はい!満点の青空、快晴です☆今日はお家でのんびりくつろぎタイム………ではなく、バイトの日です。お疲れ体に鞭打ってまでバイトしなきゃいけないなんて……ツラい…( ̄^ ̄゜)
『んなとこで突っ立ってねぇで、仕事しろみっちゃん!お前の顔で売れてるもんなんだからよぉ」
「おっちゃん!俺は顔が命じゃねぇぞ!何を期待してんだよー」
「良いから、キリキリ働け!そしたら給料も倍にしてやんよ!』
「倍って言っても2割だろ!俺の顔で売りたきゃ、せめてその3倍で売れよ!」
『そう変わらねぇじゃねぇか!2割でも良いだろ!?」
「良くねぇ!俺にとっては大問題だっての!」
「わかったわかった!そこまで不安なら5割でどうだ?それなら文句ねぇだろ!?』
「あざーす!!お兄さん達!!」
「「こんな時だけ猫かぶりやがって!そこが好きだぜ、みっちゃん!」」
「うへへ、あんがとー♪」
今は魚屋と八百屋の両方を売ってる。交互に言われるもんだからその都度返すのがすごく一苦労。けど、どっちも5割の給料をくれる。所謂、ライバルという奴。ライバルに負けるのが嫌でそうなる。
俺にとってはウハウハ給料だけど♡
「あ、そこお姉さん!ここの野菜は新鮮で安くて美味しいから、嘘だと思って食べてみ!俺も嘘だと思って食ったら、めっちゃ美味くてさ!ここの野菜毎日食ってるから!買ってみなよ!」
「あら〜、そう?じゃあコレ一つくれるかしら?」
「まいどー♪おっちゃん!お客さん3名入ったぜ!」
『ガッテンだ!」
八百屋からの。
「ねえ、そこのお兄さん?」
「へい!何でしょう?」
「魚だとどれが一番美味しいかしら?」
「今日だと、そうだなー。アジとか鮭とかオススメだよ!あ、でもアサリとか牡蠣とかもアリかも!俺のおすすめは牡蠣かな!牡蠣のチリソース超美味くて好きなんだよね♪お嬢さんの作る牡蠣のチリソース、食べてみたいなぁ!きっと美味そうだよ!今度作ったらさ?食べさせてよ?安くするよー?」
「うふふ、相変わらずね♪しょうがないわね、じゃあ蜜ちゃんのために買ってあげるわ。作ったら食べてね?」
「もちろん!全部食べるよ!ほら、今が旬だからさ!早めに買わないと損だから、ね?」
「じゃあ買おうかしらね♡」
「へい、まいどー♪おっちゃん!お客さん5人入ったぜー!」
「おー!!わぁっーたよ!!』
これが魚屋。今日も俺はモテる。
モテる男は辛い(*`ω´*)ドヤッ☆
「学校とは違うんだな?」
「おや、風紀委員長!買い物かい?」
「今は学校じゃない、あと先輩は付けろ」
「ほーい」
「それと僕もいるよ!」
「おや、風紀副委員長も!仲良しっすね」
「まあね。ってその呼び方やめたら?疲れるでしょ?あ、僕には敬語じゃなくていいよ。一応先輩だけどそこは別にどっちでもいいから♪」
「はーい♪」
風紀委員長……もとい、黒牙狼先輩と……あ、名前知らない!
「黒牙先輩はわかるんですけど、副委員長の名前知らないや、俺」
「あ、そう言えばそうだね。改めて、僕は鷹田元春(タカダ モトハル)。よろしくね?」
「あ、こちらこそ、よろしくっす!鷹田先輩!」
「うん。ところでバイトの掛け持ちとかすごいね?疲れないの?」
「まあ、時々思う時はありますけど俺ここの人達大好きだから頼られたら断れないんですよねー。まあ、もうすぐここのバイト時間が終わるんでその時また声掛けてください。客としてきたのならもてなしますよ」
「俺は魚だ」
「僕は野菜」
「Wow!見事に反対!分担するのはいいと思います!すごく効率的な意味で!」
「目利きはいい方だからそこら辺はお前のもてなしとかなくても買える」
「あ、そうっすか…」
「僕もできるけど、一番オススメの料理を教えてくれたらそれを作るために買う」
「今は、春だからな…。あ、今日は春なのに夜から寒くなるらしいですよ?シチューとかカレーとかがいいと思う!」
「じゃあそれを作るかな。ありがとう腐獅くん♪」
「いえいえ♪まいどー♪おっちゃん!可愛いイケメン1名入ったよー」
『でかした!!みっちゃん!あんがとな!」
「おう!」
鷹田先輩が野菜を買ってくれる。八百屋のお兄さんもいい感じに嬉しそうな顔をしてる。客が増えるのは良いこと良いこと。
「黒牙先輩はどうします?」
「ここの魚屋のオススメはなんだ?」
「アジや牡蠣や貝類系、鯛、蟹…etc。どれも美味しいし新鮮だし俺は全部オススメ。でも個人的にオススメなのは牡蠣っすね!今が旬ならアジですけど、オススメは牡蠣です」
「なら、アジと牡蠣を貰う。あとアサリと……イカをくれ」
「へい、まいどー♪おっちゃん!超イケメンの兄ちゃんがたくさん買ってくれるってよ!」
「なっ…!?」
「おぉ!本当かい!?じゃあサービスしてやんねぇとな!』
「おう!」
「超イケメンは言い過ぎだろ…。恥ずかしい…」
「本当のことだからいんすよ!」
「うぅ…」
「狼は謙遜しすぎ。本当のことなんだからもっと堂々としてなきゃ」
「うわぁ、可愛いイケメンの先輩が超イケメンの先輩を励ましてる図はすごく絵になるー」
「思ってねぇだろ」
「思ってないでしょ」
「思ってますよ!本当にすごい疑われますね、俺!?もっと信用してくれといいのに…」
そういう茶番をしているとあっという間にバイト時間の終わりを告げた。エプロンを取って、給料も貰ってカバンに入れてお疲れ様と言ってそこから離れた。両立は超大変。
でも給料が弾むからラッキー♪
「お疲れ」
「お疲れ様、腐獅くん」
「はい!ありがとっす!」
黒牙先輩と鷹田先輩が待っていた。時間を見ながら移動する。次はどこに行くのか聞かれた。
「次は……えっと、ケーキ屋っすね。次は花屋で、その次は配達。昼休憩入っても、次は箱の中に入ってたいらいとかかな…」
「箱?」
二人が顔を見合わせて頭にハテナを浮かべさせていた。俺はあははと笑いながら説明する。
「えっとですねwまあ所謂、お助けボックスって奴です。ワンコイン出せばどんなことでも助ける感じのバイトです。それはバイトのうちに入らないので、言わなかったですけど。良ければ見ますか?俺の仕事♪」
「僕は興味ないから狼が行ってきたら?僕はこのまま帰るから。後で聞かせてよ」
「いや、勝手に決めるな。っておいっ!」
言うが早いか鷹田先輩は黒牙先輩の荷物を持ってスタコラサッサと帰ってしまった。黒牙先輩は渋々と俺について行くことになった。
「嫌々そうですね?」
「…………」
「無視っすか」
「…………」
話が弾まないなぁ…。まあ、しょうがないか…
歩いてる間にケーキ屋に着いた。
「おばちゃーん!来たよー!それから助っ人も付けれてきた!!立ってるだけで客が集まる奴!」
「本当かい!?……あら、本当だわ!!それじゃああんたも手伝いなさいっ!」
「えっ、ちょっ、勝手に!?」
「暇でしょ?先輩。ならいいっしょ?」
「いや、ちょっと待て!……うおっ!!」
半ば無理矢理、黒牙先輩を引っ張り控え室に入れた。パパッとエプロンを着させてパパッと外に出る。
「黒牙狼さんです。親しみやすく狼さんって呼んであげてください!」
「「はーーーい♡♡」」
「……すみません、ちょっとだけお時間を」
「そんな時間はないけど、狼さんが言うなら良いわ♪早めに帰ってきてね♡」
「わかりました。腐獅、ちょっと来い」
無理矢理手を引っ張り俺を控え室の壁に投げ飛ばし、そして壁ドンする。俺は頭を抑えながら黒牙先輩を見る。
「どういうつもりだ」
「勝手に店頭に立たせたことですか?」
「そうだ。俺はまだ良いと言ってないしする気もなかった。ただ見るだけにするつもりだったのに…」
「それじゃあ暇だと思ったからですよ?」
「それを強引にするやつがあるか!」
「何が不満なんですか?」
「不満もあるに決まってるだろ!!」
それから黒牙先輩の説教が続いた。長引くのはさすがに仕事の影響と信用を損ねる。手っ取り早く終わらせるために俺はまた少し強引に黒牙先輩の説教を遮る。
「ロウ」
「!!」
名前を言ったら止まった。その名前に酷く敏感らしい。そしてその一瞬の迷いが形勢逆転してしまう一瞬だった。黒牙先輩の胸ぐらを掴み、そして逆に壁に背中を打ち付けからの壁ドン。あと両手首をしっかり上に追いやり絶対に取れないよう片手に力を込め、逃がさないように耳元に顔を近づける。この体制は誰かに見られたら俺より黒牙先輩の心が持たないと思うが、俺はあえてその体制にさせてる。黒牙先輩は固定されて身動き取れず、もがこうにも耳元に息が当たって力が出せない状況になってる。俺は終わるまで重低音で話しかける。
「ロウ」
「っ!」
「その説教はまだ続く?」
「あ、え、っと……」
ハッと気づいた黒牙先輩。しかし今更なので時は既に遅かった。
「これさ?バイトなの。仕事なの。時間ロスしたら給料にも影響出るの。減給したらどうしてくれるの?」
「っ…!……ぁ、まって……、お、ねが……」
「何を待つの?待つ必要あるの?……ねぇ、ロウ?この体制さ?誰かに見られたらどうなると思う?」
「…んぁっ……ま、て…、…や…だ…」
「俺はいいけどあんたが恥ずかしい思いをするんだよ?今、あんたもそのエプロンしてるってことはコッチの人間なの。同僚ってこと。見られたいならこのままの体制で待つ?」
「や、ちがっ……!…み、つき…さん……!」
「早くしないとーーー」
と、その時。『コンコン』とドアを叩いてきた。黒牙先輩はビクッと震えてもがくが動けずの繰り替えをしてる。
『まだかしら?もう結構時間経ってるけど…。何かあった?』
黒牙先輩が必死に泣きそうな顔で俺を見てこの体制を見られるのは嫌だと目で訴えるので俺は仕方なく。
「すみません!もう少し時間を!ノーメイクはさすがに嫌だって聞かないのでメイクさせてからそっちに向かいます!本当にすみません!!」
『あら、そうなの?じゃあ仕方ないわね…。終わったらすぐ来るのよ?これ以上待たせるなら給料減らすからね?』
「はーい!!急ぎます!!」
そしてその脅威になる者は去っていった。さっきのおばちゃん、店長さんだったんだけど。黒牙先輩は脅威が去ると脱力するように腰が抜けて足に力が入らないのか、落ちる。座らせてからも手首の固定は外れない。黒牙先輩は身体をビクつかせて俺を見る。
「ね?」
「ご、ごめんなさ……」
「今回はこれくらいにするけど、今日の夜のお仕事の時は本当に強制的に来てもらいます。『お仕置き』も兼ねて。5千〜1万持ってきてください。…なぁロウ、来るよな?その時は覚悟しとけよ?」
「…っ…は、い…。……お、おせの…っ…ままに……」
黒牙先輩が顔赤くにして俺の言葉に従って応答した。そして何をさせるのかという恐怖とこんなに時間をロスさせ、俺への申し訳なさで涙がポロポロ流れ体を震わせながら土下座をする。
「…ご、めん…なさ、い……」
「ちゃんとお仕事してくれますよね?黒牙先輩」
「………っ、……する……」
俺の言葉の何かに引っ掛かりを持った黒牙先輩。その答えを言えずにティッシュで涙を拭き、俺はちょっと先輩方の化粧品から少しだけ拝借してちょちょいと黒牙先輩のメイクを終了させる。あまりの速さにまた動揺を隠せない黒牙先輩は鏡を見るといつもの顔に戻っていて驚いてる。
「その方が変に思われないでしょ?さ、仕事に戻りますよ?これ以上は減給されるのゴメンですからね。…あ、そうだ!ちょっと失礼!」
「?」
俺はまたちょちょいとワックスを黒牙先輩の頭に塗り少しホスト風にかっこよく片方オールバックにさせて片方はなびかせるようにサラッと仕上げる。
「さ、行きますよ!」
ドアを開けて黒牙先輩の腕を掴み、カウンターへ行く。それから俺は遅くなったことへの謝罪をしてから黒牙先輩を見せると、店長の顔が赤く染まって減給はなくなった。
まさに、計画通り★
「えっと……、俺は何をしてればいい?」
「主に俺と接客をしてくれればいいですよ。俺の真似は参考にならないと思うんで、独自で何とかしてください。黒牙先輩が俺のどこを参考にするかは分かりませんが、自分なり接客をして貢献して下さい。分からないことがあれば聞いてくれればいいので」
「わ、わかった…」
黒牙先輩がどう対応するべきか立ち往生しているので、俺は店長にちょうど見つけたみたいな感じで話しかける。
「あ、店長!ちょっといいですか?」
「何かしら?」
「狼さん、今日初めてここに来て手伝わせるわけなんですが、多分ここのケーキの味を知らないと思うのでひとつずつ食べてもらった方がお店の宣伝とかしてくれる気がするです。その方が接客し安いんじゃないかって」
「気が利くわね、さすが看板娘ならぬ看板王子♪良いわよ、確か予備の分があるはずだからそれは食べてもいいわよ。厨房で食べさせてもらいなさい。許可は私が取るわ」
「ありがとう店長!素敵♪」
「やだもう!蜜ちゃんったら♡」
「えへへ♪」
そんな会話をして店長から離れた後、黒牙先輩の腕を掴んで無理矢理厨房へ。黒牙先輩はまた何もよくわかってない状況で無理矢理連れていかれるこの状況に慣れたのか、呆れた顔でもう何も言わなかった。
俺へのもそうだけど、もう諦めたのかな?ある意味忙しいからね、わかってくれたと解釈しよう
厨房に入ると。
「おっ!みっちゃん!なんだか店長に怒られてたけど、もう済んだのか?てか、そこの兄ちゃんは??」
「この人は黒牙狼先輩。俺の学校の先輩だよ!入った時はこんな感じじゃないけど、ちょちょいとメイクしてかっこよくしたら減給免れたの♪」
「さっすがみっちゃん!金のことになると手段を選ばねぇなww」
「そりゃあ!俺の金への執着はおっちゃんも知ってるっしょ?金が命なの!………今はな」
「……?」
黒牙先輩が金の話をしてる間は何を聞かされてるのかと思っていたみたいだけど、最後の一言は誰にも聞かさないために言ったつもりでも黒牙先輩には聞こえてしまったらしい。けど今のところ、何を意味してるのかわからなかったみたいなので深く追求はしてこなかった。
「店長が予備の分を食べていいって言ってくれてるんだ。俺はもうここの味を知ってるからいいけど助っ人としてきた黒牙先輩はここの味を知らないから食べさせてあげたいんだ。そうすれば俺と同じ接客でも少し違うやり方を見せてくれると思うんだ♪どうよ、俺の考え!」
「さっすが、みっちゃん!頭冴えてんな!おう、いいぜ!みっちゃんが言うなら残りもんでいいなら分けてやるよ。まあ、そこの兄ちゃんがそこまで目利きがいいとは思えないが試してみようか」
「おっちゃん?あんま上だけ見てると足元救われんよ?」
「へっ、どうだかな。とにかくコイツの舌を確かめないと、店頭に出しても足でまといだ。ここでの合格がなけりゃ、出ても役に立たねぇ。むしろ見せもんになるだけだ!」
「そりゃあそうだ♪てなわけで片っ端から食べて味を覚えてもらうけど、黒牙先輩の自信の程は?」
「そこまで言われるなら、本気出しますよ。どんどん出してください。全部覚えます」
「おっ!そう来なくっちゃな♪じゃあまずは定番中の定番である苺のショートケーキからだ」
そう言っておっちゃんは冷蔵庫から苺のショートケーキを取り出し、お皿に載せて黒牙先輩の前に出した。フォークを渡され黒牙先輩。いざ、実食。
「はむっ………。……甘さは控えめなんですね。優しい味がします。それに苺もスライスが主ですが、小さく食べやすいようにカットされていて、生クリームだけの味だけじゃなく苺もちゃんと主張するように切られている。それにこの苺はどことは言いませんが高級な苺を使ってますね?普通のスーパーで買うような苺はもう少し甘さ控えめの物を売る傾向にある、しかしこの苺は何処の部分を使っても甘さを忘れていない。最高品質のものを使ってます。もしかしてですが、腐獅が今日バイトで働いていた八百屋の苺ですか?俺もあそこの八百屋に行くんですが、時々顔がいいからと苺やみかんをサービスでくれるです。そこで食べた苺は最高品質っと言っても過言ではないくらい美味しかった。あそこの野菜や果物はどれも美味しかったです。違いますか?」
「…………間違ってねぇ。当たってる…」
「そうですか。それではこの生クリームもきめ細かい所を見ると、ちゃんと泡立てをしてフワフワに仕上げていますね。砂糖の分量も女性に好まれる味です。男性でも好きになる味だと思います。これ以上申し上げれることはありませんが、どうですか?」
「………………(´;ω;`)ブワッ」
「お、おっちゃん!?」
「まだショートケーキしか出してねぇのに涙が止まらねぇ!!凄く嬉しい!!ここに並んだ奴は全部兄ちゃんにあげるから味がわかったら店頭に出ろ。俺からは合格の判を押しておくからよ…!」
その後は全てのケーキを食べて味もしっかりわかった所で店頭に立った。おっちゃんというと、黒牙先輩の言葉があんまりにも心に突き刺さったため泣きじゃくっている。仕事に影響が出るからと控え室に言ったが、指示はちゃんと出してから出てて行った。俺も俺でいつものように接客をするのだが、俺よりも人気は黒牙先輩に全部もっていかれてしまった。
とてつもなく悔しい…。なんだか、次にここでバイトする時「あの人は?」「あの人はどこ?」って言われるんだろうなぁ…。そんで給料も俺の頑張りじゃなくて黒牙先輩の頑張りに変貌するんだろ…?俺ってなんか自分で墓穴を掘ってんじゃね?……まあ、いっか。今回の給料は跳ね上がるんだし。次はわからんけど、今回だけは……。………(´Д`)ハァ…
黒牙先輩の良い例として挙げるなら、ここのワンシーン。
「何がいいだろうねぇ……。どれも甘ったるそうで手につけれないねぇ…」
「どうかされましたか?」
「いやね、私はあんまり甘すぎるケーキって苦手なんさ。いつもこのケーキがいいって思うと甘すぎて孫にあげちまうんだ。私も私のために食べたいケーキとかないかね……」
「うーん、そうですね。甘すぎるのがダメとなるとケーキですからね。見た目で見るとどれもそう見えますよね…」
「そうだよねぇ…、諦めようかしら…」
「お客様はケーキの中で何がお好きですか?」
「そうだね、………抹茶とか小豆とかが入ってるのが好きだね♪」
「それでしたら、このロールケーキはどうでしょう?」
「前にこれを食べたけど私には口に合わなかったわよ?」
「そうでしたか?俺には抹茶の渋さや小豆の甘みが際立って、生クリームと互角くらいだと思いましたよ?もちろん、甘さに同じかと思います。甘すぎると思うのは生クリームの量だと思います。しかし、生クリームの量より小豆や抹茶の面積に比べれば生クリームの量はどちらかと言うと控えめです。もう一度、食べてみてください。今度はゆっくり味を確かめるように食べたら、変わるかもしれませんよ?」
「そうかい…?それじゃあお兄さんがそんなに言うなら食べてみようかね…。そこまで変わらないような気がするけど、味わうように食べるっていう発想は無かったし…。お兄さんの言う通りに食べてみるよ、ありがとうね?」
「いえいえ、お役に立てれたのであれば光栄です。きっと今まで感じたことのない味が楽しめますよ」
「ふふ、そうかい?なら楽しむとするよ。じゃあこの抹茶と小豆のロールケーキ、ひとつ貰うわ」
「はい、かしこまりました。少々お待ちを」
というワンシーン。営業スマイルだけど、ちゃんとお客さんの接客は出来ていた。店長もメロメロ。その後もそんな感じで黒牙先輩も俺も売上に貢献した。そしてケーキ屋のバイトの時間も終わりを告げようとしていた。お昼頃に終わるケーキ屋の仕事。次は花屋なわけだけど、ケーキ屋の店長や従業員達が今生の別れみたく涙を流して給料分のお金を渡している。俺にはそんなに顔見せたことがない。
まあ、今回の活躍は全部黒牙先輩が持っていったからなぁ。俺も黒牙先輩と同じくらい頑張ったってのに……。不公平だ!金持ちってのは伏せてるけど、不公平だ!!
その時は猫かぶってニコニコしていたけど、終わって喫茶店に入った俺と黒牙先輩はお昼を食べるために入った。俺の顔を見て黒牙先輩は慰めてきた。同情する目で俺を見ている。
「黒牙先輩、そういう目は俺に失礼です。同情するなら金をくれって言葉、知ってますよね?俺は先輩から金を巻き上げることはしませんが、そういう目をするなら迷惑です」
「わ、悪かった……」
俺の言葉に黒牙先輩はハッとした顔で申し訳なさそうに謝った。でも、俺の言葉だって八つ当たりだ。人のこと言えない。俺も自分の発言に対して黒牙先輩に謝った。黒牙先輩は慌てて頭上げるように言ってきた。
「八つ当たりなんて、俺らしくねぇなwwまったく、何してんだか…」
「何かあったのか?俺でよければ聞くぞ?」
「いやいや、何でもねぇですよ☆それより何します?てか、黒牙先輩はここで食べた経験は?」
「………、ない」
「なら、ここの一番オススメを食べましょう!俺は今日それを食べるつもりだったので。どうです?」
「じゃあ、それで…」
「はーい。あのー!すみませーん!!」
手を挙げて定員さんを呼び、一番オススメの奴を選び来るまで待つ。するとそこに。
「お前らなんでここにいる?」
野生の猫先生が現れた!どうする?仲間に入れる?それとも逃げる?どうする?
「黒牙先輩!」
「え!?何が!?」
バシッと猫先生に頭を叩かれる。
「大方、俺を見てネタでも考えたんだろ?しかもよくあるネタをな…?」
「あだだだだだだっ!!!」
頭かち割れるぅぅ!!!
頭がミシミシ鳴ってる。これはいよいよ俺の人生もおさらばしなければならない感じのようだ。さらば、俺の人生。さらば、友よ。
「寝るな」
「相席、いいか?」
「あ、はい。どうぞ」
猫先生は俺の隣ではなく黒牙先輩の隣に座った。二人は知らないけど、俺の『アレ』のファンなのよね。しかも、今日バイト先にこの二人来るという。
今、この二人は知らない(*´ω`*)
「猫澤先生。何か頼みますか?」
「珈琲を飲みに来たからな。珈琲を頼む」
「お昼にしないんですか?」
「休憩だからな。食べる時間もない」
「そうですか」
なんか在り来りな質問解答。しかも会話が終わった。
えぇ…、もう終わりなの…?もう少し話そうぜ…
とりあえず俺は何か話題を出そうと猫先生に話しかける。
「ところで、猫先生は休憩って言ってたけど何かの仕事終わり?」
「あぁ、学園で仕事をな。もうすぐ終わるんだが、その前に休憩を入れようと思って息抜きにここに来た。入って目にした席にお前達がいたからな」
「なるほどね〜」
って俺も終わらせちゃったよ☆人のこと言えねぇw
『休憩』ということで、今度は猫先生から話しかけられた。俺と黒牙先輩を交互に見てだけど。
「お前ら、いつの間に仲良くなった?腐獅。それに黒牙、なんだその頭は?ホストにでもなったのか?」
うわぁ…、自分言われたくない言葉を生徒には言うんか…。そりゃあ誰もが言うわけだ…
勘の鋭い猫先生は怖いくらい俺を睨んできた。言葉に出てないからノーカンということで。
その質問に対して黒牙先輩から答えた。俺が余計なことを思ってる間に。
「これは腐獅のバイト先を手伝った影響です。いつもはこんな髪型はしませんし、バイトが禁止だということも知ってます。しかし、今回は半ば無理矢理やらされて結局手伝う形になったという感じです。腐獅と会ったのは朝の八百屋と魚屋の掛け持ち売り子をしていた時です。その時は客としてでしたが、話の流れでケーキ屋で手伝い今に至ります」
とってもわかりやすい説明をしてくれた黒牙先輩。俺も続いて質問に答える。
「黒牙先輩とは新入生歓迎会の時にちょっと絡んだ感じだよ。まあ、このあとの言葉はーー」
「言わなくていい!それ以上は……っ」
言おうとしたらいきなり立ち上がり俺の口を抑えた。しかしその反動で周りの人達が一斉に黒牙先輩を注目する。ハッとした黒牙先輩は俺の口を抑えたままゆっくり座る。黒牙先輩の手は微弱ではあっても震えてる。恥をかきたくないという現れだ。
顔逸らすけど俺からは全部見えてるからなぁ。顔真っ赤っかだぜ?黒牙先輩
俺はわざと黒牙先輩の手のひらをペロッと舐める。ガタッと音を立ててまた注目を浴びる。猫先生はとりあえず平謝りしてから俺の頭をバシッと叩いた。
「あだっ!」
「何したかは予想ついてるが、ここではやめろ」
「はーい」
黒牙先輩は手首を持って自分の手を抑える。随分と敏感に感じてる。顔真っ赤なのを見られないように俯く。恥ずかしくて顔が上がらないみたいだった。
黒牙先輩、俺に触れただけでビクビクしてんなぁ。あ、感じてるって意味でね?
しばらくすると俺達が頼んだ料理が運ばれた。今回のオススメ日替わりランチはたらこスパゲティとドリアだった。俺はいただきますのポーズをする。黒牙先輩も同じようにする。猫先生はさっきの人に珈琲を頼んでからこっちを見てる。
「「いただきます(!)」」
黒牙先輩はドリアから、俺はスパゲティから食べた。猫先生は珈琲が来たので小さくいただきますをして飲む。一息ついてまた俺に質問してきた。今度は俺だけだった。
「腐獅は昼飯食ったらどこか行くのか?」
「ん?(ゴクッ)っバイトだよ。夕方までの間に花屋と配達の仕事、配達は野菜然り魚然り花然りケーキ然りね。家から出れなら高齢者の人や妊婦さんのいる家が主かな?そうバイトだよ。ちなみにちゃんとバイトだから給料も貰える。残業代もボーナスもここの生まれでみんなと仲良いから本当なら貰えないけど、俺の顔ってことで許されてる♪」
「ふーん」
素っ気な!猫先生がそういう人って知ってるけど、いくらなんでもその返しは悲しいんだけど!あれか!?ボーナスやら残業代やらを、バイトの分際で取りやがって的なこと!?いいじゃん別に!!許されてんだから( `皿´)キーッ!!
せっかく答えた俺だったけどムスッとした状態で食べる。黒牙先輩はドリアを食べながら俺の事を見ていた。同時に目で猫先生も見ていた。猫先生は何食わぬ顔で珈琲を飲んでいる。黒牙先輩が代わりに猫先生のフォローをし始める。
聞いてきたのはあっちなのに、会話が終わったら会話を振られたこっちはどうしようもないっての!
「腐獅のバイト量や時間は結構一日でも多いんだな?明日もあるのか?」
同情にも取れるフォロー。しかし、今回のこの答えが今の俺にとっては欲しい言葉だった。終わる会話よりは話が弾む会話の方が好きだから。
「明日もありますよ〜。同じ時間に同じバイトを。夜のお仕事もありますし。今日も明日も、というか平日もありますよ〜、夕方からのバイトが。学園終わってから家に帰って支度したら配達の仕事をです。んで、それが終わったら夜のお仕事のバイト。配達の仕事がいい感じにその時間にはまるんですよ!だから、学園に居る時が休息みたいなもんですね」
「学園に居る時よりもバイトの時間が長いな…。少しは休もうとか思わないのか?そんなにしたら体とか壊れそうなものを…」
心配してくれる黒牙先輩。最初の印象とは嘘みたいに俺に懐いてる。顔には出てないけど、俺の心の中は感激の涙で溢れてる。
懐いてるって口にしたら絶対怒るかもw
「大丈夫ですよ♪俺、これでも体調壊したことないですんで!風邪は小さい時にあったけど、今は体力も筋力もありますので直ぐに壊れることはないですから」
少なくとも家族のこと以外ではない、かな……
「……まあ、今回の時みたいに何か俺が手伝えることがあったら言ってくれ。その時は手伝う」
「ケーキ屋の時に懲りてるんで、いいです」
「……あ、そう…」
思い出したのか申し訳なさそうな顔になる黒牙先輩。手伝いという面目で働いたのに、結局俺よりも功績を残してしまったという気まずさに何か言いたそうにした黒牙先輩も口を閉ざす。
「なんにしても黒牙。手伝いもバイトはバイトだ。同情はかえってお前の枷になるぞ」
珈琲を飲みながら冷たい言葉を言う。先生としての言葉なのかもしれないけどその言い方はどうかと思う。俺は思わず皮肉っぽいことを言ってしまった。
「バイトが禁止なのは俺も知ってるし黒牙先輩の場合、俺が無理矢理させたのがきっかけだし。それに手伝わせたら黒牙先輩の迷惑になるし。んなのわかってることを一々言わなくたって知ってるし。猫先生の悪い所は一言多いとこ、注意するにしても言葉を選ばないと猫先生も人のこと言えねぇですよ?」
「腐獅、それは言い過ぎだぞ!」
黒牙先輩の言葉に俺はハッとする。言い切った後とは言え猫先生の顔を見ると驚いてる顔してる。そして目を閉じて少し俯く。
「そんなことは、お前に言われんでもわかってる」
平然と言ってるが言葉の節々から猫先生の苦しそうに、そして悲しい気持ちが聞こえる。黒牙先輩は顔で猫先生に謝れと言ってる。口で言わないのは黒牙先輩の優しさだと思っておこう。
「……あー、猫先生?……その、ごめん」
「謝る必要はない。事実だ。余計なことを言ったな。お前達の代金は払っておく。俺はこれから残りの仕事をしに行く。それじゃあな」
クールに去った猫先生。だけど、背中が少し寂しそうでさっき言った言葉が胸に刺さったという感じで店を出ていった。俺と黒牙先輩はまだ食べていたので、気まずそうに食べ続ける。
「さっきの言葉は俺へのフォローかもしれんが、お前も余計な一言があったぞ?人のこと言えねぇのはお前だ、腐獅」
それに関してはもう何も言えない。反論も抵抗もする資格はない。ただひたすら頷くことしか出来ない。それくらいのことをしてしまったのだから。
「それに俺へのフォローはむしろ不要だぞ。先生が正しいんだからな。手伝いもバイトみたいなもんだ。自分の家の手伝いはバイトじゃないが、店の手伝いは立派なバイトになる。その自覚を俺が持ってなかった。それだけの話だ。言い方がどうでも、フォローが逆に相手を悲しませる方向に進むならしない方がいい。今回の場合は『フォローしない』が正解だったな」
「けど、あんな言い方は俺だってフォローじゃなかったとしてもカチンってきますよ!?そりゃあ逆撫でするような言葉言われたら黙れるほど、俺の頭は今日じゃねぇ。ましてや、大切だと思ってるからこその言葉も我慢できずに暴言吐くのだって仕方ないじゃないですか」
「仕方なくない。それが許されると思ってるその気持ちを直せ。俺はそれを言われても1ミリも喜ばないぞ?フォローってのは相手を怒らしたり悲しませることがフォローじゃない、そいつの代わりに代弁することがフォローだ。定義は沢山ある一説にすぎないが、俺は間違ったことは言ってない」
「うぐっ…」
何も言い返せない。さっきとは違う。今は黒牙先輩との口論。それに関しては人生の経験が物語ってる。黒牙先輩と俺の生活は違う。金持ちだからという理由だけじゃない。そこの生活でフォローするされる以外でも経験があれば、それを取り入れることが出来れた時が本物なんだと俺は思った。俺のはただの小言を言う姑みたいな感じ。そして子供と大人の喧嘩にも見える。だから、むきにもなる。
「……あ、そう?まああれは本当に思ったことだったし俺の時もあんな感じだったから、半分は俺が思ったことであって先輩のフォローしたって言う感じでもなかったですよ。んー、まああれですね?八つ当たりですかね?人に八つ当たりする辺り、俺はまだまだ子供ってことですよ」
「………………」
何も返ってこない。まぁそういう感じで言ったから返ってくる期待なんてしてなかったわけだけど。
あー、なんか俺……自分から雰囲気悪くしてんなぁ。何してんだろ、俺…
しばらくは黙って食べた。そして気まずいまま店を出た。ここが潮時。というかあんまり縛るものでもないので、ここで解散することにした。
「それじゃあ俺は仕事があるんで」
「あぁ」
「あ、そうそう。帰る前に顔だけでも落とした方がいいですよ?ってことで携帯用コットン」
「あぁ」
「それじゃあ行ってきます」
「あぁ」
花屋のある所に少し向かった所で止まった。それから黒牙先輩に顔だけ振り向き、そして俺はどんな顔で言ったかわからない言葉を黒牙先輩に告げた。
「あ、そうだ。気まずいとか来たくなかったら強制しませんよ。夜のお仕事のご招待。別に先輩が来なくても運営はしてますし。息抜きに来るくらいがちょうどいいと思いますし、こんな状況で行けたらそれこそ先輩はドM確定しちゃいますけどね?」
「……………」
「さてと、余計な事を言わないうちに退散しますね?俺の言葉って時に棘が鋭くて相手を傷つける時あるんで。あ、今に始まったことでもないか!ww」
「……………」
「それじゃあ、改めて……さようなら、黒牙先輩」
それだけ言って俺は黒牙先輩の言葉を待たずに走ってしまった。残された黒牙先輩は携帯用コットンを見つめながら、約束を破ることは出来ないからと思いそのまま帰路を歩いて行った。そんな気持ちを持ってたなんて今の俺の心境じゃあ知る由もない。
またねって言えなかったなぁ…。本当に俺、何がしたいんだろうな…、バカみたいだ
花屋に着いてから客が来るまでの間、上の空。おばちゃんに話しかけられたらその時はちゃんと答えるけど、本当にずっとボーッとしてる。
そんなことしてる場合じゃないのに…、煩悩が……
不意におばちゃんが心配そうに話しかけてきた。
「今日何かあったの?蜜ちゃんがそこまで落ち込んでるなんて、何かあったとしか思えないよ?」
「……何もないですよ」
「嘘をつくんじゃないよ?顔に書いてある、何かあったって。ちょっとでもいいから言ってみなさい。お客が来るまでだけど聞いてあげるから、ね?」
心配させてるなぁ…、こんな状況じゃあ帰らせるかもしれない…。それだけは何としても阻止しないと…!
「んー、実はさっき知り合いと喧嘩しまして。喧嘩別れみたいな感じですかね。そのせいでギクシャクして、謝ればいいのに後回しにしちゃって…。すぐすれば済む話なのにそのままズルズル引きづって、何してんだろって感じで…。あ、だからと言って仕事と私情は挟んでるつもりは無いです!だから……」
「わかってるわよ。あたしも同じようなこと思う時あるし。気持ちはわかる。だから、今日は仕事を休んでとは言わないわ。仕事に打ち込んでた方が気が紛れるのもあるしね?そこは大丈夫よ」
俺は心の中でホッとする。
「けど、そうね。喧嘩別れって時に溝が深いと取り返しのつかないことになるのよね。知り合いならまだ謝るだけ済むけれど、家族でそうなるともう取り戻せないって言うし」
チクッ。
「今回の場合は家族じゃなくて知り合いとなら謝れるわよ。ちゃんと謝った方が次からまた会える。それなら、今日中にするべきよ。どこかで待ち合わせしてちゃんと仲直りしなさい?そうすればスッキリするわよ。あたしも似たような経験してるからわかるしね」
おばちゃんなりの心配の仕方なんだと思う。それに対しては素直に嬉しい。けど、『家族の溝』の話は今の俺には地雷だった。俺は顔に出さないように苦笑いをしてやり過ごした。
まだそこまでの傷はないから我慢できるかな…?
「まあ、参考にさせてもらいますね。今日中にしなきゃいけないのはわかってるんで」
「そうね。早めの対策が1番よ」
「あのー、すみませーん」
「いらっしゃいませー!」
家族は言えないけど知り合いのことは言えて少し楽になった。言わないでいたらちょっとやばかったかもしれない。
家族のことは忘れよう…。今それを考えたらダメな気がする…
俺もおばちゃんに続いて仕事をし始めた。休憩終わりみたいな感じ。お客さんが来たなら働かなきゃお金も貰えない。その後は没頭していた。お客さんの波が途絶えなかったってのもあって。それは俺に悩む時間を与えないってくらい。俺にはそれがすごく嬉しかった。変なことを考えないで済むから。それから時間になるまで仕事をし、花屋からの今日の分の給料を貰った。それをカバンの中に入れて次の仕事に向かった。
次は配達員の仕事っと…
配達名は『なんでも屋』という。なんの捻りもない名前だけど、すごくわかりやすい。だから、そこに来る依頼物を運ぶなんでも屋ってことらしい。
それなら『運び屋』でも良いのでは?っと質問したけど、それはそれで他のとこで名前を使ってるから自分達は使えないって仕事場の先輩が言ってたなぁ
作業着に着替えてバックはロッカーの中に。ちゃんと鍵をかけて胸ポケットの中にしまう。ここのロッカーはスペアキーとかないから1つでも消えたら大問題。前に先輩が外のどこかに落としたとかで大変な目に遭ってたのを俺は見てた。
あれにはなりたくないって思ったっけ…。今は上の空になってる場合じゃねぇから気を引き締めねぇとな
その決意を胸に作業場に向かう。全員ではないが何人か揃ってた。少し待ってると上官が来た。
「よし、集まったな。今日の配達場所はこれに記されてる。この順番に行くように。少しでも回り道しよう等と考えるなよ?それですぐに終わっても意味がないからな。バイトの奴は先輩の背中を見て学ぶ、誇りある仕事をするように」
『はい!』
「よし、では始め!」
その号令で俺達は一斉に動く。いつもの演説が終わると黙々とやりだす。テキパキと、休む暇がないくらいに。そして速やかに配達しに行く。自転車使うやつもいればバイクに乗ったり、走ってく奴もいる。俺は自転車で向かう。みんなそれぞれのやり方で配達をする。
俺は走りたくないから自転車で行くんだけどね?バイクの免許とか持ってないからなんだよね〜。バイトは許されたけど、バイク免許は禁止されてるんだよね…。入る前だったら仕方ないらしいけど、入った後は卒業するまで禁止になってるから。もししたら、生徒会に没収されちゃうんだよな〜。それが嫌だ…
自転車こいで3件回った後、見たことある苗字がでた『詰蛇様』と書かれている。郵便系の配達だった。
マジかよ…w
しかも重たい。何が入ってるのか調べたい所だが、企業秘密なので煩悩は捨てる。自転車に運んでまたこいで向かう。仕事場からそんなに離れてないので楽といえば楽。俺の家もその隣だからそんなに時間はかからない。自転車だと10分もかからずに着く。
ほい、着いた!まずは…
『ピンポーン』というインターホンが鳴る。するとスピーカーから聞きなれた声が聞こえた。
『はい』
「お届けものでーす」
『あ、わかった』
俺だとわかった瞬間声の色を変えた。そんなに俺は嫌なのかと思うほどあっさりな声。
いつもの事だからきにしないけど…
ガチャと音と共に照が出てきた。ハンコを持って。それから受け取る前にハンコを押して重たい荷物を渡す。
「ありがと、蜜。おかげで助かった」
「重いから気をつけろよ?」
「そんな弱くねぇから大丈夫だっての」
「ならいいけどな。んじゃあハンコ貰ったしそろそろ行くな?またな、照」
「おう!またな」
1つの配達が終わると仕事場に戻る。面倒な作業だけど、それが方針。回り道をしないために改善したのがこれらしい。
これもこれで面倒なだけだけどな…
これも前に誰かがそれをやって時間をロスしちゃったとかでこの結論に至ったらしい。面倒だからってそういうのは良くない。
まあ、みんなこのやり方を面倒だって思ってんだけど。んなこと本人には言えないわけで…、俺も思ってても言えないから黙ってるんだけど…
今回の配達は6件だけだった。だからすぐに終わってしまった。バイトはその日の給料が貰える。日によって件数は違う。多い時は10件以上、少ない時は今日みたいな日や5件以下。まだあった方だったかも。
けど、終わるとその日のバイトが終了するんだよね…。もう少しやりたくても許されないらしいから、仕方いっちゃあ仕方ない…
そしてそのままここから出ようとしたらバックを忘れてたので取りに向かうと中から声が聞こえた。
『ーーアイツ、ウザイよな?』
『なー?いい子ぶってさ、何がいいんだかね?』
『そうそう。俺達が何したってんだ』
何の話してんだ?
『しかもさ?アイツってここに来る前まで掛け持ちバイトしてるらしいぜ?』
あ、俺か
4.5人ほど中で話してる。俺の悪口を言ってるってことはこの前の話かもしれない。たまたまサボってるところを見つけて上官に言ったらこっぴどく怒られてた。それが根に持ってるから今みたいなことを言ってる。というか小物感しか感じない。
『うわ、マジかよwwうけるーww』
『それって貧乏だからってこと?』
まあ、それはそうだな
『親からのお小遣い貰えてないってことだろ?』
ーーっ。チクッ。
これ、耐えれるかな?
『俺の家なんてちゃんと小遣い貰えるってのにww』
『むしろ哀れだよなー?』
『いやいや、同情しても嬉しくないってwww』
はははは、あー、超笑えない
『ホント、親の助けも親からの小遣いも親からの応援もないって救いようのない奴ーー』
バンッ!!とドアを開ける。その音は外まで鳴り響くような音。それにビクッと震えた小物共。俺はわざと大きな声で人に聞こえるように独り言を話す。
「あーれー?先輩達じゃないですかー?こんな所で何してんですぅ?ここでまーたサボってるんですかぁ?人の悪口ばっかり言っててー、足と手が仕事しないんじゃあまーた上官に怒られますよー?俺は今終わった所だったんですけどー、忘れ物したんで来たら俺の悪口言ってるじゃないですかぁ?仕事終わったんですかぁ?あ、いや、仕事終わってるからここに居るんですよねぇ?先輩達はバイトである俺よりも先に終わらせてぇ、ここで話してたんですよねぇ?いやー、さすが先輩達!!とーーってもカッコイイですねぇ?」
ゆっくり話しながら先輩達の前まで歩いた。先輩達は本人に聞かれたと思って逃げようとしてる。しかしそれを俺が遮るように近づくので動けず青ざめてる。ドタドタドタと音を立てて上官が来た。
「何事だ!!お前達、そこで何してる!!」
「あ、上官殿!俺は今しがた配達終え給料を貰い帰ろうと来た時、忘れ物をしたので取りにここへ来たらここにいる先輩達が俺のロッカーの前で話してたんです。でも先輩達は俺よりも先に終えたからここにいると言ってまして、俺はロッカーにあるものを取りたいのに取らせてもらえなかったんです…」
「ちょっ、違っ…!?」
「貴様ら!!」
俺は本音と間違いを混合してこうなったわけを話すと間違いだと知ってる先輩達が訂正をしようとした瞬間、上官の怒鳴り声に先輩達はビクゥッと震えた。
「貴様ら、俺に連絡はしたか?終わった連絡をだ。確かにこのバイトの奴は来た。給料も払った。が、お前らからの報告は受けていない。本当に終わったのか?ここのやり方に従えないのであれば他所に行け。弁解も何も無い。貴様らとっととその制服を脱いで出ていけ。2度めはないと言ったはずだ。さっさと去れ」
「ま、待ってくださ」
「言い訳するな!!事実を無にするくらいならやるな!!だからもう弁解の余地なしだ。もう終わりでいい、さっさと帰れ。それからお前らはもうここに来なくていい」
「えっ、それは…まさか…」
「クビだ」
お疲れ様でした☆
そして俺達を置いて上官は去っていた。俺はさらに追い打ちをかけるように先輩達に言う。
「それで?まだ俺に何か不満でもありますか?俺は真面目に仕事をしてる身ですが、先輩達はただここで喋って定時の時間まで喋ることしか出来ない脳なら、やめた方がいいと思いますよ?」
『「…………………」』
「あ、それから俺に仕返ししようなんて考えないでくださいね?もし考えていたのなら……」
俺は1人の先輩を壁ドンする。勢いよくやるので先輩は腰を抜かしてペタンと座り俺は重低音ボイスで先輩の耳元に囁く。
「その時は覚悟してて下さい。病院送りにするのも簡単ですので。あ、それを世間に公開しても俺を信頼してる人は山ほどいます。その人達に勝てるなら、ですが。それに先輩達の携帯はこちらにありますから」
「……へっ?」
壁ドンしてない方の手を開くと先輩達の携帯が出てきた。さすがに4.5人分の携帯を持つのは辛いがまあ念の為、ちょこまかと動いて携帯を取り録音とかされないようにしていた。
用意周到ってこういう時に使うんじゃない?……あれ、違った?ww
「か、返しっ」
「返す?じゃあまずは謝ってくださいよ?俺に。悪口は世間様には汚点ですよ?先輩達は世間様のさらし首になるですよ?ここを辞めた時、友達に会ってそんな理由で辞めたなんて言ったらどうなるか、わからないわけないですよね?」
「……っ…」
「そういうことですよ。お分かりになりました?俺はこれでも優しく言ってます。今はまだ誰も来ないと思うので、土下座して謝ってください。そしたらこの携帯返しますよ」
そして俺は離れ先輩達が土下座するまで待つ。そうしないと携帯を返せないから。先輩達は渋々といった感じで土下座をして謝った。小さい声で。
「え?聞こえません」
「も、申し訳……ありません……」
「はい?何ですか?」
「っ!……申し訳ありません……!」
「もう少し大きな声で言ってください?」
『「申し訳ありませんでした!」』
クスッと俺は笑いそれから先輩達の頭を優しく撫でそして。
「よくできました」
と言った。先輩達からしたら屈辱感しかないかもしれない。でも、こういうのは自分に返ってくることも覚えてもらわないとこの先生きていけないから俺は悪くない。それから俺は胸ポケットから鍵を取ってカバンを取り出し、その中に給料袋を入れてしまう。それから机の上に携帯を置いて先輩達に言う。
「それではお疲れ様でした。先輩達。携帯はここに置いておきますので勝手に持ってって良いですよ。では、これで」
ちゃんとお辞儀をしてロッカールームを出た。残された先輩達はすぐに携帯を取って俺が出た5分後には外に出てすぐに携帯を開いた。すると先輩達の携帯から一通のメールがあった。同時に開ける。するとこんなことが書いてあった。
『お前らの後ろにはいつも死神がいる。気をつけて』
それだけの文。でも先輩達にとってはそれが効果抜群できっと呪われたんだと思いそこで1時間立ち尽くしたという。そんなメールもそんなことも俺はした覚えはないので、その後先輩達がどうなったかなんて知らない。