※この作品はR-18です。

マブラヴ・オルタネイティヴ・OW   作:京勇樹

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久しぶりに五千字超えたわ


空白期
先手


これは、ある基地の一ヶ所での事だった。

 

「新型の弐型……アメリカ企業の協力を得て開発したというが……」

 

「巌谷め! アメリカに協力を要請するとは!!」

 

「しかし、公開された資料通りならば、早期配備されれば……」

 

「貴様! アメリカが帝国にした蛮行を忘れたか!?」

 

会議場が紛糾する中、それまで黙っていた一人の男軍人。この戦略研究会のリーダーたる沙霧尚也大尉は

 

「確かに、アメリカ企業の協力を得て開発した、という点には忸怩たる思いはある……しかし、強力な機体が配備されるのは喜ばしい事だ」

 

と告げた。

戦略研究会。名目上は、対BETA戦略を考える為の集まりだが、実際は現政権への不満から集まって、打倒する為に集まった。分かりやすく言えば、クーデターの為に集まった者達である。

帝都守備連隊、富士教導団を中心に様々な方面の部隊から集まった人員達で構成されている。

そして、この場所に居る全員の共通事項は、陸軍元中将。彩峰秀閣の部隊だった者達だった。

陸軍元中将、彩峰秀閣。

大陸派兵部隊の総指揮官だった人物で、当時の陸軍では名将と呼ばれた人物だった。

しかし、ユーラシア大陸の中国軍の撤退作戦の一つ。

光州(クアンジュ)作戦の悲劇と呼ばれる事件で、彩峰中将は国連軍の撤退命令を無視する形で民間人の避難の為に現地に留まり続け、BETAの迎撃戦闘を繰り返したのだが、その最中に国連軍の指揮所がBETAの奇襲を受けて全滅。

それを国連軍は、命令を無視した彩峰中将の責任だとして、国連軍の裁判所で軍法裁判をさせる為に出頭させろと言ってきたのだ。

もちろん彩峰中将の部下達は、それを不服とし、何なら国連軍と事を構えるのもやむ無し、という者達すら居た。

そんな矢先に、彩峰中将の軍籍剥奪と軟禁という沙汰が通達された。それは、日本帝国大統領、榊是親が涙ながらに頭を下げて、彩峰中将に汚名を被ってもらったのだ。

国連との不要な軋轢を抱える訳にはいかないと、榊大統領も苦渋の決断だった。

そして彩峰中将も、その要請を受諾し、自ら軍籍を返還し、自宅軟禁を受け入れたのだ。

これを陸軍の大部分は、政権の弱腰と非難した。

派兵部隊や他国の軍、特に大東亜連合はむしろ悪いのは国連軍だと分かっていた。

何せ、BETAの地中侵攻はBETAがよくやる攻撃方法であり、それは国連軍も把握していた。

把握していたのだが、アメリカ寄りの国連軍はアメリカの進言をそのまま受け入れる形で日本を非難し、彩峰中将に責任を押し付けたのだ。

それ以来、彼らは現政権が行っていることを情報収集しながら、クーデターの準備を進めてきたのだ。

そして、その時はもうすぐ訪れようとしていた。

だが、その時

 

『待て! この先には……な、貴女様は!?』

 

とドアの向こうから、警備の為に立たせている兵士の声が聞こえたと思った、次の瞬間。ドアが一気に開いた。

 

「な!?」

 

「き、貴様らは!?」

 

入ってきたのは、傭兵部隊スピリッツ実働部隊隊長。マーク・ギルダー。そして、帝国近衛軍仕官、月詠麻耶だった。

 

「どうぞ」

 

「殿下」

 

そして、二人が体を横にズラすとその奥から悠陽が姿を見せた。

 

「で、殿下!?」

 

「なぜ、このような場所に!?」

 

まさか基地に悠陽が居るとは思わず、陸軍の兵士達は思わずといった様子で立ち上がった。彼らからしたら、完全に予想外だっただろう。

 

「そなたらの動きは、以前より把握していました……」

 

「つっ……帝都の怪人か……!」

 

悠陽の言葉を聞いて、女性軍人。沙霧大尉の副官。駒木沙代子中尉の脳裏に一人の人物。鎧衣左近の姿が過った。確かに鎧衣課長は主にアメリカ大陸を担当しているが、命ずれば日本帝国内でも活動する凄腕の諜報員である。

 

「しかし、まさか……身内にアメリカの間者が混じっているとは思っていなかったようですね」

 

「なに?」

 

悠陽の言葉に、一人が思わず首を傾げた。その直後

 

「貴様!?」

 

一人の軍人が、袖の中から小型の拳銃を出して悠陽に向けた。しかし次の瞬間、気付けば沙霧大尉が刀を抜いた状態で踏み込んでいて

 

「はっ!!」

 

気合いと共に一閃、その軍人を切り捨てた。

沙霧大尉は、刀を鞘に納め

 

「殿下のお目を汚してしまい、申し訳ありませんでした」

 

と片膝を突いて、頭を下げた。

 

「構いません、沙霧大尉……それより」

 

「はっ! アメリカの間者を全て見つけ、排除します!」

 

沙霧がそう宣言した直後、更に数名が動いた。

警備の兵士と会議場に居た数名が、拳銃やナイフを構えた。すると、沙霧が

 

「駒木! 朝日!」

 

と名前を呼ぶと、呼ばれた二人が素早く動き、壁に立て掛けてあった武器を掴み、発砲。悠陽に銃を向けた軍人を射殺。そして沙霧は、廊下に居た兵士に一息で近づき、一閃。あっという間に倒した。

もう悠陽に武器を向ける者が居ないのを確認し、沙霧大尉は

 

「アメリカの間者の潜入を許した事……申し開きのしようがありません……我々の事も含め、全ての責は私が受けます」

 

そう言いながら、悠陽の前に正座し、月詠に刀を預けた。

 

「沙霧大尉!?」

 

「……最早、我々のクーデター計画も漏れているだろう……形だけとはいえ、私が首魁だったのだ……責任を取るのは道理」

 

駒木が驚く中、沙霧は目を閉じた。どうやら、命すら投げ出すつもりらしい。その潔さは、まさに侍だろう。

すると悠陽は、そんな沙霧に一歩近寄り

 

「そなた達が、私を思って立ち上がった事は知っています……その身を外道にやつしてまで、私と帝国の為に立ち上がったそなた達の忠義……感謝します」

 

「殿下……」

 

悠陽のその言葉に、沙霧だけでなく、その場所に集まっていた全員が感極まった表情になった。

すると、悠陽は

 

「ですから、そなた達には……我が帝国主導の国際計画……オルタネイティヴⅣ……第四計画の遂行の手助けを命じます」

 

「オルタネイティヴ」

 

「第四計画……!?」

 

悠陽の告げた言葉に、その場所に居た軍人達はざわついた。初めて聞いた計画名に、困惑しているようだった。

 

「マーク殿」

 

「はっ……白銀」

 

「はい!」

 

マークに呼ばれ、その部屋に新しく武が入ってきた。

 

「殿下、この少年は……」

 

「……先ほど告げた第四計画遂行の要の人物の一人になります」

 

悠陽がそう言うと、武は沙霧に近づき

 

「……初めまして、沙霧大尉……俺の名前は、白銀武と言います……」

 

「……沙霧尚也だ……」

 

軽く自己紹介し、握手した。その時点で、沙霧は気付いた。武が、かなりの腕を誇る衛士だと。

 

「……君は、軍人なのか……」

 

「……そうですね。スピリッツ預かりですが、世界を救う為に戦う軍人です……」

 

そう語る武の目を見た沙霧は、武の目の中に力強い光を感じた。

 

「殿下……彼が、重要人物とは……どういう事でしょうか」

 

「……まず、第四計画の事を話しましょう」

 

悠陽はそう言うと、オルタネイティヴⅣの事を語った。

日本帝国が主導する、国際的対BETA計画。

沙霧達からしたら、夢物語としか言えない非現実的な計画だった。

しかし、それを主導しているのは横浜の雌狐と呼ばれる日本帝国の誇る天才。香月夕呼博士。

 

「それが、帝国主導の第四計画……」

 

「そうです……彩峰中将の時は……間が悪く、その計画に切り替わるタイミングで、国連との軋轢を生む訳には参りませんでした……計画の事を知っていた彩峰中将は、榊是親の要請を受け入れたのです」

 

「中将が……」

 

「ですが……!」

 

確かに、帝国主導のオルタネイティヴⅣが発動するならば、要らぬ軋轢を生む訳にはいかない。頭では理解出来るが、やはり納得出来なかった。

 

「……これを、見てください」

 

武はそう言って、2つの書類を沙霧に差し出した。

 

「これは……」

 

「アメリカ主導の次期国際計画……オルタネイティヴⅤ……それに関する資料と……夕呼先生が作ったあるレポートです」

 

その2つを受け取った沙霧は、まずオルタネイティヴⅤの計画書を読み始めた。そして

 

「BETA由来物質を使った……新型兵器!?」

 

「まさか、横浜に落とされた!?」

 

沙霧の言葉を聞き、一部の軍人達が怒りの表情を浮かべて、武は頷いた。

 

「通称、G弾と呼ばれる新型兵器……起爆範囲内の物質を、何処かに飛ばす……そして、起爆範囲では……半永久的に重力異常が起きる……」

 

「重力異常……まさか、横浜の植生が壊滅したのは!?」

 

「その重力異常が原因です……」

 

武がそう言った段階で、沙霧は香月レポートを読み始めていた。そして、読み進めていく内に怒りの表情を浮かべ

 

「このような、地球規模での災害を引き起こす兵器を使おうとしているのですか! アメリカは!?」

 

とそのレポートを、半ば投げるように駒木に手渡し、駒木だけでなく全員が読んだ。そして、沙霧と同じように怒りの表情を浮かべた。

 

「その第五計画を始めさせる訳にはならないのです……沙霧大尉、もしそなた達がクーデターを起こしたら……」

 

「最悪、帝国内に居るアメリカの間者共も動き、帝国は不安定になり……第四計画は第五計画に移行してしまう可能性が高まる……」

 

沙霧はそこまで言って、ダンッと拳を机に叩き付けた。

そこに、悠陽は

 

「今現在、帝国全軍に入り込んでいるアメリカの間者を、スピリッツの協力を得て排除しております」

 

「帝国全軍!?」

 

「まさか、アメリカがそこまで!?」

 

悠陽の言葉に、軍人達は驚きの声を挙げた。

すると、沙霧が

 

「……恐らく、我々が得ていた情報の中には、そのアメリカの間者が流布した偽の情報もあるのだろう……我々は、まんまとアメリカに操られていた……!」

 

「つっ……」

 

沙霧の言葉に、軍人達は有り得ない、とは言えなかった。

彼らは知らなかった事だが、特に第五計画推進派は最近連続して起きた事態で、国連内での発言力の低下を何とか回復しようと躍起になっており、最早手段は選べなかった。それにより、今まで以上に諜報員を様々な国に送り込み、情報操作しようとしていたのだ。

それに踊らされてしまったのが、クーデター部隊になる。

そこまで察したらしい沙霧は、立ち上がり

 

「殿下! 我々は、粉骨砕身の気概で、帝国主導の第四計画を完遂させることを誓います!!」

 

と敬礼した。それを聞いた悠陽は、頷き

 

「計画に関わる人員は、なるべく少数に……選抜は任せます」

 

「はっ! 信用の置けて、腕利きを選びます!」

 

沙霧の言葉を聞いてから、悠陽は次にマークに顔を向けて

 

「マーク殿、例の村の状況はどうなりましたか?」

 

「先ほど通信が来まして、まず溶岩の流れを変える為に岩の落石に成功。更に、村人達の説得にも成功し、避難を開始した、とのことです」

 

悠陽からの問い掛けに、マークは簡潔に答えた。

それを聞いた駒木が

 

「まさか、噴火の兆候があった火山の……」

 

「ああ……殿下の要請を受けて、避難の為に部隊を向かわせた」

 

向かったのは、直哉達トライアド第一小隊である。

その村があったのは、最近噴火の兆候が強くなっていた火山のすぐ近くで、火山が噴火した場合、マグマが流れ込む可能性が非常に高かった。

そこで直哉達は、説得を続けながらマグマの流れを変える為に崖の上にあった巨大な岩を谷間に落とす工作をしたのだ。

結果、岩は谷間に落石させる事に成功。しかし、完全に流れを変えられるかは分からなかった為に説得も続行していた。

直哉の根気よく続けた説得に、村人達は応じた。

その村の人達は、大陸に派兵された人達を待っていたのだ。

しかし残念ながら、その村の出身の兵士は、軒並み戦死してしまっており、帰ってはこない。

何故その人達は、帰られる可能性が低いと分かりながら戦地に赴いたのか。勿論、生きていてほしかったからに他ならない。

その思いを、無下にしないでほしいと直哉は説得し、村人達は受け入れたのだ。

 

「……感謝する。マーク殿……」

 

「我々も、無為に人を死なせたくないからな……涙を流す人の為に戦う……それがスピリッツだ……」

 

沙霧はマークから、気高い精神を感じとり、今までの評価を改めた。そして、危険な火山地帯に赴き、村人達の説得とマグマの流れを変える工作をした最前線部隊。

それらを擁立するスピリッツ。

 

「……殿下、彼らも第四計画を遂行する為に雇ったのですか?」

 

「いえ……マーク殿達は、自分たちから第四計画を遂行する為に協力すると申し出てきたのです……聞いた話では、アメリカから莫大な金額を提示されたそうですが、それを拒否して、更にアメリカの思惑どおりにさせない為に協力してくださっています」

 

悠陽の説明を聞いて、沙霧達は驚いた表情でマークを見た。

やはり傭兵と聞いたら、お金で動くという認識だった彼らからしたら、どれ位の金額は分からないが、アメリカの条件を蹴り、更にはアメリカに敵対する行動を取り、帝国に有利な状況にしているスピリッツに、その高潔な魂を感じた。

 

「沙霧大尉……運命の時は近い……」

 

「どういう事だ?」

 

「……佐渡島攻略作戦」

 

マークの告げた作戦名を聞いた沙霧は、悠陽を見た。

 

「……今年度中に、我々はBETAへの反攻作戦を始めます……その総指揮官は、私です」

 

「殿下が、御自ら!?」

 

悠陽自らが、最前線に赴いて指揮を執る。

完全に予想外な事に、沙霧達は驚きを隠せなかった。

 

「ここから、帝国だけでなく地球を巡る戦いが激化します……私自らが指揮を執り、苦難を乗り越える……それが、私がそなた達に提示出来るそなた達の忠義への返答です」

 

「殿下……!」

 

悠陽の強い意思を感じとり、沙霧達はその場で片膝を突き

 

『我ら一同、殿下の為に粉骨砕身の気概で動く所存です!』

 

と宣言した。それを聞いて、悠陽は頷き

 

「そなたらの忠義に、感謝を……」

 

と言って、その部屋から出た。

そして、時は動き始める。

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