「いや、スピリッツの技術力は凄いな……」
「全くだ……」
と少し驚いた様子で語り合っているのは、今やスピリッツ預かりとなっているヴィンセントと篁家次期当主になった祐也である。
二人が見ているのは、帝国から派遣された整備士達が駆け回っているハンガーだ。
「あのMSっての。動力がバッテリーじゃなく、核駆動炉で半永久的。しかも武装も、全機がビーム兵器を標準搭載だ……オーバーテクノロジー過ぎて、驚きを通り越したぜ」
「ああ……戦術機がオモチャみたいに感じるぜ」
そう語る二人の前には、新しいガンダム四機が駐機されていて、祐輔や結華、上総、和泉の四人が調整の為に話し合っている。
今、新しく四人の専用機が最終段階に入っているのだ。
順調に行けば、一週間以内に投入出来るという話だった。
「そして、この艦もだよ」
「ああ……空も飛べるわ、海中を潜航するわ……挙げ句の果てには、宇宙だ……」
今二人が居るのはエウクレイデスだが、二人からしたら艦というのは海上を航行するか、潜水艦ならば潜航するのが精々だが、旗艦のアークエンジェルとエウクレイデスは海中だけでなく、飛行。そして宇宙でも行動出来るという、二人からしたら常識外れの艦だった。
「どんな技術を得たら、そんな艦が建造出来るんだろうな……」
「本当だよ」
祐也の言葉に、ヴィンセントが同意した。その時
「ああ、ここに居たのか」
「ユウヤー!」
とクリスカとイーニァが現れた。
今二人は、その身に施されてきた強化施術の薬物の副作用を治療しており、多少の運動制限はあるが、艦内は自由に動けるようになっていた。
「おお、どうした」
「ユウヤは、ミラ殿が探していた。弐型……ああ、極光だったか……それの確認がしたいらしい。そしてヴィンセントは、巖谷中佐が探していた。なんでも、新しい機体に関して意見が欲しいらしい」
抱き付いてきたイーニァを受け止めた祐也がクリスカに問い掛けると、祐也とヴィンセントにメモを手渡した。
「ああ、分かった」
「新しい機体……ああ、話に聞いてた補給専用機か」
それぞれメモを受け取った二人は、そこで別れた。
祐也は下部ハンガーに向かい、ヴィンセントはある会議室に向かった。
下部ハンガーには大規模な改修用のアームがあるので、ブロック構造の導入の為に極光は下部ハンガーに運び込まれている。
祐也はエレベーターで下部ハンガーに降りると、母親を探し
「母さん」
「来たわね。今のところ、これが最終段階よ……前より、反応速度が上がってるわ」
祐也が呼ぶと、ミラは祐也にバインダーを差し出した。それを一読して
「ブロック構造も完全に導入済み……後は、俺がシミュレーターや実機検証するだけか」
「ええ……前より、もしかしたら扱い難いかもしれないけど……」
「問題無いさ。使いこなしてみせる」
祐也はそう言って、仰向けに駐機されている極光を見上げた。
そして、ある会議室でヴィンセントは巖谷中佐と新しい機体。試製01式補給専用戦術機。間宮に関する話し合いをしていた。
「……とまあ、今のところ四肢と跳躍ユニットのパージ機能はこんな感じになっている」
「良いですね……
従来の戦術機は、大体20Mサイズだが、間宮は最大でも約15Mと小さく、更に両足をパージすれば12Mにまでなり、両手と跳躍ユニットをパージすれば、重量面では単機でも持ち運び可能になる程に軽くなる事も出来る。
勿論、二機で運ぶ事が推奨される。
「すでに、先行機が大隊規模用意され、通常衛士からは落選した者達からも衛士が選ばれていて、試験運用している。後は、実践試験で良好なデータが出たら量産が始まる手筈になっている」
どうやら、既に最終段階近くまで来ているらしい。
「いやぁ……この補給専用戦術機は羨ましいですね……こいつがアメリカにもあったら、戦いの幅が広がりそうだ」
「これを考えたのは、一人の少年だ……次に、此方だが」
「ああ、攻龍ですね」
そして二人は、次に改修戦術機。攻龍の話し合いを始めた。
「君が考えた、Sー11弾……中々に良い攻撃力と殲滅力だった。本土の技士も関心していたよ。思い付かなかったとね」
実は、ヴィンセントが攻龍の新しい弾として無反動砲用にSー11弾頭を思い付いたのだ。
アメリカ軍では使われていないが、日本を含めた最前線国では、ハイヴ攻略作戦に参加する機体は、自決用に用意されている。
それをヴィンセントは、攻撃に転用する事を考え、更に大口径を誇る無反動砲で発射する事を思い付いたのだ。
「データ上では、これならば要塞級も難なく撃破出来ると出ている」
「まあ、一発は高いですがね」
Sー11だが、高価な電子励起式の高性能爆薬や発火装置を使う為に、通常の爆弾より高いのだ。
コストにしたら、通常の爆弾の10倍近い金額となっている。
「しかし、効果は絶大だ……今度の佐渡島攻略作戦で導入予定で、既に少数だが量産が始まった」
「もうですか!? 早いですね……」
予想外な早さに、ヴィンセントは驚いていた。だが
「それだけ、殿下は佐渡島攻略作戦に本気ということだ」
「なるほど……政威大将軍の意向ですか」
実は軍務省は、Sー11弾頭の採用に消極的だった。
その理由はやはり、コストの高さにある。しかし、悠陽が採用を決定。財務省に新しい予算の計上を打診し、軍務省には材料を多く用意するように命じた。
「ああ……まもなく、一大反抗作戦が始まる……横浜も、本腰を入れて準備を始めた」
「腕が鳴りますね……!」
ヴィンセントとしても、人類の反抗作戦に参加出来るという事には興奮していたりする。
こうして、着実に準備は進んでいく。