※この作品はR-18です。

獣帝都学園   作:HAL

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俺の平和な萌えライフはいつもココにある…?

 

 

あれから目が覚めて周りを見るともう夕方だった。丸一日寝ていたことになる。寮に向かってたと思ったらここに居るってことは、誰かがここに運んだことになる。けど、心当たりがありすぎて誰だかわからないのが現状で寝起きすぎて頭が働かないのも事実。半目で周りを見渡すと誰かが読書をしていた。白衣を着てるから保健室の先生のようだ。

 

初めて見る人だ…。多分初対面じゃね…?しかも初場面じゃね…?やったね、保健医先生…!さて、どんな性格の持ち主かな〜……

 

元気はなくとも思考は普通に正常運転してる辺り、俺も回復してるってことなんだと分かる。しかし体中が痛くて頭もあんまり動けないので、ゆっくり首を動かす。するとその動きに気づいた保健医先生が真顔で対応してきた。愛想笑いひとつ無い顔で。

 

「起きたか」

 

あ、これは新しい性格の保健医だ…。どの小説にもいない保健医かもしれん…。新鮮だなぁ…

 

頭は正常に稼働してるのに口は動かない。まだ寝ぼけてるのかもしれない。

 

「そろそろ離してもらえないか?」

 

……ん?離す?何を?

 

俺は少しずつ意識が戻ってきた。そして俺の手に違和感を覚える何かを掴んでいた。目で追ってみると保健医の白衣を掴んでいた。多分無意識だろう。

 

「寝言で…………、いや、なんでもない」

 

………?止められると気になるんだけど…

 

爆睡してたし夢も見てない。それでも寝言を言う時があるのはごく稀だ。けど、俺は1回もない。うなされることは1回だけあるけど。

 

「……っ、本当に頼むから離してくれないか…?」

 

なんだか、顔が赤い…?

 

堅物な人か黙々とした人かなと思ったけど、どうやら違うらしい。もう少し握ってみる。俺の頭が完全なる正常の稼働をするまで。

 

「…っ…くっ…、トイレに行かせてくれ…。漏れる…」

 

あ、トイレか…。それは大変だ…

 

とか思ってても完全に覚醒してるわけじゃないので掴んだ手を離すのは遅い。

 

「…っ、はっ…、お願、い…だから……っ、行かせ、てくれ…っ……」

 

ピーーーーーーーッ!!!

 

完全なる稼働は今覚醒した。俺はガバッと起き上がり、保健医はビクッと震える。下半身をモジモジさせながら顔を真っ赤にしてる。俺は掴んでた所を直ぐに離し、そして。

 

「保健医先生!!本当にごめん!!トイレGO!!」

 

言葉の選び方が今回は正常だった。いつもならお花畑のようなことを言ってるのに。そして保健医はその言葉が早いかいなや、忍者のようにシュッと消えて、ほんの少し経つとまた元の位置にシュッと帰ってきた。

 

忍者かな?この速さ…

 

ボーッと保健医を眺めていると俺の視線に気づいたのか、俺の頭を掴んでまた枕にダイブさせられた。そして俺の耳元で囁いた。俺にしか聞こえない小さい声で。言葉は少し弱々しい。言葉遣いは強そうなのに。

 

「さっきのは秘密にしてくれ…。不本意とはいえ、ああいうのを生徒に晒しただけでも恥ずかしいのに…。頼む、さっきのことは……」

 

あぁ、この人も猫先生と同じ何かに怯えてる。それが何なのかはわからないけど、それでもこの先生の背後がそうさせてるのかもしれない

 

俺は弱々しく話す保健医の言葉に俺は了承した。するとホッとした顔でまたいつもの顔に戻る。俺はつかさず話した。

 

「秘密にする代わりに名前を教えて欲しいです、先生。そしたらあんたが楽になるまで秘密にしてやる。どうしますん?」

 

俺の条件じみた提案に秘密にしてくれるならという副音声が聞こえるようなそんな顔をして保健医も了承した。そして、息を整えてキリッとした顔で言う。

 

「俺は松野空(マツノ ソラ)。唯一の人間先生だ。生まれ変わりじゃない。俺の主は保健医だが、体育教師もしてる。理事長に気に入られてここに配属された。元は体育教師一筋だったんだが、保健医もするように言われたんだ。獣の相談役になってやってとな。だが、獣と言っても生まれ変わりってだけで普通の人間にしか見えない。何が違うのかいまいちわかってなかったが、最近少しわかるようになった…。まあ、お前が気にすることは無い。ちゃんと切り抜け解決した。心配いらない…」

 

本当に心配いらないならそういうことは言わないんだよ?空先生

 

息を整えてから話は終わった。笑って誤魔化してる。俺はそんな空先生を優しく抱きしめる。空先生はビクッと震えてぽかんとした顔で俺を横目で見てる。少し怯えてる節もあるけど。

 

「心配いらないよ。そんな顔しなくても俺は口外しないから。何かあったのかは聞かない。先生が苦しむなら、俺は何も知らない。何も聞いてない。名前だけ聞いた。それでいいね?空先生」

 

「…………あぁ…、ありがとう…」

 

またホッとしていた。多分本当の意味でホッとしたのかもしれない。今までは弱味としかならないことを誰かに晒してしまい今に至るのかもしれない。

 

まあ、推測だし合ってるかわからないけど。俺のセンサーがそう囁いてるから十中八九間違いはないっしょ。このパターンだと猫先生と理由は違うかもだけど、似てるしね

 

「そうだ!先生」

 

「……?」

 

「俺の相談を聞いてくださいよ!毎日はさすがに難しけど、相談乗って欲しい時ここに来るんで!いいすか?」

 

「……お、俺はいいが…。勉学は?」

 

「し、してますよ!まあ、そっちの相談も時々するかもだけど…!相談役にもなってって言われてるんでしょ?じゃあ俺の相談だって受けるべきでしょ!?」

 

「ご、強引だな…。まぁ、俺に断る義理はないしな。良いだろう、聞いてやる」

 

「やったー!」

 

素直に喜ぶ俺。呆れた感じで笑う空先生。そこに動物の猫が窓から来た。

 

「あ、猫だ!可愛い!」

 

「あぁ、これは兄弟の友達なんだ」

 

「えっ、先生?兄弟いるんですか?」

 

「あぁ、そいつは保健医代理だ。俺が体育教師の時、そいつが保健医として勤務してる。それも理事長のご意向なんだが、名前はーー」

 

「勝手に名前を出そうとしないでくれる?」

 

振り返るとボサボサ頭のメガネをした人が立っていた。白衣を着てるあたり話は間違っていないようだ。気だるげな声で入ってきた。そして少し不機嫌そうだ。俺は何もしてないのに。

 

「おっ!噂をすれば、松野先生!」

 

「何その噂。まさかクソ兄さんが流してるんじゃないよね?」

 

「そ、そんなわけないだろ!?か、顔が近いぞ!?」

 

あ、そのままの体制を維持してて下さい。カメラでカシャカシャするの必死で抑えてるんですから!目の中のシャッターで写真を収めてるんですから!

 

「なんだか目の前の生徒に変な目で見られてる気がするから、この辺にしておくよ」

 

あ、勘づかれた…

 

「紹介しておく、こいつはーー」

 

「だから。勝手に名前を明かそうとするのやめてくれる?俺には俺のペースがあるんだから」

 

「なら、自分で紹介してくれ」

 

「強引だな、いつも…」

 

ため息を吐きながらこっちを向く。とても嫌そうな顔。こんな顔で紹介ってなんか嫌だけど気にしない。

 

「僕は松野春(マツノ ハジメ)。春と書いて『ハジメ』って読むの。結構当て字な気がするけどね。あ、雰囲気からして春に見えないのは知ってる。でも、結構気に入ってるから突っ込まないでね。それと、そこのクソ兄さんこと、松野空先生とは兄弟で僕は弟。でも、人間じゃない。僕は拾われた身だから」

 

人間じゃない?ってことは……

 

「僕の生まれ変わりは『猫又』。つまり妖怪だよ。でも人間に虐められたり追い出されたりとかして孤独だったんだけど、この人間の人に助けられて今に至る感じ。だから、名前も嫌いだったけど好きになれた。この人のおかげでね。だから変に思わないでね」

 

あ、なるほど。つまりあの視線は『警戒』。まあ、動物と違って妖怪は愛されにくい種族だからかな。それだからそういうのを愛してくれる人に出会えたからってことなのか…

 

「今だけ先生を外すが、春はな?そういうことがあったから人間嫌いでもあるんだ。たとえ動物の生まれ変わりでもな。だから警戒心がとても強い。それに比べて俺は鈍感すぎて逆に怒られるばかりだ…」

 

「それはあんたの注意不足でしょ?この前だって…」

 

「春!」

 

「あっ……。ごめん…」

 

「いいよ。気にするな」

 

ふーん、訳あり兄弟か。それも少し萌えるかもね♪

 

「それじゃあ今度は生徒の俺の紹介でもする?」

 

「そうだな!頼む」

「僕はどっちでもいいよ。ココア入れてくる」

 

春先生が少し離脱。とは言ってもそんな離れた場所じゃないので、俺の声は聞こえるだろう。俺はそのままの状態で話す。

 

「俺は腐獅蜜。獅子の生まれ変わり、百獣の王の血である先代の血も受け継いでる。だから警戒されても仕方ないかもねwそれに先代の血も受け継いでるってことはいろんな力も受け継いでるからある意味人生の勝ち組って感じだね!でも、そんな奴でも勝ち組とは思えない顔もするんだけどさ。最近の悩みは、平和を望むことっていけないことなのかねって。まあ、俺の頭の中はいつも平和なんだけどさ?俺の目から見える周りの人に平和とか訪れないかなって。俺は愛されてるように見えて本当は愛されてない。そういう意味ではあんた達と同じかもな♪あ、でもちゃんと友達はいるぜ?幼馴染みの奴が2人!そいつらは俺の事をいつも心配してくれる!すごく良い奴でさ!そいつらの前だけは俺の心はいつも平和なんだ!信頼してる!あんたら兄弟みたいにさ!だから、そういう奴らも丸ごと幸せを望むのはいけないことなのかなってね…」

 

色々ありすぎて言葉にしなくてもいい事まで言葉にしてしまった。これでは自己紹介じゃない。なんだか重たい雰囲気。俺はニコッと笑って仕切り直す。

 

「おっと、ごめんよ!雰囲気が重くなっちゃったね!まあ、そんな訳でよろしく!春先生、空先生♪」

 

「………………」

 

「………………」

 

同じ反応。同じこと思ってる顔だ。こいつも色々大変なんだなって顔。同情のような顔。そんなのはもう慣れてる。空先生が話しかけようとした瞬間。

 

『ガラガラ!!』

 

とてつもなく大きな音で扉が開いた。そこにいたのは見知った顔だった。

 

『蜜!』

 

レオと照だ。俺の幼馴染みで俺のことをいつも考えてくれる。優しいとは言えないけどお人好しではある2人。俺の大好きな奴らの1人。

 

「お前、朝から居ないから心配したぞ!?何かあったのか!?」

 

「お前がここにいるって猫澤先生から聞いた。お前が保健室に行くことはまずないからな。また何かやらかしたのか?」

 

ほら、こんな風に言ってくれる。俺は今だけ愛されてる。とても嬉しい。嬉しいはずなのに変なことを考える。こいつらがどんな関係であろうと俺みたいなことにはなって欲しくない。ずっと幸せでいて欲しい。なんて、柄にもないことを考えてしまう。

 

そんな顔は出てないつもりだけど…

 

俺はいつものようにニコニコした顔で2人に答える。

 

「大丈夫だって!心配しすぎwまあ、ちょっと色々あったけど、お前らが気にすることはなかったからww」

 

「本当か!?」

 

「お前はいつも何かに我慢することがあるからな。その大丈夫は当てにならねぇぞ?」

 

「本当に!今回は大丈夫だって、マジで!お前ら本当に俺の事好きだよな♪」

 

「はぁ!?んなわけねぇし!!」

 

「……心配して損した」

 

「へへ♪けど、そんな風に怒ってくれる奴らもお前らくらいだよ。まあ、俺は顔広いからもしかしたら心配してくれる奴はもっと居るかもだけどなww」

 

「……ったく、食えない奴だな」

 

「まったくだ!」

 

一通り話し終えた2人は兄弟先生達に気づいた。今まで空気で居てくれていたみたいだ。本当に悪いことをした気がする。

 

「ご、ごめん…。空先生、春先生…」

 

「仲良しはいいことだ!気にするな!」

 

「うん。僕も猫と戯れてたし」

 

「うぅ…」

 

気にしなくていいって言われるとちょっと気にする。変な所で気にするのは俺の悪い所だ。やっと2人を認識したレオと照は慌てて頭を下げた。2人のことも許してくれた。そして改めて4人共自己紹介した。

 

「俺は詰蛇照です。蜜とは同じクラスで幼馴染みです。蛇の生まれ変わりです」

 

「俺は鬼樣レオ。照と同じく蜜とは同じクラスで幼馴染みです。鬼の生まれ変わりです」

 

「俺は松野空。保健医をしてる。たまに体育教師をしてる。まあ、1年生の担当だからその時会うと思う。その時はよろしくな!それと、俺は唯一この学園で人間教師だ。獣の匂い一切感じなんだろ?だから食われやすいんだが…。まあ、そこは良いとして。次は春先生だぞ」

 

「はぁ…。僕は松野春。空先生とは兄弟だよ。でも、僕が人間かと言われると違う。僕は猫又。生まれ変わりとかじゃないよ。現在進行形でね。だから猫が寄ってくる。猫又の元は猫だからね。あとは、空先生が体育教師をしてる間は僕が保健医になってる。鈍感でバカでどうしようもなく油断しすぎのクソ兄さんのお守りもしてるよ。よろしく」

 

改めての自己紹介を見守る俺はなんだか、親兄弟の挨拶回りを見てる気分になった。そんなアレではないことぐらいはわかってるけど、こうして見てるとそう思いたくなる。なんて言ったら照とかレオが睨みそうなのでそういうことは言わない。

 

目に見えてる結果を言ったらそれこそ憐れむような目で見られかねないし…

 

ため息を吐かれても困るので俺は何食わぬ顔で見守ることにした。お互いのことを言い終えた4人は一斉に俺を見た。俺は首を傾げて4人を見る。終わったことを告げるように見てる。俺はニコッと笑って話す。

 

「まあ、そういう訳だから。俺は一日ここで寝てて看病してくれたのが空先生。後から来たのが春先生って感じだよ。バイトが終わった後はどうやって帰ったか覚えてないからなんとも言えな」

 

「覚えてない?」

 

「記憶がない?」

 

あ、ヤベ…。地雷踏んだ。つか、いつもながら踏み抜いてる気がするな…俺

 

2人はその単語を聞くだけで俺がどうしてここに居るのか、そして経緯もそれだけ聞けばすぐに分かる。2人が俺の肩を掴み、またベッドに連れていかれそしてベッドにダイブ。そして押し倒され組み敷かれる。動けないようにネクタイで両手首を縛り足もそんな感じで縛る。本当の意味で動けなくされた。

 

「ま、待って待って!?2人とも落ち着いて!?ちょっ、痛いって!!レオ、照!?なぁ、おいっ!?」

 

『黙れ』

 

「ヒッ……!?」

 

完全にスイッチが入った2人は俺でも手が負えない。しかもそうなる時はだいたい俺が何かしでかしたか、俺を傷つけるヤツらの時だ。どっちかだったらどっちかを宥めればいい。で、今だと前者だ。

 

あ、これ……死んだかも……(´°ω°)チーン

 

そんな風に思っていると突然また来客が来た。俺にとっては救世主なんだけど、また顔の濃い人が現る。

 

「腐獅!」

 

『『蜜さーん!』』

 

狼族のみんなだった。俺の状況を見て5人は殺気立つ。空先生も春先生も何もしないが心配そうに見てる。というかむしろ助けて欲しいと俺は思う。緊迫感ある状況で俺はやっぱり空先生に助けを求める。すると空先生は俺の目線を察知して入ろうとすると春先生が止める。そして春先生が俺を見てニヤリと笑う。

 

あっ!コノヤロウ!助けて欲しいのにっ!!

 

しかし、ここは保健室。それでも振り切って空先生は7人の頭をガツンとゲンコツ食らわした。その勢いで5人は倒れ1人は頭を抱えてしゃがむ。そして空先生の一言。

 

「ここは保健室だ。喧嘩する所じゃない。するなら保健室の外でやれ。迷惑だ」

 

今にも人を殺しそうな顔でっていうか真顔なのに怖いんだけど…?

 

春先生はため息を吐きながら今度は空先生の頭を殴った。正気に戻った空先生はすぐにみんなに謝る。みんなも我に返りそして空先生は怒らせちゃダメだと肝に銘じた。俺もその一人。それから俺の手首と足首のネクタイを外してもらい5人にも訳を話した。

 

全部とまではいかないけど、昨日から寮に住むようになったことと、バイトの帰りはどう帰ったか覚えてないってことを話した。そして運ばれたのが保健室だったという、今に至るまでの話を7人にした。途中、レオと照がまた俺に飛びかかろうした所を吉っちゃんと勝っちゃんが止めてくれたけど、あの2人も理由無しで俺を襲うようなことはしない。その話も5人にした。理由がわかったらもう何もしなくなった。一応、一件落着…(o´Д`)=з

 

「昨日から寮にって、なんで教えてくれなかったんだ?」

 

「俺達はお前の幼馴染みだぞ?」

 

そう言われたので俺も言い返した。

 

「もちろん、寮に住むことにしたのは急だったし伝え損ねることだってあるけど、お前らだって隠してることあるだろ?『幼馴染み』なのにさ?」

 

『…あ……』

 

言い返せない正論を言われて言葉をにごらせる。言い返せない悔しさよりも俺のことが分かるより自分達も隠してることを言われて、言葉が詰まる。

 

「まあ?俺は根掘り葉掘り聞かねぇよ?お前らが秘密にしたいって思ってんならそれでいいと思う。けどな?お前らが俺に隠し事するなら俺だって隠し事の一つや二つ、幼馴染みとか関係なく言わねぇよ。それに隠し事を始めたのはお前らが先だからな。それに関してはお前らだって何も言えねぇぞ?」

 

ド正論を言われて言葉にできない2人。怒ってるわけじゃないけど、俺にだって隠し事をしたくなる時はある。誰だって踏み入れて欲しくないことくらいはあるはずだから。それが今回とかってだけ。5人は何も言わずにただ聞いてるだけだった。自分達が入る隙なんてないと分かっているからだった。空先生も春先生も何も言わないし何もしない。見守るだけだった。

 

「ご、ごめん…蜜」

 

「わ、悪かった…蜜」

 

「別に謝って欲しいわけじゃねぇよ。今回のことでお前らが俺の事を心配してきてくれたから嬉しかったよ。記憶がないのを察したのも、まぁお前らくらいだろうさ。俺の事を一番近くで見てた奴だとさ?すごく嬉しかった、それに関しては嘘偽りなくな?けど、だからといって『秘密』に関してはお互い平等に、な?レオ、照(^∀^)」

 

「お、おぅ…」

 

「わ、わかった…」

 

ふぅっと息を吐いてレオと照の頭を撫でる。それから2人を抱き締める。

 

「心配してくれてありがとう。やっぱりお前らは俺の最高のお気に入りだ!昔から思ってたし今更かもだけど、それでも本当に嬉しかった。ありがとう2人とも…」

 

俺は少し震えていた。色んなことがあったせいもあって、まだ全部を2人に話してるわけじゃなくても2人なら察してくれるから。だから2人も俺を抱きしめて背中をポンポンしてくれた。俺達もだよと伝えるように撫でてくれた。熱い友情と絆がまたここで深まった。俺が2人から離れると5人が羨ましそうに見てる。自分達にもして欲しそうだった。

 

多分、この2人とは違って昨日からの付き合いだからその深さも浅いかもだけど、自分達だって俺のことを心配して来たんだぞって感じのオーラか何かを出してんだろうな…。まあ、でも来てくれたんだし撫でるか

 

俺はトシさんから左へと順番に頭をなでる。それに対して嬉しそうにする5人。何故かその隣に空先生がいて、俺が頭を傾げると便乗で俺にもって感じで言われた。俺はクスッと笑ってよしよしと頭を撫でる。それを見ていた春先生は舌打ちをしながらココアを飲む。

 

ん?嫉妬かな?w

 

そう見てるとキッと睨まれた。ニコッと笑うとまた舌打ちして顔を逸らした。俺の思ってる気持ちが伝わったのかもしれない。それからお開きとなった。もう放課後というよに夜だ。もう帰らないといけない。空先生と春先生にお礼を言ってみんなで学校を出た。途中で猫先生に怒られたけど、夜も遅いからとレオと照を送り届けてくれた。それから5人と一緒に寮へ帰る。3階の奥の部屋、4人はそれぞれの部屋に向かいトシさんと部屋に帰る。

 

あ、ちゃんと後で寮長である内兎のとこに行って鍵もらってきたからね?安心してね♪

 

鍵を開けて中に入ると机の上に首輪が置いてあった。俺の首輪(腕輪)にも似ていたが色が違う。横にいるトシさんを見る。すると顔を赤くして机の横に正座で座った。そして俺に何かして欲しそうな目で見てくる。俺が首を傾げるとまた恥ずかしそうにトシさんは言った。体が少し震えていたのは緊張からだった。

 

「……み、蜜…様…。この部屋にいる時だけは貴方のペットです…。何でも言う事聞きますから、どうか所有物としてこれを……」

 

なるほどという感じで首輪を掴みトシさんの首につけた。リードの付けれる式の首輪のようなので部屋に入り、店長に最初の時使って貰ったリードを持ってくる。犬にしては随分と短い。人間用なので短くてもいいという店長のお気に入りだった。

 

まさか、年上のしかも成人学生にこれを使う日が来るとはね…。店長のだったけど、もう俺のものでもあるし使っちゃいますかね♪

 

トシさんにリードを付けると、なんとも切られた鎖くらいの長さだった。よくある小説の話でも狼男(ハロウィンの仮想で出てくる奴)の首輪にも鎖のリードが付いていて、その鎖は誰かに切られたのか短くされてるアレみたいだった。革のリードだから他小説とは違うけど、それでも似てる。しかも、似合う。少し引っ張ってみる。するとビクッと肩が震えたトシさん。何されるのかと青ざめて、でも目を逸らさない。

 

引っ張っただけだけど初めだし、ちょっとやりすぎたかな?

 

「ごめんごめん。ちょっと遊んだだけだから何もしないよ。それよりお腹すいたし何か作ろう?」

 

「…あ、それなら俺が作ります。密様、何がいいですか?」

 

率先して立ち上がりエプロンを付けながら聞いてきた。今夜はトシさんの手料理。すぐに食べられるものがいいと思った俺は。

 

「んじゃあ昨日作ったオムライスかな。お腹すいてるから早く食べたいって気持ちがあるから。あ、味付けはおまかせね?俺別に食べれないものとかないからさ?トシさんオススメのオムライスでよろしく♪」

 

「はい!わかりました、密様」

 

テキパキと動くトシさん。手際がいいのは俺と同じくらいかもしれない。普段から料理とか作ってたのか聞いてみた。

 

「あ、作りますよ?アイツらの分も作って食べさせてましたし。なのでこんくらいなら普通にできますよ」

 

と答えた。なんでも作れそうだなって思った。

 

てか、その前にトシさんのキャラが崩壊してる気がするw今に始まったことじゃないけど、トシさん年上なのに俺のペットだって意識してから敬語になっちゃったw可愛いけど、あのままでもいいような…。まあ、お仕置きの時は敬語かもだけど、それ以外はボロが出ると困るだろうし普通の話し方をするように言うかな

 

トシさんのと俺のオムライスを作ってテーブルの上に置く。ケチャップで波線を描く感じで添えた。俺のも自分のもやってケチャップを置く。それからスプーンを二つ持ち俺の前に置く。それからトシさんも自分の前に置いてあるオムライスの後ろに座り、いただきますのポーズをする。俺も同じポーズをして。

 

『いただきます』

 

と、同時に食べる挨拶をした。そして一口目、食べた瞬間頬がとろけるんじゃないかと思うくらい美味しさが口の中いっぱいに広がる。

 

昨日も食べたけどこの美味しさ堪らん…!なんと言っても濃過ぎず薄過ぎずの絶妙なバランス!!しかも隠し味?なのかな?パイナップルが入ってる!これが多分濃くなく薄くなくのポイント?なのかもしれない!!昨日も食べたけど、今日のは昨日より美味しい!ああっ、また俺の語彙力が消えてくっ!(*ノωノ)キャー!!

 

噛み締めながらオムライスを食べる。トシさんは自分のだからと直ぐに完食し俺の食べる顔を見ていた。そんなことにも気づかずに俺は幸せいっぱいで最後まで食べた。超幸せムードの中視線を感じるので見たら俺の事を微笑ましい顔で見るトシさんと目が合う。

 

ん??今の今まで見られてた??俺すげー恥ずかしいとこ見られてた??うわ、なんかちょっと……いやかなり恥ずいんだけど……っ!?∑(//д//)

 

俺は恥ずかしいと思って立ち上がり食器を洗いにキッチンへ。トシさんはなんだか楽しげに自分の食器も持ってシンクの中へ。そして俺の肩を持って囁くように、でも敬語で話す。そこはブレないようだ。

 

「密様?顔が赤いですね?もしかして恥ずかしかったですか?密様でも可愛い時があるんですね?」

 

ニヤニヤしながら言うトシさん。俺は恥ずかしさが一周まわって冷静になりそしてカチッと切り替わる。それから無言で食器を洗いトシさんのも洗う。それから食器洗浄機の中に入れて乾かす。タオルで手を拭く。その動作をトシさんはハテナマークを頭に乗せながら、俺の雰囲気が変わったことに気づいてない。しかし、次の動作で気づいた頃には遅かった。俺はトシさんの短いリードを掴み普通に歩き出す。そしてそれはグイッと引っ張りトシさんと共にトシさんの部屋に向かう。トシさんは短いリードのせいでおぼつかない足取りで、焦っていた。それから部屋の中に入るとシーツが散乱していたのでそれを使って縛り上げ、余ったシーツの部分でベッドの柱に括りつけ最後にトシさんのネクタイでトシさんに目隠しをして完成。身動きひとつできずもがくのもできずなので、不安になるトシさん。しかも目隠しもしてるのでさらに不安になる。トシさんが震えた声で俺を呼ぶ。

 

「……み、みつ……さま……?」

 

しかし俺は答えない。無言で足音を立てドアを開けそして閉める。それから音を立てないようにしてそこに座る。まさに放置された状態。

 

「…み、つ……さま……??みつ…さま…っ!みつさまっ!密様っ!!」

 

部屋はシーンとしてる。実際俺は部屋から出てないが出ていると勘違いしてるトシさんはまたやってしまったと思いガタガタ震え出す。せっかく信頼を貰ったのにと怒らせてしまった。しかも何も答えなかったと思うとトシさんは泣き崩れた。でもいくら呼んでも音がない空間のまま。それでも呼び続けた。声が枯れるまで俺に許してもらいたい一心で。もう声が出ないってくらい叫んだせいで息ができていない。それどころか過呼吸気味になってる。涙も鼻水も出してはしたない顔になってても気にしない。

 

「……み、……ッハ……つ……ッン……さっ、…まぁ……ッハッハ…!」

 

名前しか言ってないのに疲れきっている。そんなに時間も経ってないが、それだけトシさんの中でパニックパラダイスだったのかもしれない。俺は音を立てずに立ち上がりドアを開けてまた閉めた。その音にビクッと肩を震わせ許して貰えると思ったトシさん。しかし俺の第一声は。

 

「あ、内兎?うん、俺だよ。そう。あのさ、この部屋やっぱり辞めるわ」

 

「っ!!!?」

 

「え?なんでって、そんなの決まってるだろ?嫌だから。…は?だから、嫌なの。理由?理由が欲しいの?……しょうがない、わかったよ」

 

「……………っ……」

 

俺は携帯を右で持ちそしてトシさんの耳元で囁く。

 

「飼い主である俺をおちょくって楽しんだから。それにそんなに楽しそうだっからもう俺は必要ないかなって。楽しかったんだよな?面白かったんだよな?俺が恥ずかしがってる姿見れたの。そうだよな?飼い主でもそういうの見ちゃうとしたくなるよな?自分の立場をわきまえろよ?俺に首輪を渡してきたならちゃんと考えろ。覚悟を持って俺に渡してきたならな?けど、ないってことはその程度か?早かったな?お疲れ様」

 

俺はトシさんから首輪を外した。それがわかったトシさんはできないのにもがいた。必死で。嫌だ、もう終わりになんて、いかないで、お願い、嫌わないでっ、お願い!どこにもいかないでっ!!密様っ!!という感じでもがく。ほぼ声にも出ていた。頭の中で思ってることが口に出ていた。まだ続く。

 

「(おちょくったつもりはありませんっ!!本当ですっ!!密様があまりにも美味しく食べてくれるから嬉しくてっ…、でもそんなつもりでしたわけじゃないんですっ…!!本当ですっ!!信じて下さいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!密様っ!!行かないでくださいっ!!お願いしますっ!!本当になんでもっ、なんでもしますっ!!なんでもしますからっ…、捨てないでくださいっ…!!嫌わないでくださいっ…!!…っ…お願いです……っ、密様……っ、ごめんなさい……っ、ごめんなさい……っ……!」

 

もう声が出ないのか最後の最後まで声を出して謝り続けるトシさん。俺はトシさんのネクタイを外した。ビクッと震え、取れた後俺を見るトシさん。目は充血していてずっと涙が止まらない。鼻水も止まらない。本当にぐちゃぐちゃの顔になっていた。

 

「………っ………ぁっ………ぅっ………っ……!」

 

外した後もずっと俺の目を見て名前を呼ぼうとしてる。しかし呼ぼうにももう声が枯れて出せず、荒い息で苦しそうにしている。俺はずっとそれを見下すような目でトシさんを見つめていた。俺はずっと沈黙をしていてトシさんには恐怖しか与えなかった。それから20分経過し、やっと俺はトシさんの頬を触った。ビクッと震えて目をつぶったトシさん。ハッと気づいて目を開け俺を見つめる。1分も経たない間にトシさんの誠意を感じた。俺はやっと声を出す。

 

「トシ」

 

「……っ、はっ……い……っ!」

 

トシさんの返事は返事とは呼べるほどのものではなかった。しかし、それでも声を出そうと必死にしがみつくように声を出して返事をした。これが今の声が出せる最大と言えるだろう。俺はあの儀式をした。その儀式というのは。

 

『チュッ』

 

「っ!?」

 

鼻にキスすること。『お前は俺のオモチャだ』という意味。『オモチャ』を他の言い方に置き換えると『愛玩』や『奴隷』や『下僕』というような、自分よりも地位や名誉等が下の者に付ける敬称だ。俺はあえて『オモチャ』にしている。

 

『愛玩』でもいいけど、それだと1人になっちゃうでしょ?多数ができた時にその敬称だと、ちょっと俺だと合わないし特別扱いしてるみたいで嫌なんだよね

 

「顔真っ赤だな?トシ」

 

「っ……って……!?」

 

『だって』と言おうとして上手く言えないでいるトシさん。

 

「これはちゃんとした儀式だ。鼻にキスをする意味はわかるか?トシ」

 

頭を横に振るトシさん。

 

「これはな、お前が本当の意味で俺のペットになった証だ。ただ首輪を渡しただけじゃ、奴隷や下僕とそう変わらない。俺は俺なりのやり方で決めてる。それが鼻にキスすることだ。鼻にキスをする意味は『お前は俺のオモチャだ』ってことだ。だが、その言い方は語弊がある。だから、俺は必ずなる奴らには説明してる。『オモチャはオモチャでも愛玩じゃない』とな」

 

「……???」

 

「つまり『特別扱い』はしないということだ。なった者には平等に接する。ただ違うのは俺からペットにキスした者しか『愛情』は渡さない。ということは、口だけで終わる契約はしないということだ。お前で例えるなら『首輪だけ渡されても俺からの愛情はない。愛情が欲しいと思ってもお前はそれまでの関係だ』ということになる」

 

「……!!」

 

今の説明でわかったような顔をしたトシさん。目を見開き俺の言葉を待つ。犬のようにキラキラした目で溜まってた涙を放出させて嬉しそうに笑う。

 

「このキスはお前を正式にペットだと認めたという事だ。おめでとう、トシ」

 

ニコッと笑って優しく頭を撫でるとまたさらにぐちゃぐちゃの顔で泣き始めた。俺はトシさんの鼻をティッシュでかませる。それから新しいティッシュで涙を拭く。拭いても拭いても出てくるのでおでこにキスするとビクッと震えて涙が止まる。

 

「おでこにキスしたのに涙止まるってどんだけだよw」

 

声がカスカスで思うように言えないトシさん。だけど、凄く嬉しそうに俺にすり寄ってくる。

 

「あ、そうだ。トシ」

 

「?」

 

「お前なんでも言うこと聞くんだよな?」

 

答えられない代わりに頭で答える。この場合は頷き、きょとん顔で見つめる。

 

「普段は敬語禁止。お仕置きの時は敬語になってもらうけどな?俺は普段敬語じゃないトシの方がいい。というかそっちの方がトシっぽいし、なにより俺とお前は歳が違う。だから、年上らしくしてくれ。わかったな?トシ」

 

頷くトシさん。それから拘束を解いてあげて自由にさせる。それから水を持ってきて飲ませる。生き返るように長めに飲んだトシさんは、やっと声が出せた。

 

「……っ、わかった。その代わり呼ぶ時は呼び捨てな?対等でありたいと思うならそうしろ。俺もそうす……いや、俺はどうなるんだ??2人っきりの時は様付けしないといけないだろ?その場合、対等もクソもなくねぇか?」

 

確かに当初、俺が言った言葉は『2人っきりの時は様付け』という契約を交わした。もちろんそれは正式なペットになる前だった。正式なペットになったからにはそれはやっぱり違う。

 

となると、これは改まった方がいいかもしれない。正式契約をしたわけだし、『対等ルール』は決めないといけない。そうするって決めたわけだしね

 

とりあえず『トシさん』が『トシ』となり、『敬語禁止』を作った。こっちの名前はどうするか、少し考えてから俺はトシに聞いた。

 

「トシはどうしたい?これからも様付けにするか、お仕置きタイム以外は様付けやめるか。この部屋にいる時で2人っきりの時は首輪をつけてたとしても、様付けはやめないか、どうする?」

 

自分じゃ決められないことをトシに丸投げした。それはトシも苦笑いして考えた。そして5分経って出した答えは。

 

「お仕置きタイム以外は様付けしないことにする。ただ飼い主とペット系の雰囲気の時は使う。首輪を付けてても蜜のペットであることは変わらねぇ。だから、その時以外はしない。それが俺の答えだ」

 

その真剣な目は狼の鋭い目と同じ目つきをしてる。これからそういう風にしていくことになった。そしてこの話はお開きとなった。しかし、俺は何故かトシの部屋から出られない。何故ならトシが俺の服を引っ張っているから。

 

「どうかしたか?」

 

「…………首輪、付けてくれねぇか?解雇みてぇな状態で終わらせられたから、その……、あの……」

 

顔を赤くするトシ。俺の真横には外した首輪があった。俺は思い出し、そして何かを思いついた。

 

「ん?首輪をつけたいのか?なら自分で付けろ。つけたいという気持ちがあるなら付けられるだろ?」

 

ほらよと手渡す。トシは意図がわかったのかまた顔を真っ赤にして、恐る恐る自分の首に首輪を付ける。とてもしどろもどろな感じでやる。動作が遅い。つけてる部分が見えないからってのもあって苦戦してる。しかも見られながらなので目も下に俯いちゃって俺を見ようとしない。俺はトシの顎をクイッと上げる。すると、顔真っ赤にしてたトシがさらに赤くしてあたふたし始める。付けたいのに付けれなくて涙が溢れる。

 

「どうした?恥ずかしくなる前に早く付けろよ」

 

「ご、ごめんなさ…」

 

「謝るんじゃなくて?」

 

「は、はい…!つ、付けます!」

 

さっきよりもおぼつかない動きで首輪を頑張ってつける。やっと付けれたがなんだか微妙な顔をしている。それでも俺はトシの頭を撫でる。

 

「よくできました。ちゃんとできたトシにご褒美だ。けど、やっぱりもっかい後で俺が付けるな?」

 

「は、はい…。お手数をお掛けします…」

 

ご褒美上げているのにシュンとするトシ。そして若干俯く。好意を無駄にした行為。こういう場合、普通は多分頭を掴んで怒り二度と褒美はやらないって言う所なんだろうと思う。しかし俺は、今度は優しく抱きしめた。トシはキョトンとした顔で目を見開く。

 

「何をそんなに不安になってる?それとも怒られると思ったか?」

 

ビクッと震える。図星のようだ。

 

「お前が今までの人生であんなに震えるのは何かあったからだと思ってる。それに褒美をあげてるにも関わらず、暗い顔する。それは過去の影響があったから。そうじゃなきゃ、普通喜ぶからな。褒められて嬉しくないと思うやつはいないよ。どんな奴でもな」

 

そう言うとトシは涙をポロポロと流しながら目を見開いている。背中をポンポンと撫でると本格的に泣き始めた。声は押し殺してるが、心から泣いてる。俺はその隙にトシの首輪を元の強さ、場所に直す。安定した首輪と感じてトシは頷く。ますます泣き始めてしまった。とりあえず顔を上げるように言った。言われた通りに上げるとまた鼻水が凄いことに。急いで鼻をかませる。チーんって。

 

チーンってww可愛いww

 

やっと落ち着いたトシは自分で涙を拭いそして話だす。何を思ったのかわからないけど過去の話だった。

 

「俺が今になる前までは普通のヤツらと同じく、褒められて嬉しがるガキだった。けど、ここまで曲がったのは俺がまだ小学校に上がる前。親が弟を産んだんだ。それは凄くめでたいし俺も喜んだ。けど、兄になって俺もそれなりに才能ってのはあった。努力して勝ち取ったもんだってあった。にも関わらず、親は俺じゃなく弟の功績に喜んだ。今までは俺にもあったソレは弟にしか与えなくなった。俺はなんで自分だけしてくれないのか疑問に思った。誰でもする『努力』は一日だって欠かさなかった。才能ってヤツをずっと伸ばしてきた。けどな、ある日俺は有りもしない嘘を押し付けられてからは、毎日のように罵倒され暴力を受け、挙句の果てに『お前はもうここの子じゃない』とか言われる始末。家を追い出された。それがまだ小学校上がる前だ。小学校の学費は全て弟に回された。俺には1円とない。当然俺は学校に行ける訳もなく路頭にさまよってた。補導もしばしばあった。小学生くらいのやつが夜中にウロウロはさすがに巡回中の警察だってビックリする。あの家に連れていかれた所で俺の全ては捨てられたと思うしな。写真もなにもかも。まあ、唯一肌身離さず持ってた1枚の写真だけは見つからずだったけどな。それも持ってたら捨てられるだろうよ。人生の汚点だなんだ言ってな…。なんとかここまで1人で、しかもこの歳まで生き延びたと思ってんよ。この歳になってから今は幸せだなって感じるようになった。まあ、未だに慣れないのは褒められること全部だ。それから直せないことは、事あるごとにネガティブになったりとか。つくずく変わらねぇ野郎だぜ、俺は……」

 

やっぱり、何かしらある奴らはみんな俺に寄ってくる。引き寄せての方が正しいかもしれないけど、それでもトシは今を幸せだと思えるのはそんな過去があったからだ。そうじゃなかったらこんな性格になってない気がする。俺の事情よりも重いと思うし

 

「だからと言ってこれが重いとか思ってねぇよ?世の中にゃあ、俺よりも重てぇ奴は山ほどいる。俺なんかと比べたら俺の方が屁でもねぇ。我慢できるほどだと思ってるしな」

 

違うよ、トシ。それは違う。トシのだって立派な、しかもちゃんと重たいよ。軽いとか重たいとかの括りをしちゃあいけないのはわかってるけど、みんな何かしらの理由がある。理由がなくてこんな事にはならない。だから、トシのその境遇だって我慢しなくていいんだ。我慢する必要なんてないんだ

 

「トシ」

 

「なんだ?」

 

「トシの境遇だって立派なもんだよ。それに対してずっと我慢してきたトシは偉いし凄いよ。俺なんて大した理由じゃない。在り来りな理由だ。みんな何かしらの理由がある。それは誇れるもんじゃねぇけど、それでもトシの頑張りは無駄じゃなかった。今が幸せだったらいいって考えも間違ってない。けどな?正さないといけないことは正さないといけない。話の流れ的に弟くんがトシに何らかの嘘をついて濡れ衣を着せた。トシはいいって思ってるかもだけど、それは人間として最低の行為だ。自分が悪いのに誰かのせいにするのは間違ってる」

 

「!!……いや、もう過ぎた話だしあっちだってもう忘れてる。それに掘り返した所でしてないって言い張るに決まってる。証拠だってない。証拠がないのにそんなこと出来るわけない。家に押しかけた所で追い返されるのがオチだ。警察とか呼ばれたらそれこそ迷惑になる…!」

 

俺は真剣な目でトシを見つめた。トシは真意はわかってもそれを追求するのはやめようと言う。俺はそれを見過ごすことは出来なかった。

 

またレオと照に怒られそうな案件だな…。けど、それでも俺は誰かの幸せを願わない訳にはいかない。これ以上、俺の関わる奴らが泣く所は見たくない。店長の時も配達とこの上司の時も…。そしてトシも。みんな俺の大切な奴らだ、悲しませていい理由にならない

 

俺はスマホのSNSグループのレオと照に連絡をし電話をかける。するとすぐに出てくれた。

 

『どうした?』

 

『何かあった?』

 

「お前らに1つ報告という名の告白をする」

 

『あ?』

 

『いきなりどうした?』

 

「これから今の幸せを望んで続けたい奴に、もっと上の幸せを与えるため、正しくないことを正しに行く。今日というわけじゃないけど、俺はまた無理をするよ。っていう報告」

 

2人は沈黙して聞いてくれた。終わってから同時にため息を吐かれた。後ろではトシがあたふたしていた。

 

『記憶喪失になる案件か?』

 

「いや、今回はそうならないと思ってる。同行者もいるからな」

 

『同行者って?』

 

「狼関俊之助だ」

 

『誰だ?』

 

「今日保健室で5人集団が来ただろ?その時にいた1人だよ。俺のルームメイト」

 

『なるほど…。その人、俺達の声聞こえてる?』

 

「おう!スピーカーにしてる」

 

『ならいいや。なぁ、そこにいんだろ?』

 

「な、なんだ…?」

 

『あんたコイツの暴走止めてくれるか?』

 

「暴走??」

 

『暴走ってのはコイツがキレた時のヤツだ。厄介なのはその後の記憶が無いこと。本人はケロッとしてるが、その被害は想像したくねぇ程だ。今回の保健室でも記憶喪失になってたって言ってたからな。絶対に何かしらしでかしての記憶喪失だ』

 

『そうじゃなかったら普通は覚えてる。そいつは『正義』とか言って、カッコよく決め込んでるけどその制裁は酷いってもんじゃない。まあ、詳しいこと聞きたかったら本人よりも猫澤先生に聞くのが一番早いかもな。猫澤先生とか見た経験があるから詳しいと思う。本人はなんも覚えてないけど』

 

「えへへ☆」

 

『照れるな。褒めてねぇ。とにかく、記憶喪失案件なら絶対に止めないといけない。その時そこに俺達は居ないから、あんたが対応しなきゃいけねぇ。その覚悟を持ってるかで、あんたが同行でいいか決める』

 

「ぐ、具体的にどうなるかぐらいは教えてくれ…。漠然としていてわからん…」

 

『口で説明するより早い方法は…レオ』

 

『あぁ、ちょうどいい情報がある。生徒会や風紀委員でも手のつけられない奴がいるんだ。1度は謹慎にしたり停学させたりしたんだが、止められないらしい。誰か頼めるやつはいないかと言われた。蜜、頼めるか?』

 

手につけられない生徒ってどんなやつかね…。まさか、3階の部屋の誰かかな?

 

「それは、お前らの言う記憶喪失案件に引っかかる系?」

 

『できれば穏便に済ませれたら済ませて欲しい。もし無理なら、その時は止む負えずということにしていい』

 

「病院送りは免れないよ?」

 

『それでも構わない。もう二度とそう出来ないほど与えるくらいなら許されるだろう。だが、社会的復帰はできる範疇にしろ。いいな?』

 

「わかったよー☆」

 

監視試験も兼ねてるとかレオも考えたなw

 

『あんたはその監視を頼む。そいつの強さをわかった方があんたも動きやすいだろうしな』

 

「わ、わかった…」

 

「今から行けばいいの?」

 

『あぁ、もう動いてる。いつもの場所にいると思う』

 

「いつもの場所って?」

 

『コンビニだ。場所はこれだ』

 

ピロリンと音を立てて写真が送られた。コンビニのだった。見たことあるコンビニだった。

 

「ん、わかった。じゃあ捕まえたら学校に連れて帰ればいいんだよね?」

 

『あぁ、出来たら俺に連絡しろ。頼んだ』

 

「りょーかい☆じゃあとりあえず切るねー」

 

『あぁ』

 

『おう』

 

プツンと切った。今の時刻は午後9時。まだ消灯時間には早い時間だ。言われた通りに準備して2人で部屋を出る。歩いてそう遠くない場所にあるコンビニ。よく毎回そこを使うなぁと感心してると、トシが話しかけてきた。

 

「こういうの良くするのか?」

 

「いんや?初めてよ?てか、そんな取り締まりがあったのも知らなかったくらいだ。まあ、あんたがちゃんと俺をとめれるかで決まるみたいだから気合い入れてな!」

 

「何か合図のようなものはないのか?」

 

「うーん、俺から言えるのは空気を考えろ。いつもの俺とその時の俺、あんたが何を感じたかはわからないけど、それでもこれは危険だ、止めさせなきゃって思ったら止めればいい。でも、多分わかるよ。空気で、いつ止めればいいかっていう見切りがね☆」

 

まだ疑う目をしてるトシ。そうしてる間にコンビニに着いた。そして少し待ってると、今日は見つかったのか定員さんが追いかけてる。俺はトシに定員さんにはコンビニで待つようにと言うように指示した。それから俺の所に来ればいいと言った。俺は逃げたそいつを追い、そして捕まえる。意外と足が早かった。

 

まあ、捕まえればこっちもんだよね☆

 

「こっの!離せっ!!」

 

「ご近所迷惑になっちゃうでしょ?とりあえず盗んだもんと一緒にコンビニに引き返そうね〜?」

 

と言ってホールドした状態でコンビニの所まで歩いて行く。その間もコイツはもがき続けていた。意外とタフだった。

 

力が強いの認めるけど解けなかったら意味ないよ☆

 

そしてそのまま振り解けないままコンビニへ戻りそしてコンビニの従業員しか入れない部屋に入った。トシにはドアの方に立ってもらい逃げられないようにした。

 

穏便に終わらせるために人の目のある所に来たんだ、ここで乱闘なんてアカンでしょ?w

 

そして尋問が始まる。

 

「さっ、盗んだものを出して?素直にならないとおじさんが怒るよー?」

 

「おじ…っ!?……ゴホン。盗んだものを出せ。この時間は君以外の客はあまり入ってこない。だから助けを呼ぶようなことも出来ない。さっ、出して?」

 

「はぁ!?んで、聞かねぇといけねぇんだよ!」

 

「そっかそっか。じゃあ俺がこうやってバンザーイさせるからその間に点検してもらおう!それじゃあ、イーヨイッショー♪」

 

本当に本人の両手をバンザイさせた。ビクッと肩を震わせる本人。その合図におじ……いや、お兄さんが本人のポケットやらなんやらに手を突っ込み漁る。その間くすぐったいのか笑いを堪える本人。

 

俺としてはまさぐるお兄さんと生意気ショタの絡みにしか見えないよ。なんと言ってもこの状態、俺が鉄製の枷(物モブ)として役割を果たしてるわけだけど、この状況的に色々妄想がはかどってしまう!(*´ω`*)

 

そして出てきたのはどうやって入れたのかわからない焼きそばパンと、これまたどこにしまう要素があるのかわからないところからUNONカードゲーム、それから冷たいであろうと思うペットボトルが1本出てきた。パンはもう売れ物に出来ないので貰えることになったが、お金はやっぱり出さないといけない。他は返品可能な状態だったので、パンの支払いのみとなった。本来ならお金をとるけど毎度毎度されてたのでもう面倒だと思って、それで許してくれた。しかし、本人は小銭は愚か財布も持たずに来たようだ。

 

常識知らずって奴だね?完全に盗む気満々だよね?

 

「はぁ、なら君をこのまま警察に連れていかなきゃいけない。君はもう高校生だね?高校生なら立派な犯罪だ。それは知ってるよね?」

 

「……っ…」

 

「このパンのお金さえあれば君を警察に通報なんてことはしないつもりでいたけど、ないならしょうがないよね?店長だったら迷わず警察に通報だったと思うよ?今日は俺だったから良いものを、次はないと思う。まあ、店長からは最近盗みを働かせてる子がいるかもしれないって聞いてたから見張ってたんだけどね?そしたら案の定だったから、びっくりしたよ」

 

お兄さんが携帯を取り出してピッピッと音を立てながら何かをしてる。もしかしたら脅すためにしてるのかもしれない。この人は本当にそんなつもりは無いんだと俺も思った。それは後ろにいるトシも思ったみたいだ。しかし、本人だけはなんとか逃げるための言い訳を言った。それは人間として最低の行為だった。

 

「お、俺は頼まれたんだ!!金がないことを知っててコンビニで遊べるもんと食い物取ってこいって!!だから、仕方なくしたんだ!!」

 

「取っていく方も悪いよ。どんなに理由であれ犯罪だ。ちなみにそれを言ったのは誰だい?」

 

「……っ、今目の前にいるコイツにだよ!!」

 

は?え?今来たばかりなのに?

 

「自作自演だよっ!!俺が連行されるようにすれば自分の知名度が上がる、そうすれば学校だってこいつの評価を上げるために」

 

「嘘は良くないよ?君」

 

「へ?……ひぐっ!!」

 

「!?」

 

俺は本人の両手に少し力を入れた。それだけでも痛そうだった。俺はする前にトシの顔を見た通じるかわからないけど、アイコンタクトを取った。

 

これが自分じゃなく俺や他の人でも、お前は許せるのか?自分なら良いとか思うか?俺はお前の話を聞いても俺は今の気持ちと同じだよ、許せない。お前はその弟くんのことを許すって思ってるみたいだけど、俺にはそんな風にはできない。だから、察してくれ

 

苦笑いで返すし戻そうとした時、一瞬見えたトシの顔は悲痛の顔をした。どんな意味があったかはわからないけど、伝わったってことがわかった。それから俺はお兄さんに向けて笑顔で。

 

「お兄さん」

 

「な、なんだい?」

 

「今からする行為は俺に頼んできた人から許可を貰ってるから、警察に通報するのはやめてね?あ、ちなみに俺も学生なんだけどピンチヒッターみたいなことしてるんだ。って今日言われたんだけどw」

 

「…………」

 

「だからね、ここであった事は誰にも口外しないでくれると嬉しいな?いいかな?」

 

「わ、わかった」

 

「じゃあ、見届け人と証人がいるということで始めよう」

 

それだけでも雰囲気が変わる。さっきまでなんの雰囲気もなかった空間に冷たく凍ったようなそんな空気が漂う。笑顔なのに笑顔じゃないような。

 

「な、何を…っ!」

 

「君へのお仕置きだよ。まずは名前を聞かなきゃね?あそこの学生なら動物の生まれ変わりでしょ?ほら、名乗って?」

 

俺はまた少し力を入れた。それだけでも悲鳴をあげる。軟弱な体つきしてるみたいだった。

 

まあ、体力ない人はだいたいこんなもんだよねw

 

こうやって考えられる間はまだ序の口。本人の行動次第ではわからない。

 

一応通報しない約束はしてあるので心置きなく出来るわけだけど、さてどうなるかな?

 

「だ、誰が名乗る……かっあっ!?」

 

「名乗らないのか〜、そっか〜?じゃあ仕方ないよね?この腕が折れても君は名乗らない気でしょ?こんな風に元に戻らない方向に折ってあげるからさ?そういうことをして欲しいんだよね?」

 

「ヒッ…!!」

 

「さて、賢い君に質問です☆名乗って楽になるか、腕を折った状態で話を進めるか、どっちの選択が君に有利かな?」

 

「……っ…」

 

「さ?どっち?」

 

グググッとまた力を込めた。今度は折る勢いで変な方に曲げていく。まだ折れてないけど寸前だった。その恐怖に本人は名前を言う。

 

「…ひぐぅ!!…り、竜道愛貴(リンドウ アキ)だっ!!」

 

ほう、竜の生まれ変わりか!珍しいな

 

「竜の子か。そんな気高き竜の子が何でこんなことしてんの?誰かに言われたの?俺じゃない誰かに」

 

「……っ!」

 

「言って楽になりなよ。そしたら腕を折るのは許してあげる。多分君が主犯じゃないよね?誰が君をそそのかしたか言ってごらん?そしたら君を助けてあげる」

 

「!!……それはーー」

 

「おーい!アキ、アーキ!どこにいんだ?」

 

「!!」

 

あ、アレか

 

「愛貴くん」

 

「…な、何?」

 

「ここに留まってくれるならあの人達を始末してあげる。大丈夫ここでやるから。君も証人になってくれるよね?それとお兄さんと同じように口外しないでくれると嬉しいんだけど、しないよね?」

 

「お、おう…?」

 

「じゃあちょっと待っててね?すぐ戻るから」

 

そう言ってニコッと笑い、それから愛貴くんをお兄さんに持っててもらうことにしトシにもここで待つように言った。それから俺は店内にいるであろう不良の襟首を持ち、数名を同じように持って部屋の中に入れた。万引きしようとした奴も捕まえてまた中へ入った。大量に連れてきたのでお兄さんも愛貴くんもトシもビックリしていた。

 

まあ、ビックリするよね☆

 

「んぐっ!!誰だテメー!!邪魔すんなっ!!」

 

「お目当ての人ならほらそこにいるよ?」

 

「ああん?……おっ、アキじゃねぇか!」

 

「んだよお前、捕まったのか?情けねぇなw」

 

「それでも竜の子かよww強くてカッコイイだろぉって言ってたお前が、誇り高き英雄竜だぁって言ってたお前が、こんな所で捕まってるかとかつくづくバカだよな、お前ってwwしかも盗みを働かしたとか信じらんねー程クズに成り下がってよww本当、なんでお前刑務所に居ねぇんだよ?いや、刑務所という名の保健所か?ギャハハハハハ!!!」

 

「………っっ……!!」

 

今にも泣きそうな愛貴くん。お兄さんも黙って見てることが出来ず声をあげようとした。トシもこんなこと許されるもんじゃないと思って行動に移そうとした。しかし、2人ともそれは出来なかった。それは俺が居たから。空気がさっきよりも重くなった。本人らはまだ気づいてないが、さっきまでここの空気を吸ってたみんなは俺の空気を読み取って動かなくなった。みんな察した、これで動けたら勇者だと。まだ状況つかめないでいるヤツら以外は絶対にヤバいと。俺はキレていた。正直に言うともう出だしからだった。それを我慢してたのはもう少し言葉を考えていたならキレない程度で済ませようとしたから。まだ理性があったからそうしようと思った。けど、これはもう病院送り決定事項だった。

 

ごめんな?今回はちょい余裕が無いわ…。今まで結構色々やって来たけど、トシのこともあるんだけど…、まずはこれを正さないと前に進めないや…。病院送りで済めばいいけど…、それも無理かもしれない。殺しはしなくとも、あの超ゴリラ先輩と同じかそれ以上か…。どちらにせよ、記憶が無くなるかもしれん

 

 

 

てなわけで、日常が始まる?あれは嘘だ。タイトル詐欺してごめんね☆でも、まだ始まったばかりだからちゃんとタイトル詐欺しないように修正するから!今回は依頼として動くから記憶喪失案件になっても、大丈夫な話だからね。許されてる状態でやるってすごく心の準備ができるよ。そして安心して悪い子にお仕置きできるね☆それじゃあ記憶喪失案件パート3(?)へ、スタート☆

 

 

 

俺はここのコンビニにあったロープを使って数名をぐるぐる巻きに巻き付け、キツく縛り上げてから残った1人の上に乗った。いきなり何が起きたかわかってない、混乱した1人がやっと状況を飲み込めたようだ。しかし、飲み込めてももう遅かった。

 

「なぁ?あんたがこの数名のボスみたいな人?」

 

「ん、ぐっ…!そ、そうだけどっ!?」

 

「んで、愛貴くんに盗ませるように仕組んだ人?」

 

「はぁ?んなもんしてねぇよ、ただ買って来いっていっただk」

 

『グギッ』

 

「ギャアァァァァァ!!!」

 

「本当は?」

 

俺は軽々とそいつの小指から順に折っていく。変な方向に一関節ずつ。とても冷静でとても静かで、しかし凍りついたの表情は誰もが釘付けになるほど恐怖なものだった。されてない奴らも自分がされてるんじゃないかと指を握ったりして確かめている。されてる奴は痛すぎて苦しんでいる。そんなこと関係ない俺は答えないそいつの二関節めも変な方向に折る。

 

「…本当は?」

 

再度同じ質問をした。それは二度目はないというような声で。するともがき始めた。やっともがく知能まで上がってもビクともしない。ちゃんと答えなかったそいつの指を同時に全て、あらぬ方向に曲げた。全部同じ方向だが、折らない限りどう曲げたらそんな形になるのって感じに。当然悲鳴をあげるそいつ。

 

「あーぁ、1つずつ潰していくつもりだったのに。またやっちゃった。いっか♪だってこれは君の罰だもん。人の不幸を笑って楽しみ、人に罪を擦り付けて自分はやってないと言い張る汚く腐った大人。見た所あんたらもあそこの学生だと思うけど、先輩かな?先輩だよね?見たことは無いけどさ。それでもあんた達はお金のない子に集って、盗んでも良いから飯を食おうとした。それってさ、許されると思ってる?それと、たとえ誰かに言われたからやったとしても許されると思ってる?これはコイツらにも言ってるけど、愛貴くんもそうだからね?自分だけ関わってないとか思うなよ?」

 

「は、はいっ…!」

 

恐怖で声も上ずった愛貴くん。俺の目はもう獣を狩る狩人のような、ロックオンした人の目だった。眼孔を開けてニコッと笑う。その笑みは何とも言い難いほど恐ろしく、逆らえない空気を出している。それはロープで縛られた奴らも今現在組み敷かれてる奴も、ここにいる皆全員が同じことを思った。

 

『(生きた心地がしない…!!誰か助けてっ…!!)』

 

しかし、この時間に誰も来ないことはお兄さんが1番知ってるし逃げ道がない。それに朝まで誰も来ない。ましてや、まだ夜中にもなってない。そんな状態でこれが続いたらもう息ができない。ずっとその空気を吸うことになる。まだ幸いなのが、バーサーカーのように無差別に人を切るみたいな所がないこと。それがせめてもの救い。見せしめだが、まだ可愛いものだ。

 

「本当の話は後で聞こう。まずは名前と歳を教えてよ?」

 

「せ、せん、ぱいっに…なま、ぃき…いって…っ!?」

 

んな、と言いたかったそいつは声が出せなかった。何故なら俺が次に取り込んだ行為は肘と手首の間を雑巾のように絞りそして折る勢いでグググッと捻っている。それだけでも痛いのに骨が軋む音を立てながら、俺は淡々と続ける。それはそいつの思考がちゃんと答えないと自分の身が危ないと悟るほどのことだった。今更と言えば今更な察しだが、それくらいパニック状態に陥ってたとも言える。

 

「わか、わかった!!ちゃんと答えるっ!!答えるから一先ず待っ!!『バギッ!』ヒギャァァァァ!!」

 

「あ」

 

待つように言う前に折ってしまった。

 

「早く名前言わないからだよ?ほら、でもまだ『1回目』だからまだ折る場所あるし問題ないよね?」

 

「ヒィィッ!!!」

 

「じゃあ次は指と同じくあらぬ方向に曲げてあげる。気絶なんてさせないよ?気絶させた所で痛みですぐ起きちゃうだろうからさ?」

 

「待って!!待ってくれ!!言う!!言うからっ!!」

 

「そう言ってる間に言えるよね?ほら、早くしないとまた折れちゃうよ?」

 

さっきは雑巾絞りだったが、次は鉛筆を折る感覚で折ろうとする。そこでさっきのを察したそいつは慌てて名乗った。

 

「イギッ!!ご、極道……竜馬(ゴクドウ リョウマ)……です…」

 

「あんたも竜の生まれ変わりなんだね?とってもカッコイイ苗字に名前だ。で、何歳?」

 

「……じゅ、……17……です…っ」

 

「え?なんて?」

 

グググッと力を入れていく。その痛さはさっきと同じ力の強さだった。極道先輩は慌てて言った。

 

「…17、です!」

 

「つまり、本当に先輩なんだね?それなのに敬語を使わないなんてとか、今この状況で思ったんだ?それはとても素晴らしいことだけど、状況的判断には欠けるよ。だってここにずっといた人達は、俺の行動に一歩も動けなかった。それはどういう意味かわかる?」

 

「……???」

 

「雰囲気と空気に飲まれちゃったんだよ☆」

 

『グギギギギギッ、バギッ!!!』

 

「ヒギャァァァァイ"ァァァッ!!?」

 

「さて、極道先輩?あんたはこの場の代表として質問に答えないといけない。それがあんたの使命だ。いいね?」

 

「…っは…っは……へ…?」

 

「返事」

 

『バキバキバキバキッ、ボキッ!!!』

 

「アギィィィィィ!!!」

 

「返事」

 

「……っは……っは………、あぎ……っ!」

 

「もうこっち側の腕は使えないからもう片方の腕にするよ?」

 

「……ヒッ…!……っ、はひ……っ……」

 

俺はまた指の関節から持つ。さっきと同じ状態。まだ続くのかと思うとこの場にいる人間らは、みんな息を呑む。

 

「では質問。さっきも質問したけど、愛貴くんに盗むように言った人は誰?」

 

「……お、れ…じゃなっ」

 

「正直に」

 

『バギッ』

 

「ヒギィィィ!!」

 

「俺は『誰?』って聞いてんの。自分じゃないなら誰になすりつける気でいるの?この状況で嘘つけるならついてみな?あんたの腕が社会復帰もできないほどになるけど、いいんだよね?」

 

『バギッ、バギッ、グギッ、グギッ』

 

指の関節部分を1つずつ違う方向に曲げさせ折る。痛みと苦しみで解放されたいと思ってる極道先輩。許して欲しいと思って答える。今度は素直に。

 

「…っは……そ、この……赤、帽子……っは……かぶっ、た…奴…と…、…っは……緑、の…っ…眼鏡、つけ…た……っは……奴…と、…お、俺……で、す…っは…」

 

「赤帽子の人と緑眼鏡の人と先輩ね。そうなの?」

 

赤帽子の人に指さして聞く。しかし、極道先輩の言葉とは違うことを言う。言い逃れできるとまだ思ってるみたいだった。

 

「ち、違う!俺は言ってない!デタラメ言うなよ!極道さん!俺は言ってないでしょ!?」

 

「…緑の人は?」

 

「俺だって違いますよ!!全部極道さんがやったこと!!俺達は何もしてませんよっ!!」

 

「…だそうだけど、極道先輩」

 

「……テメー、らっ……!!」

 

「じゃあ答え合わせ。愛貴くん」

 

「は、はいっ!」

 

「盗むように言った人は、極道先輩と赤帽子の人と緑の眼鏡の人だけかな?それともまだ居た?正直に答えて?君には何もしないと誓ったから、答えることは全部素直に答えて?君に指示した人は全員いる?」

 

「……っ…」

 

俺は愛貴くんの言葉を待った。沈黙で待つ。意を決して言葉を言う。泣きながら震え、でもちゃんと素直に答えた。

 

「確かに…指示してきた人はその3人だけど……っ、アレもコレもって言ってきたのはそこにいる全員だっ!!俺は金がないって言ってんのに、全然聞かなくて盗んでも良いから持って来いって!!自分等は汚れない所で高みの見物して楽しんでっ、俺だけ悪者みたいな扱いされてっ!!!やった行為が犯罪なのは知ってたよっ!!けど、俺はコイツらより背も歳も全然届かないから従うしかなくてっ!!そんな状態で、だったらどう動けば良かったんだよっ!!何の証拠もない、俺にしかない証拠をどうやってコイツらに言われたって言えばいい!!!どうせ誰も信じないんだ!!!誰も誰も誰も、誰もっ!!!信じないんだっ!!!!……はっ……はっ……はっ……」

 

叫びながら全部自分の中にある思いをぶちまけた。俺は立ち上がり極道先輩の髪を掴んで引きずりながら愛貴くんの目の前に立つ。お兄さんも愛貴くんもビックリして恐怖で目を塞ぐ愛貴くん。俺は愛貴くんの頭をそっと撫でた。その手つきはとても優しく痛いものでなく、安心するようなそんな撫で方だった。愛貴くんは目を見開き俺を見つめる。さっきまで怖いと思ってた顔が嘘のように優しい顔をしていた。

 

「俺は信じるよ。愛貴くんも偉かったね。ずっと我慢してたんでしょ?誰も信じてくれないって思ってたなら、俺がその一人目だよ。今から君を助けてあげる。もう二度とこんな事しないって約束してくれるなら、君に機会を与える。それは今までの鬱憤をこいつらにぶつけること。それはどんな方法だって構わない。それがコイツらの報いだ。されて当然のことをしたんだからね。ケジメをつけないと、先には進めないでしょ?君も、コイツらも。ね?」

 

「は、はいっ!!」

 

褒められて嬉しいのか愛貴くんは凄く喜んだ。そしてちゃんともうこんなことしないと約束して本題に入る。極道先輩や他の数名も場が悪い顔をしてる。何されるのかと恐怖になる奴もいた。

 

「じゃあまずは赤い帽子の人の帽子をこうやって口の中に入れて、ボンボンは外に」

 

「むぐっ!?ん"ん"ぅっ!?」

 

口の中に帽子を入れられて声が出せない。しかも息もまともに出来なくて苦しそう。

 

「次に緑の眼鏡の人の眼鏡を掴んで」

 

「待って!?俺眼鏡がないと前が見えな」

 

『バキバキバキバキッ!!!』

 

「っ!!!」

 

「あ、ごめん。度が入ってたのか。これじゃあ何も見えないか。じゃあピンボケ眼鏡でも買うといい。そしたら見えるようになるよ」

 

「……………っ……」

 

緑の眼鏡は跡形もなく灰になった。レンズは落ちて割れて使い物にならない。緑の眼鏡の人は泣き出した。

 

「ちょび髭お兄さんはグラサンつけてるんだ?カッコイイね?どのくらいしたんだろ?もしかして100均かな?そんなことないか、とりあえずこれを」

 

「それ結構高い奴!!120万するや」

 

『グシャ』

 

「……あ…」

 

「ごめんね。高いお金を払って買ったのに壊しちゃった。返すね。よいしょ」

 

つけ直す。グラサンのレンズも1つ取れて悲惨な状態。落胆するちょび髭さん。他の人も似たような監視のことをしてから再度極道先輩に向ける。

 

「極道先輩。極道先輩にはみんなのために両腕と両足、それから目を失明しよう。それか、眼球を取り出そうか?目がなくても生きていける。よね?」

 

「ん"ん"ぅっ!?」

 

俺の申し出を断る極道先輩。俺から笑顔がなくなり一気に両腕、両足を折った。しかもいつかのどこかで粉砕骨折をさせた誰かのように、両足と両腕を粉砕させた。血の通えないほどにさせてしまってもう腕も足も色がない。あるとすれば紫色。中で内出血をしてる。このままだとそれはそれで死んでしまう。ので、俺はトンッと叩き両腕両足、二の腕半分と太腿半分に手刀で触り、血をそこから通えなくした。切断しても痛みがないほどに。もう感覚もないだろう。それを見ていた他の奴らはビクビクと震えた。こうなりたくないと思ったのだろう。恐怖で見てることしか出来ない。

 

「愛貴くん」

 

「は、はい…!」

 

「そこにあるペットボトル頂戴?この代金は全てこの人が払ってくれるから問題ないよ。だから貸して?」

 

「は、はい…!」

 

愛貴くんからペットボトルを渡され、それから蓋を開けてそれを極道先輩の口の中に入れた。水は口の中へと押し込まれて飲まざるおえない。

 

「お兄さん」

 

「は、はい…?」

 

「輪ゴムある?何個か欲しいんだけど」

 

「えっと……、これくらいでいい??」

 

「3個か、まあいいや。ありがとう」

 

何をするつもりなんだろうと思ったら、ズボンのチャックを外し極道先輩の息子がポロリと出てくる。極道先輩もずっと飲んでいたがこの状況に顔赤くする。俺はその息子に輪ゴムで縛る。それを下の方に持っていき少しキツめにしてから、放置をする。残りロープで背もたれがあるパイプ椅子と極道先輩を縛って身動き取れないようにした。最初から身動き取れないがさらにみんなに見えるようにしたので、羞恥プレイを極道先輩にさせた。ペットボトルの中身は全て飲み干した。これがどんな意味を持つかは後で知るだろう。

 

「さて、羞恥と放置プレイに忙しい極道先輩はとりあえずほっとくとして、今度は。あ、お兄さん。後で洗うんでゴム手袋くれる?」

 

「…業務用でいいなら…」

 

「うん。ありがとう」

 

手渡してもらいゴム手袋をはめた俺。それからさっき口の中に入れた帽子を外す。汚くヨダレたっぷりついたそれを赤帽子の人に着けた。元に戻しただけだった。周囲は汚染していて臭さが増す。お兄さんと愛貴くん、トシに俺はちゃんとマスクをして防いだ。後で換気をしないといけないが。マスクをしてない奴らは自分の鼻に手をつけれないので耐えるしかない。

 

「さて、次は愛貴くんの出番だ。コイツらどうしたい?殴りたい?蹴りたい?それとも唾飛ばす?それか、いっその事極道先輩みたいにする?」

 

極道先輩は放置と羞恥でそれどころじゃなく、荒い息を吐きながら何かに耐えていた。知らないフリをして愛貴くんを見る。すると愛貴くんは殴るを選択した。しかも平手打ちをするみたいだった。グーよりも痛いやつだ。それを1発でいいと言った。俺は文句言わずにOKを出して、解放してあげた。それから愛貴くんはコイツらの目の前に行って何のためらいもなく、平手打ちを両頬に叩きつけるという行為を全員にした。それはもう女性に叩かれた程の平手打ちを食らったんだ、パーの手形も付くだろう。とても痛そうだ。

 

「これで許したとか思うなよっ!!俺はまだ全然鬱憤を晴らせてないっ!!けどな、こんな事やっても今までしてきたことは変わらない!」

 

『バシンッ!』

 

「自分にだって同じようにケジメをつける!」

 

愛貴くんは自分の頬を自分で叩きこれで終わりと言ってお兄さんの所に戻っていた。お兄さんもそんな愛貴くんを見てよしよしと撫でる。自分のしでかしてきた行為を考えるとコイツらも恥ずかしいのか顔を赤くする。そんな時、ずっと沈黙をしてきた極道先輩が声を上げるようになった。そろそろトイレに行きたい気分になったのかもしれない。

 

「どうした?極道先輩」

 

「……アッ……んっ……、と、いれ……っんん…」

 

輪ゴムで止められてるためイけない。が、男のトイレは行きたくなると我慢できない習性がある。そこは女と違う。

 

「ここですれば?」

 

「……っ!?」

 

顔真っ赤にした極道先輩はみんなを見渡して頭を横に振る。さっきからわがままばかり。俺はまた放置する。放置された極道先輩はまたお預けを喰らわれ、我慢するしか無かった。俺は暇になったので、赤帽子の人のボンボンついてる方を掴みそれを縛られてる他の人にもつけ始める。息もしたくないのにさらに嗅がせられるなんてどんな拷問だろうか。息を止めてる奴にはずっとそこに帽子を掲げた。口から息を吐く奴には口の中にその帽子を突っ込ませる。変な味のする帽子を口に入れられたやつも口に含んだ奴もすごく引いた顔をしてる。少し経ってから帽子を取りベトベトの帽子をまた回しながら全員につけていく。見るのも耐えれない状態でお兄さんも顔を逸らしている。トシも逸らしている。

 

「も、げん…か、っ…アァっ……っ…」

 

クネクネし始めてトイレに行きたそうにしてる。俺はその帽子を持って極道先輩の鼻のところに持っていくと、臭さで萎えさせた。しかし、トイレに行きたい極道先輩はそれどころじゃなかった。輪ゴムでしっかり止められてるとはいえ、息子もビクンビクンさせて苦しそうだ。俺はそれを見ながら極道先輩の息子をツンッと突っつく。帽子がベチャッとくっつくのと同時に、身体もビクンと反応した。ベトベトの帽子を外して顔を見ると顔を真っ赤にしてイきそうな顔をしてる。まだイっていいとは言ってない。俺は帽子を誰かの頭の上に乗せてから極道先輩に向き合う。

 

「イキたい?」

 

「!!……イ、きたい……っ!!」

 

「言葉遣いは?」

 

「…い、イ…か…へて……くら、は…い…っ!!」

 

「なら、俺がよしって言うまでイくな」

 

「……あ、い…っ…!!」

 

輪ゴムを外す。極道先輩はその刺激でもイきそうになった。しかし、頑張って我慢した。それからまだイけないのかと俺を見る。体がビクビクと震えてもう我慢できる状態じゃないと言わんばかりの顔。俺は何かを見つけてそれを極道先輩の息子に差し込んだ。ビクンビクンと震える極道先輩。ちゃんと固定をした後。

 

「よし」

 

と耳元で囁いた瞬間。

 

「ああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

射精した。白も黄色も同時に出たので濁ってる。半分以上出たのでそれをコルクで蓋をした。全部出し切った極道先輩はまだ身体をビクンビクンさせて、ヨダレを垂らしながら俺を見る。俺は極道先輩の髪を掴み引っ張る。痛みでまたビクンと震える。

 

「今からお前は病院に送られる。が、病院で処置され退院したら真っ先に俺の寮の部屋に来い。いいな?」

 

「……わ、かい……まひ、た……」

 

「それから、この出来事は絶対に他言無用だ。もし万が一口を滑られたら、お前らの命は無い。本当に社会復帰もできないほどの悲惨な目に遭うと思え。もちろん、お前らがそれを望むなら次は眼球を潰す。されたく無かったら口外するな。いいな?」

 

『『『はいっ!!わかりましたっ!!』』』

 

この場いる全員が返した。それから俺はプツンと緊張の糸が切れるかのように、気絶した。深い深い眠りについた。それからどうしたかと言うと、トシがレオに連絡し事の顛末と共に病院へ送るようにと報告したらしい。それから色々な後始末をトシがやり、駆けつけたレオ達によって全員を学園に連れていった。俺とトシはそのまま寮へと帰っていた。お兄さんはそのまま営業を続けて、給料貰えたと帰ったとか。とにかく濃い一日は終わった。俺が朝、目を覚まして見た景色は首輪のついてない状態で寝るトシといた。目の前でトシも寝ていて、俺とトシは所謂添い寝状態で眠ってたみたいだった。俺は起き上がり布団を逆側に、トシに掛けてあげる。するとモゾモゾと動き、また寝息を立てる。そのまま寝かせて朝食の準備を始めた。

 

 

 

終わったね!結構前よりも長かったんじゃないかな?あ、ちなみに今の俺は読者と話してる俺とは違うからな?記憶喪失案件だからもちろん覚えてない。だから、断片的なことしか覚えてない。まあ、ケロッとしてるから日常に問題は無いんだけどね☆とにかく、これでまた日常に戻れるね!記憶喪失になってても、みんなだけは覚えてあげてね!俺はスッキリしちゃっててよく分かってないからww

 

 

 

俺はすぐ出来る味噌汁とご飯、それから卵焼きを作った。二人分しか作ってないので、他に誰か来たとしても食べさせられない。

 

本当ならもう少し良いもの作りたいけど買い足ししないと物がない…

 

すると、目を擦らせて起きてきたトシ。まだ寝ぼけてるみたいだった。目付きがすごく悪い。

 

いつもこんな感じなのかな?ちょっとちょっかい出してみようかな♪

 

寝起きの悪い人にちょっとしたちょっかい。それは後で後悔するような事だった。

 

まずは耳に息を吹きかけて〜♪

 

ふぅ…と耳元に吹きかける。すると寝起きでしかも寝ぼけてるトシは、人の気配を感じ俺を後ろから抱きつきそして脇をくすぐってきた。別に脇が弱い訳じゃないけど、人によっては笑えるヤツみたいなそんな感じ。

 

「あははははははははっ!!!」

 

ずっと脇をくすぐってくる。お腹が痛い。もうやめて欲しいと思った俺はギブアップという返事をトシに送る。しかしまだ寝ぼけてるせいか全然やめる気がなく、ずっと脇をくすぐる。

 

「ちょっ!!あははははははははっ!!!待っ!!あははははははははっ!!!ひはははははははっ!!!と、トシっ!!と……あひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!」

 

散々脇をくすぐられて腹筋崩壊しもう死にそうな時にトシの寝坊助は覚醒した。

 

「へ?え?……蜜??」

 

「お願っ、もっ、許しっ…あひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!」

 

「……ハッ!?」

 

慌てて膝が下ろし解放する。俺の腹もそうだが脇の痙攣が収まらない。

 

脇の痙攣って何だwwww

 

脇と腹を抑えて荒い息を吐く。トシはそんな俺を見て一言。

 

「もしかして、脇…ダメなのか?」

 

ハーッハーッと荒い息を整えながら俺は話す。話すのも少し難しいのかあんまり言葉が発せれない。

 

「…ハーッ……、ハーッ……、別に、よわ、いっ……わけ、じゃ…ない…っ…。ハーッ……ハーッ……、ただ、よく…ある、っ…、人、の…触り……に、よっ…ては……。ハーッ……ハーッ……、くすぐ、った…い……って……、だ、け…っ…。ハーッ……っ……ハーッ……」

 

「その触りがまさかの俺だったと?」

 

「……ハーッ……ハーッ……、そ、いう…こと、かも…っ、な…。あーっ!!……苦し、っか…た…っ!!」

 

息を整えるのを専念してからは少しずつ治ってきた。痙攣も腹痛も息切れも。トシもその間、何もせずに俺が治るのを待っていた。ふぅ…っと息を吹きやっと話せるようになった。

 

「まあ、後悔もしたけどね…?寝起きのトシにちょっかい出すもんじゃないって…」

 

「ちょっかい?」

 

「耳に吹きかけたやつ」

 

「アレ、お前だったのか!?」

 

「マジで寝ぼけてたのか…、この寝坊助!」

 

「わ、悪かった…。てっきりまた勝之助がイタズラしたのかと思って、そのお仕置きとして脇くすぐりの刑を決行する夢を見てたから…。まさかそれが蜜だとは思わなくて…。悪かった…」

 

律儀に頭を下げるトシ。

 

ちゃんと謝ったし俺も謝んねぇとな…

 

「こっちこそ無闇にやるもんじゃないって分かったから、もうしない。ごめんな、トシ…」

 

「いや、蜜が謝ることじゃ…」

 

そんなやり取りをしてると突然、『ピーンポーン』というチャイムが鳴る。トシが見てくると言って玄関へ向かった。そしてまた戻ってきた。

 

「誰だった?」

 

「昨日のヤツだ」

 

「昨日??」

 

記憶が無いので名前もおぼろげ。とりあえず俺も玄関に行きドアを開ける。そこに立ってたのは。

 

「よっ」

 

えっと……確か……、あれ?…誰だっけ…?

 

俺が混乱してるとトシがフォローしてくれた。

 

「誰だ」

 

「なっ!昨日名乗っただろうがっ!!」

 

「いや、俺はその場に居てもちゃんと聞いたわけじゃねぇ。だから俺のために名乗れ」

 

「なっ!?……ったく、しょうがねぇな!俺は竜道愛貴だ!!ちゃんと覚えとけ!」

 

あーっ!!愛貴くんかっ!!マジで記憶ねぇからド忘れしてた!!つっても、それ以外はあんま覚えてないからおいおい聞くとしよう

 

「ふーん、そっか。で、何しに来た?」

 

「っ…、き、昨日のお礼をしに来た…!」

 

「お礼?」

 

「き、昨日は助けてくれてありがとう、ございます…!その、あんたの行ったことには何も触れずに事情聴取受けたけどよ…。やっぱ、ちゃんとお礼言わねぇとって思って。その…、えっと……」

 

「まあ、上がりなさいな。ここで立ち話もなんだしさ?」

 

「いいのか?」

 

「おう!とりあえず上がんなさいって♪」

 

「えっと、お邪魔…します」

 

「敬語じゃなくていい。タメで話せ」

 

「お、おう!じゃあ言葉に甘えてそうするぜ!」

 

愛貴くんを中に通すと鼻をクンクンさせる。

 

「どうした?」

 

「いい匂いする…」

 

「あー、ちょうど朝飯の時間だからな。これから食う所だよ」

 

と言うとタイミング良く、愛貴くんの腹の音が鳴る。愛貴くんはちょっと恥ずかしそうに腹を抑える。ニコッと笑って愛貴くんに提案する。

 

「おかずはないけど、ご飯と味噌汁食べる?簡単に作ったから味の保証は半々だけど…。何しろ食材が足りないから買い出ししなくちゃいけなくてね。物が少ないんだ。だから、手軽に作れるモンしか無いけど…」

 

「それだけでもご馳走だから気にすんな!ご飯と味噌汁あるだけ嬉しい!ありがとう!」

 

「そっか、なら良かった。じゃあ朝飯にするな!トシは顔を洗ってこい。お前の飯はそれからだ」

 

「わかった」

 

そう言ってトシは洗面所へ、俺と愛貴くんはリビングへ行った。それから皿を取り出しお釜からご飯を茶碗に盛り、味噌汁もお椀に盛る。それを目の前に置き、割り箸だから目の前に置く。それだけでも目をキラキラさせている。

 

とっても嬉しそうだな♪よかった!

 

そして顔を洗ってスッキリしたらトシが来て3人でいただきますをし、食べ始める。卵焼きも少し分けてやった。俺は卵焼きの味は甘系が好きなので、甘くしたが2人は文句一つ言わずに食べてくれた。

 

本当は言ってくれた方がいいけどな?そしたら、どっちも作るんだけど…

 

食べてる最中に愛貴くんが俺に質問してきた。

 

「そう言えば、あんたの名前知らないんだけど」

 

あ、そう言えば名乗ってなかった…。んもう、俺ってばお茶目さん☆

 

俺は改めて名乗った。すると目を見開いて青ざめた。

 

「え…?…腐獅…蜜…?」

 

「あぁ!百獣の王の血と獅子の血を受けづいてる。まあ、どちらもライオンって意味だけどそういう意味では動物界だと王様に君臨するって感じだね」

 

「そ、それって…!!」

 

「ん?」

 

あたふたし始める愛貴くん。それを見てキョトンとする俺とトシ。食べながら聞く。

 

「あの…、あくまで噂に過ぎないんだけどさ…?」

 

また噂かよ…、誰だ?マジで噂流してる奴…

 

「誇り高きゴリラ族をとっちめた奴ってまさか、あんた……だったりする?」

 

…………………、マジで誰だその情報を流してる奴は?キレちゃうゾ?(#^∀^)

 

空気的にトシが読んだのか俺の頭を撫でて宥めた。それだけじゃ収まりきれないが、ここはトシに免じて抑えた。トシが小さくホッとする。

 

「誰情報?」

 

「ゴリラ族の人が言いふらしてるって訳じゃないみたいだけどな?あの傷は何で出てきたものなのかとか、ゴリラ族の先輩が今も病院で療養中だとか。いろんな噂が飛び交ってる中、一つだけ確信が持てる噂があった、それが。あんたの新入生歓迎会の話だ。俺も1年だけどその噂も後で知った。その件は色んなやつが噂してたからな、尾びれみたいな感じで広まって。もしかしたらあんたがやったんじゃ説が出た。っていうだけ………なん…だけど……………」

 

そんな噂が校内で出回っているのか。しかも自分の行いが凄い方向に曲げられてる。事実だとしても、とても心外であり俺をなんだと思っているのか。それを噂してる奴らに問い詰めたいところだなぁ(#^∀^)

 

トシがまた察して俺を後ろから抱きしめてホールド。そのままトシが話を進める。これ以上は最小限に抑えたいという、記憶ある者の務めだと思ったトシ。なんだか言ってはいけない話を出してしまったと申し訳ない顔をする愛貴くん。口いっぱいにご飯を入れられて話せない状態にされた。

 

「で、でも!嘘なら嘘でいいんだ!たとえ事実かもしれない話でも、ここで迷宮入りしちまえばこれを暴こうとするやつはいない!俺だってそれを聞いて最初こそは疑ったけど、そう何度も正義をかざせるほどあんな風にしないしさ!」

 

ギクッ

 

「だから、俺はあんたを信じるぜ!蜜さん!」

 

うぉぉぉぉっ!!猛烈に俺の良心が何故か痛いぃぃ!!!理由はわからないけどすごく痛いっ!!!この穢れた脳と心を浄化させる何かを感じるぅぅ!!

 

「あ、俺!そろそろ行くぜ!じゃあな!」

 

お皿を片付けて部屋を去った愛貴くん。俺はゴクンと飲み込んでトシの腕を触る。トシはビクッ震えて、いきなりどうした?と質問してきた。

 

「ホールドする力とかあるんだと思って…。てか、よく考えたら俺よりもトシの方が力があって、かつ身長も俺より高いし腕も手もでかい。それなのに俺のペットってすげーシュールな条件で成り立ってんだなって、改めて思ってさ…」

 

ムニムニと触りながら筋肉を触る。くすぐったいのか笑いを堪えているトシ。俺はまたちょっかいを出す。今度は起きてるからされないと思って、腕の筋をツーッとなぞるように触る。それはある意味くすぐってるようにも思えるほどの触り方。

 

「や、やめっ……!…プククッ……クククッ……!」

 

笑いを堪えているトシ。

 

さっきの仕返しだ!この野郎!

 

腕から脇に移行して横腹へ、それから背中とスススとなぞるように触るとどうやらくすぐられるのが弱いことが分かった。耐えきれずに俺みたいに大声で笑う。

 

「ひひひはははははっ!!!待っ!!あははははははははっ!!!許しっ!!!あははははははっ!!!ちょっ!!マジっ!!いひひひひひひっ!!!」

 

1番くすぐって笑う所を重点的に攻撃するとクネクネしながら逃げようとする。さっき俺もそうしてギブアップ宣言したというのに止めてくれなかった。あれは不可抗力で俺の自業自得でも根には持つ。ので、これは楽しいお仕置きだ。

 

笑い死にそうになったアレは、腹筋崩壊したわww

 

散々攻撃をして見ると疲れ果てて動けず俺の手をホールドしてきた。片手で両手をホールドされたため、身動きが取れない。息を整えるのも時間がかかるようで、俺よりも遅い。年の差ってやつだろうか。そしてやっと息を整えたトシは俺の両手を掴んだまま土下座をした。

 

「朝の寝起き状態とはいえ密様にくすぐり攻撃を、しかも勝之助と間違えてやってしまったこと、深くお詫び申し上げます。本当にすみませんでした…!」

 

敬語のさらに上を言ったトシ。なんだか俺がお代官様でその部下が粗相を犯してお代官様にお詫びの言葉を言うワンシーンみたいな絵面になった。さすがにここまで反省してるならと、俺は慌てた。

 

「ま、まぁ!トシがこんなに反省してるなら許すから頭上げて!それにそろそろ支度して学校行かないとだしさ?ね?」

 

「こんな事で蜜様がお許しくださるなら…」

 

「許す許す!超許すから!ね?ね?!」

 

トシは顔を上げて申し訳なさそうに眉間を下ろした。本当に反省してるという顔をしてる。俺はトシの頭を撫でて顔を見ながら言う。

 

「そんだけ反省してるのに、許さないような俺に見えるか?もう許してるからそんな顔するな?素直に受け入れろ、な?トシ」

 

「はい、ごめんなさい…」

 

「もう謝らなくていいから。な?」

 

再度よしよしと頭を撫でてそれから優しく抱きしめる。体の大きさからしてトシの方が大きいが頭を掴めばそんなことは関係ない。頭を撫でながらポンポンと背中を叩く。少し落ち着いたトシはスリスリしてきた。時間を見るともう出ないといけない時間だ。

 

「そ、そう言えばさ?トシ」

 

俺はとりあえずこのことから話をそらすべくトシに質問する。とても在り来りで何も用意してなかった。

 

「なんだ、蜜?」

 

「学校行ってる?」

 

「……………」

 

あ、コレは行ってないやつだ

 

「行ってる?」

 

「……………………」

 

再度聞いたのに答えないってことは行ってないことになる。

 

まあ、歳とか色々考えたら不気味に思われるか怖がられるかするよな…

 

「………一応、出席だけはしてる」

 

あ、行ってた

 

「ただ、授業は受けてない。テストもしてない」

 

「本当に出席日数だけ稼いでる的な?」

 

「あぁ」

 

「今日も出席日数稼ぎに行くの?」

 

「…あぁ」

 

「………そっか。まあでも、もう出ないといけないから飯も食い終わったしそろそろ支度するぞ?」

 

「あぁ」

 

もう最後の方は『あぁ』しか言わなくなった。何を話しても『あぁ』。人には人の踏み入れて欲しくないことがある。俺は踏み抜くから人に嫌われるわけで。支度するといいながらトシは何も手をつけてない。俺はまた何かの地雷を踏んでしまったのかもしれない。

 

本当に学習しないやつ…

 

俺は最後まで何も手につけずにその場に居たトシを見て謝った。

 

「ごめんな?俺なんか地雷踏んだっぽいよな?この癖、昔からなんだ。人には人の踏み入れて欲しくないことがあんのに、わかんねぇのw本当にダサいよな…?何も考えてないって丸出しwww………ホント、学習しねぇなぁ…。まっ、あんたはあんたのペースがあんだ。俺のペースに飲まれるなよ?俺とあんたは全然違うんだからさ!んじゃ、行ってきまー」

 

「あぁ…」

 

そう言って部屋を出た。本当の本当に地雷踏んだっぽい。『あぁ』って言われた。

 

俺、今日一日笑えるかな?……笑えるよね?

 

家族だとか他の人の幸せとか色々考えると鬱になりそうになるけど、今回の『また』が俺にのしかかる。息が苦しい。早く照とレオのとこに行かないと。

 

苦しすぎて休んじゃいそうだよ…

 

地雷踏んだっぽい状態と状況になると、何も考えられなくなる。いつものお花畑も何も。本当に静かな人間になる。もしかしたら空気になってて影が薄くなるかもしれない。そのくらい静かで喋らない。レオと照はそういう空気を見ると気分転換をさせてくれる。

 

今日、してくれるかな…?

 

俺は学校に向かうべく長い道を歩いてた。鍵はちゃんと内兎に返してるので、そこは大丈夫。何も考えずに、とはいかないけどそれに似たような虚無感的な状態にはなる。だから気づいた頃にはもう教室の中に居るんだ。これも一種の記憶喪失みたいなもの。

 

気づいたら教室、気づいたら放課後、気づいたら屋上、気づいたら…………。みたないな?

 

俺はまだの外をボーッとしていた。そう、ただひたすらボーッとしていた。猫先生の下僕なのに首輪を付けてない。というか忘れたなぁと思いつつボーッとしてる。だからちゃんと猫先生のホームルームも聞き逃す。そして猫先生が目の前にいるのも気づかない。

 

「ーー」

 

……………

 

「ーー!」

 

……………?

 

「ー獅!」

 

呼ばれてる?

 

「腐獅!!」

 

っ!

 

「は、はい!」

 

ベシッと頭を叩かれる。みんなが笑う。猫先生に説教される。俺は苦笑いで謝る。

 

うん、ちゃんと俺も笑えてる…!大丈夫だな!

 

「後で説教タイムだ。俺の下僕が俺の指示に従えない奴にはお仕置きだ。それと首輪がないのも気になる。昼休みに飯持って数学教室に来い、いいな?」

 

「は、はーい…」

 

そして座る。猫先生もホームルームを終わらせて教室に出ていった。

 

『蜜』

 

レオと照が話しかけてきた。いつもの声色で。俺もケロッとした顔で話す。

 

「今、話せる感じか?」

 

「ん?何か話したいのか?」

 

「無理に感情を入れなくていい」

 

「無理してねぇよ、大丈夫」

 

そう言うとレオと照が立ちあがり俺の腕を掴んで教室から出る。周りもびっくりして固まっていた。レオが顔だしてそれから言った。

 

「生徒会案件で席を外す。終わり次第戻るから教師達にはそう伝えといて欲しい。わかったか?」

 

『は、はいっ!!』

 

「ありがとう」

 

それを言ってまた俺を連れだした。教室ではお花畑のような顔をしてる人達で賑やかだったという。俺は今連れていかれてるのでそんなこと知る由もない。連れていかれることに慣れてまたボーッとしながらいると、気づいたら階段の前で2人に壁ドンされた。

 

なんだ?この状況…?

 

「あの人となんかあった?」

 

「ずっとボーッとしてるし俺達の声も聞こえない」

 

「まるで上の空だし。何があったか言え」

 

「……いやいや、何にそんな怒ってんだよ?あれか?俺がいつもながら無視したことに怒ったのか?謝るよ、だから許してちょ☆」

 

「その事だったらぶん殴ってたけどな。今の謝りで俺らが許すと思うか?」

 

「許さねぇだろうな…」

 

「なら、聞かなくてもわかるだろ?」

 

真剣な顔をしていた。いくら俺がおちゃらけても意味が無いみたいだった。

 

ここだとなんだかな…。どっか人がいなさそうな所に行きたい…

 

俺がキョロキョロと周りを見るのを見てまた移動した。レオが生徒会の前の空き部屋に入った。

 

「ここは?」

 

「仮眠室だ。幸い今は誰も使ってないようだし、ここなら誰も来ないだろう。それに休み時間中はここの使用許可は俺以外禁止になってるらしいからな。ここは都合がいいし、ここなら話せるだろ?」

 

逃げ道はないってことだよな…

 

「それで何があった?」

 

「それも隠すのか?」

 

これは別に隠す必要のないことだ…。だから話せるけど…、半分以上俺が悪いしな…

 

俺は朝起きた出来事を掻い摘んで話した。伝えたいこと以外は省き、断片的なことだけを話した。苦笑いで、でも決して自分が傷ついたという感情は見せなかった。だってそれは、俺が持つべきではないから。

 

「それはお前が悪いな」

 

「俺もそう思う」

 

「だよな、俺もそう思って行き際に謝ってきたよ…。俺ってほんっとダメだよなー…?そういうとこ!そういうとこだよ、俺のダメなとこ!足の踏み入れ時を間違える辺り!だから友達少ねぇんだな…?なんか改めて思うと、バカだよな?俺って…」

 

「けど、謝ったんだろ?」

 

「お前が今までどれだけ馬鹿やってきても、ちゃんと気持ちを込めて謝ったのはその話の気持ち以外ほぼ無いに等しい。いつもはケロッとして何も覚えてない顔してるからな。進歩したな?」

 

あれ?そうだっけ?記憶喪失案件が多すぎて何が覚えてて何が覚えてるのかなんかもうわかんねぇな…

 

「まあ、謝ったならその内また話せるようになる。あとは気持ちの持ちようだ。この話はこれでおしまいにしよう」

 

そこら辺の察し能力は非常に高いレオ。それから2人は目配せして俺に向き直す。俺はキョトンとした顔で見つめると。

 

「お前に話したいことが2つある」

 

「俺に話したいこと?」

 

なんだろ?昨日の出来事は記憶ないけど、その話かな??でも話された所でなにもわかんねぇけど…

 

「1つ目は、お前も察しがついてるであろう昨日の案件。あれは無事に解決した。竜道だったか、アイツも解放されて普通に登校してる。他のメンバーは病院送りにした奴以外、停学処分と謹慎中を言い渡してる。外に出ることを一切禁ずると。敷地内だからと言って行っていい場所は食堂のみ。それ以外は監視されてると思うように伝えてある。病院送りにされたやつの状態は、案の定両腕両足を切断。詳しく言うと太もも半分辺りを切断し、腕も二の腕の半分の所で切断。実質、手も足もない状態だ。完治1ヶ月だそうだ。リハビリも兼ねて1ヶ月。それまでは動くことも出来ないと言っていた。宅配という訳じゃないが、お前の部屋に届くのも1ヶ月後になる。その報告を1つ」

 

んー。イマイチ、ピンと来ないけど…。俺が記憶喪失になる前に起こったことで、コイツらが知ってるなら事実なんだろうな…。何も覚えてないからそいつが来てもどうしようもねぇな…

 

「それからもう1つ…」

 

ん?あー、そう言えばもう1つあるって言ってたっけ。でも何でそんなに赤くしてんだ…?ハッ、まさか!

 

「お前を元気にするためにっていう名目だ。心して聞け」

 

ついに!ついに!?ついに!!?

 

「今まで黙ってて悪かった。俺達…」

 

勿体分なよ!!はよ言えや!!

 

「付き合ってるんだ…」

 

キターヾ(°∀° )/ー!!!(´つヮ⊂)ウオォォォォォwwwwww

 

心が踊ってはしゃぎ過ぎて思考停止状態。念願の聞きたかったことが明かされた。

 

けどこの学園、たとえ男同士でも恋愛禁止条例が発令してるために学校内では恋愛しちゃあいけないんだよな…。まあ、だから隠れてあんなことこんなことしてる奴らがいるんだけども…。恋愛してなきゃ何やってもいい的な考え方的な?

 

俺も似たようなことはしてるので何も言えない。

 

「な、何か言いたいことは?」

 

「いつから?」

 

「えっと…、俺達が最初に出会った時に…」

 

「一目惚れ?」

 

「あぁ…」

 

「どっちから?」

 

「照から」

 

「告白は?」

 

「レオから…」

 

「何年目?」

 

「かれこれこの年まで」

 

「つまり?」

 

「出会いの歳が4歳なら、そこから今に至るまで」

 

「12年?」

 

「そうなるな」

 

「熟年カップルか!!」

 

「おっ。元気になったな」

 

そりゃあなりましょうよ!?だって俺の知らない所でこいつら出来てるんですよ??俺が興奮抑えられるような人間に、いや獣に見えますか!?見えないでしょ!?もう、なんだよなんだよっ!!マジで俺だけ除け者扱いじゃん!!水臭いじゃん!!馬鹿ーっ!!

 

「顔が凄いことになってるけど、元気出た?」

 

「超元気でた!!ハッ!!てことはだぞ!?」

 

「ん?」

 

「新入生歓迎会の時のアレって…」

 

「……、そういうことだよ…」

 

マジかマジかマジかマジか!!!

 

俺はスライディング土下座をかまして大声で謝った。今更とはいえ、とんでもない失態を晒したと思って何度も謝った。それに関してはもう解決済みだからと許してはくれたが、俺はそこから抜けていたみたいだ。

 

もう、俺の頭をアップロードしてさらに強度を高めないと、またいつそんな風になっても感づけるようにしないとダメだな!これは俺自身がどげんかせんといかん!!!

 

改めてなりそめやらなんやらを聞いてるうちに時間はどんどん過ぎていった。やっぱりお花畑系の話は頭に糖分取るのと同じくらい大切で、生きていけない。もしかすると、ずっと萌ゲージが欠々でなんとも言えない状態だったかもしれない。その影響で色んなことが保てれなくなったのかもしれない。

 

そうだ!そうに違いない!いつもなら流すとまでいかなくとも、ちゃんと対処しきれた。今回は重なりが重なりだから、昔のデータ畑だったからこれから新データ畑にすれば少しは丈夫になるかも知れん!!

 

俺は2人に抱きつきギューッと抱きしめた。時間的にもそろそろ行かないと昼休みになる。

 

「そろそろ教室に戻るぞ?」

 

「おう!」

 

「今度、俺達の家に来たら色々話すから今日はここまでな?」

 

「( 'ω')bウィッス」

 

「んじゃ、戻るか」

 

「ハ━━━ヾ(。´囗`)ノ━━━イ」

 

「テンション高っww」

 

「へへ♪」

 

すっかり元気を取り戻した俺。四時限目前には帰ってきて授業を受け、昼休みになり猫先生のいる数学教室に向かった。弁当は今日ないので途中購買に行き、何か買ってから行った。

 

気づかなかったけど、食堂以外にコンビニまで常備してんのな?購買という名のコンビニw色んなのあったわ、俺の好きな焼きそばパンもあったし♪あと、果物ミックスジュースも買った!

 

数学教室に着くとなんとなく緊張する。緊張する理由もないけど、1つあるとしたら慌ててたとはいえは猫先生から貰った首輪を忘れたこと。それ以外はどう思ってもしかたない。それは俺が悪いわけだから。

 

『コンコン』

 

「入れ」

 

『ガラガラ』

 

「失礼しまー…」

 

『ガシッ!ガラガラ!ピシャン!カチャッ!』

 

まず誰かに腕を掴まれ引っ張られ勢いよく扉を閉めて鍵をかけた。という感じだ。そして今は数学教室にあるソファーの上に押し倒されている。

 

誰に?猫先生に

 

ポカーンとした顔で猫先生を見てると、深い溜息を吐かれた。俺はさらにポカーンとした。

 

「反省してないな?」

 

「首輪のこと?」

 

「それもだが、ホームルームで呼んでも返事しなかったことだ」

 

「それは悪かったよ…。今さっきまで本当に今日はボーッとした。人並みにね…。それもレオと照が治してくれたからさ?悠長に喋れるわけなんだけどさ」

 

猫先生は目を見開いた。俺がそんなに悩みを持っていたのかと、全然気づかなかったと言うような目をしていた。そして猫先生がキョロキョロと周りを見てカーテンとか色々を済ませて、また俺を押し倒す形になった。何をする気だろうかと思った。

 

「猫先生?」

 

「っ…、えっと……、あの時みたいにしてくれ……。いや、して下さい……っ」

 

顔を真っ赤にさせて俺の胸に顔を埋めた。

 

あの時ってこと、店長が働くあそこでの名前とか、俺の切り替えとかってことだよな…?何かあったか??

 

俺は猫先生からの命令と勝手に解釈し、カチッと切り替えて猫先生を呼ぶ。

 

この場合は猫先生じゃなくて、今だけはカズって呼ぶかな。その方が雰囲気合ってるし

 

「どうした?カズ」

 

「…っ…、…ミツ、様……っ」

 

何にそんなに震えてるんだ?もしかして店に行ったとか?期待してたのに居なくてって感じか?

 

ちゃんと聞くと案の定だった。昨日店に行ったらもう居ないと言われたらしい。それで喪失感が激しく顔に出さないようにしてたのに、俺が自分の話を聞いてないことにもイラだって今に至るらしい。

 

後で、ホームルームの件は聞こう…

 

カズの耳元で質問する。

 

「それで?カズはどうしたい?俺に謝って欲しいか?泣かした責任取れみたいな」

 

「そ、それは…っ!…さすがに…っ…。けど、どうして辞めたんだ?あんなに楽しそうにしてたのに…」

 

それは店長を傷つけたからなんて言えない。ましてや家族のこともあったり配達の時のことがあったりと。配達の時は断片的なことしか覚えてない。店長とこのお店に行ったまでは覚えてるけど、その後何があったかは覚えてない。だから記憶喪失案件が関わることも多分、『色々』に繋がる。

 

「辞めても趣味として活動はしてる。お前がこういうの欲しいとオネダリするなら、時々なってやるし。それに学校内はさすがにと思うならお前の部屋にでも行く。そうすれば心置きなく『息抜き』ぐらいにはなるだろ?それとも………あそこでやったような激しいのがお望みか?カズ」

 

最後の方はカズの耳元に重低音ボイスで囁く。カズの身体がビクンと震えてさらに顔を赤くした。『息抜き』の方ではなく『激しく』を強調して言ったら、さらに顔を真っ赤にさせた。それくらい期待してるということだ。可愛いやつだ。

 

「まあ、それもお前のオネダリという名の『命令』じゃないとしないけどな?あの店ではお前は俺のペットかもしれんが、ここではお前が飼い主だ。今回は首輪を忘れたが持ってくるのも面倒だしな。明日からは付ける。まあ、この雰囲気は飼い主に牙を向くって形になるけどな?それがあんたを食うんだからな」

 

「…うぅっ…」

 

ニヤニヤしながらカズの頬をムニムニと遊ぶ。遊ばれてるとわかってても、反論できないカズはされるがまま。でもされること自体は嬉しそうだった。

 

「それで?ご主人様は何をお望みだ?今からしたいことを言ってみろ?『命令』として叶えてやる」

 

「…う、上から目線だな?」

 

「嫌なら何もしない」

 

「……あ…」

 

ムニムニを止めた。真顔になった。脱力したように何もしない。顔真っ赤にして恥ずかしそうにしてるカズは、俺の手を恐る恐る掴んで自分の頭の上にポンッと乗せた。それから俺に『命令』をした。

 

「あ、頭を撫でろ…。命令、だ…!」

 

口元を緩ませて微笑み、それから。

 

「仰せの通りに、ご主人様」

 

「っ!」

 

優しくよしよしと頭を撫でた。気持ちよさそうにカズは喉をゴロゴロと鳴らす。猫の生まれ変わりというのはそういう所も出てくる。動物にはそれぞれの特性も出てくる。猫からの生まれ変わりなやつは今のように喉を鳴らしたりする。狼なら犬科なので、心許した奴にはお腹を出したり、服従したり。性格にも寄るが、そういった特性を持っている。

 

俺の持つ『百獣の王』と『獅子』はどちらもライオンだけど、その特性は未だによくわかってない。何が好みで何が嫌いでってのが全く、俺自身が1番わかってない。まぁ、そんな今話しても仕方ないことだけど特性の話は覚えておくといいよ!

 

しばらく撫でてるとカズが奇妙な動きをし始める。発情でもしてるのかと思うようなズボン越しで何かしてる。荒い息を吐きながら何かしてる。俺は直ぐにカズの両手を掴み片手で縛る。ビクッと震えて身動き取れない状態にされたカズはもがく。俺はそんなカズの両手首を軽く力を加えて少し痛める。するとカズは痛そうに目を見開き、申し訳なさそうにする。

 

「…ご、ごめんなさい…」

 

「何をしてた?」

 

「…あ、えっと…その……」

 

「ん?」

 

「……………」

 

何も言わなくなったのでそろそろ押し倒されるのも飽きてきた所なので交替。今度は押し倒す側に回った。ビクッと震えたカズは今の体制にも少し感じてるのかはぁはぁと息を漏らす。俺はネクタイで少しキツくカズの両手首を縛った。悲痛を感じながらカズは目を見開いて俺を見た。それから俺はカズを仰向けにさせて見つめた。カズは遮るものがなくて、戸惑いながら目を泳がせていた。時々俺を見つめつつ。

 

「……放置するか」

 

「…え?」

 

「飯も食べなきゃだし。腹減った」

 

「なら、俺も食べ…」

 

「お前はお仕置きだ」

 

「え!?」

 

「勝手に発情して勝手にし始めた。しかも教師ともあろう者が学校でって。教育上だめだろ?仮にも教師、されど教師だ。模範にならなきゃいけないのに、ここでおっぱじめるなんて。店だってら飼い主の俺はお前にこれ以上のお仕置きをしてただろう。だがあんたは俺の飼い主だ。命令は従わなきゃならねぇ。けどな?それとこれとは別だ。学校の鏡にならなきゃいけねぇ教師が、生徒に欲情するなんてあっちゃあならねぇ。許されるとしたら頭撫でたりハグしたりくらいだ。それ以上ってなってらもう、あのゴリラ達になる。幸い俺はあの時の記憶を断片的な所は省いても覚えてるには覚えてる。が、あれと同等にさせたいなら命令しろ。それは俺もあんたも『同意の上』だ」

 

「………………」

 

沈黙してしまった。正論しか並べられてない状況では何も言い返せない。もちろん、記憶喪失になった所は覚えてない。暴れたであろうところ以外は覚えてるので、その辺の話をした。それを思い出すとカズは思い出したのかビクビクと震えだし涙が出ていた。

 

「……ご、ごめん…なさい…っ、あの…っ…!」

 

「何だ?ご主人様?」

 

「……あっ、…名前を……っ」

 

「何だ?カズ」

 

起き上がって床に座り縛られた状態で土下座をし頭を床に擦り付け始めた。身体が震えてても謝った。

 

「……きょ、今日……部屋にっ、来て…下さい…っ。……この、続きを…したい、です…っ!」

 

「それは命令?」

 

「…っ、…あぁ、命令…っだ…」

 

命令を押す度に話し方を変えるカズ。しかしその話し方は今の状況と雰囲気には全く似合わず、本当はしたくなさそうだった。店では俺がご主人様だったからということもあって、学校内では逆でなければならないと今更になってカズは自分で言った言葉を後悔してる。面倒なことをしてしまったと。

 

「そ、それから…」

 

「ん?」

 

「く、首輪も持ってこい。特別な契約をする」

 

「わかった。カズの部屋はどこ?」

 

「1階の2号室…」

 

「1年猫組、まさにって感じだな?」

 

「まあ、そんな感じだ…」

 

1年は1階、2号室は猫。つまり『にゃー』号室。何を掛けて上手いことさせたのやら。寒いですね☆

 

俺はネクタイを外してやり一緒に飯を食べ始めた。隣で食べるカズはチラチラ俺を見てくる。気まずい訳じゃないけど食べづらい。ので、すぐ話題を変えた。

 

「カズ、ホームルーム件を聞きたいんだが」

 

「え?あ、そ、そうだな…!」

 

この慌てようだ。きっと無意識に見てたんだろう。とてもわかりやすい。弁当を置いて水筒のお茶を飲んでから話し始めた。

 

「っん。……ホームルームの事だな。お知らせとしては主に2つだ。1つは近々小テストのようなもんがある。それは授業がってことじゃない。抜き打ちテストじゃないだけマシなんだが、教頭と理事長らが1年の教室に入ってみんなの授業態度を見るそうだ。もちろん、それは教師である俺の評価も見るんだがまあそれはどうでもいい。それは猫組だけじゃない。他の1年クラスもだ。1年だけでもざっと5組はある。長く見ていればそれだけでも見て回れないからな。何分目安で見てるかは知らないが、それがある」

 

うへー、教頭先生っていつも皮肉しか言わない王道中の王道教師じゃん!さらにタチ悪いのは動物の生まれ変わりでしょ?モノによっては面倒だったりするやつじゃん!目につけられるとしたら猫先生みたいなやつってことでしょ?やだなー、そういう人…

 

それともう1つと言って話は続く。

 

「もうすぐ6月になる。梅雨の時期だ、その時に衣替えもあるだろう。その時にまた新入生歓迎会的な催しがある。もちろん、新入生歓迎会ではないんだが。生徒会と風紀委員会の合同でそういうお祭りがある。これもまた全員参加だ。強制のな。新入生歓迎会を知ってる者なら誰しもが噂してるお前の事だ、お前に捕まった暁にはどんなことされるかわかったもんじゃない。その辺りはちゃんとみんな強制参加に乗り出すだろう。良い意味でも悪い意味でもお前の影響は凄まじいという訳だ。その後もなんだかんだイベントが沢山ある。それが今回の話だ。というか次からは何か悩みがあったとしても、俺のホームルームを上の空で聞くのは禁止だ。わかったな?命令だからな?」

 

「仰せの通りに、ご主人様。……あ、一つ質問だ」

 

聞いてる最中に気になる所があった。その質問だった。カズは何だと言って俺の質問に応じる。

 

「教頭先生と理事長先生が来るのはわかったが、『ら』って何だ?」

 

「あぁ、そうだな。それも説明しておこう。その時は2年が見学会で居ないんだ。どこかはランダムで決まるからそのランダムのどこかに向かう。その時に空いた先生らが1年の教室に来るんだ。出入りが凄いことになるが、気になる教室で入り浸る先生やちょっと見たら次への人もいる。まあ、見世物みたいなもんだな。気にしなくていい。問題に意識するのは教頭先生と理事長先生がいつまでいるかだ。もちろん、他の先生だけだからって気を抜くのはおかしい事だがあの二人は結構厳しい。何を重点に置いてみてるかわからないからな。教頭先生は多分主に授業態度や教師を見てると思うが、理事長先生は謎だ。まあ、参観会みたいな形式だがそれも急遽決まったことだからな。大方、俺の教室を重点的に弱味を握りたいってやつだろ。1年で無理難題なことはさせないはずだし、なにより理事長がいる。下手な真似は出来ないだろうけど…」

 

「不安か?」

 

「いや、俺の不安じゃなくて飛び火で生徒にまで及ばねぇかがな…。俺に当たるのは今までと何も変わらずに対応できるが、生徒の誰かを人質とまではいなくともそれに似た何かをされたらと思うと、教師が教師を殴るなんてご法度だけどな?キレてやりそうだからさ。その不安だ…」

 

猫先生は本当に生徒思いだなぁ。ホストって所を除けば本当にいい先生だ。少しでも下僕として先生の役に立てれたらいいのにな…

 

「今さりげなくホストって所を強調しただろ?顔に出てたぞ、腐獅…?」

 

にっこり笑ってるがその目はすわっていた。笑ってるが笑ってないみたいな。しかし、普段なら青ざめてる俺だが切り替えてる間はその余裕もあるもんだ。

 

「言いがかりはよしこさんだぜ?ご主人様。口にもしてないことをあたかも口にしたと変換して『強調した』なんて、もし考えてなかったらどうする?今日の飯は何するかな?って言う悩みだったらどうする?それこそ言いがかりだろ?………それと、その言いがかりを尊重してお前の名前をカズじゃなくて『ホスト』にしようか?ご主人様。永遠に名前呼びなんてしないぜ?」

 

「それとこれとは話が別だろうが!しかも、さり気なく『ホスト』って言ってんじゃねぇ!!精々ご主人様くらいは付けろ!!」

 

「ホストご主人様?」

 

「ホストはいらねぇんだよ…!!」

 

怒りモードで俺の頭を掴みソファーの座る所に頭を押さえつけていた。幸い食べ終えたばかりだったのでこぼす心配はない。俺もやりすぎた部分はあるが、ここまでされる義理はない。後で謝るとして、今は片目だけにズラして眼孔でカズを見る。ビクッと震えたカズは手の力を緩める。眼孔で見つめたまま手をどかす。ビクビク震えるカズ。ガクガクと震える唇で思うように話せない。俺は同じようにカズの頭を掴み同じようにソファーに押し当てた。少し強めに押したので勢いが凄かった。それだけでカズの怒りはMAXに下がり、ある意味氷点下まで下がった。怖さMAX状態だ。

 

「わざわざ『ホスト』と呼んでまでやりすぎた所は謝る。悪かった。…が、頭を押さえ付けてまで俺を屈服させたかったか?なぁ?ご主人様」

 

「……あ、あの……っ!……ごめ、なさ…い……っ、その…っ、やり、すぎ…っ、まし、た…!」

 

「これで俺の口の中にまだ物が入ってたらいきなり過ぎて喉詰まらせてたかもな?食べ終えてたからいいものの、なぁ?ご主人様」

 

「……あ、あっ…、許、し……って……、そん、な…つも、り……はっ……。……み、つ…様……」

 

「お前の今日から名前は『ご主人様』。学校ではあんたが飼い主だからな、その辺りも踏まえてだ。けど、参観日の日は忘れるな。俺の名前を呼べば、もれなく『ご主人様』だ。教頭先生や理事長先生がこのことを知ってるならいいが、知らない場合はどんな目で見られるかな?それこそ、お前のさっき言ってた不安が過ぎるぞ?されたくない行為をされたいか?」

 

「さ、され…たく…な、い…。で、でも…っ、名前……っ!」

 

「名前?『ご主人様』だろ?」

 

「っ!!!」

 

完全に怒らせてしまったと思ったカズ。実際、切り替える前ならここまでしないけど切り替えてる間は融通が効かない。だからやりすぎることがある。でもそれは相手がやりすぎたことに限り、俺もそれなりにやり返す。そのやり返し度合いはやってきた分の倍返し。カズは俺の裾を掴んで、弱々しく引っ張り全身全霊で謝り倒す。ガチガチに唇を震わせながら、許して貰えるまで俺を見つめたまま謝る。大声を出せない分、声は殺してるがそれでも何度も謝る。何度も何度も。

 

店長の時はまだ青臭い少年だったからな、経験してきたからまだ抑えられてる方だと思う

 

「……ご、めん…なさっ…い……っ。……ごめ、なっ…さい……っ。……ミツ、さまぁ…っ。……で、です…ぎた……っ…まね、を……っ、しま、し…た…っ。……きら、われ……てもっ……、い、いか…ら……せめ…て、……な、まえ……を……。……なま、え……っ、だけ、で……い、い…から……っ、……よ、んで……くださ、い……っ……。…も、…にど、と……しま…せ、ん……」

 

完全に服従したカズ。これじゃあどっちがご主人様かわからない。

 

嫌われてもいい、か…

 

カズは俺の返答を待っていた。嫌われてもいいという覚悟で名前を呼んでくれないかと、懇願してきた。もうこんな風な時間も二度と来ないと思うと喋ってる時も泣いてたが、さらにボロボロと泣き始めた。でも唇を噛み締めて我慢してる。裾を掴んだ手も震える。全身全霊で謝った後は、全身がガタガタと震えてる。

 

緊張もしてるんだと思うけどね

 

俺はティッシュを持ちながらカズの頭から手を離した。それから手を拭いてもう一度カズを見る。手が離れたことも何も言わないことも、全部が答えなんじゃないかと思っている。まだガタガタと震えている身体で俺を見つめていた。俺は口を開けた。カズは目を強くつぶり、その時を待った。

 

「『カズ』」

 

『チュッ』

 

「!!」

 

俺はおでこにキスをした。それから手の甲にもキスをした。おでこでもビックリなのにさらに手の甲までとなると顔を真っ赤にするカズ。涙も止まる。

 

「ご主人様だから足の甲でもよかったが、さすがに俺自身がするのは変だと思ってな?やめた」

 

「そ、それは俺も止めてる……」

 

「おでこにキスをする意味は祝福と友情がある、手の甲は敬愛だ。鼻はオモチャだが。カズ」

 

「は、はいっ…!」

 

俺は手の甲を持ってもう一度唇を付けた。カズは顔を真っ赤にさせて俺を見ている。まるで王子様とお姫様の図だ。男同士だが、それは目をつぶるとして。

 

「愛情を持ってカズを敬愛する。ペットとしてになるが祝福をお前に与えると誓う。これはご主人様であるカズに敬意を表してる。それから、お前がペットであることへの再契約だ。特別な契約」

 

「特別…」

 

「あ、1つ言っておくが『お前だけ』じゃないぞ?」

 

「え…?」

 

「俺のルームメイトも特別な契約を交わした。普通の契約はペットとして服従させることのみだ。特別な契約はそれに『愛情』が入る。例えば愛ある暴力も愛なし暴力も、どちらも暴力だから大差はない。が、愛ある方は何かの目標を達成させたいがために相手にムチを打ってでも躾けること。逆に愛のない方はただ自分の欲求を満たしたいだけ、ことある事に自分のイライラを何かにぶつけたい時、ちょうどそこにお前がいたからという理由だ。これは例え話だが、俺の場合『口だけの契約は愛なし暴力』だが『愛情を持った契約は愛ある暴力』だ。まあ、例えを利用した感じだがそういう事だ」

 

俺の例えは難しい。これだけで人にわかってもらうのは至難の業かもしれない。案の定、カズも頭にハテナを浮かべている。

 

「つまり、お前を嫌うことはない。この先もずっとお前はご主人様で、俺のペットだ。俺からの契約がある限り、お前を縛り付けることになるが」

 

「それは!」

 

「…?」

 

「お前の側にまだ居てもいいのか…?俺はずっとお前に束縛され俺もお前を束縛して、ずっとそばに…。たとえそれが飼い主とペットの関係だったとしても、恋人だとか友達とかじゃなくても、お前のそばにいれるならどんな関係でもいい…!お前が許してくれるなら、俺はお前のそばにいたい…!お前のそばが落ち着くんだ…!それを許して貰えるならその契約がいい…!」

 

すごい意気込んでカズは俺をキラキラした目で見る。まるで小さな子どもが自分にだけお菓子を与えてくれる寂しがり屋みたいな。

 

つまり、喜んでくれたってことかな

 

俺は少し意地悪にカズを見て言った。上靴と靴下を脱いで差し出す。

 

「そう思うなら、俺の足の甲にキスしてみろ」

 

最初はえ?という顔をしていた。けど少し考えてから目を瞑り頬を赤らめて、俺の足の甲にキスをした。俺は目を見開いてカズを見る。

 

「一生尽くしますから、これからもよろしくお願いします…」

 

わかってる口ぶりだった。俺はあえてカズに質問する。答え合わせだ。

 

「足の甲にキスする意味は?」

 

「っ!!……えっと、…れ、隷属……。本当の意味でお前のペットになるっていう証…。そ、それと…」

 

「ん?」

 

カズが俺の指示とは関係なくスネにキスをした。俺はまた目を見開いた。

 

「…ほ…本当の意味で、あなたに絶対の『服従』をすると…、ここで誓います…」

 

意味もわかっててやったみたいだった。俺は口を緩ませ足を引っ込ませる。それからカズを抱き締めて頭を撫でる。カズは目を見開いて顔を赤くしていた。

 

「……ミ、ツ…様……?」

 

「これからもよろしくな?カズ」

 

「!……はい!」

 

「表向きは俺のご主人様、裏向きは俺の?」

 

「ぺ、ペット……です…」

 

耳まで赤くするカズ。俺はカズの弁当を持ちカズの口にアーンってする。カズは全身を真っ赤にさせてそれはさすがにという顔をする。

 

「今は?どっちの立場だ?」

 

「っ!!……お願い、します…」

 

「ほら、アーン」

 

「……あ、アー……ガチッ!」

 

カズの頭にハテナを浮かばせて目を見開いた。目をぱちくりさせて俺を見る。俺もキョトンとした顔でカズを見る。もう一度アーンってしてカズも食べようとするが、やっぱり同じようになる。カズが目を開けて食べようとしたら口の中に入った。カズの頭の中にはハテナがいくつもあって混乱している。俺は少し面白くて口が緩みそうになっている。

 

「ミツ様…」

 

「何だ?」

 

「面白がってません…?」

 

「どうしてそう思う?」

 

「時間無いのにずっと遊ばれてるから…」

 

「なんだ、バレてたのか」

 

「むぅ…」

 

頬を膨らませてムッとしてしまった。クスッと笑いながら後は普通に食べさせてあげた。監視のように目を開けて食べるがそれはそれでエロい。

 

もちろん食べ方がねw

 

上目遣いで俺を見てくるから食べる姿のカズを写真に収める。そしてパクッと口に含むカズも撮った。顔を真っ赤にさせて食べる。リスのように食べる。そうして全部たいらげたカズ。そして俺に命令してきた。

 

「『元に戻れ』」

 

「仰せの通りに、ご主人様」

 

手を後ろと前にさせて執事のように頭を下げる。そしてカチッと切り替えりニコッと笑う。顔がまだ赤い猫先生は俺の頭を撫でてきた。よく出来ましたと言うように。それからカーテンや鍵を開けて部屋を出ようとしたら耳打ちで。

 

「寮に戻ったら首輪を持って俺の部屋に来い」

 

と念押しされた。俺も頷いて数学教室から出た。ニコニコした顔で教室に戻るともう既に授業は始まっていた。

 

『ガラガラ』

 

戸を開けると一斉に俺を見てきて教師が俺に聞く。

 

「どこに行ってた?」

 

「猫先生に昼休み数学教室に来るよう言われて、お説教を食らってました」

 

「それだけか?」

 

「それだけとは?」

 

「質問してるのはこっちだが?」

 

「いや、その質問の意図がわからないので聞いてるんですが??」

 

「……………っ」

 

言い負かしてしまったが意図がわからなければ返しようがないので、質問合戦になった。するとレオがため息を吐き、俺のフォローをしてくれた。

 

「本当ですよ、先生。朝のホームルーム時にコイツがボーッと聞いてたので、その説教をするために来るよう言ってました。そして、ホームルームの話もその時にしたんじゃないでしょうか?それにこのクラスの中には猫澤先生を悪く言う子が沢山いますから首輪がついてると思います。先生も見た事があるのでは?」

 

「そ、そうだな。確かに見たことがある…」

 

「猫澤先生の下僕第1号がコイツです。説教以外にも手伝うことがあってそれをしてたら遅くなった、という事ではないでしょうか?」

 

「……なるほど、わかった。なら席に着け」

 

レオと照のフォローに俺は苦笑いで礼を言って席に着く。レオも照も深い溜息を吐きながら、俺の頭を軽く叩いた。それで許された。

 

大方間違ってない。まあ、『手伝い』というか、主に『躾』をしてされての方が正しいけど…。そんなことは問題じゃないので☆

 

授業は結構進んでてよくわからない感じになってるので、レオに見せてもらった。

 

うん、わからない☆

 

レオに返してから一応俺もノートを開く。とりあえず黒板に書いてあるやつは全部移した。小学生中学生がやるような初歩的なやり方で、とりあえず授業に出た。教科書を開いたりとかして先生の話を聞く。

 

猫先生可愛かったなぁ♪……まあ、色々あってもちゃんと解決しないといけないことはもう1つあるんだよね…。それが出来ないと今日のノルマは達成しない

 

それはトシのこと。朝の出来事でトシとはギクシャクする状態で終わっている。それが終わらないと俺の明日の萌ライフも始まらないと言うやつだ。

 

とりあえずこの後、猫先生の部屋に行った後にちゃんと決着つけないとな!またネガティブになってそうだけど、それはそれ。これはこれ!俺はポジティブにならんといけないのだ!!

 

そんなこと思ってるとあっという間に授業は終わった。再来週の授業で小テストをするらしいが、今俺の頭の中はそれ所ではない。ホームルームを聞いて荷物を鞄の中に、それからそそくさと教室を出ようとした。が、それも阻まれてしまった。レオと照が俺の腕を掴んでいる。みんなが帰った教室で2人に囲まれる。俺は何があったのかと青ざめつつキョトンとしてる。フォローしてくれたことに関しては感謝してるし感謝したし、他に何があるだろうか。

 

「フォローはした」

 

「うん…」

 

「助け舟を出した」

 

「うん…」

 

「なら、見返りを求める」

 

「うん……うん?」

 

見返り?

 

「ジュース奢れ」

 

「売店にあるジュース」

 

それだけでいいのか?

 

「何も聞かないでいてやるからジュース奢れ」

 

「俺達も散々お前に色々隠してきたし、な…?」

 

なるほど、ならフェアか

 

「わかった!寮に行く前に売店寄って好きなジュース奢る!俺も買おうと思ってたし♪」

 

「おう」

 

「あぁ」

 

3人で購買に行きレオと照の欲しいジュースと、俺の欲しいジュースを買った。袋は分けてもらいそれをレオ達に渡す。それからレオ達と別れて俺は寮の自分の部屋に戻った。鍵を貰って部屋の中に入る。鍵はかかっていたのでまだ帰ってきてないみたいだった。

 

うーん、まあ…。仕方ないか…

 

とりあえず俺は自分の部屋から首輪を持ち、ちゃんと自分の部屋の鍵も閉めてそれから寮部屋の鍵も閉める。そして1階の2号室に向かう。ちょうどそこにトシがいた。2人してビックリしたが、トシは後ろに下がり俺をエレベーターから出す。それから自分も入っていった。俺は去り際に一言。

 

「後で話がある。部屋で待つように。いいな?」

 

「……!……わかった」

 

それだけ交わして俺とトシは別れた。2号室に足を踏み入れると、またちょうど帰ってきた猫先生の姿があった。俺の気配に気づいてドアを開け待ってくれた。

 

「さっさと入れ」

 

「はーい、ご主人様♪」

 

猫先生の部屋の中に入った。ホストなのにタバコは吸わないみたいだった。無臭といえば無臭。

 

あとは、そこに住んでる人の匂いかな

 

「腐獅」

 

「はい?」

 

「『切り替えろ』」

 

「仰せの通りに、ご主人様♪」

 

言われた通りカチッと切り替わる。そして俺の口元はさっきとは違ってキリッとした表情になった。そして目もいつもとは違う。これから切り替わった時の俺。

 

「どうした?カズ。いきなりコレにするなんて、何かあったか?」

 

「いや、ただ……その状態でしたかったというか…」

 

「切り替わった俺より切り替わる前の俺の方がスムーズに終わると思うけどな?用事を済ませてからでも遅くないぞ?」

 

「そ、そうなんだけど…」

 

何か歯切れが悪い。俺はキョトンとした顔をする。

 

「ご主人様?」

 

「っ!あ、えっと…!落ち着く方での方が良いかなって…っ」

 

顔を赤くしてる。まるで恋に落ちた乙女のような。いや、もしかしたらもしかするかもしれない。

 

「カズ」

 

「な、なんだ?」

 

「一旦、お前の命令に背く」

 

「え?」

 

俺はカチッと切り替えた。学校で接してるいつもの俺になった。口元緩んで楽しげな。

 

「今から同じセリフを言うから、確認のためにさせてもらいたんだけどいい?」

 

「あ、あぁ…。い、いけど…」

 

「じゃあまずは……」

 

少し考えてから猫先生を座らせる。猫先生はまだ何が何だかわかってない様子。俺は猫先生の椅子に座り両靴下を脱いで、楽にさせそれからキスした方の足を差し出す。それをしてもまだ猫先生は状況を掴めていない。ので、あのセリフも言ってみた。

 

「ーー、俺の足の甲にキスしてみろ」

 

「!!」

 

切り替えてない状態でのこのセリフ。俺は真面目にそのセリフを口にした。ただ確かめるために。

 

本当に猫先生がちゃんとペットとして俺を慕ってるなら行動は1つ。キスをするはずだ、けど違うなら…

 

少し沈黙が走った。猫先生を見てると何か戸惑ってるように見えた。俺は猫先生に質問した。

 

「このセリフ、聞き覚えあるよね?猫先生」

 

「っ!」

 

「何でしないの?『カズ』」

 

「っ!?」

 

バッと顔を上げる猫先生。俺はキョトンとした顔で猫先生を見ていた。その名前は俺が、切り替えた時の俺が言う呼び名。それを切り替えてない状態の『通常』で言った。つまり、表向きの俺でその名を口にしてる。それは許されないことだ。だが、それは俺も確かめる必要があったからの行為だ。

 

「もう一度言うよ?『カズ』」

 

「!」

 

「俺の足の甲にキスし」

 

「やめろ!!」

 

「!」

 

怒鳴った。これで分かった。これだけで分かった。俺はカチッと切り替えた。

 

「『カズ』」

 

「っ!」

 

声やトーン、雰囲気が変わるだけで猫先生の表情は変わった。間違いない。これは。

 

「お前、俺に恋してるのか?」

 

「!!!」

 

その質問の答えは待つ必要はなかった。もう既に猫先生の顔に出ていたから。

 

あぁ、結局この人も『コレ』に魅入られた人の1人…。『コレ』も『俺』、なのに別物だと思って見る。まるで二重人格を見てるみたいな。店長もそうだったのかな?店長も『コレ』じゃなくなったから、解雇したのかもしれない…。本当の『俺』を見る人はいない…

 

心の傷はどんどん溝が深まり広がり増えるばかり。今はその気持ちを押し殺し切り替えた『コレ』で話を進める。

 

「まあ、言わなくていい。お前の顔で答えはわかったからな」

 

「!」

 

「その答えは保留だ」

 

「……!」

 

猫先生のあからさまな沈みよう。

 

「お前は『コレ』の状態で話を進めたいんだったな。さっ、始めろよ。カズ」

 

「わ、わかりました…!」

 

俺は首輪を取り出しそれを猫先生に渡す。

 

「えっと、それじゃあ正式契約をする」

 

「…………」

 

「通常契約は首に付けるが、正式契約は腕に付ける」

 

猫先生は俺の腕にさっきの首輪ならぬ、腕輪にして付けた。少し短くなった首輪は腕輪としても機能するらしい。猫先生は嬉しそうに笑いながら。

 

「これで契約を結んだことになる!これからよろしく、ミツ様!」

 

「………、そうだな」

 

俺の表情は今どんな顔をしてるんだろうか。ちゃんと笑えてるんだろうか。いや、多分笑えてない。心の傷が治らない所まで逝ってしまったからもしれない。

 

この後、トシと話すのに…。難しいかもなぁ…

 

俺のことを好きになってくれるのはもちろん嬉しい。それは誰だって嬉しいに決まってる。けど、そうじゃない。そうじゃないんだ。そういうことじゃないんだ。1度作った溝はどんどん濁流のように流れ、そして最後は溺れて死に至らしめる。まるでダムだ。

 

「えっと、次なんだが……って、ミツ様?」

 

「用事は終わったな。それじゃあ帰る」

 

「えっ?いや、待て!まだ終わってない!」

 

「これ以外の用事ってなんだ?当初の目的はこの契約をするためだっただろう?」

 

「そ、そうだけど…。まだ、その…ご褒美を…」

 

ご褒美、ね…。『コレ』から貰えるご褒美はさぞ極上なんだろうな…。俺よりも『コレ』から貰える方がいいんだろうな…。みんなもそうなのかな…?

 

俺は言われた通り猫先生の頭を撫でる。嬉しそうな顔して、幸せそうだ。なんだか店長に似てる。猫先生と店長をフラッシュバックする。

 

「『ミツ様!』」

 

「!!」

 

とても嬉しそうに俺の名前を呼ぶ。俺の目から光が失っていく。

 

こんな風になるくらいなら、最初から『コレ』でいればよかったのかもな…。そうすれば色々万事解決したかもしれない

 

俺の中で何かが壊れた。それから俺の中で何かが生まれた。『ソレ』は『俺』を支配した。『俺』は檻の中で閉じ込められた。でも悪い気はしてない。このままでもいいかもと思ってる。

 

誰だかわからんけど、俺の身体…好きにしてくれていいよ。けど、ちゃんと丁寧に扱ってね?俺の大切な身体だからさ?それと俺、なんだか疲れちゃった…。明日から『あんた』がその身体を動かしてくれ…。『俺』よりも『あんた』が動かす方が、保てる気がする…。ごめんな、不甲斐ない持ち主で…。悪いけど、今の『俺』を起こすのは辞めてくれ…。癒えるまでここに居させて…、お願い……しま、す…………

 

『俺』は眠りについた。その代わり『ソレ』が目覚めた。まるで本当に二重人格が出来たように。俺の心は修復できないほどにズタズタのボロボロに壊れてしまったから。『ソレ』はそのズタボロになった『心』を俺の檻の中に入れて、そこから立ち去った。

 

………、この身体。あんたが起きるまで俺が繋ぐ、だからあんたは寝てろ。傷が癒えたら交替だ。それまで俺があんたの代わりになる、言動がおかしいのはすまねぇが、許せよ?主

 

 

 

すまねぇが、『切り替わる』時の俺が人格として生まれた。同じ腐獅蜜だからこのまま進めるが、元の主が起きるまでしばらくの間このままとなる。まあ、表向きの性格の主が寝て、裏向きの性格の俺が起きただけだから、変に代わった所はない。が、これからの目線が主ではなく俺になるため萌え要素?が少なめになる。読者のお前らからは何も変わらず見てくれればいいが、見方が変わる。そこら辺を踏まえて、主が起きるまでの間はよろしく頼む。普段の腐男子?ぶりが無くなるからその辺りは大目に見てくれると嬉しい。





あ、1ページ前は4万だったのに今ので超えたw
15万文字書けるのって嬉しいね♪
短文書けない人には嬉しい機能だよ!

と、心の中での呟きでしたww
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