スピリッツが寄港した翌日、帝国軍からスピリッツに上陸許可が降りた
しかし、全員の許可は無理だった
許されたのは、数人のみ
それを受けて、ゼノンとマークは日本人のみを上陸させることに決めた
これは、帝国内の情勢を鑑みた結果である
今帝国内では、アメリカ人への不信感からなる国連への不信感も高まりつつあった
特に、ユーラシア大陸出身の人種への不信感が高まってきていた
それを考えれば、日本人のみとなったのだ
本当だったら、若い人員たる直哉達を上陸させて息抜きさせたかった
しかし、不用意に帝国の情勢を刺激する訳にはいかなかったから日本人のみとした
「では、行ってきます」
「ああ……不用意な行動はするなよ」
日本人たる直哉達は、それぞれの移動手段で以前の戦地
京都に向かった
そして見たのは、廃墟と化した京都だった
「これが……京都……なのか……」
廃墟と化した京都を見て、箒は呆然としていた
すると一夏が
「忘れるな、箒……こうなった一因は、俺達にもある……俺達が京都を主戦地にしたから、こうなった……」
と言った
その後、京都に入った各員は個別に行動を始めた
そして一夏は、京都駅近くのある公園の前を通った
その公園には、一人の少女が居た
その少女は、京都で共に戦った眼鏡を掛けた少女
能登和泉だった
その和泉は、ベンチに座りながらペンダントを見ていた
そこに、一夏が近づき
「よ……一日振りだな」
と声を掛けた
「貴方は……あの傭兵部隊の……」
「織斑一夏だ。能登和泉さん」
和泉が視線を向けると、一夏は名乗りながら和泉の隣に座った
すると、和泉の手の中にあるペンダントが見えた
そのペンダント
否、ロケットの中には近衛軍の軍服を着た一人の青年の写真があった
それを見た一夏は
「……恋人か?」
と問い掛けた
すると和泉は、ポツポツと語り出した
その恋人は、和泉より一年早く任官
九州方面に援軍として向かっていた
それが、BETAが九州に上陸する約一週間前だった
そしてその九州に、BETA群が上陸
交戦を開始したが、BETAの圧倒的数に押されて後退を開始
その恋人所属の部隊は、一緒に戦っていた陸軍部隊と後退戦闘を繰り返した
それは絶望的ながらも、彼等は果敢に戦った
そして四国付近まで後退
その四国付近で、衝撃的な光景を目にした
なんと、帝国本土と四国を結ぶ三つの橋が残っていたのだ
その内、二つの橋
瀬戸大橋と瀬戸内しまなみ海道には、爆薬の設置が出来ていた
だが、BETAの予想外の侵攻の早さに明石大橋への爆薬の設置が間に合っていなかったのだ
それを受けて、その合同部隊は腹を決めた
四国を守ると
四国は、帝国軍にとって大事な弾薬生産拠点があった
そこをBETAに制圧されたら、帝国軍は大打撃を受けることになる
海外に生産拠点を建設中とは言え、一時的に帝国軍の弾薬生産と備蓄が著しく減ってしまう
更には、避難が終わっていない国民も皆殺しにされてしまう
それをさせる訳にはいかなかった
合同部隊の内、過半数が時間稼ぎのためにBETAの足止めに
残りが、橋に爆薬の設置を始めた
だが、時間が足りなかった
圧倒的数のBETA群により、足止め部隊は全滅し突破を許してしまった
結果、爆薬の設置に回っていた和泉の恋人は、橋を破壊するために自爆したのである
その結果、四国は対岸からの砲撃や戦術機部隊の奮闘により、四国に上陸してきたBETAの迎撃に成功
四国は、守られたのである
確かに、多数の犠牲は出た
だが、彼等の奮闘がなければ、四国は間違いなく陥落していただろう
「忠道……」
和泉は恋人の写真が入ったロケットを、胸元で握り締めた
すると一夏が
「勇敢な恋人じゃないか……だったら、誇ってやれよ」
と言った
すると、和泉は
「誇れですって!? 貴方に、何が分かるのよ!?」
と一夏を涙目で睨んだ
すると一夏は
「傭兵とは言え、俺もパイロットだ……その恋人がどんな気持ちで戦ったのか、予想がつくし、その恋人の気持ちも分かる……」
と言って、空を見上げた
「その恋人は、国のために戦った……それは、なんでか分かるか?」
「軍人なら、当たり前のことじゃない」
一夏の問い掛けに、和泉はそう言った
すると一夏は
「確かに、軍人ならば当たり前だな……だがな重要なのは、君という存在だ」
と和泉を指差した
「……私?」
と和泉が首を傾げると、一夏は
「ああ……その恋人はな、君に生きてほしかったんだ……だからその恋人は、四国を守ったんだ……四国を守ることが、君の生きることに繋がると信じてな……」
と言って、和泉の頭を撫でた
その撫で方が、和泉にとっては恋人の撫で方と一緒だった
だから気づけば、和泉は一夏にその恋人の姿を重ねた
そして気づけば、和泉は一夏に抱き付いて泣いていた
最初は驚いた一夏だったが、優しく和泉を抱き締めて頭を撫で続けた
そして、十数分後
「ごめんなさい……いきなり泣いて……」
「構わないさ……それで、君の気が晴れるならな」
謝罪してきた和泉に、一夏はそう返答した
そして一夏は、再度
「もう一度言うが、恋人のことを誇ってやるんだ……それが、俺達パイロットにとっては最高の慰めであり、誉れであり、供養なんだ……」
と言った
それを聞いた和泉は
「すぐには、無理……けど必ず、忠道のことを誇って語り継ぐわ……それが、忠道への供養になるのなら……」
と言った
それを聞いた一夏は、笑みを浮かべながら
「おう」
と言って、三度和泉の頭を撫でた
撫でられた和泉は、僅かに頬を朱に染めた
これが、この少女にとって重要な会話になる