「なに!? オハイオ、ミシガン、フロリダ、ジョージアの四隻からの通信が途絶えただと!?」
「はっ! 日帝の空母後方に着いて、攻撃指示を待つ、という通信を最後に途絶しました!」
太った一人の男将官。トランプ中将の問いかけに、一人の兵士が答えた。
トランプ中将が言った四隻は、アメリカ海軍が誇る四隻の攻撃型原子力潜水艦だ。
四隻は天照の後方に布陣し、何時でも天照を攻撃出来るようにしていた。その目的は勿論、第4計画を即停止させ、第5計画に移行させる為である。
日本帝国の指導者の悠陽が死ねば、その責任を夕呼に押し付けられると考え、実行しようとしたのだ。
だが、その計画の為の四隻から通信が途絶えたという。
貴重な攻撃型原子力潜水艦を、四隻も失う。
一隻100億ドル近くする原子力潜水艦。それを悠陽一人を殺す為に四隻も投入し、全て失った。
その事実に、トランプ中将はガタガタと震えていた。
「バカな……な、何があった……!! 今のあの国に、それほど高性能なソナーが有るとでも言うのか……!?」
トランプ中将はまさか失敗するとは思わず、ガタガタと震えていた。今回の悠陽抹殺計画を考えたのは、トランプ中将だ。そのために貴重かつ高額な原子力潜水艦を四隻も投入する事にし、海軍に要請した。
そうして、日本帝国方面の四隻全てを使って良いとされた。それだけあれば、確実に悠陽を葬れるだろうと。
だが、実際はどうか。
「何が起きている……!?」
トランプ中将は知らなかった。
スピリッツの二隻の母艦に、原子力を停められる機械が有る事を。
最後の通信は、今から約10分程前になるが、その際に発せられた電波と原子力潜水艦の大きなノイズから、詳細な位置を把握したアークエンジェルは、四隻に対して集中的にNJを照射して、原子炉を機能停止させた。
それにより推進力すら無くなり、浮力の維持も出来なくなった四隻は沈んでいった。
水深約500mに、沈んでいった。限界水深を超えた深さに沈んでいき、圧壊するだろう。
「ぐっ……ならば……! 核ミサイルの発射準備をさせよ!」
トランプ中将は念のためと用意しておいた核ミサイルの発射をする決意をした。欲を言えばG弾が良かったが、少し前に宇宙で数発喪った矢先、おいそれと持ってくる事は出来なかった。
「そ、それなのですが……技師からの報告によりますと、核ミサイルがパスワードを受け付けないと……」
「な、なんだと……!? パスワードが間違っているとは、違うのか!!」
部下からの報告に、トランプ中将は怒声を張り上げた。
幾らなんでも、初歩的過ぎる報告に、トランプ中将は怒っていた。
しかし
「いえ、間違ってはいません! 中将から頂いた紙に書かれたパスワードを確かに入力したと!」
部下はそう言って、一枚の紙をトランプ中将に差し出した。それは間違いなく、トランプ中将が部下伝いに技師達に渡ったパスワードが書かれたメモ帳だ。
そしてその内容は、間違いなくロスアラモスで聞いたパスワードだ。
「何故だ!? ロスアラモスの連中が間違えたとでも言うのか!?」
トランプ中将は怒り狂った様子で、そのメモ帳をゴミ箱に投げ入れた。
トランプ中将が知る筈が無かった。
実は核ミサイルは、スピリッツによって無効化されているのだ。
核ミサイルには、誤爆を防ぐ為に自壊システムがある。 その自壊システムは、発射後にも使えるようにと無線でパスワードを入力する事で核爆発を起こさずに自壊出来るようになる。
今回スピリッツは、そのシステムを利用し、核ミサイルの制御システムをハッキングし、核ミサイルを有効化するパスワードを書き換えたのだ。
これにより、トランプ中将に託された核ミサイルは使えなくなった。
「これでは……私の責任が……!?」
トランプ中将は莫大な損益を発生させた責任を問われ、失脚するのは確実と考えて、ガタガタと震えた。
なおこの作戦後、トランプ中将の名前は無くなった、と書き記しておく。