信じて送り出したド淫乱幼馴染みが真人間になって戻ってきた件 作:ナマクラ(18禁)
「……口に合うかは分からないが。私で良ければ、君たちの分の夕食をこしらえておく」
「ああ、任せる。お前の事だから、どうせソツなく料理もこなすんだろう?」
「期待には応えよう」
僕の家に紛れ込んだ、明らかな異物。やむを得ない事情で仕方なく泊める羽目になった、かつての僕のトラウマと言う言葉の象徴。
そんな栗色の髪の制服少女は、僕の許可を取るや否や冷蔵庫の物色をはじめ料理の下ごしらえを始めた。
「なぁ親友」
あの女に限って料理下手などとは思えない、何をやらしても、当たり前のように期待値の上限を叩きだす女だ。小憎らしいことに、神様は彼女に2物も3物も与えたらしい。
手際よく野菜を刻んでいく幼馴染の背中を眺め、僕は小さなため息をこぼした。
「なぁ、親友ってば」
「どうした? ちゃんと聞こえているから、話を続けてくれ」
「……説明はまだか? この状況に対する、俺への説明義務は?」
「深く考えるな。見たままだ、受け入れろ」
「何一つとして理解できる状況じゃないんだが!? 何で当たり前のようにあの娘に料理作らせてんの!? もう付き合ってんの!?」
「気持ち悪い事言うな、あの女と僕は赤の他人だよ。アイツがどうしてもと頼み込むから、仕方なく泊めてやっただけ」
「あった初日の女を家に連れ込んでる時点で大概なのに、そこに俺を呼ぶ意味は何!? え、3人? まさか3人なのか!? 俺にも出番はあるのか!?」
「落ち着け、さっきからお前は何を言っているんだ」
親友の頭の中は、相変わらずピンク色だった。やりたいなら二人で勝手にやっていろ、そこに僕を混ぜないでくれ。
「……今から話すことは他言無用で頼むぞ。僕は、君を信用しているから話すんだからな」
「え? あ、ああ。男の約束だな、じゃあ誰にも話さない」
「信用している。じゃ、まずあの女の正体なのだが……」
で。流石にこんな状況で、親友に何も話さない訳にはいかないだろう。この男は結構義理堅いし、僕の過去を話してしまっても大丈夫だ。
そう思い、僕は前の学校での出来事から今日の幼馴染の父親の襲撃について逐一漏らさず教えてやったのだった。
「和食だ。簡単なものだが、召し上がってくれ」
「……」
「やっぱり、普通に旨そうだな。昔からお前は、やれば何でも出来る女だった」
「一応、花嫁修業の真似事もしていただけだ」
「そうかい」
親友と話が終わったころ、彼女は僕達を食卓に呼び入れた。案外、話が終わるのを見計らっていたのかもしれない。
食卓に並べられたのは、湯豆腐に味噌汁、煮魚に野菜のお浸しといった純和風の献立。いかにも真面目そうなこの女が好みそうなメニューである。
まぁ、真面目そうなのは見た目だけなのだが。
「……」
「親友、何を黙り込んでいる。ほら食べるぞ、いただきます」
「む? 和食は嫌いだったか?」
「いや。……いやいやいや。色々と理解が追い付いていないだけだ、すまん……」
話を終えた親友の反応は、頭を抱えて黙り込むといった古典的なものだった。まぁ、あんな話を聞かされたら頭を抱えたくなる気持ちもわかる。
この女がいかに酷い女か、よくわかっただろう。
「その……首席様よ。さっきのコイツの話、聞こえてただろ? アレって事実なの?」
「つつがなく事実だ。当時の私は若く、理性が足りなかった」
「……し、調べたらお前の全裸写真がネットに転がってんの?」
「ああ。調べるのは勝手だが、学校では絶対に他言無用で頼む、私自身の風聞を気にしているのではなく、彼を苦しめることになるからだ」
「いや言わねぇよ、てか言っても絶対信じてもらえねぇし。はぁー、人は見かけによらないというか」
親友は微妙にドギマギとしていた。幼馴染の裸が気になるらしい。
何をそんなに意識してるんだ、童貞じゃあるまいに。女子高生のエロ画像くらいネットにいくらでも転がっているだろう。
「そ、その、他意は無いんだが? ど、どんなワードで検索したらその画像は出てくるんだ……?」
「黙秘する」
「僕も良い思い出がないから言いたくない」
「そ、そっか。オッケーオッケー」
だがまぁ、性欲の権化たるコイツにとっては気になるのも仕方ないことか。
「え、そのもう一個聞きたいんだが。お前ってお金払えばヤらせてくれたり……」
「……説得力に欠けるかもしれないが。これで結構、私は一途なつもりだ。二度とそんな目で見ないでくれ」
「えー……、はあ。オッケー」
「というか、親友。そもそもコイツの実家、かなり金持ちだからお金では動かんと思うぞ。そういう事がしたいならアプローチを変えた方が良い」
「アプローチ?」
ふぅ、と僕はため息を吐く。親友がヤりたいなら、この女はいつでも股を開くだろう。この幼馴染は好きに持っていって良いから、そのまま戻ってこずホテルで一泊してくれ。
正直、僕としてはそっちの方がありがたい。
「……私の貞操観念が緩かったのは認めるが、尻まで軽い等と誤解はしないでくれ。私が今までそういうことをしたのは君だけだ。どうアプローチされようと、君以外の人間には────」
「うるさい。で、どうする親友? コイツ抱く?」
「え、いや、その。出来るなら、それはすごく、ハイ。でもどうやって……」
チラチラと鼻の下を伸ばし、幼馴染を盗み見る親友。両腕で胸元を覆い、警戒心をむき出しにしている幼馴染。
別に難しく考える必要はない。単に命令すればいいだけなんだから。
「ま、ボクと彼女は聞いての通りの関係な訳で。……おいお前、今から親友とホテル行ってこい」
「……っ!」
「で、そのままこの部屋に帰ってくるな。あと、今夜は絶対親友の言うことに逆らうな」
「え、ちょっと。お前何言ってるの? その娘お前の元カノじゃないの?」
「断じて違う、一度も彼女と恋仲になった事なんてない。ただ、コイツは僕の言うことには絶対逆らわないだけ」
ま、これで一軒落着。親友をわざわざ呼び出した甲斐があった。
性欲の権化同士、きっと幸せな一夜を過ごして来るだろう。
「─────っ」
「え。ちょっと、マジで? そんなんで良いの? てか親友、お前はそれでいいの?」
「僕としてはむしろそっちの方が有難いくらいで。やっぱり家では、一人の方が落ち着くんだ」
「─────、ん─────」
「いやそうじゃなくて!! 書記ちゃんガン泣きしてるんだけど!? 口元振るわせて、必死で声押し殺して泣いてるんだけど!?」
「そういう女を抱くのは嫌いか?」
「嫌いだよ!! 心が痛すぎるわ!! 何で俺はポロポロ泣きながら命令されて無理やりヤらされてる女の子で童貞卒業しないといけないんだよ!! 史上最悪の童貞卒業だよ!!」
「え。お前、童貞だったの?」
「悪いかド畜生! あの交通事故さえなければ今頃俺は、俺はっ……」
「あー……」
確かに、この幼馴染で童貞卒業は可哀想か。
「じゃあ、今の無しで」
「本当か……? 私、ゴイツとシなぐて良いのか……?」
「悪かった書記ちゃんゴメンね!? 俺が変な事言ったせいで本当ゴメンね!?」
「でもそれが、私に与えられる罰だと言うなら、私は、私は……」
「心痛いからそれ以上はやめて!? てか親友も親友だ、お前ちょっとそれはやりすぎだっての!」
ゴチン、と親友は僕の頭に拳骨をかました。ジーンと鈍い痛みが走る。
「痛い。何をする」
「お前らの関係がどうで、その結果としてそんな塩対応してるとか知らねぇ。ただ、何となく今のお前はムカついたから殴った」
「ムカついたって……」
「話聞いてると、確かにお前は酷い目に合ってる。だからお前が感情的になるのも良く分かるよ。でもさ、俺の知ってるお前はさ、『理解できる』程度の嫌なことなら淡々と無感情に流していく人間だ」
そして、この男は今しがた殴りつけた所をグリグリと撫で始め、
「アホみたいに冷静沈着事なかれ主義のお前が、そんな意固地で感情的になってるって事実。それがもう、殆ど答えなんだよ」
「何が言いたいんだ」
「まぁ、つまり。さっきのお前の行動は、お前の親友で有れば有るほどムカつく行動な訳だ。自分傷つけて悦に入ってんじゃねぇぞお前」
「……いや、すまん。本当にお前の怒っている意味が分からないんだ」
「気付いてないのね、了解。はぁ、余計なこと知って余計な仕事抱え込んだ気分だ」
僕はいきなりぶん殴られてしまった訳だが、何故か怒りは湧いてこなかった。それは先ほどの親友の拳が、まるで僕の代わりに僕を殴ったような錯覚に陥ったからだ。
自分でも何を言っているのかよく分からない。
「……何、私の目の前で彼を傷つけてるんだお前」
「ちょ、違う! 今のは親友的なパンチだ!! だからノーカウント!」
「何だその言い方。当て付けか? 自分の方が仲が良いぞと言う自慢か?」
「あーもうコイツら面倒くせぇ!!」
でも、よくよく冷静になって考えたらやっぱり殴られた事にほんのり腹が立ってきたので、親友を壁際に追いつめる幼馴染に対し仲裁せずノンビリと構えることにしたのだった。
「……でだ。そろそろ寝る訳だが」
「親友。今夜は僕と一緒にベッドで寝てほしい。いつ理性を失った獣が襲ってくるかわからん」
「も、もう二度としないから!」
就寝に当たり、一つの大きな問題が発生した。それは、寝床が足りない事である。来客用の布団と、僕が普段使っているベッド。この家にある寝具は、この二つだけだ。
「お前と一緒に寝るのか……、あーっと」
「何、嫌なの? あの女と一緒が良いと言うなら、僕は別に気にしないけど?」
「何で今ちょっと拗ねた顔になったお前」
まぁ、これに関しては元から親友と一緒に寝る予定を立てていた。幼馴染を床で寝かせる案も考えたけど、奴が理性を失った瞬間すぐ傍に親友がいる状況の方が安全だと考えたからだ。
だからできれば、この男と一緒に寝たい。
「じー」
「ほら。お前の幼馴染が凝視してるぞ、怪しい目で」
「そんな目はしていない。別に羨む事なんて何もない」
「何か凄く理不尽な妬みを買ってる気がする」
幼馴染みも、能面みたいに無表情に親友を睨み付けるな。怖がっているじゃないか。
「エロいモノがあると言うから、今夜は男二人でAV鑑賞会でもするかと思ったのに。どうしてこうなった」
「居るじゃないか、そこにエロい者」
「いや私は。……まぁ、否定は出来ないか」
嘘は言っていない。君の好きそうなモノは、ちゃんとある。
残念ながらお気に召さなかったようだけども。
「……一応、AVに分類出来るモノなら僕の家にもあるけど」
「その言い方からしてあんまり期待できないが。てかそれって、あそこの本棚に堂々と置いてるAVって背面に書かれてる奴?」
「ん、そう」
「そう言うビデオ有るのか、君の家。何と言うか凄く意外だ」
まあ、あのDVDも一応AVには違いない。そう言う目的では使わないけれど。
「隠さず堂々と本棚に飾ってる時点でエロビデオの類いじゃねーよ。アニマルビデオとか、下手したら普通にオーディオビデオとかだろ?」
「さすが親友、そう簡単に騙されてはくれないか」
「俺をからかおうったって、そうはいかねぇぞ。お前がそんなビデオ持ってたとして、隠さない訳がねぇ」
我が友はオチを見切るのが早い。もうちょっと乗ってくれても良かったのに。
「なら、それ結局何のビデオなんだ?」
「つまんないモノ。見たけりゃどーぞ」
「動物モノだったらそれはそれで笑えるな。まぁ似合わねぇ事はないけど、女子っぽすぎる」
ニヤニヤと、笑みを浮かべてDVDを再生口に差し込んだ親友。やがてTVの画面は真っ黒になり、カタカタとDVDプレイヤーが音をたてて再生を始めた。
『3年D組ぃ、んんんっ、私はぁ、生徒会長のぉぉ。んんんっ!!!』
画面にはカラオケボックス内で自己紹介しながら、下半身でバイブを咥えこむ栗色の髪の女子中学生が淫らな笑みでピースサインを取っていた。
「うわああああああああっ!!? ちょ、ストップ! それ再生止めてぇ!!」
「なっあっえっ!? これ、これ!?」
「同じ学校に幼馴染が居ると知ったからな。いざという時に交渉材料にするため、実家からコイツのDVDを一つ取り寄せておいた」
『あっあっあ……、撮られてるのに、イっちゃうぅ!』
「良いからDVDの電源を落とせ! 違う、それは過去の私であって!」
画面内では、だらしない顔で自慰を続けている中学時代の彼女。売るところに売ったら良い値段になるだろう。
こんな動画、実家に帰れば山程有る。本気で金に困ったら、ヤクザに売り付ける事も考えて良いかもしれない。
やがてプツン、と音がして。顔面を蒼白にした親友がTVのスイッチを切り、場に静寂が訪れた。
「親友ご所望のAVだぞ、満足したか? じゃ、もう寝ようか親友」
「寝れるか!! 気まずさMAXだわ!」
「……くふっ、……くふっ」
「お前の幼馴染、凄い顔になってるじゃん! 半泣きで顔真っ赤じゃん! ちょっとは可哀想とか思わないの!?」
「……ふむ。見たとこ羞恥8割だけど、2割くらいは興奮して顔赤くしてるぞ。ソイツ、人に見られるのが異常に好きだから」
「冷静に私の性癖を解説するのは止めてくれ……」
相変わらず救い様の無い、深く濃い性業を持ってる女だ。ちょっと引く。今のも一種のプレイとでも思われてしまったのかもしれない、僕としたことが迂闊だった。
「……じゃあ、寝ようか」
「お、おうそうだな」
「おやすみ」
そして消え入る様な声で、布団の中に逃げるように潜り込んだ彼女は。暫くの間、「くふっ……」と言う謎の呻き声を上げて僕たちの安眠を妨害したのだった。
「…………くふっ」