武が横浜基地を散策している間、宇宙ではスピリッツが縦横無尽に宇宙を駆け回り、アメリカ宇宙軍の人工衛星からのミサイル投射を回避し
『その程度の誘導性能で、捉えられると思うなよ!!』
フェニックスが、一基の人工衛星を破壊した。
今スピリッツが攻撃しているのは、通称でシャドウと呼ばれる地球と月、火星から飛来するハイヴからの射出体に対して核ミサイルを撃つ兵器だ。
しかし実は今から数時間前に、その内の数基にG弾が搭載され、日本が狙われるという情報を入手し、アメリカ軍のサーバーをハッキング。
その該当人工衛星を特定し、攻撃に移っていた。
『本来は対BETA用の兵器を、同じ人に向けて使うなど……!』
フェニックス・ゼロ改を操縦する祐輔はシャドウの周囲にあった人工衛星から放たれたミサイルを回避し、破壊。そして、その人工衛星にメガ粒子砲を撃って破壊した。
『許されると思うな……!』
その祐輔機の横を通過し、結華が搭乗するトルネードがシャドウに最接近し両腕のガトリング砲を的確に弱点に叩き込んで破壊した。
アメリカ宇宙軍が管理するシャドウは、全てで四基。
その内、G弾が搭載されたのは三基だ。
しかしアメリカ宇宙軍も妨害を予想し、戦力を回していた。
装甲駆逐艦ではなく、本来は第五計画で地球圏からの脱出の為に建造していた巨大宇宙船。実は非公開だが、その全てに武装が施されているのだ。
戦術機の低反動技術を転用した艦首の大口径主砲。多数あるCIWS。そしてミサイル発射管。それらを駆使して、スピリッツに砲撃の雨を降らす。
『こんな密度……!』
『突破が……出来ない……!』
和泉と上総の二人はその弾幕に足止めされ、人工衛星に接近出来ないでいた。
対艦戦の経験が浅い二人は、艦からの砲撃に四苦八苦していた。
だが
『つっ!?』
『トライアド!?』
二機の横を通り抜けて、トライアド中隊が濃密な弾幕をすり抜けるように、大型艦三隻の弾幕を突破し、次々と砲台やミサイル発射管を破壊していく。
そこに、フレスベルグが艦橋に接近し
『無駄な抵抗を辞めろ……今なら、命だけは助けてやる』
と艦橋に、ビームマグナムを突きつけた。最大出力で撃てば、何のビーム対策もされてない大型艦は一撃で沈むのは確実である。
コクピットの直哉は、艦橋内での艦長らしい人物とそれ以外の人員が激しく口論しているのが確認出来ている。
その時、銃声が鳴り響いた。
艦橋内を見ていなかった他の機体は構えたが、それを直哉が制止し
『投降する! 今、他の艦にも打電した! 武装解除する!』
どうやら、直哉機が抑えたのが旗艦の役割を担っていたようだ。まだ砲撃していた二隻からの砲撃も止まり、残っていた武装の収納が始まった。
『一応聞くが……これらにG弾が搭載され、日本を狙っているのは知っているか?』
『……知っている……しかし……迷ってた……上からの……国の命令は絶対だ……だが……!』
どうやら大多数の軍人達は、今回下された命令に迷っていたようだ。本来なら、対BETAに使われる筈のシャドウが核ではないが、G弾で最前線を担う日本帝国に狙いを定めていた。
彼らも葛藤していたのだ。
本当は止めたい。しかし、彼らも祖国たるアメリカ合衆国に忠誠を誓った軍人だ。
例え歪んだ形だろうが、命令ならば果たすのが軍人の務め。そう自分に言い聞かせ、正当化していた。
しかし、今の状況は最早逆転は不可能。
襲撃してきたスピリッツは、命は保証すると確約した。ならば、投降しよう。彼らは、そう判断したのだ。
『……一つ質問だが、その艦に自動操縦はあるか?』
『あ、ああ……最初に設定した地点までだが……』
マークからの問い掛けに、士官服を着た男が答えた。するとマークは
『……建造中の宙域に設定し、何時でも出せるようにしておけ』
マークはそう指示すると、通信先を切り替えて
『マザー。確認したい事がある』
と問い掛けた。
それから数分後に該当のシャドウは破壊され、数日後に無人の三隻が建造宙域に帰還した。