それは、突然起きた。
それまで猛然と突き進んできていたBETA群が、突如引き返して横浜基地から離れ始めたのだ。
『これは……!』
『基地最下層のコアの破壊か停止が、間に合ったのか……!』
『一体でも多く殺せ!! 奴らに、情報を渡すな!!』
『了解!!』
残っていた横浜基地所属機だけでなく、駆け付けたアメリカ軍機と帝国軍機。そして臨時編成だが、国連軍も離脱を始めたBETA群に対して攻擊を続行。
途中で行動停止したのを含めて、総撃破数は約八万体。しかし途中で追撃を振り切り、海に入ったのが数千体は居たらしい。もしかしたら海底で行動停止する個体も居るかもしれないが、確実なのは情報を持った個体が近いハイヴ。
鐵原ハイヴに渡り、オリジナルハイヴに情報が届くだろう。
場所は変わり、司令部
「そう……コアは破壊したのね……」
『はっ……再起動は絶望的と判断しました……』
「仕方ないわ……貴女達は最善を尽くした。だから、まだチャンスがある」
速瀬水月からの報告に、夕呼はそう返答した。
コアルームに突入した二小隊は、BETAを排除しながら再起動が出来るか考えていた。
だが、オペレーションルームが兵士級と闘士級に占拠されていた事が分かり、破壊する事にした。
一度、Sー11を仕掛け、タイマーで起爆しようとした。だが、コアからエネルギー補給をしたBETAが、タイマー部分のみを破壊して、Sー11を無効化した。
それを把握したブリュンヒルデ小隊が、4機でコアを撃って破壊した。
というのが、顛末になる。
そして横浜基地の被害は、まず戦術機で無事なのは、予備機を含めてたった1個中隊のみ。
戦車隊は壊滅。ヘリ部隊は全機無事だが、地上施設の壊滅により運用は現在では無理。
歩兵部隊は、機械化も含めて全滅。無事なのは、工兵が中隊規模。
戦力は、事実上の全滅判定だ。
施設に関しては、地上施設は八割が破壊され、残っているのは少し離れた位置の予備機体が保管されていた戦術機ハンガーとロケット打ち上げ施設のみで、ロケット打ち上げ施設への送電と給水ラインを現在最優先で復旧作業中。
地下は、物資搬入地点から物資搬入エレベーターが完全に破壊。それらがあった中央部分を中心にして壊滅し、深層エリアは電線が破断した為、把握しきれていない。
はっきり言って、最早死に体だ。
だが、誰も諦めていなかった。
医療班は総出で負傷者達の治療に奔走し、工兵隊は夕呼の指示で最優先とされた施設の復旧を開始した。
そして司令部は、日本帝国を含めた世界各国との協議を開始。
5日後の新年、2001年の1月1日にオリジナルハイヴ攻略作戦。
武が成功させた
違うのは、スピリッツが参加する事。
しかもスピリッツは、事前に幾つかの策を用意し、二つは宇宙に用意してある。
だが、BETAにも新種が出てくる可能性が高い。
仮称ヲ号標的。
前回の協議で超重レーザー級と呼称する事が決まった個体が、他のハイヴやオリジナルハイヴに現れたり、まったくの新種が現れる可能性がある。
もしかしたら、母艦級の戦闘転用個体すら出されるかもしれない。
そう考えたら、早く発動する必要があり、各国は準備に奔走している。
ソ連は春か夏の作戦開始を一度は嘆願してきたが、そんな猶予はない事を、夕呼が力説し、折れた。
ソ連だけでなく、真冬のユーラシア大陸は大陸全体で暴風と猛吹雪が吹き荒れ、その寒さは戦術機を含めたあらゆる兵器に悪影響を及ぼす。
はっきり言って、夕呼も冬以外に攻略作戦を展開したかった程だ。
「香月博士。スサノオシリーズの調整は?」
「作戦開始には間に合います……スサノオ二型と四型。合わせて三機が、作戦に投入出来ます」
ラダビノット准将の問い掛けに、夕呼は端的に答えた。何故三機なのか。
それは、2個小隊がコアの破壊に向かった後まで遡る。
最下層に向かうBETA群は加速度的に増えていき、このままでは2個小隊の生存すら危ういと考えた碓氷少佐とマークは、スサノオ二型の一機のML機関を低出力稼働させて、BETAの誘引が出来ないか、と考えたのだ。
夕呼に上申したら、佐渡ヶ島攻略作戦に投入した一番ベースに近い機体なら、と許可され、起動させた。
すると、BETAが90番格納庫に殺到してきて、Aー01、スピリッツ、アメリカ軍・国連軍の合同部隊による迎撃戦闘が始まった。
迎撃戦闘自体は順調に推移し、コアの破壊まで無事に守り切った。
しかし、元々が予備部品の少ないスサノオシリーズ。
低出力稼働とは言え、ML機関に負荷を掛けた為に稼働させた二型は蒼穹作戦への投入は無理と判断されたのだ。
しかし代わりに、他三機への予備部品として解体され、三機の整備の万全を期する事にした。
「司令! 帝国軍から通信です! こちらに、帝国近衛軍が向かってきているそうです!」
「帝国近衛が?」
通信将校からの報告に、ラダビノット准将と夕呼は眉をひそめた。
帝国近衛軍は帝都城と政威大将軍。そして天皇陛下の守備が専門。横浜基地に来る理由が分からなかったのだ。
「はい! あ、その近衛軍から通信です! メインモニターに表示します!」
メインモニターに表示されたのは、第16近衛大隊の隊長。斑鳩だった。
『こちら、第16近衛大隊の斑鳩大佐だ』
「お久しぶりにございます、斑鳩大佐。して、何用で横浜基地に向かってきているのです?」
『何、簡単な話だ……我々も、オリジナルハイヴ攻略作戦に協力しようと思っていてな……』
斑鳩大佐の言葉に、ラダビノット准将と夕呼は驚いたのだった。