明確な性描写はありません。一般ラノベ程度のスケベシーンがあるだけです。次回も似たような感じです。
夏休みのとある日。坂下未希は最寄りの駅前で人を待っていた。例によって化粧はしておらず、服装は白の半袖ブラウスと、青いデニム生地のショートパンツという飾り気のない格好である。
「そろそろ……かな。」
横断歩道の向かい側から、早足で1人の男子が未希の下へとやってくる。どうやら彼女の姿を見て急ぎ足となったようだ。
「す、すいません……!なんか待たせちゃったみたいで……」
「初めてのデートで女の子を待たせるなんて、良い度胸しているんじゃないかな。」
「うぐっ……」
露骨に不満そうな顔を見せる未希に対して、言葉を詰まらせる男子。その反応を見て、彼女は満足そうに微笑んだ。
「ふっ……ふふっ……冗談だってば。ちゃーんと、慧くんは時間を守っていたんだから。私が少し早く来ただけなんだし、気にしなくていいんだよ。」
「あっ……は、はい。」
未希の悪戯っぽい笑顔に、男子……慧は困惑したものの、すぐに顔を綻ばせた。
「それじゃあ、行きますか。」
「うん、行こうか。」
彼から言葉をきりだし、2人は駅の構内へと歩みを進めた。
「うわぁ……すごい……あんなにたくさん泳いでいるよ!」
「ほ、本当に辺り一面、お魚だらけですね。」
海の底に迷い込んだかのような空間。未希と慧は水族館のトンネル水槽を歩いていた。幼い子供のように、周囲を見回しながらはしゃぐ未希。そのすぐ後を慧が歩く。
「坂下先輩は、魚が好きなんですか?それとも海が?」
「うーん……水の中で泳いでいるものが好きって感じかな?ほら、地べたに足を付けずに、自由に飛んでるみたいな感じがするでしょ?」
「言われてみれば……そんな気がしないでも。……あっ。」
彼女から返ってきた質問の答えに、慧はふと走り高跳びの練習をしている未希の姿を思い出す。
「それじゃあ、先輩が高跳びをやっているのも……」
「え……?うん、それもあるかな。記録とか結果が出ることも、もちろん嬉しいけど、跳ぶことが好きだからやっているんだよ。」
周囲の魚群を見回していた未希が、慧の方を向いて晴れやかな笑顔で口にする。その言葉に彼は、こみ上げてくる愛おしさを抑え込み、胸の鼓動を高鳴らせた。
「うっわー!おっきいマグロだよっ!クロマグロ……かな?なんかちょっと、おいしそうに見えてきた……」
「お腹、減ってきたんですか?」
「うっ……たぶん、そうだと思う。」
閲覧用のマグロを前に、空腹となり始めていた未希がよだれを垂らしそうな顔で言い放つ。呆れながらも慧は彼女の図星をつき、未希はそれにばつの悪そうな顔で言葉を返す。
「あー……でもあんなに大きいと食べきれないだろうなぁ……」
「まーだそんなことを言ってるんです……か。」
話を続けていた慧が、水槽に釘付けとなっている未希の後姿を改めて見つめることで、その言葉が止まる。彼は彼女の下半身……太股から目が離せなくなっていた。
「……うっ」
水族館特有の薄暗い空間の中、水槽の中を照らすライトに当たり、未希の身体のラインがくっきりと映し出されていた。そして、素足にサンダルでショートパンツをはいている彼女の足は太股から足首までがむき出しという、健康的でありながらいやらしさも備えた格好でもあった。
「ぐっ……」
鍛えられている太股から目を離せずにいる慧。彼は未希の下半身に集中すると同時に、自らの下半身にも集中が向き始めてしまっていた。
「あっ……やばっ……」
自らの下半身に血液が集まり出しそうなった時、未希が大きな声で慧を呼ぶ。
「ねぇ慧くん!聞いてる?」
「えっ?あ、ああ……は、はい。」
未希の何度目かの呼びかけで、ようやく我へと返る慧。彼女に声を掛けられたことで、股間へ集まっていた血液は一気に引いたのであった。
「もう……ぼけーっとしちゃって、どうしちゃったのよ。ね、そろそろお昼にしようか?」
「そ、そうです……ね。」
動揺を必死に隠しながら、慧は彼女の声に耳を傾け、会話を続けていた。
食事を終え、水族館を後にした2人が向かったのは近くのテーマパークだった。
「でも本当によかったんですか?俺だっていくらか手持ちには余裕はありましたし、坂下先輩に自分の分の代金を払ってもらうなんて……」
ここまで2人はこのデートにかかっていた、経費を全て個別に払っていた。慧としては誘っておきながら、自らが彼女に金銭を払わせていることに些かの抵抗が残っていた。
「ん?うん、別にいいんだよ。私だって、お金に余裕がないわけじゃないし。むしろ普段あまり使っていないから、今日みたいな時に使いたいなぁ……なんて思っていたんだよ。」
「失礼かもしれませんけど……先輩、今日払っていた金は一体どこで……」
若干聞きづらそうにしながらも、慧は未希へ質問をする。彼女はそれに対して、特に躊躇う様子もなく答える。
「お姉ちゃんがね、私に結構お小遣いをくれたりするんだ。どんな仕事をしているのかはよくわからないけど、いっぱいお給料ももらっているみたいで、割とおこぼれみたいな感じでくれたりするんだよね。」
「あ、そういうことだったんですか。」
慧の心の中に僅かながら浮かんだ不純な想像は、未希の答えによって払拭された。
「そんなことよりさ、早く行こ?もたもたしていると日が暮れちゃうよ。楽しい時間って、あっという間に過ぎちゃうんだからさ。」
「は、はい……!」
未希の言葉に、暗い表情となりかけていた慧の顔に明るさが戻り、2人は園内へと足を踏み入れていった。
「はぁ~……さすがにちょっと休みたくなってきたかも。」
「そ、そうですね……」
既に複数の施設や乗物へ周っていたが、男女の差よりも運動部と文化部の差が出ているのか、多少疲労の色を見せている未希に対して、慧は疲労困憊という状態となっている。
「ちょっとどこかで休もう……あ、あれ。」
「どうしましたか、先輩。」
未希の視線が止まっていたのは、おどろおどろしい外観をした施設、お化け屋敷であった。
「ねぇ、休む前にあそこだけ入ってみようよ。中は涼しいと思うし、怖かったらすぐ出てくればいいんだしさ。」
「え……で、でも……」
期待を膨らませる顔の未希に対して、慧は彼女とは全く異なる期待を膨らませていた。水族館以上の暗がりで、周囲には誰もいないであろう空間へ入ろうしているのだ。何かはあってほしいという願いを持ち、口を開いた。
「先輩……怖いのは苦手、ですか?」
「うーん、そうでもない……かな?」
未希の含みを持たせた答えを聞きつつ、2人はお化け屋敷の内部へと歩みを進めていくのであった。
「ふっ……あははははっ!なんなのよあれ!ゲームとかに出てくる人形のほうが怖いってば!ふっ、ふふふっ!」
「そ、そうお、お、お、思ってますか?」
恐る恐る周囲を見ながらが歩く慧に対して、次は何が出てくるかと目を輝かせながら歩いている未希。この場所へ入ったことを後悔していたのは明らかに彼のほうであった。
「あっ!落ち武者だ!ボロボロになっている鎧や兜って、ちょっとカッコいいとか思ったりすることがあるんだよね。」
「そ、そうです……か……」
現れる仕掛けを楽しむ未希に対して、すでに驚く気力すらも失いつつある慧。そんな彼の様子に、さすがに未希も申し訳なさそうな顔で声を掛ける。
「ごめんね。もう少しで出口だと思うから、そうしたら休みを取ろうね。」
「は、はい……」
俯きながらもどうにか歩みを進める慧。その慧を先導するように前を歩く未希。後ろにいる慧を見ながら歩いているため、前方への注意は一切払っていなかった。
「もう……怖いのが苦手だったんなら入る前に言ってくれればよかったのに。」
「す、すいません。」
「でも、そんなところが可愛いなんて思ったりも……」
した。と、前を向きながら言い切ろうした未希の視界に飛び込んできたのは、上から逆さに吊り下げられた女幽霊の人形だった。
「……っ!」
声にすらならない悲鳴を漏らした未希が、後ろを俯きながら歩いていた慧の身体に抱きつく。
「ちょ、ちょっと先輩!」
驚く彼の視界にも女幽霊の人形は入ったものの、それ以上に自らへと抱きついてくる未希への集中が圧倒的に上回っていた。
「な、なに……今誰かと目が合った気がする……!」
怖がる言葉を口にしながら正面から慧へと抱きついた未希の身体は、彼と身体と密着をしており、豊かとまでいかないものの、それなりに膨らんだ乳房が彼の胴体に当たって押し潰される。
「あ……あた……当たってますよ……!」
「い、いや……いやっ……!」
一向に慧から離れようとはしない未希。それどころか、彼の身体を抱きしめる彼女の腕は力を増し、ショートパンツという格好でむき出しとなっていた生足も絡みつつあった。
「あ……あっ……さ、坂下……先輩。」
乳房を押し付けられ、生足が絡んで抱きしめてくる未希の身体を、慧は抱きしめ返そうとしていた。が、その直前に、女幽霊の人形がその光景を見飽きたかのように上空へと戻っていた。
「あっ、戻っていきましたよ。」
「えっ……も、もういなくなった……の?」
安堵の声を漏らし、慧を強く抱きしめていた力を緩めて彼から離れる未希。声を発さぬまま離れていく彼女を、彼は物惜しそうな顔で見つめていた。
その後すぐに出口を迎え、2人はお化け屋敷から抜け出し、日の光の下へと出てくることが出来た。
「せ、先輩……その……さっきことは、俺は別に……」
「う、うん……ご、ごめん。」
お互いにばつの悪い雰囲気となる2人。しばしの無言が続いた後、未希から話がきり出される。
「そ、そういえばお化け屋敷を出たら休むんだったよね。どこか座って休める場所を探そうか。暑いから、日陰のほうがいい……よね?」
「あ……は、はい、そうですね。」
何事もなかったかのように話を進める未希。その言葉に意を汲んだのか、慧も頷いて言葉を返し、2人は身を休めるための場所を探しに歩き始めるのであった。