2001年10月某日、帝都城の応接間
そこに、スピリッツの各隊長級とゼノンが集まっていた。
「殿下がいらっしゃいました」
侍女の言葉に、隊長達は頭を下げた。
悠陽は部屋に入り、座ると
「頭をお上げください。進捗の確認をしましょう」
と早速、話題を切り出した。
「まず、アメリカに関しまして……少し前に行った帝国全軍の諜報員の一斉排除により、アメリカに焦りが見えます。再度諜報員を入れようと考えているようですが、その前にアメリカ国内で反G弾派の勢いが増し、それへの対応にリソースの大部分を回さないといけないようです」
最初に切り出したのは、マークだった。
マークは説明しながら、USBをパソコンに接続し、アメリカ国内の世論や軍内部の情勢を表示させた。
それによれば、今現在のアメリカ合衆国の世論は立て続けの不祥事で現大統領の支持率はがた落ち。
一部では退任を求めるデモも起きているらしい。
そして軍内部では、反G弾将校が筆頭になりG弾賛成派の将校や部隊を批判。
更には一部のG弾賛成派の将校が行っていた不正を暴露し、数人の将校が失脚しバランスが崩れつつあるという。
「これにより、アメリカは暫くは自国内の調整に注力せざるをえないでしょう」
「よき兆候ですね……今のうちに、帝国の戦力の大幅な増強を行いましょう……」
マークからの報告に満足そうに頷き、悠陽は一度目を閉じた。そして、目を開くとケイを見て
「それでは、改修をお願いしています弐型……極光は……」
「極光だが、今のところ約七割まで完了してるよ。第二陣の技師班長の話だと、最低でも約1ヶ月後には終わる予定にはなってるね」
計画本来の弐型。フェイズ3はその性能の高さから、不知火を超えた機体となり、新たに極光の名前が与えられた。
そして整備性と生産性の向上の為に、裕也とヴィンセントが中心となり、第二陣技師。河崎、冨嶽、光菱、各重工から300名が来て、その内の半数が極光の改修に従事。
当初の予定より早く改修作業が進み、このまま進めば2001年内に極光の試験運転すら可能になるだろう。
「早さも大事ですが、焦りは禁物です……確実を来すようお願いします」
「あいよ。任せな……んで、次に流用戦術機……仮称攻龍だ」
流用戦術機。
それは、退役が始まりつつある77式撃震の上半身を使って開発した砲撃支援機になる。
撃震の上半身と戦術機サイズに開発した戦車のような車体を組み合わせ、更に両肩に無反動砲を搭載。両手に複合突撃砲を持つ事で砲撃特化型として運用出来るという代物だ。
元々
それのデータを見せながら
「陸軍から派遣された戦車乗りにシミュレーションで試してもらったが、中々好評だったよ」
「このような機体……まさか、MSにもあったとは」
攻龍の開発元になったのは、UC世界に存在したガンタンクにである。
それのデータを見つけたある技師が、ケイに打診してデータで再現され、今試験開発中になっている。
「此方からしたら、まさかそれを作ろうと考えるとは思わなかったよ。一応、新しい戦車案はあったんだがね」
ケイはそう言って、リニアガンタンクのデータを表示させた。しかしこちらは、稼働時間がネックとなりデータ段階で止まっている。
そんな矢先に、撃震によるガンタンクの開発が打診され、実用化に近かった。
「それに、これなら既存の武装が流用出来るから、試験も短期間で済みそうだ」
「新しい戦車の開発は、難題でしたからね……他国からの輸入も、最近は目減りしていましたから……」
今の帝国陸軍の戦車は、1990年に配備された90式が主力で、他にはドイツから輸入したレオパルト2が運用されているが、ドイツも国土を失い、グレートブリテン島とアイルランドに生産拠点を置き生産しているが、以前と比べて生産速度は落ちているのが実状で、殆どが欧州連合軍に回されている。
「今回のは、良い機会になりましょう……攻龍の実用化、お願いします」
「ああ、確実に物にするさ」
そこから、次々とスピリッツから報告が悠陽にされていく。その何れも、帝国軍と帝国の力を強めていた。特に大きかったのは、人工島と人工衛星に関する物だった。
「
今現在太平洋側。岩手県と宮崎県沖に人工島を建設しており、岩手県沖の人工島は主に農家向け。宮崎県沖が兵器開発拠点になる予定になっており、その両方が優に10万人以上受け入れられるように作られている。
農家向けの方は、新しい技術の水耕栽培と通常の農業が出来るようにと作られていて、地上だけでなく地下でも農業が出来るように作っている。
これで上手くいけば、徐々に人工島を増やしていく予定になっている。
「スピリッツの皆様のおかげで、帝国は確実に力を増しつつあります……感謝の念が絶えません」
「こちらこそ、我々を受け入れてくださり感謝しております」
悠陽の言葉に、ゼノンが頭を下げると全員が頭を下げた。
こうして、報告会は終わった。