信じて送り出したド淫乱幼馴染みが真人間になって戻ってきた件 作:ナマクラ(18禁)
僕の幼馴染みは、鈴の音の似合う透明感がある少女だった。
栗色の髪を編み上げポニーテールを揺らす彼女は、大きな瞳に長い睫毛が愛くるしく、万人を幸せにする笑顔で笑う、間違いなく絶世の美少女だった。
ただ。
「んほぉぉぉぉぉぉ!! イグイグイグーっ!!」
彼女はそんな恵まれた容姿を、全てゴミ箱に叩き付けた。彼女の本性は、発情した獣のような表情が良く似合うド淫乱だった。
彼女は生まれつき、たまたま人より性への興味が突出していた。欲望を隠さず晒け出し、隙あらば何時でも股を開くド淫乱としか言えない女だった。
彼女が、性欲に目覚める前。
幼い頃は、誰しもが彼女に憧れた。性への興味へ目覚めていなかった彼女は、涼やかで凛とした雰囲気の美少女だった。
小学校ではクラスの中心人物で、大人びた言動で教師の信頼も厚い、模範的な生徒だった。
そんな彼女と幼馴染みで、僕はみんなから羨まれたものだ。僕と彼女は仲が良く、男女の垣根を越えてよく一緒に遊んでいたっけ。
彼女の様子がおかしくなったのは、中学校に入ってからだろうか?
「……こんな本を、拾った」
そう言って彼女が突きだしたのは、一冊のエロ本だった。
「……私と一緒に、これ読まないか?」
鼻を膨らませて僕にエロ本を見せてくる彼女は、幼心に衝撃だった。
何やってるんだよ。お前はそういうキャラじゃないだろう? そう心のなかで突っ込みながら、エロ本への興味に負けて僕は彼女と共にエロ本鑑賞に付き合って。
その日、僕は暴走した彼女に童貞を奪われた。13歳の夏の、ほろ苦い思い出である。
その日を境に、彼女は性に溺れていった。
僕は毎晩のように夜這いを仕掛けられ、彼女の要求は日に日にエスカレートしていく。
そして、一年程経った頃。
毎日彼女の欲望の捌け口にされて流石に体が持たなくなってきたので、僕から逆に彼女に色々と要求するようになった。
平たく言えば自己防衛だった。
最初から相手をするのはしんどいからまずは自ら慰めておけ、プレーが激しすぎるからちょっと縄で縛らせろ、見られて興奮するなら撮影しておくから勝手に発情してろ。
鬼畜外道な、命令ばかりを好んで出した。別に僕にそういう趣味があったわけではない。
正直なところ、僕は彼女に嫌われてしまいたかったのだ。幼い頃から憧れていた美少女は影も形もなく、僕の隣で寝ていたのは欲情に顔を火照らせた雌犬だ。
そもそも。何度も体を重ねていて、まだ僕と彼女は恋人関係ですらない。有無を言わさず夜這いされ、僕は延々と流され続けていただけだ。そんなただれた関係に、僕は吐き気すら催していた。
その、結果。
「もう、我慢できないぃ! 見られてもいい!! もっと、もっと激しくぅぅぅ!!」
平日の学校、生徒の行き交う廊下のど真ん中、発情した彼女は僕を襲って停学になった。
性欲に頭を焼かれた彼女は、他人に体を見られることに興奮してしまう彼女は、欲望に負け社会的に死んだ。
そんな彼女の異常性が明るみとなり、僕との爛れきった関係を知った彼女の両親は、遠くへ引っ越し彼女を転校させることにした。
妥当だろう。その噂は校内で知らぬものはない。廊下のど真ん中、欲情に頬を染め全裸で男に股がった写真が学校の掲示板にアップロードされている。
彼女にもう、学校に居場所はない。
そんな彼女が、別れ際に最後に告げた言葉はこうだった。
「私の転校先についてきてくれないとか、放置プレーと考えて興奮する」
もうダメだ。そう、思った。
ニタニタと笑みを溢す彼女を、僕は諦めた顔で見送った。
あの女は、きっと水商売が天職。夜の街で自らの美貌を売り、欲望のまま性の捌け口にされ、一生を終える女だ。
だから僕は彼女を忘れることにした。
僕が今まで彼女を相手していたのは、どこか期待していたのかもしれない。昔の、あの凛とした雰囲気の美少女に戻ってくれることを。
僕が憧れた、あの澄んだ目をした美少女にもう一度会いたかったのかもしれない。
────深夜、真っ白な無地のDVDを再生機に入れる。
そして、だらしなく涎を垂らし、僕に股がって一心不乱に腰を振る彼女の映像を再生する。
その扇情的な姿に、僕は溜め息を溢した。……憧れの女性は、そこには映っていない。
そして、僕は高校へ進学した。
僕は被害者と言う位置付けだったため、停学にもなっていないし陰口を叩かれたりはしなかった。
僕が心底、悲しそうに彼女の話をしたのが効いたのだろうか?
あの事件のあと、僕を揶揄する声は一週間と経たずに消え去って、皆が同情的な視線を送るようになっていた。
だがそんな優しい同級生達とは別れ、僕は一人、他県の進学校へ入学した。
僕自身は陰口を叩かれてはいなかったが、やはり学校に行くのは苦痛だった。下衆によって掲示板にアップロードされる彼女の写真には、常に泣きそうな顔をした僕が彼女の下で情けなく尻餅をついていたからだ。
それは、晒し者に他ならなかった。僕は自己防衛のため、地元から逃げ出した。
「…………あ」
そして、僕は他県へと進学した。
全てはあのトラウマから逃れるため。あの脳の腐ったクソビッチを忘れるため。
忘れたい過去に決別するため。
「嘘、だろ」
その進学校の、入学式。
生徒代表として、答弁を行っていたのは。
────忘れたい過去そのものである、彼女だった。
こうして僕と彼女は、数年ぶりに再会した。
女生徒の噂は、容易に聞けた。
その栗色の髪の女は、入学試験一位の秀才だった。
そういえば、アイツは昔から優秀な女だった。何をやらしてもソツなくこなし、小学校の時点では誰もが憧れる才媛だった。だがその実態は、ただの色狂い。
幸いにも、彼女とクラスは違っていた。
だから僕は、彼女に話しかけるような事はしなかった。彼女と仲が良いと、思われたくなかったからだ。彼女の性欲のはけ口であった過去を、誰にも知られたくなかったからだ。
男としてのプライドだった。親に無理を言って下宿までして、この学校に入学したのだ。気軽に転校は出来ない。
ならば。僕とあの女は、赤の他人。そういう事にしてしまえばいい。
その入学式の夜、僕は悪夢にうなされた。
夢の中、彼女は僕を見つけ出すと所かまわずまとわりついてきて、必死で無視を続けた僕に一言、「放置プレーは興奮する」と笑う夢だった。
本当に起こりうるかもしれない、その未来に僕は嗚咽をこぼした。
次の日。
朝一番、僕は靴箱の前で凍り付いていた。
手紙があったのだ。彼女の名前の綴られた手紙が、僕の靴箱の中にあったのだ。
めまいが止まらず、僕はその場にうずくまった。
気付かれていた、僕の存在があの女に気付かれていた。その事実が、恐怖が、僕の臓腑をえぐった。
何が書いてあるのか。あの女は、今度は僕に何をさせるつもりなのか。
震える手で、僕はその手紙を開いた。
『貴方が望むなら、私は二度と貴方には関わらない。だけど、どうか一度だけ私と会ってほしい』
それは、シンプルな文面だった。
書道家のような達筆で、2行だけの文章が記されていた。
『どうか、一度だけで良い。身勝手も承知だ、私に謝らせてくれ。放課後、屋上にて待つ』
手紙に記されたのは、たったその2行だけだった。
放課後。僕は、屋上に出向いた。
罠かもしれない。彼女は僕をおびき寄せて、以前のような好き勝手をするつもりかもしれない。
だけど、何故か出向こうと思った。彼女に会わないといけないと感じた。あの女を乗り越えないと、僕は一生女性が怖いままだと思った。
屋上は、立ち入り禁止の張り紙がしてあった。つまり、中に野次馬はいない。僕は誰にも見られないよう周囲を警戒しつつ、こっそりと屋上への階段を上った。
そして屋上には、彼女が一人立っていた。
彼女のトレードマークだった栗色の髪は、成長してしなやかな長髪になっている。新品の学生服に身を包み、胸元で小さく手を握ったその少女は、まっすぐに僕を見据えていた。
────その眼は、澄み切っていた。
「久しぶり、等と気軽に挨拶を交わしては君に失礼かな」
聞いたことの無い声色で、彼女は僕に語り始めた。その雰囲気は、以前の彼女のモノではない。
底冷えするような欲望が、今の彼女からは微塵も感じられない。
「私が愚かだった。愚かな欲望に飲まれ、調子に乗っていた。自分が良ければそれでいいと身勝手なことを考え、君を傷つけてしまった」
そう言って、彼女は屋上に膝を付いた。
「本当に、すまなかった」
その言葉に、嘘は感じなかった。
僕を罠にはめようだとか、隙を見て襲い掛かろうだとか、そんな下心はないと思った。
その日。誰もいない無人の屋上で、かつて僕が憧れていた女性は無様に土下座をしていた。
僕に向かって、目に涙の雫をこぼしながら、肩を震わせて土下座していた。
その後彼女と話し合い、僕と彼女は赤の他人だと言うことにした。知り合いだったと言う事実は、隠してしまう。
変に過去の関係を探られると、あの事件に行きつかれる可能性があるからだ。せっかく他県に来てまで逃げ出した過去を、掘り起こされるのは御免だった。
彼女としても、その方が良いだろう。彼女が全裸で僕にまたがったあの写真は、学内掲示板から一般サイトに転載されている。その写真は加工され僕にはモザイクが入っていたが、無修正の彼女は見る人が見れば一目で気付くだろう。
全裸で男に股がる写真が広まってしまえば、彼女の学園生活は終わる。
まっとうになった彼女は、僕にあの事件を口止めしたかったのかもしれない。だから、こうしてアポイントを取ったのだろうか。
「それは違う。この謝罪に、下心なんて何も込めていない」
だが、彼女はそう言ってうつむいた。
「君が罰だと言って、この学校で私のそういう写真をばらまいたとして、私は甘んじて受け入れよう。学校中で陰口を叩かれ後ろ指を指される苦痛に耐えて見せよう。だってそれは、君が耐えてきた苦痛そのものだろう?」
目を細め、肌に爪を立てて、彼女は大粒の涙をこぼして、こう続けた。
「私から君にできることは、謝罪することだけだ。誠意を見せろというなら、何でもやろう。金が必要なら何としてでも用意するし、二度と関わるなというならそれで構わない。二度と会えないと思っていた、二度と謝れないと思っていた君に再会できただけで、これ以上私が望むことはない」
ごめんなさい、ごめんなさい。
彼女は手で顔を覆い、僕に向かって詫び続けた。そんな彼女を見て、僕の何かが消えていくのを感じた。
今まで僕を苦しめていた何かが、消えていくのを感じた。
この日、僕を苦しめ続けていたあの獣のような性の怪物は、もうこの世に存在しないのだと知った。