2000年12月31日夕方
横浜基地、シャトル打ち上げ施設
『先日のBETA襲撃により、我が横浜基地は致命的とも言える大損害を被ってしまった……多くの人員と貴重な装備が喪われ、正に精魂尽き果てんばかりであった……』
演説台に立つラダビノット准将が、急遽集まった付近の国連軍関係者と復旧作業をしている工作兵と負傷者以外の手空きの要員。そして帝国軍将校を前に、演説していた。
『だが、傍らに立つ戦友達を見るがいい。その眼に激しく燃え立つ気炎を……何故満身創痍の我々が再び立つのか! それは、散っていった輩への礼儀であると心得てるからに他ならない!』
誰も彼もが、その演説を聞いていた。
『大地に眠る者達の声を聞け……海に果てた者達の声を聞け……空に散った者達の声を聞け……彼らの悲願に報いる時がきた……! 我々の想いを一身に背負い、孤立無援の敵地に若者達が赴こうとしているのだ! 若者達よ……諸君に戦う術しか教えられなかった我らを許すな……諸君を戦場に送り出す我らの無能を許すな……願わくば……諸君らの挺身が、若者を送り出す事の無き世の礎とならん事を』
ラダビノット准将は演説を終えたのか、マイクから離れてシャトルに身を向けると敬礼した。
その直後、集まっていた将校達も一斉に敬礼し、シャトルの打ち上げカウントダウンが始まり、シャトルは轟音と共に打ち上がった。
それを、一人基地の屋上から夕呼は静かに見送っていた。
数時間後の翌2001年1月1日早朝、世界中で作戦が始まった。
最外縁部のハイヴに対しては砲撃とミサイルによる攻擊の後、上陸戦力を投じて、BETA群の誘引。
大陸内部のハイヴには、届く範囲には艦隊からのミサイルと軌道艦隊から爆撃を行った。
そして、オリジナルハイヴには軌道艦隊から爆撃を開始した。
因みに、今回オリジナルハイヴに投入される戦力は、国連軍からは保有する軌道降下兵団の九割、アメリカ軍からは約八割。日本帝国軍から約六割。更に大東亜連合軍が五割投入される事になっている。
そこに、スピリッツの戦力が加わる事になる。
『これが、宇宙から見た地球か……』
『綺麗ね……』
そう語るのは、碓氷少佐と速瀬中尉だった。
『だけど、ユーラシア大陸は茶色一色……』
『早く解放したいね』
続いて、慧と壬姫が語る。
その時
『こちら、オリジナルハイヴ攻略第一艦隊旗艦艦長のアウストラ大佐だ。地上の状況を報せる。今現在、各国の友軍が一斉に外縁部ハイヴと内部のハイヴ。そしてオリジナルハイヴに攻擊を仕掛けているが、予想以上の被害が出ている』
Aー01も居る艦隊の旗艦から通信が入り、全員の視界に地上の戦闘の簡易的な様子が表示された。
だが、一部の戦線で被害が大きい事が伺える。
特に大きいのは、ソ連軍と欧州連合軍。そして、先行降下したオリジナルハイヴ攻略部隊だ。
『故に横浜GHQは作戦の繰り上げを決定した。本来はもう一周して突入する予定だったが、現時点で突入を開始する! 当初のプランは破棄し、全艦再突入殻を背負ったまま突入。戦力が地上に到着出来る確率を高めるためだ。地上戦力各員は、我々の犠牲を振り払い、オリジナルハイヴに向かってほしい』
どうやらアウストラ大佐は、既に覚悟を決めているようだ。
『艦隊陣形は、爆撃装備の第一から第三が加速して120秒先行し、爆撃。そのまま第一から第三艦隊は第四から第八艦隊の盾となる為に先行降下。第四から第八艦隊は60秒遅れて降下を開始する』
犠牲前提の作戦。
しかし、そうでなければオリジナルハイヴの攻略は難しい。既に、先行降下した戦力は約四割が撃破されてしまっている。
急がなければ、オリジナルハイヴに突入する事すら困難になってしまう。
『生存した艦は、そのままエドワーズに向かう……各員の奮闘に期待する。以上だ』
そして、攻略艦隊は行動を開始した。