トータル・イクリプス ファーイースタンフロント 作:ロートシルト男爵
あとマブラヴシリーズ原作も。
金カムととある3期も放送中やし……。
職業柄なかなか気になったコンテンツを消化できないのがツライ……。
はやく実家に帰ってゲームしたい…サバゲしたい泣
『こちらフサードニク4、フサードニク3がやられた‼︎何がどうなっている‼︎奴ら不死身か⁈ぐああぁっ⁈』
「ええい、手負いがたった2機だぞ!何を手間取っておるのだ貴官の衛士達は‼︎」
ユーコン基地、ソ連領。
中央戦略開発軍団事務室。
薄暗い室内で輝くディスプレイ。その中で踊り狂う空色と紫色のチェルミナートル、そして次々とそのモーターブレードの錆と化してゆく自軍のマインドシーカーを目の当たりにしたブドミール・ロゴフスキー中佐はその皺の寄った老け顔をさらに皺くちゃにしながら唸った。
「仕方ありません。相手はあの紅の姉妹と
ロゴフスキーに対面する一人の衛士——彼と同じく青の国連軍軍服に身を包んだ黒髪の若い男はその赤い瞳を細めながら淡々と言った。
「ならばもっと増援を出せ!スピオトフォズでもラーストチカでも、ハンガーの機体はいくらでも持って行って構わんと言っておろうが‼︎それともまさか貴官、相手が自分の元上官だからと手加減してるのではあるまいな?答えようによっては党に報告させてもらうぞ?」
「同志中佐。先日の暗殺未遂、作戦指示書の偽装。その上基地内の戦術機まで勝手に持ちたりしたら……それこそ後で党にどう報告するというのです」
「ぐぬぅ……しかしだな……我々には何としてもあの人形の指揮権と確固たるデータが必要なのだ!あのサンダークに一泡吹かせる迄はここで失敗する訳にはいかん。人海戦術でも焦土作戦でも構わん。とっととあのくたばり損ないのユダ公の息の根を人形の前で止めろ‼︎」
ロゴフスキーが机上を拳でドンと叩くと周りの管制官達が恐れ慄く。
だがその衛士だけはロゴフスキーから一度も目を離さずに言葉を続けた。
「……中佐。突然ですが、不死身のコシチェイの逸話をご存知でしょうか?」
「何だね?リリエンタール大尉、こんな時にそんな話を………コシチェイ、確かスラブ神話にそんな名の怪物がいたような……」
「全身が骸骨で出来ており、何度殺しても蘇る。その不死身の化け物の殺し方を、ロシア人の貴官ならご存知の筈です」
「ああ、確か、奴の魂は海の向こうの島にある卵で、それを割れば本体も死ぬとか何とか………昔読んだ」
「そうです。私達は既にその卵が何処にあるか、どうすれば割れるかを知っています。全て我々にお任せ下さい」
「ほ…本当に可能なのかね?」
「ええ、なにせ我々には『あれ』がありますから。貴官が我々の今後の身分を保証して下さる限り、全て成し遂げましょう。
「………
薄暗く、重苦しい雰囲気の会議室の中、その衛士は一人静かに薄ら笑いを続けていた。
* * * * * *
A-01市街戦訓練場。
夕暮れのビル街に突撃砲の発砲音やモーターブレードの作動音が響く度に建物のあちこちから火の手が上がり、爆発音が次々と鳴り響く。
『ほらどうした蛆虫共‼︎まだまだ食い足りんぞ‼︎このローゼンフェルドを倒したいなら今の倍は連れてこい‼︎』
俺は隻腕のチェルミナートルを駆りながら紅の姉妹と連携しつつ、次々と現れる敵戦術機を撃墜してゆく。
フサードニクの奇襲から暫く経ち、俺たちはいつのまにか敵側に回ったたイーダル試験小隊の機体——MiG29ラーストチカやMiG-25スピオトフォズまで相手にしていた。
撃墜数は既に21機。たった2機で2個中隊分の戦術機を平らげた計算になる。
正直なことをいえば、先程切った大見得はハッタリに近く、度重なる対人機動戦で被弾と推進剤の浪費を繰り返した俺の機体には限界が来ている。
これまで取ってきた戦法も、俺が鹵獲弾薬と片腕のモーターブレードで陽動しその隙にプラーフカを発動したクリスカとイーニァが奇襲をかけるという行為の繰り返しだ。
衛士の戦闘意欲や精神力の方は無尽蔵でも、戦術機の耐久性というのは有限だ。
それは無論我が国が人工的に生み出した最強の衛士——紅の姉妹にも当てはまることである。
幾度も矢面に立つうち俺たちのチェルミナートルは機体のあちこちから悲鳴を上げ始めた。
退路の確保——それが、残された推進剤で出来る唯一の生還方法であると気付くのは必然だった。
俺はとりあえず基地内の現状を把握すべく、現時点では最も信頼できる相手に向けて秘匿回線を開く。
『サンダーク中尉、こちらイーダル2。状況はどうなっている?そちらでは何が起こっている⁈』
『イーダル2、手短に話すとすれば、我がソ連領内で起きているのは革命——即ちクーデタですよ。それも右からの』
『……保守派の陰謀か……。やはりロゴフスキーの仕業か?』
『それは分かりません。しかし大方そうでしょう。現在中佐とは通信が繋がりませんから』
『貴官はどこにいる⁈』
『ユーコン基地の南側です』
『何だと⁈』
『我が軍団の中にもあちらのシンパは紛れているようで、身の危険を感じた私は他の将校と共に基地の南側——つまりアメリカ側に避難しました。無論、人形達の制御に関する機材諸々と共に』
『奴らの狙いは紅の姉妹か?それとも俺か?』
『おそらく、その両方でしょう。中佐の狙いは軍上層部からのハト派——つまり親西側派の排除、それに自身とその部下による軍中枢部の席巻です。その為に彼には我々より先に手に入れ、上層部に対し己の実験成果として誇示する必要があるのでしょう……我が国が作り出した最強の衛士の指揮権、そしてその確固たる実戦データが』
『……こんな騒ぎを起こしてまでか‼︎』
『高レベルでのプラーフカの発動には人形が触媒に対し完全な依存状態である必要があります。そして、人形が暴走状態となった場合の影響も触媒への依存度に比例します』
『その為に俺の存在を散々刷り込ませて、後から俺を殺して暴れさせ、電池の切れた彼女達を戦闘データと一緒にひっ提げて党のお偉いさんにケツまくろうってか。奴の考えそうなことだ』
『ええ、紅の姉妹が改めて地球上最強の衛士だと共産党本部が判断すれば我々プロミネンス計画の関係者は用済みになり、我が国は再び彼女達のような人形を量産して当初の目標達成にあたるのでしょう』
オルタネイティブ3の残滓であり応用の成果たる彼女達。
本来BETAとの交信を目的とした
タカ派の真の狙いは暴走状態となった二人の実験データの採集並びに結果の報告、親西側勢力の排除による東西合同戦術機開発計画の打ち切り。自分たちの軍中枢部への浸透。
更には、凍結された筈のオルタネイティブ3計画を復活、応用する事で彼女達に準ずる戦闘能力を有する衛士達を栽培し、育った彼女達に隊伍を組ませてユーラシアへ送り込むことらしい。
だとしたら、既にお役御免の筈のフサードニク中隊が召集された理由も分からんでもない。
『……退路の確保を頼む。こちらも武器、推進剤共に心許ない』
『了解です。そちらの座標に移動ルートを示します。イーダル試験小隊の全機には南側への越境を提案します』
『南側だと?西側の哨戒機にいきなり撃たれるんじゃないんだろうな?』
『ご安心を。国連軍司令部には話はつけてありますから』
『分かった。感謝しておこう』
俺はモニターに表示された自機、そして紅の姉妹の機体の推進剤残量を確認すると、レーダーとカメラで四周を警戒した後に紺がかかった橙色の空へと舞い上がった。
* * * * *
『
『『了解‼︎』』
ユーコン基地、ソ連領。
米ソ国境線まで約8km地点。
サンダークが示した移動ルート——南側へと続く切り立った渓谷を進む俺と紅の姉妹。
この谷を道沿いに進めばやがて平地が現れ、西側管轄下の基地本部が現れる筈だ。
しかし、サンダークも良いところで機転を利かせたものだ。
ここなら渓谷という地形を活かして敵方から身を隠せるし、誘導弾等での上空からの攻撃にも対応しやすい。
欠点を強いて言うなら前後に取り付かれた場合敵の銃線から外れづらいというところか…。
『——機影6‼︎来た‼︎後方からだ‼︎』
突如鳴り響くサイレン。索敵レーダーに映る熱源反応。
後方警戒を行うと、MiG-29ラーストチカ、MiG-25スピオトフォズが各3機ずつ楔形壱陣で追尾してくるのが確認出来た。
『相手にはしていられない!このまま突っ切るぞ‼︎』
俺は背後から向けられる無数の銃眼になるべく入らぬよう、且つ渓谷の胸壁に機体をぶつけぬよう留意しながら紅の姉妹のSu-35UBの背後を随伴する。
『イーダル2‼︎あれを‼︎』
胸壁の間を蛇行する俺達の前に現れたのは、岩石で出来た天然のトンネルだった。
かなり太いが大分風化して脆くなっており、120mmで撃てば一気に崩れそうだ。
『
俺の合図と共に、先行するチェルミナートルのガンマウントが後方の洞窟天井に向け120mmを2発同時に放つ。
『『
クリスカとイーニァが号令に答えると同時に俺は自機を急発進させ洞窟を突っ切る。
直後、俺の背後で天井の岩石が崩れ始め、追尾して来た戦術機達が次々と巻きこまれてゆく。
『
俺は大分咳き込み始めた跳躍ユニットを気にしながら、紫紺に包まれた空の下、目的地へと自機を走らせた。
* * * * *
ユーコン基地、米ソ国境線より2km付近。
想定時刻では間もなくターゲット——イーダル試験小隊のクリスカ・ビャーチェノワ、イーニァ・シェスチナ、そしてイサーク・ローゼンフェルドの3名が出てくるであろう渓谷の出口にて、暗闇の中跳躍ユニットの青い炎を輝かせるフサードニク中隊の5機のF14AN3マインドシーカー。
皆各々誘導弾を廃し既存の特殊偵察用センサー類を装備している。
その中の一機——レオニード・ドラガノフ中尉が駆るマインドシーカーが、中央の指揮官機——ソロモン・リリエンタール大尉の乗る機体に向けてまるで心配するように頭部を回し、青く輝くカメラアイを向ける。
『……本当にいいのか?リリエンタール同志大尉。相手は貴官の元上官と聞くが……』
『ドラガノフ中尉、我々の事は気にするな。どうせ覚悟は出来ている。貴様らとてそうだろう』
『ああ……確かに中佐は俺たちの部隊に存在意義をくれた。自らの選択に対する責任は果たすさ』
『責任……か。まるで西側の人間みたいな口ぶりだな』
『この際、縋れるものが何であれ構わねぇさ。俺は部隊のため。貴官は自分の為に責務を果たす。それだけだ』
『ああ。これは俺自身の為だ。俺は許さねぇ……俺らを置いて……ラザーリやダヴィドを極東で死なせておいて自分だけのうのうとこんな僻地で生きてるあいつを…。やっとこの手で仕留める機会を貰ったんだ。今更未練はねぇさ』
『そうか……貴官がそう決めたなら俺は止めねぇ。それにこれもまた祖国への服務。やるからには俺も精一杯やらせてもらう』
『あぁ。しっかりやってくれ。総員傾注‼︎間もなく目標2機が現座標に到着する。残ったのは俺たちだけだ‼︎誇り高き我ら騎兵の
『
ソロモンが勇ましく訓示を行うと、他の