Aー01とホワイトファング、帝国陸軍の連合部隊の補給が完了すると、Aー02はゆっくりと進撃を開始。狙いは、モニュメントのあった場所。そこには大きな穴があり、横浜基地の例から察するに、穴の真下にハイヴのコアがある。そのコアを破壊しない限り、ハイヴの機能は生きている。
そういう意味では、横浜基地のハイヴの機能は生きているのだ。
それはさておき、ゆっくりとAー02が進む最中、帝国軍、アメリカ軍、大東亜連合軍、国連軍は部隊の再編と補給を行っていた。
その中のアメリカ軍のある部隊には、アメリカ軍が配備した最新鋭機。Fー22ラプターを運用する部隊があった。
アメリカ陸軍第66戦術機甲大隊。ハンター大隊だ。
そのハンター大隊の指揮官、アルフレッド・ウォーケン少佐は、間宮から推進材の補給を受けながら、進撃するAー02こと、スサノヲ弐型を見つめていた。
「……アメリカでは、ただの金の無駄使いとまで言われたアレが……まさか、人類を救う切り札になるとはな……」
スサノヲ弐型こと、XGー70b
これは、1975年にアメリカで始まった戦略航空機動要塞開発計画で開発された航空機動要塞試作機の2号機が原型になっている。
元々の計画では、これ単機によるBETAへ攻撃と、BETA支配領域の攻略が想定されていた。
だが、あまりにも予算を食い潰す上に、主機関として作られた
それを夕呼は鎧衣左近の諜報により知って、様々な交渉カードを使って第四計画の為に徴収する事に成功し、00ユニットが運用出来るように改修したのが、スサノヲ弐型である。
「……」
『少佐、第三中隊の推進材補給、完了しました』
スサノヲ弐型を見つめていると、ハンター2。副官のヒル・ベイカー中尉が補給の完了を報告してきた。
「弾薬の方はどうなっている?」
『はっ。弾薬は第二中隊を残すのみで、そちらは後60秒あれば終わるかと』
ヒル中尉からの報告を聞いたウォーケン少佐は、戦術データリンクが復旧して入ってきた情報を確認して
「我々は予定通り、現戦域を維持する。Aー02がハイヴのコアを砲撃し破壊すれば、人類史上で二番目の攻略ハイヴになる……その歴史的瞬間を近くで見る……最高の栄誉になるな」
『全くその通りですね、少佐』
ウォーケン少佐の言葉に、ヒル中尉は同意しながら笑みを浮かべた。そこに、一機のラプターが近寄り
『ハンター3からハンター1。第二中隊の弾薬の補給が終わりました。何時でも動けます』
イルマ・テスレフ少尉が報告してきた。
彼女はフィンランド出身で、フィンランドがBETAにより陥落した今はアメリカに亡命し、志願して軍人になった。亡命軍人がアメリカ軍最新鋭機のラプターに乗っている事から、彼女が非常に優秀なのが伺える。
「よし……音紋と震源探査機に注意しろ……もう少しで、佐渡島ハイヴが攻略される」
『はっ!』
ウォーケン少佐の言葉に、ヒル中尉とテスレフ少尉が斉唱した。その時、通信に僅かにノイズが走った。
その直後、何故かテスレフ少尉機がロングバレルアタッチメントを装着した突撃砲を構えた。その先には、天照が存在した。
『ハンター3! 何をしている!?』
ヒル中尉はテスレフ少尉機を止めようとした。だが、その前に一発の光弾が突撃砲の中心を貫通。テスレフ少尉機は素早く被弾した突撃砲を投棄すると、予備の突撃砲を装備しようとした。だが
『すまない……!』
と新たな声がしたかと思えば、彼らからしたらあり得ない速度で一機のMS。テスタメントがテスレフ少尉機の胸部を強く叩いて転倒させた。そして、素早くライフルを構え
『お前だな!!』
と別のラプターの頭を撃った。
「貴様!?」
ウォーケン少佐はそのテスタメントを狙うが、その銃口をテスタメントが押さえて
『ハンター1……ウォーケン少佐、あのラプターはCIAの諜報員が乗ってます』
と告げてきた。
そのラプター、ハンター6のパイロット。
アーノルド・ウッド少尉は、確かに今回の作戦の直前にハンター大隊に配属された人員だ。
「そんな証拠が、何処にあるのだ!?」
『これを』
ウォーケン少佐の問い掛けに、テスタメントからある文章データが送信されてきた。それは、CIAの作戦書類だ。しかも、右下には複製不可能の電子決裁印もある。間違いなく本物の作戦書類。
その内容を読んで、ウォーケン少佐は驚愕した。
後催眠暗示とウィルス、指向性タンパク質を使って、悠陽を抹殺せよ、と書かれてあったのだ。
「こ、これは……!?」
『アメリカは第5計画を移行させたいが為に、第4計画を遂行している日本が邪魔なんです。では、どうすれば第4計画を即座に第5計画に移行出来るか……殿下を亡き者にし、その責任を夕呼博士に取らせて、第4計画を即座に終了させる。それが、第5計画推進派が考えた作戦です』
今アメリカ国内で、G弾派と反G弾派が争っているのは、ウォーケン少佐も知っていた。そして、そのG弾を大量に運用するのが第5計画ならば
「しかし、G弾は重力異常を起こすと聞いたが……」
『アメリカ政府は、地球を支配出来るのならば、重力異常は些末だと考えたんでしょうね……どんな災害が起きるかもよく考えないでね』
「災害だと? それは一体……ぐうっ!?」
『少佐……がっ!?』
ウォーケン少佐とヒル中尉は強い頭痛に襲われ、それを見た。第5計画に移行し、大量にG弾が運用された世界で、何が起きたのか。
「な、なんだ……今のは……!?」
『低酸素地帯や、無酸素地帯……ユーラシア大陸と日帝が、海に沈んだ……!?』
『それが、第5計画の行く末です……地球は、まともに人が住めない世界になりました』
テスタメントからの言葉に、ウォーケン少佐は思わず拳でコクピットの内壁を叩いた。
「あんな……あんな世界が、合衆国の計画の行く末だと!?」
『少佐……』
ウォーケン少佐の言葉に、ヒル中尉も何も言えなかった。彼らは合衆国に忠誠を誓った軍人だ。上からの命令ならば、彼らはあらゆる任務を遂行する気概はある。
だが、地球が人が住めない世界になると分かっていながら、第5計画に手を貸す気にはなれなかった。
しかも、対人戦争まで起きてしまっていた。
「……しかし、ハンター3は……」
『彼女は恐らく、利用されただけでしょう……お前達、ハンター6を監視しろ。そいつはスパイだ』
ヒル中尉の指示を受けて、他の機体が倒れてるラプターに突撃砲を向けた。
すると、テスタメントがウォーケン少佐機の肩を掴み
『少佐の機体に仕込まれたウィルスは、こちらで駆除します』
「私の機体にだと!?」
ウォーケン少佐が驚いた時、突然オートパイロット機能が起動した。
「これは!?」
『少々乱暴にいきます!』
テスタメントは腰部装甲からワイヤーを出し、ウォーケン少佐機を拘束。そして、右手でコクピット付近を触った。その数秒後、一度機体の電源が切れたかと思えば、再起動して、オートパイロット機能は停止した。
「どうやら、国際問題にならずに済んだようだ……感謝する」
『いえ、未然に防げて良かった』
と会話していたら、突然警告音が鳴り響いた。
『貴様! 何をしている!!』
ヒル中尉の怒声が響き、ヒル中尉は倒れてたハンター6の跳躍ユニットを破壊した。
「ヒル中尉、何があった」
『はっ。ハンター6が跳躍ユニットを使った自爆をしようとしたようで、破壊し阻止しました』
『お前は、気絶してろ!!』
ヒル中尉が報告した直後、テスタメントが左手手首からワイヤーを伸ばし、電撃を流した。それで、ハンター6は完全に動きを止めた。
「すまない、手間を掛けた」
『いえ、こちらも対処が甘かった……』
テスタメントはウォーケン少佐機からワイヤーを外すと、ハンター6を見て
『恐らく、あの機体のパイロットからは、ろくな情報は聞き出せないでしょう』
「そうだろうな……捨て駒だろう……」
テスタメントの呟きに、ウォーケン少佐は同意した。
そして内心で、CIAに毒づいていた。
(そんな事をやっているから、悪名が広がるんだ……バカどもが……)
そしてウォーケン少佐は、ある話を思い出して
(彼の話に、私も乗るべきか……世界の行く末を、あんな世界にさせない為に)
と思った。