横浜基地から出撃した第1、第2戦術機甲大隊は町田近辺に到着すると
『アコード1よりHQ! 第1、第2大隊は指定ポイントに到達!』
『HQより、第1、第2大隊へ通達! 特殊兵器装備機は、現在地より1km先に前進し、特殊兵器を展開せよ!』
『了解! 聞いたな!? 特殊兵器を装備している機体は1km先まで前進して、特殊兵器を展開!』
『了解!』
指名を受けた機体は、前進を始めた。
指名を受けた機体の背中には通常装備の他に、追加で大きなコンテナが装備されていた。指定座標まで行くと、そのコンテナを地面に置いて
『開放!』
と音声コマンドを入力しながら、後退を始めた。
するとコンテナが上部から観音開きに開き始め、開ききると中から何かが広範囲に散布された。
それを確認しつつ、戦術機部隊は後退していく。
その途中で、轟音が鳴り響いた。
布陣し終わった戦車隊からの砲撃が、BETA群に次々と降り注いだ。
至近距離で感じる凄まじい砲撃密度に、一人の衛士は
『まるで豪雨だ』
と呟いた。しかし、同時に気付いた。
『レーザー種の迎撃が、少ない……?』
データリンクの情報によれば、少なくとも数十のレーザー級が居るのは確かだ。だというのに、確認出来るレーザーは僅かに数本だけ。
そして、更に違和感に気付いた。
『待て……UAVが撃墜されてないだと……!?』
それは、BETA群の真上を飛んでいる無人機。偵察とミサイルによる支援が出来る兵器で、ミサイルは迎撃されているが、UAV本体は無事だった。
レーザー種の迎撃優先は、航空機から始まり、高性能なCPUを搭載した兵器と有人機になる。
特に航空機は最優先に設定されているのが、常に先にレーザーによる迎撃が始まる。
しかしUAVを無視し、ミサイルや砲弾を優先して迎撃している。
これはおかしい。そう判断したその衛士は、直ぐ様その情報をデータリンクに上げた。
場所は代わり、横浜基地は地下司令部。
「なに? レーザー種の迎撃が少ないだと?」
「はっ! 最前線の部隊からも、同様の報告が上がってきています」
通信士官からの報告に、ラダビノットは眉を顰めた。佐渡ヶ島攻略作戦からだが、度々BETAが今までに無かった行動をするようになってきている。
どうすべきか、とラダビノットが考えていると
「第1防衛線は完全に破棄してください!」
と武が現れて、ラダビノットに進言した。
「なに?」
「第1防衛線のBETA群は、エネルギー切れ寸前の個体ばかりです! 本隊は、地下を通って第2防衛線と横浜基地に迫ってきてます! 支援砲撃の振動に隠れてるんです!」
武は畳み掛けると、近くの端末を操作した。
それは、振動センサーのフィルタリング設定。
各戦術機甲大隊が、最前線に向かいながら、様々な場所に小型の振動センサーを敷設していた。
それは今までフィルタリング設定で全振動を表示していたが、武が設定した事により、支援砲撃の振動を表示しなくなった。
すると徐々にだが、近づいてくる各種BETAの振動が、表示された。
それを見たラダビノットは
「現時点で、第1防衛線は破棄! 第1、第2戦術機甲大隊は第3、第4戦術機甲大隊と合流し、現第2防衛線から2キロ後退! その後、支援砲撃の範囲を拡大!! 第5から第7大隊は戦闘態勢に入れ!!」
第1から第4大隊は、基地に向かってくるBETAを削る為に外で戦闘。第5から第7大隊は基地敷地内に攻め込んでくるBETAと戦闘。
「戦力の分散……BETA相手に、愚策だな……」
「今はこの横浜基地を落とさせない為に、仕方ないかと思います。もうすぐで、スピリッツも此方に来ます。耐えてください」
武はそう言うと、地下司令部から出ていった。恐らく、パイロットスーツに着替え、地下の格納庫に仕舞っているテスタメント・パニッシュメントで出撃する気だろう。
「全軍、奮闘せよ! 横浜基地の荒廃は、諸君に掛かっているぞ!!」
『了解!!』
そして、横浜基地は総力を挙げて佐渡ヶ島の残存BETA群と交戦を開始した。