『わたし、ここで帝国の兵士に強姦されたんです』
想い人の声が木霊する。
『キス、初めてです』
『精一杯、がんばりますね』
『あ、んっ』
『あの男は乱暴でっ、こんな、に気持ち良くは』
『おねがいしますっ。私に、貴方の――』
これは罰だ。
一番大変な時にその場に居合わせる事も出来ず、挙句の果てに偶然とは言え、誰にも知られたくないだろう彼女の秘密を、盗み聞きに近い形で知ってしまった自分への、罰だ。
先のアンデッド事件における恩人を護衛として雇い、馴染みの村へ訪れた際の出来事。
帝国の兵士に襲われたけれど奇跡的に犠牲者も無く解決した、という夢みたいな言葉を鵜呑みにして。良かったね、と笑って口にした愚かな男。
僕は、――ンフィーレア・バレアレは大馬鹿野郎だ。
女性にとって最低最悪の傷痕を抱えていた彼女に対して その内心を察する事も出来ずに、何が「良かった」だ。
だから毎夜こんなものを目にして呻く。
ずっと好きだった想い人が、決して勝てない恩人とまぐわう夢。
あんなに嬉しそうに、心の底から求め合う姿なんて見たくなかった。なのに、いつもこの夢は最後まで決して止まらないのだ。
内容だって憶えてしまった。
次はキスをする。次は体位を変えて。次は。次は。次は。
胸が痛い。吐き気がする。身体の中身が丸ごと毒薬にでも変えられたみたいな不快感。
ああ、でも、ようやく終わりがやって来た。
起きたら、また下着の洗濯を、しない、と――。
□
歩き慣れたナザリックの廊下をとぼとぼ歩く。
掃除中の一般メイドが俺に気付いて御辞儀するのをあしらいながら考えるのは、先日カルネ村でお礼ックスをさせたエンリの事だ。
上手く言えない、のだが。何か、こう、変な事になっている気がする。気のせいかもしれないけど。
脅しが効き過ぎたのだろうか。
あの時の俺は実に悪い男だった。それが純朴な村娘を心底怯えさせてしまったに違いない。
追い詰めすぎたのかと不安になって精神系状態異常に高い耐性効果を持つアクセサリーを装備させたが、あれに意味があったのかどうかも不明瞭。一応そのまま装備させておいたけど、これ今後もカルネ村行って様子見ないと駄目な奴だ……。
ああ、どうしてこうなった。
俺は彼女を破滅させたかった わけではない。ただ、エロい事がしたかっただけなんだ。
セックス自体は気持ち良かった。でもなんかモニョる。気持ちがすっきりしていない。
溜息一つ。
うだうだ考えても仕方が無い。罪滅ぼしも兼ねて、カルネ村には何らかの援助を行おう。援助を行って、それからもう一度改めてエンリにお礼ックスをしてもらうんだ。
俺は諦めんぞ、覇王! 必ずや、最高のお礼ックスをしてみせる!!
うらー、と気合を入れ直せば、丁度視界の向こう側から見知ったメイドがやって来るのが見えた。
黒の装束にエロい
せっかくなので、片手を上げて声を掛ける。
「おーっす」
「これは、さば味噌さま」
両手を揃えて仰角30度、行儀良く御辞儀するルプスレギナ。
プライベートでの態度は結構軽いのだが、俺は上司なので丁寧なですます口調しか見た事が無い。
声を掛けはしたが特に用があるわけでもなく。褐色エロいなー、とか考えながら眺めていると、ふとルプスレギナの形の良い鼻が動いたのを、俺のレベル100ボディが視認した。
こう、スピスピと。
犬が匂いを嗅ぐような感じに。
うん?
「ちょっと待て今お前なにを嗅いだ」
「は――、も、っ申し訳ございません!!」
いや謝らなくて良い。犬系だからね、本能的なアレだろう。でも何を嗅いだ。俺か? 俺の匂いか?
ちょっと困る。ひょっとして、臭いのだろうか。こいつ仕事モードの真面目な顔の裏で「さば味噌さまって、なんか調理済みの魚介類みたいな臭いするっすよねー!」とか考えてて、空いた時間に姉妹とお喋りしたりしてるのか!?
やめろよ……、やめろよっお前!
「今日は朝風呂入ってないだけなんだよっ、違うんだ、ルプー!」
「おっ、お待ち下さい さば味噌さま! 私は断じて そのようなつもりはございません!」
「でも臭い嗅いだじゃん!!」
「それは、その」
どもるなよ。どもるなよ お前。
「くさい? 俺、くさい?」
「そのような事は決して! 決してございませんっ!! ご許可さえ頂けるならば、私はもっと御傍で」
「じゃあ何、何を嗅いだの。何を察知したの、ねえ」
「いえ、あの」
言い募る度に元気を無くしていくルプスレギナを見て、こちらも少しばかり勢いを落とす。
今の俺はナザリックにおける絶対支配者、単なる詰問も至高のパワハラと化してしまう。大声で怒鳴る度に泣きそうな顔をする褐色美人に内心興奮しながらも、泣かせたいわけではないのだ、と己の股間を叱咤する。
深呼吸をして心を落ち着けよう。俺は最っ高にクールな墳墓の主、
Be Cool びーくーる。なんだか凄く面倒臭い絡み方をしてしまった。でも異性に臭い関係で文句言われるとさ、傷付くよね。ねえ、ウルベルトさん?
ナーちゃんの匂いが、と。
ルプスレギナの呟きが耳に届いた瞬間、俺は風となった。
肉付きの良い身体を両手で抱えて全力疾走。一番近い扉を半ば蹴り開けて そこに飛び込む。
部屋の中には掃除中の一般メイド。邪魔というわけではないが居合わせて貰っては少々困る。なので抱えたままの人狼娘を備え付けの寝台に放って、今度はお掃除メイドを抱えて部屋を出た。
床に立たせて肩に手を乗せ、真剣な声音でお願いする。
「ちょっと、ちょっとだけ此処を後回しにして欲しいんだ。お願いします何でもしますから!」
「は、はい。畏まりました、さば味噌さま」
絶賛混乱中の一般メイド。金髪ロングで超可愛い。しかし今の俺に、ねちっこいセクハラをしている暇は無い。なのでメイド服越しの細っこい肩を両手で揉み回すだけで我慢する。んんっ。ちょっと勃起したぞオイ!!
しかしこれで時間は稼げた。部屋に舞い戻り、ベッドの上で途方に暮れたような顔を見せるルプスレギナに覆い被さる程の勢いで顔を寄せる。
そのまま、低い声で囁いた。
「ナーちゃん? ナーちゃんって言った?」
「は、はひ。もうしわけ ごじゃいませんっすぅ……!」
ナーちゃん。ナーベ。ナーベラル・ガンマ。我が愛すべきポンコツメイド。
あいつの匂いがするのか、俺。凄い良い匂いしそう。――ではない。違う。そういう話じゃないだろう。
思わず己の肩口に鼻を押し付け匂いを嗅ぐが、自分の体臭なんて良く分からん。だが思い返せば異世界に転移して来て以降、俺が最も傍に置いていたのは美姫と呼ばれる冒険者ナーベだ。朝も昼も夕も夜もと、冒険者登録以後アイツにちんぽ しゃぶらせなかった日は一度も無い。思い出しただけで股間が膨らむ。
人狼の嗅覚で察知されるほど強く匂いが染み付くなんて、考えてみれば当然かもしれない。
言葉が出てこず、視線を落とす。白い布地に包まれた胸の膨らみが視界に映り、思わず唾を飲み込んだ。
視線を更に下方へと向かわせれば、腰元まで深く入ったスカートの切れ込み。部屋の照明に照らされた褐色の太腿が艶かしい。そっと手を伸ばして指先をそこに、直接肌に触れないよう細心の注意を払って忍び込ませた。
「ひぁ」
しまった、指が当たった。ミッション失敗。
囁くような
良い匂いするな、こいつ。
「良い匂いするな、こいつ」
「へぁう!?」
顔を上げれば、ルプスレギナと視線が合った。
潤んだような黄色い瞳が、俺の情欲を刺激する。なんて可愛い顔をするんだ、こいつは。
そうだ。口封じを、しなければ。
シャルティアとの公然としたセックス。ユリとの秘めたる おっぱい祭り。ナーベラル相手の口便器奉仕。
開き直ればナザリック・ハーレムだと喜べるが、今の俺にそこまでの糞度胸は存在しない。だから、バレるわけには いかないのだ。今はまだ、全ての関係を伏せていく時。
口封じだ。口封じをしなければ。
目の前の女の、薄く開いた唇を封じてやらなければならない。
は、ふ。と互いの吐息を閉じ込めた。
ゆっくりと閉じていくルプスレギナの両目に合わせて、俺もまた己の視界を閉ざし その柔らかさを堪能する。
駄犬、ドS、残虐超人。彼女に対する事前情報を全て捨てる。今の俺が考えるべきは、目の前で小さく震える女の子の事だけだ。
真っ暗に閉じた視界の中、スカートに忍ばせた手でルプスレギナの太腿を撫でる。すべっすべしてる。
そのまま奥へと進めれば、指先に薄く滑らかな下着が触れる。ぴく、ぴく、と細かく反応を返す人狼の娘の腰を空いた反対の腕で抱きすくめ、そのまま静かに柔らかいベッドの上へと押し倒した。
唇を離し、目蓋を開く。
熱い吐息を漏らしながら視線を絡めて、こちらを見上げるルプスレギナに小さく微笑む。
「抱くぞ、ルプー?」
ここで拒否されたら心が折れてた。
はい、と快活さとは無縁の声での返事を聞いた。
大きく膨らんだ胸に手の平を乗せて、優しく押し込むように幾度も手を沈ませて感触を楽しむ。
肩へ手を伸ばし
そしてもう一度キスをする。
その間にスカートの切れ込みへと手を伸ばし、そのまま横へ大きく布を捲くった。
口を離して彼女の下半身を見下ろせば、辛うじて下着の見えない位置まで脚を晒した、大層いやらしい姿が俺の視線を出迎える。
これ絶対メイドの着るべき服じゃないよな。と実にセックスし易そうな服の構造に賞賛を送って、ギリギリ見えないスカートの奥へと手を入れた。するとすぐに、下着に触れる。
手触りの良い薄手の布地と、それを柔らかく盛り上げるルプスレギナの雌の肉。そこを揃えた四指でゆっくり擦った。
動かした手首が両足の内腿に当たり、それだけで股間が先走る。
指先には柔らかく、確かな熱を感じている。そのまま擦り続けていると先に俺の方が興奮を募らせてしまい、耐えるように、自分の顔を彼女のお腹の上に伏せた。
黒のメイド服から覗く腹部の衣服。素肌に程近い、白い生地。息を吐けば篭った熱が女の腹を温めて、ひくひくと反応する肉体と、更に頭上から聞こえるルプスレギナの声が俺の心を更に熱くする。
股座を擦り続けた指が熱くて、これでは下着の湿り気が増したかも分からない。両手を伸ばして見えない下着を引き摺り下ろし、辛抱出来ぬと頭をスカートの中に潜らせると、暗がりの中を口で啜った。
「ィ――っ!? 背っ、徳的ぃ」
何か叫んでいるようだが聞こえない。俺は今、ルプーのまんこを舐めるのに忙しいんだ。
柔らかく、舌触りも良く、その奥からは熱いものが溢れ出す。必死になって舐めしゃぶり、突き出した唇で何度も何度も強く啜り上げた。顔や鼻、顎先まで汁が飛び散って目を開けられなくなりながらも、夢中になって口淫を続ける。
少し強引にやり過ぎたかもしれない。痛くなかっただろうか、という心配は、頭を上げた先で蕩けたような貌を晒しながら笑うルプスレギナを見て解消された。
ふふふ、俺、結構こういうの上手いんじゃないだろうか。
はいとく、ナザリックてき、はいとくっす……、と意味の分からないうわ言を繰り返す雌犬の顔を見て自信を付ける。
衣服を緩めてちんぽを放り出し、ルプスレギナのスカートを完全に捲り上げると腰を屈めた。
褐色の女、その美味そうな腰付きは今ままでの経験に無いものだ。新鮮味がある。
ひどく瑞々しい肌の照りと、どろどろに濡れた まんこが俺を誘っている。両足ごと女の尻を抱え上げ、最後にもう一度だけ女陰を啜ると、口内で己の唾液と混ぜ合わせた大量の滴りを吐き出して潤滑油の補充を完了した。
震えながら声を漏らすルプスレギナを見下ろして、腰を掴んだまま互いの姿勢だけを変えて先端を添えると、躊躇いも無く一気に奥まで突き入れる。
「ぉぁあ――!」
呆けた彼女への警告など無い。挿入の衝撃で声を上げるルプスレギナを見下ろしながら、寝台の位置よりも高く持ち上げた女の尻に己の腰を勢い良く叩き付ける。
雫が飛び散り、鼓膜に強く響くような音が鳴った。
下半身を俺に抱えられた人狼の娘の、大きく開いたその口に幾らかの飛沫が落ちる。
視線が合った。だけど止まらない。止める気が無い。遠慮無く腰を振って彼女の中を堪能する。
が、少しばかり体勢が悪い。こちらはほぼ立ったまま、腰から下を抱えられたルプスレギナは体重の過半を持ち上げられた状態で、ろくに身体も動かせない。だから彼女の腰を掴む手を動かし、片脚だけを両手で抱える。寝転がった身体を捩じらせ、互いの下半身を十字に交差させた状態で行為を続行。
「は、ん、んあっ、あっ」
がくがくと揺れる身体、ルプスレギナが小刻みに声を上げる。喘ぎ声では、多分無い。だがそこに苦しさなどは見えず、喜んでいる、ような気がした。
けど、やっぱりこれもちょっと微妙だ。
無駄にアクロバティックな体位を試したが気に食わん。下半身では繋がったまま、ルプスレギナの全身をぐるりとひっくり返してうつ伏せに寝かせる。俺は上も脱いでその背に覆い被さると、ほぼ密着するような体勢で腰を振った。
相手の体温が伝わってくる。何度も強く押し付けた腰の、下腹部辺りにスカート越しの柔らかい尻が当たって非常に良い。腰を掴んだ両手から親指だけを伸ばして小さく尻を揉むと、ふんふん甘い声で鳴く雌犬の声が俺の耳朶を愛撫する。
だから出した。
流し込まれる白濁に反応して、ルプスレギナの膣内が俺の肉棒をより強く締め上げる。
うつ伏せたルプスレギナの身体と柔かなシーツの間へ腕を捩じ込んで、好き放題に揉み回す。衣服越しの感触がもどかしいが、背後から服を脱がす高等技能など俺には無い。辛うじて胸を隠す布だけは無理矢理引っ張る事で乳を放り出すが、今度は下着が邪魔だった。
ああ本当にもどかしい。だけど届きそうで届かないというのに興奮する。両手を暴れさせながら強く腰を押し付けもう一度、ルプスレギナの中に射精した。
「クソッいい乳しやがって。興奮するだろうがっ!」
口からは意味の分からない罵倒が飛び出す。謝れ、と理不尽な要求をしながら胸を揉み潰すと、言われた女が蕩けた声でごめんなさいっす! と素直に謝罪した。
言っている自分でさえ意味が分からない。だけど分からないまま、声を上げるだけで興奮が更に高ぶっていく。
びくり、とルプスレギナの全身が真っ直ぐに硬直し、それに合わせて急に膣が締め付けられた。その妙な動きに何の意味があったのかは分からないが、今の刺激が気持ち良かったのでもっと欲しくなって腰を振る速度を加速する。
「しゃば、さば味噌しゃまっ、わたっ、わたし! いま!!」
「ああ! 気持ち良いぞ、ルプー!!」
「は、……はひぃ!!!」
舌足らずな声が耳を犯す。真っ白なシーツに二人の汗が飛び散って染みを作り、それを更に増やしてみようと全身の動きを更に激しく変えていく。
出して、出して、出し尽くす。何度射精したかも分からなくなり、小休止のため、荒れた呼吸で弾むように動き続けるルプスレギナの身体を抱き締めて寝台の上に転がった。
数十分振りに見た彼女の顔は、口元の涎と、ちょっとだけ垂れた鼻水で濡れていた。
しょうがない奴だな、と苦笑しながら開けっ放しの口内に舌を入れて嘗め回す。やがて意識が戻ってきたのか、ちゅうちゅう音を立てながら俺の舌を吸いキスをしてくるルプスレギナが、どうにも可愛くて仕方が無い。
「ああ、最高だ……」
「さいこーっす……」
そう呟いて、小休止の筈が目蓋を閉じる。
やがて本格的に寝入ってしまう俺なのだが、難しい事は未来の自分に任せよう。
褐色美人は、良いものだ。
今日のところは、その事実だけで十分ではなかろうか――。