横浜基地に近い海上に、アメリカ海軍第七艦隊が展開していた。
「国連、並びに安保理の決定により、我々はこれより国連軍横浜基地の救援に向かう」
艦隊の提督、ラウル・クゼは艦隊全体に聞こえるスピーカーに繋がるマイクに向けて、語り掛けていた。
「今やあの基地は、対BETA戦の希望……そこを失う訳にはいかない。諸君の奮戦に期待する」
マイクを置いたラウルは、キッと激戦が続く横浜基地を睨み
「艦隊、
と指示を下した。
攻擊位置に関しては、近くに展開している帝国海軍とデータリンクで共有している。
先に駆逐艦や巡洋艦からミサイルが発射され、僅かに遅れて戦艦から砲撃が始まった。
次々と爆発が発生する。それを見ながら
「戦術機部隊、発艦させろ」
とラウルは指示を下した。
場面は変わり、JFK内部のFー18E。スーパーホーネット海兵隊仕様。その一隊の名前は、ブラックナイヴス。
先の佐渡ヶ島攻略作戦にも投入された腕利きの海兵隊で、今回は直前に新しい隊員が編入されていて、その新入り。
リリア・シェルベリ少尉は戦意に満ちていた。
彼女は少し前まで欧州方面に派遣されていたアメリカ海軍に在籍していたが、ある日に司令官に第七艦隊に転属を希望した。
当初は難色を示されたが、リリアの熱心な転属希望に根負けし、許可したのだ。
リリアが転属を希望した理由は、佐渡ヶ島攻略作戦の最中に、ある情報を目にしたのだ。
それは、スピリッツがアメリカのネットに流布したG弾に関する夕呼の論文と大海崩に関する情報。
それを見た直後に、リリアの脳裏に一気に情報が駆け抜けた。
バビロン災害から端を発するJFK艦隊の全滅に、対人戦争。そして、JFKハイヴの攻略作戦で見た仲間達の遺骸。
そして、ハイヴの攻略。
それらを一気に見て、リリアは今が歴史の分岐路だと考えて行動を開始した。
一度休暇申請を出してアメリカ本土に帰国し、息を殺していた反G弾派に接触し、夕呼の資料をと一緒にディゼル少将の暗殺計画書を見せた。
この時アメリカでは日本へのネット接続が出来なくなっており、第五計画派の妨害が及んでいた。
それらを見た反G弾派は憤り、ディゼル少将の仇討ちとクーデター計画を立ち上げた。
そこからは早かった。ディゼル少将に恩がある陸軍部隊や、暗殺された反G弾派将校の部隊が続々と合流し、G弾の保管場所を特定。
そこに真弥が接触し、ブラックウィドウを提供した。
ブラックウィドウは放棄されていた実機を極秘裏に回収し、更にハッキングで設計図も回収。
それらを用いて、ブリッジス親子が開発と改修を行なって、少数生産。
データを擬装してアメリカに運び込み、引き渡したのだ。
運用するのは、アメリカ陸軍第66戦術機甲大隊。つまり、ウォーケン少佐の部隊だ。
そして、ウォーケン少佐の部隊に長刀の扱いを教えたのが、リリアだった。
何度も間近で見て、更にはまりもと短刀の訓練の際に軽く教えてもらった経験が生きた形になる。
その結果、クーデターは成功。
原隊に戻ってから、今に至る。
『行くよ、お前ら! BETA共をきっちり教育してやりな!!』
『イエス・マム! 我らがビッグ・マム!!』
ブラックナイヴス指揮官のダリル・マクマナス中尉の指示に、ブラックナイヴス隊員達が斉唱で応える。
そして、JFKから次々と発艦していく。
「横浜基地は、やらせない……!」
脳裏にBETAの実験場を思い出しながら、リリアは横浜基地に突撃した。