドアイの視線を絡めて詰問する。

今の気分はヒロインの行動を、自身を付け狙う敵の手の者だと誤解してちょっと強引に迫るイケメン。イケメンなのは事実だが、こういう強引なのが女の子には効果的だ、と大図書館(アッシュールバニパル)に置いてある少女漫画に描いてあったから ちょっと気合入れて頑張っている。

不必要に顔を寄せ、唇が触れず、しかし吐息が当たる距離を維持。

どうだ! ……ど、どきどきしてるかな? 俺はしてる。

 

「あっ、うぅ」

 

顔を赤くして あうあう唸る、釣り目の美人。それを見てちょっと勃起する。

距離を近付けたせいで彼女の体臭が鼻腔を擽り、一週間分の蓄積された性欲が下腹部辺りで渦を巻く。今のラキュースは目立ち過ぎる浮遊する剣群(フローティング・ソーズ)を外した鎧姿。魔剣だけは帯びているが、鎧を身に纏いながらも必要以上に鍛え過ぎていない女性の肢体が俺の欲望を刺激した。

 

特に肩が良い。

 

肩部を鎧で覆わず、肌に密着する橙色のタイツがその下の華奢な女体を偽らずに教えてくれる。

真っ白な鎧だって負けていない。胸部を盛り上げる形状は、冷たい金属の筈が、熱く俺の劣情を炙ってきやがる。絶対に性的な意図をもって作っただろ無垢なる白雪(コレ)の製作者!!

 

やばい、もう完全に勃起(おっき)した。

この密着寸前の体勢で。格好付けたイベント中に! 今下半身の状態が相手にバレたら、俺の心が危険域に達してしまうぞ!

もっと頻繁に性欲処理しておくべきだったのだ。そう後悔しても、もう遅い。

 

かくなる上は、仕切り直すか。

チャンスはまだある。今回は自身の過失であるからして、もう一日くらいは延長しても頑張れる。

す、と手を離し身を翻す。さらばラキュース、次こそきっと本番だ。

 

「待って!」

 

だというのに、抱き着かれた。

 

あああああああ! 硬い筈なのに丸い感触が外套(コート)越しの背中に当たるのおおおっ!!

やめろー! やめろー! パンツの中がちょっと酷い事になりかけてるからーっ!

硬いのに! ちゃんと鎧の感触なのに、この丸みがラキュースのおっぱいを表してると思うとッ!

 

「教えて。貴方は一体、何と戦っているの?」

 

今はお前のおっぱいと戦っているよお!!

 

王国有数の強者らしからぬ女性らしい細腕が、俺の胴に回されている。細い。勃起した。

衣服越しではあるが、急な抱擁に揺れた彼女の髪が、俺の肩や背中、遂には頬を擽っていく。快い。射精した。

射精。……射精してしまった。

 

「――いえない」

「そんなっ」

 

――俺は、自分が情けない。

 

女の人に抱き着かれただけで、射精()るものなのか。

転生して異世界に来てようやく童貞を捨てたと言うのに、沢山の美女美少女達とセックスしたのに。ちょっとオナ禁しただけで、久しぶりに一週間くらい射精しない時期があっただけなのに。

 

涙が溢れた。

 

自分の情けなさ、恥ずかしさ。あらゆる想いを抱えきれずに地へと落とした。

これは身体が泣いているのではない。心が、俺の魂が流す涙だ。

 

「あなた、泣いているの……?」

 

そしてそれをほぼ初対面の女性に指摘される情けなさと来たら、筆舌に尽くし難いものがあった。

 

彼女の両腕を掴んで引き剥がす。

もう、俺は開き直るしかない。このまま逃げても場の残り香から「あっ(察し」されてしまう。前に進むのだ。此処で闘わなければ、俺の心が死んでしまう。

 

だから止まらない。止まるわけには、いかないんだッ!!!

 

唇を奪った。

ラキュースの柔らかさを感じながら、止め処なく溢れる涙がキスの味を彩っていく。

それを楽しむだけの余裕なんて、無い。

何度も、何度でも。唇を合わせて涙の味を彼女に伝える。最初は驚きから戸惑っていたラキュースが、掴まれたままの両腕を動かして密着した距離を離そうと試みるが、そんなものを許す優しさなど今の俺には存在しない。

 

「どうしてだっ」

「どうして、って貴方」

 

どうして、俺はこんな目に遭っている。

 

パンツの中が、生温かくて不愉快なんだ。身を捩る度に、内腿の辺りにやや粘っこい精液の感触が糸を引いて、俺の心を締め上げる。向かい合った二人の男女の中間辺りに、精液特有の生臭さが悪意の篭った魔手を伸ばした。

 

このままじゃ、臭いでバレる。

勢いで押し切ってしまわなければ。

 

「どうして俺だけが、こんな辛い宿命を背負う――ッ!!!」

 

心からの叫びに、ラキュースが息を呑んだ。

問いの答えは分かっている。他人(ひと)の中二病を嘲って利用して、「ゲハハこれが闇の戦士の通過儀礼だァ!」とか嘘吐いた挙句の騙しックスをしようとしたのが原因なのだ。あるいは単に性欲処理の怠慢である。

 

左手のみを腕から離し、装備に包まれたラキュースの尻を鷲掴む。

びくりと大きく彼女が震えた。

明らかに性的な意図を持った行動。キスの時点から察していただろうが、事此処に至っては言い訳のしようが何処にも無い。俺の狙いを察知して、真っ赤な顔でラキュースが何事かを言い募る。

 

だが止まらない。聞こえない。少しでも動きを止めれば彼女は冷静さを取り戻し、精子の臭いに気付いてしまう!!

だからこのまま押し切る。

悪いなラキュース、今の俺は、自分のプライドが一番大事なんだよおっ!

 

尻を掴んだ手の平を押し付け、上へと押し上げるようにして強く揉み上げる。腰辺りで手を離せば、装備に包まれた大きな尻が、重くぶるりと肉を揺らした。

布の感触が邪魔だが十分に柔らかい。いいもん食ってんだろうなー! と僅かに何時もの調子を取り戻し、賊の下っ端のような台詞を考えながら彼女の身体を弄ぶ。

 

「待って! ねえ!」

 

抗議は聞かない。真っ赤な顔で小さく怒鳴ってくる姿は最高位冒険者の立場にそぐわぬ位に可愛いが、今 場の主導権を手離してしまえば俺の無駄射精がバレてしまう。

絶対に離さん。この距離ならば互いの吐息と汗の臭いで今しばらくは時間が稼げる!

 

「嫌だ。――離さない」

「はうっ!?」

 

僅か二、三秒。全身が痙攣するほどの強い震えが、掴んだ腕を通じて伝わってくる。漫画みたいに赤一色に染め上げられた顔を見れば、俺の攻勢が上手く行っていると自信が持てた。

腰の前後を隠す青い垂れ布の下に手を忍ばせて、タイツ越しの柔らかな尻と、女性の秘部を激しく探る。

儚い抵抗としてラキュースが身を捩ってくるが、互いのステータス差は歴然だ。もう一度その唇を奪って、柔らかな上下の肉襞を舐めながら異性の唾液をとっくり味わう。

 

壁に押し付けたまま、腕を掴んでいた片手も離し、鎧越しの乳房を撫でた。

ああ、とか細い声でラキュースが鳴く。

実際に触れているのは素肌でないのに、恥ずかしいのだろうか。俺も、鎧の表層に過ぎないのに球面に触れているだけで何故か嬉しい。こういうものは、やはり精神的な受け止め方こそが最も重要なのだろう。

本当は鎧を脱がして、この実に大きそうな胸を存分に揉んでみたいのだが。

 

時間は無い。次へ行く。

 

腿の付け根、股間の辺り。そこを覆う橙色のタイツを、両手で強く破り捨てた。

素肌を包む薄手の布は、冒険者用の防具だからか結構固い。だけど俺の筋力には意味が無かった。火照った肌が路地裏の風に触れて小さく震えたのを目に留めて、そっと指先から始まり、己の手の平を殊更ゆっくりと当てて彼女の形を確かめる。

 

「わたしっ、」

 

濡れていた。

 

何時ぞやのルプスレギナとは比較できない少量だったが、俺の行為は確かに彼女の性感を刺激したのだろう。指先だけで触れた無垢な秘裂はその奥から漏れた熱によって熱く熟れており、しっとりと絡んでくる愛液がラキュースの中に生じた情欲を俺に伝えてきてくれる。

 

「ご、ごめんなさい、わたし、初めてなの」

 

知ってる。だって君 無垢なる白雪着てるからね。

 

真っ赤な顔と逸らした視線。震えた声音と潤んだ瞳が秘めたものは羞恥か拒絶か。先の言葉に篭められた感情の意味合いが賛否どちらにあろうと俺はもう止まらないのだが。

 

「大丈夫だ。俺が、導いてやる」

「嗚呼、夜の君……!」

 

誰だよ、夜の君。

 

ちょっと頭が冷めそうになったが、俺は夜の百戦錬磨。成程、夜の君とは言いえて妙だ。

腰を締め付けるベルトを五本くらい ちまちま外して、ようやく精液臭いちんこを外へ取り出す。

そこまで気温が低いわけでも無いのに、通気性最悪な服の中から開放された御立派な一物に外気が纏わりつき、ひんやりとした風を感じる。うーん気持ち良い。さっき出してなかったら多分、今此処で射精していただろう。結果的にはグッジョブ早漏。

 

はわわっ、と両手で己の口元を押さえたラキュースが、相変わらず赤らんだ顔のままで我が闇の聖剣を見つめて震えていた。生娘らしい反応が実に良い。

どやっ、立派じゃろ! これが今からお前の中に入るのだぜ!

 

実はちんこに纏わり付く精臭に何時気付かれるのかと気が気でない。出来れば今すぐラキュースの膣内に俺のモノを隠したかった。挿入さえしてしまえば何時射精しても大丈夫、な筈。処女に早漏と遅漏の違いなんて分からないだろうさ多分。

綺麗に生え揃った金の陰毛に、僅かだけ感慨深いものを感じる。もっと剛毛かと思ってた。

思ったよりもずっと可愛らしいじゃないか。そんな気持ちを篭めて、軽く指の腹で女陰を擽って最後の慈悲を彼女に贈った。

 

挿入(はい)るぞ」

 

返事は、言葉にならなかったようだ。

ああついに私も……、なんてどうでも良い言葉だけは耳に届いたが、そっちは別に聞きたくなかった。その年齢で処女って気にする事なのかな。男の俺には分からない。

 

だって彼女(ラキュース)の初めてが貰えるというのは、俺にとってとても嬉しい事なのだから。

 

何故かラキュースが両目を見開き、穴が開くほど強い視線で俺を見つめた。

その時には、俺ももう腰を前に進めている。

処女の感触は固いが、それでも年齢的な肉体の成熟が理由なのだろう、ラナーよりもずっと柔らかい。ゆっくりと押し込んでいけば、射精しそうになるくらいの激しい愛撫が膣の内側で行われて、僅かに腰の動きを鈍らせる。

それでも進めば、僅かな抵抗が進入者を出迎えた。

 

処女膜だ。

激しい運動をする人は膜が破れているとエロ漫画で読んだ事もあるが、残っているらしい。流石ファンタジーだ、とっても嬉しいサプライズ。あるいは回復職に就いている事が関係有るのかも知れない。が、今更どうでも良い事だった。

破れるのならば破る。さあ、無垢なる白雪に別れを告げろっ!! (キメ台詞)

 

「ん――っ」

「ふう、う――!」

 

僅かながら、ラキュースの内側のぬめりが増した。

 

そのまま入る所まで腰を進めて、互いの腰が触れた辺りで一息ついた。

ふ、と思わず笑ってしまったが、見下ろしたラキュースも同じように小さく笑う。なに(わろ)てんねん。

 

滑り落ちるように、白い鎧が土に塗れた。

 

固定する金具に手も触れていないのに、音も無くラキュースの無垢なる白雪(ヴァージン・スノー)が地面に落ちて、装備条件を満たせなくなった事実を二人に告げる。

ユグドラシルならば軽いメッセージ・アナウンスが入る場面だろう。

異性である俺と肉体的に深く繋がった事で、彼女は無垢たる資格を失ったのだ。

ラキュースの視線が、地に落ちた鎧の白をじっと眺める。何を思ったのかは定かでない。ただ、俺としては さっさとセックス続けたいから、空気を読みつつも ぴくぴく股間を動かしていた。

 

「もうっ。……したいの?」

 

それに気が付き、怒られた。しかしすぐさま彼女は苦笑して、俺もそれに頷いた。

さっきから出そうで辛いんです。

 

鎧が外れた事で邪魔物も消えて、彼女の胸に手を触れられる。

青い上着の下へ両手を差し込んでタイツ越しの乳房を掴んだ。僅かに下着の感触があるが、そこまでしっかりした物でも無い。十分に手の平へ柔らかさが伝わってくる。軽く撫でながら表面に指を沈み込ませて、摩るように形を確かめた。

 

キスをした。胸を柔く揉んだ。そのまま、腰を揺するように小さく振った。

中はきつく、ぐるぐるに締め付けて俺のちんこを愛撫する。腰を引いて敏感な先端部分だけで膣肉を穿ると、気持ちが良くて精液を吐き出す。それに気付かれないよう、更に強く深く腰を振ってラキュースの身体を味わった。

 

やがて動きが激しく変わる。

犬のように舌を出し、互いの唇と口内を舐める度に鼻から甘い吐息が漏れた。

ラキュース、と呼べば夜の君、と呼ばれてちょっと萎えたが、変装している関係上、さば味噌と名乗るわけにもいかない。というか名乗る勇気が無い。なんだよ、さば味噌って。そう過去の自分を罵倒しながら、より一層深く腰を振った。

 

都合三度目の射精が終わる。

 

だというのに、いまだラキュースが絶頂を迎えた様子は無い。

ちくしょう。もっとエロ漫画みたいに気持ちよくなれよ。それとも俺が下手なのだろうか?

額から落ちる汗が目に入り、塩気で眼球が じわりと痛む。しぱしぱと瞬きを繰り返した。

 

「また泣いているの?」

「ちがう」

 

そうとも、違う。ただ単に汗が目に入っただけだ。

どうでも良いから早くイって欲しい。俺ばかりが絶頂を迎えて射精しているなんて、セックスしてる相手に知られたくない!

 

お互いにずっと立ったまま。

狭い路地裏で腰を押し付け合い、俺はラキュースの頭を抱えるようにして その身体を抱き締めて、何度でも何度でも腰を振りながら射精した。

 

「はぁ、……ふう」

 

互いに息を吐いて脱力する。

 

やがてどちらともなく疲れ果て、下半身を半端に晒したままで限界を迎えた。

疲労から弛緩するラキュースの身体を支えながら、それでも細かく腰を揺する。こちらの動きに応えるように、彼女の膣内もまた僅かに痙攣し続ける。

ラキュースは疲れきっているのか、俺の腰に手を回し、胸元に顔を埋めたまま動かない。

俺も体力的にはともかく、精神的には限界だった。此処に至るまでの一週間の疲労と、女性に抱きしめられただけで射精してしまった甚大な心の傷。その後のセックスでかなり癒されたのだが、結局最後までラキュースは一度もイかなかった。「んあーっ!」とか叫びながらビクンビクンしてくれなかったのだ。

敗北感が拭いきれない。だが同時に満たされるものもあった。

 

結局のところ力任せで、ちょっと強引過ぎる部分もあったが、俺は自分の意思と行動によって完全に初対面の相手との対等なセックスにまで持ち込んだ。この事実は今後、俺の人生にとって大きな意味を持つだろう。

 

ふはは、俺という男は日々進化し続けているのだ!!

 

そんな事を考えながら手触りの良いラキュースの金髪を撫でていると、不意に俺の内側に声が響いた。

 

『さば味噌さま。お忙しい所大変恐縮ですが、少々ご報告したき儀がございます』

 

何時も通り、落ち着き払ったアルベドの声。

直接脳内に響くこれは、伝言の魔法だ。詰まるところ緊急事態、……なのか?

アルベドの声が何時も通り過ぎて、緊急性が微塵も感じられない。守護者統括としての責任ある立場を弁えて、敢えて声の調子を整えている可能性もあるが、いや、考えても仕方ないか。

 

「何があった?」

 

頭上を見上げて呟いた俺を、腕の中のラキュースが見上げてくるのを察するが、放置。今ちょっと忙しいからゴメンね!

 

『カルネ村に亜人種の群れが襲撃を行い、これを撃退致しました。本来は御耳に入れる程の大事ではございませんが、彼の村落を気にかける御身の御心を思い、御報告致しました。……この叱責は後ほど、如何様にもなさって下さいませ』

 

カルネ村への襲撃。

亜人。恐らくはトブの大森林からのもの。

となると、俺の知る限りでは――。

 

「ザイトルクワエ。――破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)か」

 

言うと、腕の中でラキュースがびくんびくん震える。ちょっと待って、何で興奮してるの。膣内もまた ぐにょんぐにょん蠢いて、アルベドとの伝言中なのに俺は我慢出来ずに射精した。

 

「う、あ……!」

『さば味噌さま!? 如何なさいましたか!!?』

「いやっ、大丈夫。ちょっと、今、うん、だいっ、ぁっ、大。丈夫だからあ……っ!」

 

そのまま、上擦った声で喘ぎながら精液を吐き出す。

ちんこの動きがようやく治まり、深く息を吐きながら荒れた呼吸を整えた。

 

すっっっっっごい恥ずかしいぞコレ!!!!!!!

電話しながら相手に気付かれずに射精してる、みたいなシチュエーションじゃぞ!!!!!!

 

やめろよ! という抗議の意味を篭めて、作っていたキャラ設定も忘れてラキュースのまんこにガシガシと上下運動を御見舞いする。すると更に刺激が増して、もう一度だけ射精した。ああ無限ループ。

 

「とにかく、すぐに行く! 被害確認だけしておいてくれ!」

『……畏まりました』

 

言い捨てて、アルベドからの伝言が切れる。

はあはあ言いながら俺もラキュースも肩を弾ませ、想定外の羞恥と快感でどっちも揃って腰砕けだ。

 

なんだコレ! 傍から見たらバッカみたいだぞ俺!

 

人一人を抱き締めながらその全体重を支えているため頭を抱える事さえ出来ず、胸中で叫びながら俺は一時ナザリックに戻るための身繕いを開始するのであった。




※破滅の竜王がザイトルクワエであるという描写は原作に存在しませんが、主人公の認識に過ぎないので細かな指摘はお控え下さい。
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