信じて送り出したド淫乱幼馴染みが真人間になって戻ってきた件 作:ナマクラ(18禁)
季節は冬。
乾いた風が肌を締め付け、吐いた息が微かに曇るそんな季節。
奇跡の回復を遂げた馬鹿が舞い戻り、以前と変わらぬ活気に満ちた僕達のクラスは、来るべき学園祭に向けて意気揚々と準備作業に追われていた。
「結局、あのパンツは誰のなんだ? アンズちゃん、それともちーちゃんあたり?」
「んー。内緒」
不幸な事故に遭い、生死の境をさ迷った男は、JKのパンツに導かれ
しかも足を失った筈の彼は、普通に歩いてクラスに登校してきた。パンツへの執念で足すら生やしたのだろうか。
だが聞くと、それはいわゆる義足と言うヤツらしい。言われてみれば、やや不自然な歩き方をしていた。
彼の主治医は足の切り落とす範囲を最小限に抑えて、義足をつければ日常生活に大きな支障は無いレベルに足を残して見せたと言う。
随分と腕の良い医者に当たったモノだ。
「あのパンツ、すんごいフルーティなんだけど。俺にはわかる、絶対に超絶美少女だろあのパンツの持ち主」
「んー、んー……肯定しておくか」
「だよな! だよな! あのパンツを貰えたお陰で、片足を失った甲斐があったって前向きな気持ちになれるんだ!」
「お前の境遇を知ってわざわざパンツを差し出してくれた少女だ。よくよく感謝しておけ」
そんな幸運な彼は、学校であまり落ち込んでいるようには見えなかった。ヤツはクラスの女子に、自慢げに本物そっくりの義足を見せては話しかけた。
『面白いでしょ? でもまだ歩くのは危なかっしいんだ、今度一緒に出掛けてくれない?』とデートに誘うその様は、足を失うに至った
だが、彼は失った足を話のネタにはするものの、決して自らの不幸をクラスで嘆かなかった。いつものように下品で性欲に満ちた話題を好んで、笑顔で楽しげに話し続けた。
変に気を使われないようにという、彼なりの配慮だろう。
「てか、マジで誰のパンツなのよ? このバカにパンツくれてやるとか、その心は慈母神のごとしじゃね?」
「その誰かを話すつもりはない。絶対にだ」
「あー……成る程、絶対に口を割りそうにないよなお前。だからお前に託したのか、その女の子」
「納得納得。アンタが女子のパンツ持って見舞いに行ったって話を聞いてギョッとしたけど、確かに内緒でこのバカにパンツあげるつもりならアンタ経由するわな。アンタより口固い男子居なさそうだし」
そして、僕もパンツを持って見舞いに行った下りが学校に広まり奇異の目で見られたが、上記のような理由で勝手に納得されてしまった。
単に幼馴染みの名前を出すと、過去を掘り起こされそうだから嫌なだけなんだが。まぁ、納得してもらえるならそれでいいか。
自分でも何でコイツの為にあそこまで手を尽くしたのかよく分からない。
ただ、手術が終わって顔面を蒼白に眠るこの男を見て『何とかしてあげないといけない』と、そう感じてしまったのだ。
「というかさ。そこまでして差出人隠したがるって、つまりその子俺に惚れてるよな絶対!! 普通お見舞いでパンツなんかくれないって!!」
「普通お見舞いにパンツを要求もしないけどな」
「いつかその、パンツをくれた子が俺に告白してきてくれる日を待つとしよう。恥ずかしかったら、こっそり手紙をくれてもいいんだぜ!」
戻ってきたバカは、相変わらずポジティブだった。パンツの主を、自分に好意を抱きつつも素直になれない女の子と解釈してニヤニヤしている。
残念なことにパンツの主は、君に惚れているどころか面識すら無い。
……ちなみに、ご覧の通り。この男は、自分が貰ったパンツの持ち主を知らないのである。
実は僕がパンツを持って見舞いに行ったその日、この男は意識朦朧として夢の中だった。だが、疼痛と苦痛で夢うつつとしている中、ぼんやり僕の声が聞こえたのだと言う。
JKのパンツを上げるから、無事に戻って来いと。
実に中途半端にではあるが、僕の声は確かに彼に届いており。それにより奮起し、コイツは死の峠を乗り越えたというのだから、僕のお見舞いにはちゃんと意味があったのだ。
幼馴染が下着を失ったのは無駄ではなかったのだ。パンツで人の命を救った女子高生なんて、世界広しと言えども彼女だけではないだろうか。
「俺はいつでもウェルカムだ! どうか恥ずかしがらず、いつでも俺に告白してきてくれ!!」
馬鹿は実に陽気に、クラス内で叫ぶ。
ザワザワ互いに探り合っている生徒達を尻目に、どこか遠くのクラスでクチュンと女生徒のくしゃみが聞こえたような気がした。
そして騒がしい昼休みも終わり、HRの時間。
「別に異性に興味を示すなとは言わない。だけど、異性への興味を隠そうともせず振り撒く事は感心しない」
「うるせーな、俺の勝手だろ」
JKパンツの話題が飛び交う低俗な我がクラスに、お堅い事で有名な我が校の生徒会の面々が視察にやって来た。
彼らは、学園祭の出店の進行状況と安全性の確認の為に全クラスを回っているらしい。この中には当然、険しい顔をした幼馴染みも生徒会の腕章をつけて闊歩している。
「男がエロくて何が悪いんだよ? お前だって母親の股ぐらから生まれてきたんだろーが。お前の父ちゃんと母ちゃんのスケベ心の産物だろうが」
「TPOを弁えろと言っている。貴方の母親だって、時間も場所も選ばずにそういう行為をしていた訳では無いだろう」
だが、その生徒会による視察の最中。
第一学年にして生徒会の書記を勤める傑物、我が幼馴染みは猛然と馬鹿に突っかかっていた。
何とも間の悪い事に、あの馬鹿はHRの途中『獲得したJKパンツがいかにフルーティーか』を力説し始めたのだ。そしてパンツの言論が最高潮に盛り上がっていた瞬間、彼女達は来訪した。
生徒会長が注意するより先に、幼馴染みが馬鹿に恫喝する。自分のパンツの味について、あそこまで力説されると文句のひとつも言いたくなるのだろう。
「私は、そう言った話が苦手な子を知っている。その子が、深く傷ついていた事も知っている。……少なくとも、そういう話は友人同士で集まった際に留めておけ」
「へいへい、良い子ちゃんですねぇ次期会長様は。白けちまったぜ、まったく」
その正論の暴力に叩き潰された哀れなるお馬鹿は、幼馴染みに睨みつけられ黙らされた。
この二人、何やら相性が悪いらしい。実に意外である、二人とも性欲まみれの似た者同士だというのに。
そんな二人を頭が痛そうに眺めていた生徒会長(2年)が、手を叩いて凍りついた場を仕切り直す。
「さて、そろそろ仕事をしましょう。ここのクラスは、まだ出店の内容を提出していない様ですが……、期日は今日ですよ?」
「今まさに話し合って決めてたんです~、どっかの出しゃばりが割り込んで説教始めたせいで中断されましたけどー」
「おや? 貴方のパンツがどうのこうの言ってた話は出店の内容だったのですか? ならば、断じてこのクラスの出店を許可できませんが」
「その馬鹿が1人でパンツの話をしてただけです、無視してください生徒会長」
「あっ! あんずテメェ!!」
あんずちゃんの告げ口を聞き、真冬の如く冷めた目付きで馬鹿を見つめる幼馴染み。
実に不満げに、苛立った表情で僕の幼馴染みを睨み付ける馬鹿。
本当に相性が悪いな、あの二人。僕の親友と幼馴染みが修羅場過ぎる。その原因の一端は僕にある気がするけれど。
大体あのパンツのせいだよね。
「会長、ウチのクラスは『喫茶店』で大体決まってるんです。で今、『メイド喫茶』にするか『女装喫茶』にするかを多数決で決める所なんで少し待ってくれませんか!」
「ほぉ、なかなかエキセントリックな出店ですね。ですがメイド服と言っても、オリジナルのモノは認めませんよ。演劇部の所有するモノに限ります」
僕達のクラスの模擬店を聞いた生徒会長は、生暖かい目でクラスを見渡した。一方で幼馴染みはガン、とズッコけて壁に頭をぶつける。そうだね、僕も最初はそんな反応だった。
ウチの学校では例年、数組は必ず痛い出店をしている。特にメイド喫茶は、かなりの頻度で学園祭に出店されていた様だ。
その際、演劇部の倉庫に眠るメイド服を借りて衣装として用いるのが恒例だ。むしろ、演劇部にメイド服が置いてあるからこそメイド喫茶がよく出店されるのかもしれない。
「メイド喫茶は分かるけれど、女装喫茶とはどのような内容ですか?」
「女子に制服を借りた男子が接客します。女子が接客するメイド喫茶と違って、女子を厨房に回せるので料理の味も保証できるのが利点です!」
「コストもかからないし、ネタになるかと。ダメですか?」
「……まぁ、過去に似たような事をやったクラスも有るみたいですね。ええ、認めます」
そしてたった今承認を受けた、我がクラスのもう一方の痛出店候補が女装喫茶だ。因みにこれ、女子側の提案である。メイド服を着るのが嫌なのだろうか。
女装喫茶は成る程、メイド喫茶よりオリジナリティはあると思う。だが、男子の被害が大きすぎないかという突っ込みもある。
後、何故か幼馴染みが悶え苦しんでいた。高校に入学してまともになったと思ってたけど、まだまだ彼女は変わり者の様だ。
何でHRの最中にヘッドバンギングし始めたんだろう。
「このクラスには明らかに女装が似合うヤツ居るし、儲けるつもりなら絶対にこっちの方がいいって! メイド喫茶とかもう何度もやられてるじゃん!」
「バカ野郎! 現実のメイド喫茶に行ったって、30近いオバサンどもが痛々しいコスプレしてるだけだぜ! リアルJKのメイド喫茶とか、学園祭でしか実現できんだろーが!」
「アンタ、クラスメイトを何て言う目で見てんのよ!! それ聞いて絶対にやりたくなくなったわ!!」
と、まぁこんな感じで、先程から話し合いは平行線。
僕達のクラスの意見は真っ二つである。僕としては正直どちらでも良いのだけれど、議論してる連中には譲れないものがあるらしい。
ただ女装喫茶が提案された瞬間、周囲から視線を感じたのは一体何なのだろう。何故か、今も幼馴染みから強い視線を感じる。
「なぁ、親友! ここは一丁、女装喫茶に票合わせようぜ」
「む。意外だな、君はメイド喫茶派と思ったけれど」
「……クラスメイトの女子の制服が、合法的に着られるチャンスなんだ。頼む親友、票を合わせてくれ」
「ブレ無いな君は」
そして
女装する羽目になったとしても、女子の服を着たいのだろうか。
「なら、この場で私が多数決を取りましょう」
そんな馬鹿馬鹿しくも白熱した議論にため息を溢した生徒会長は、僕達を宥めるようにそうのたまった。
「いずれにせよ期限は今日までです、早く出し物を決めてもらわないと生徒会としても困ります。もう、多数決を取って問題ありませんね?」
「良いですよー」
「メイドさん! リアルJKメイド喫茶ぁ!」
「女装……、前から興味あったんだ」
生徒会長の提案に、俄然として沸き立つ級友達。
その、あんまりに欲望むき出しな恥態に軽い頭痛がした。進学校と言うのは、治安が良い代わりに頭が悪い人間が多いのだろうか? 見渡せば、各々が欲望に満ちた目で鼻息荒く投票を心待ちにしていた。
メイド喫茶か、女装喫茶か。
僕から言わしてもらえば、どちらでもかまわない。どちらも同じくらい、見てて痛い。
とは言え学園祭で、『ちょっと痛い出し物』がウケ易いと言うのも理解している。メイド服を着ていたり女装している連中の喫茶に、興味本意で顔を出してみようと言う生徒は多いだろう。
だから、僕はどちらの出店になろうと構わないのだ。淡々と、僕に割り振られた仕事をこなすのみである。
「頼むぜ親友」
「はいはい、合わせますよ」
上記より断る理由も無いので、僕は親友たる馬鹿の提案に乗ってやることにした。多数決の際、女装喫茶に手を上げておく。男子で女装喫茶に手を上げてるのは……僕と馬鹿を含めても数人だけだ。
して、その結果はと言うと。
「僅差ですが、女装喫茶が当選です」
「よっしゃああ!!」
「嘘だぁあ!!」
僕達の出店は、女装喫茶に決まった。親友は両手を叩いて喜び、メイド喫茶を推していたオタクが地に手をついて慟哭している。
端から見ていると、実に面白い連中だ。是が非でも友達等と思われたくない。
因みに女子は、満場一致で女装喫茶に手を上げていた。男子から造反が出てしまえば、この結果も然るべきだろう。
「では、女装喫茶で登録しておきます。ただし、喫茶店であるならメニューを期日までに届け出てください。提供して良い食品か審議します。基本的に、ナマ物や火を扱う料理は禁止です」
「「はーい!」」
「それと、女装させる際はきちんと本人に許可をとってください。間違っても、嫌がる生徒に強要したりしてはいけませんよ」
「「はーい!」」
そんな、淡々とした事務連絡を黒板に書いて生徒会長は出ていった。それに付随し、生徒会の面々も僕らのクラスを後にする。
それにしても、女装喫茶か。おそらく、僕みたいな普通の男が女装したところであまり面白くはないだろう。
とは言え、僕の女装が免除されるとは思わない。クラスの男子の間に不公平感が出るからだ。恥を共有するため男子は全員で女装、と言う展開になると思う。
僕は絶対に女装は嫌だ、なんて空気の読めない事を言うつもりもない。せっかくのお祭りだ、少しばかりの恥は覚悟しておくべきだろう。
────だが。この時の僕は、親友含めクラスの女生徒軍団の目が怪しく光っていることに気付いてすらいなかった。
Tips:主人公は女顔