『……以上が、オリジナルハイヴを攻略する理由になります』
『では、採決を取ります。オリジナルハイヴの攻略に賛成の方は1を押して下さい。反対の方は2を押して下さい』
議長が採決を促した結果、参加していた各国の要員は賛成を押していた。
『不参加1、他賛成という事で、オリジナルハイヴ攻略作戦を可決します!』
議長がそう告げると、参加各国は拍手した。
しかも、今回は電撃作戦で数日後の年明け。2001年の1月1日に行われる事も決まった。
その時、甲高い警報が鳴り響いた。
『これは……!? 香月博士!?』
『今確認を……これは!?』
議長が夕呼に声を掛けて少しすると、夕呼は驚いた表情を浮かべ
『BETAの群れが、横浜基地に向かっている!?』
『何故……そうか! 横浜基地のハイヴのコアを目指しているのか!』
BETAの帰巣本能は、ハイヴのコアが信号を発していて、それを目指しているというのが、今の主な説となっている。
そして、佐渡ヶ島ハイヴに近いハイヴは中国の鐵原ハイヴだが、近いコアはもう一つある。
それが、横浜基地最下層のコアである。
今横浜基地を目指しているBETA群は、それを目指して進撃してきているのだろう。
『これから、当横浜基地は防衛戦闘に入ります! 各国はオリジナルハイヴ攻略作戦の準備を!』
『此方も、横浜基地防衛に向かいます!』
夕呼が先に退席し通信が途切れ、続いて日本も退席した。そうして各国は、急いでオリジナルハイヴ攻略作戦の準備に入った。
場所は代わり、横浜基地。
基地全体に警報が鳴り響き、兵士達は慌ただしく準備に駆け回っている。
整備士達は戦術機に推進剤と弾薬を詰めて、装備も用意し、衛士達は強化装備を纏い、自機に向かっていく。
そうして司令部では、ラダビノット司令が状況の把握と細かい指示を出していた。
「戦車隊は第三演習場に移動し、砲撃陣地を形成! 接近された際の防衛用に地雷原の敷設を行え! UAVからの映像はまだか! 急がせろ!」
「了解!」
「各歩兵大隊は強化外骨格を装備!」
「現在最終確認中です! 後300秒以内には装備可能との事!」
「慌てず、急がせろ!」
怒涛の如く、ラダビノット司令は次々と指示を出していく。すると、一人の士官が
「BETA予測進路、割り出しました! 表示します!」
と戦況マップに、BETAの予測進路を表示した。
横浜基地に近い旧町田に出現し、横浜基地を目指してくると予測されている。
ラダビノットはそれを見て
「旧町田2km手前に第1第2戦術機甲大隊で第1防衛線を構築。5km後方に第3第4大隊で第2防衛線。第5から第7までの大隊は基地にて防衛を行う! 第1から第4大隊は通常装備と特殊装備が済み次第出撃!」
と指示を下した。
そこに、夕呼が現れ
「司令」
「香月副司令か……帝国軍はなんと?」
「多摩川防衛線と帝都守備連隊から戦力を抽出し、向かわせると確約してくださいました。それと、海軍も向かうと」
夕呼はそう言いながら、ラダビノット司令に書類を差し出した。恐らく、向かってくる戦力が書かれているのだろう。
それを一読したラダビノット司令は、書類を置いて
「それで、スサノヲシリーズは?」
と夕呼に問い掛けた。
「今現在、専属チーム全てが全力で整備中です。動かす事は難しいですわね」
「そうか……最悪、スサノヲシリーズを基地から退避させたかったが……仕方あるまい……何としても、防衛を成功させるしかないか……」
地下の90番ハンガーでは、スサノヲシリーズ弐型2機と改修型の四型が整備と組み立て作業をしていて、動力を入れる事も出来ない状態だった。
ラダビノット司令としては、最悪は3機を近くの基地に退避させたかった。これは、3機がオリジナルハイヴ攻略作戦の要だからだ。だが、動かせないならば仕方ないと判断。
「第1から第4までの各戦術機甲大隊、全機出撃!」
「……頼んだぞ……」
「第19独立小隊、出撃準備完了したと報告です!」
近衛軍第19独立警備小隊。御剣冥夜の為に悠陽が派遣させた部隊で、先の佐渡ヶ島作戦にも参加した腕利きの部隊である。
「彼女達には基本、独自行動権が与えられている……裁量に任せると伝えろ」
「了解!」
戦況マップには、出撃して定められた場所に向かう戦術機部隊が表示されている。するとラダビノット司令は
「香月副司令、神宮寺少佐は?」
「少佐なら、今は連隊付独立小隊を指揮しています……恐らく、基地防衛に就くかと」
ラダビノット司令の問い掛けに、夕呼はそう答えた。
神宮寺まりも
以前は帝国軍の富士駐屯地に所属していた彼女だが、夕呼が直接引き抜いて横浜基地の訓練教官に抜擢。
冥夜達の訓練教官を終えた後は軍曹から少佐になり、連隊付独立小隊を創設し、その隊長となって独自行動権を与えた。
「そうか……総員の奮戦に期待するしかないか……」
ラダビノット司令は、徐々に近付くBETA群を示す光点を見ながらそう呟いた。
こうして、横浜基地の長い戦いが幕を開けた。