『艦隊、行動開始!』
艦隊旗艦からの指示の直後、爆撃装備の艦隊が先行降下を開始。
『爆撃艦隊、順調に降下中……つっ!?』
降下を開始した十数秒後、全員の視界にレーザー照射警報が表示された。
『第一戦隊轟沈率98%! 旗艦サンダーバード、シグナルロスト!!』
『第二戦隊、半数が轟沈!』
『第三戦隊、3割が轟沈!』
次々と上がる被害報告に、全員が息を飲んだ。
爆撃艦隊は先に降下弾を投下しているのに、それらを無視して艦隊を優先して攻擊してきた。
『この威力……複数の重レーザー級が一点集中照射している模様!! 艦艇に施されている耐レーザー措置では、耐えきれません!!』
データリンクで送られてきた情報を即座に解析し、一人の艦長が驚愕した。
『バカな!? 今までのBETAの動きとは全く違う!! 即時対処ではない!?』
『優先対象を選んで攻擊しているのか!?』
『これが、ヨコハマがオリジナルハイヴへの攻擊を早めた理由か!!』
アウストラ大佐は、夕呼が予定を早めてオリジナルハイヴ攻略作戦を押し進めた理由を察した。
この作戦でオリジナルハイヴを攻略出来なければ、人類は滅びに向かう。
『こうなったら、部隊の降下率を上げる為に我々が盾に……!』
『こちらに任せてもらおう!』
アウストラ大佐を遮る形で、スピリッツが行動を開始した。アークエンジェルとエウクレイデスが先行し
『予定より早いが……』
『切り札の一つ目だ!』
スピリッツと帝国が協力して開発し、宇宙に打ち上げていた2つの切り札。
確かにこの世界の技術力は、スピリッツが有する技術力には遠く及ばないものばかり。
しかし、極一部の技術は同レベルがあった。
それが、人工衛星技術。
恐らくは対BETAを突き詰めた結果、その域にまで到達したのだろう。
その一つが、通称でアーテミシーズと呼ばれる人工衛星群になる。これは地球を360°グルリと人工衛星が囲っているのだが、地表のハイヴから発射される物体だけでなく、月や火星から発射される物体の破壊と迎撃を担っている。
その命中精度は非常に高く、様々な弾頭を用意する事で地表への攻擊も可能としている。
しかし、やはりレーザー種の存在が邪魔で、中々地表攻擊の効果は発揮出来ずにいた。
今回はそのアーテミシーズのデータを参考に、スピリッツの技術を投入した。
しかも帝国の技術力でも作れるようにした為、今後少しずつ数も増やせるようにしたのが、一つ目のレーザー兵器である。
太陽光パネルもスピリッツの技術で効率を最大限上げ、バッテリーも限界まで上げてようやく実用化した一つ目の切り札だ。
今回はスピリッツの艦長2名の許可で発射出来るが、今後は国連議会での賛成多数で発射される事になる。
今現在打ち上げられているレーザー砲人工衛星の数は、全部で十二基。それら全てをユーラシア大陸真上に集結させ、地上戦力のデータリンクと人工衛星の超長距離光学カメラにより精密照準。
『照準固定完了!』
『発射!!』
一斉に地上に向けて放たれる12の閃光。
大気圏に入っても大して減衰する事なく、地上に居たレーザー種を次々と両断していく。
場所は変わって少し時を遡り、極東ソ連軍シベリア方面艦隊旗艦の艦橋。
「ちょ、超重レーザー級の極大照射により、地上戦力の約二割がシグナルロスト! 第三艦隊旗艦、操舵不能!!」
「あれが、佐渡ヶ島で出現したという超重レーザー級……!! なんという……!!」
オペレーターの報告を受けて、極東ソ連軍艦隊旗艦の提督。ブラート・リトヴィネンコ中将は拳を握り締め
「ヨコハマGHQがオリジナルハイヴ攻略を急いだ理由がこれか……! こんな個体が十数体居たら、我々の攻擊は意味を成さなくなる……!!」
とモニターに映る重レーザー級を睨んだ。
サブモニターには超重レーザー級に関する情報が表示されており、レーザー照射だけでなく、要塞級と同じ衝角鞭による攻擊も記されている。
今までのレーザー吶喊で得た情報から、対策したとしか考えられない。
「戦力の再編を最優先だ! 組織的かつ迅速なレーザー吶喊をしなければ、あの巨体を倒せん!」
「同志中将! 党本部からは戦力を温存し、夏の作戦に備えよと!」
リトヴィネンコ中将の指示に、副官であり政治将校のグネーシン中佐はソ連政府であり軍本部の意向を伝えたが
「何が戦力の温存か!!
と言って、超重レーザー級を指差した。
「ど、どういう……」
「観測班!」
「超重レーザー級と同時に出現した重レーザー級の照射間隔が……約17%短縮しています!!」
「照射インターバルが、短縮されている!?」
確信した様子でリトヴィネンコ中将は観測班に報告を促し、観測班からの報告に、グネーシン中佐は驚愕していた。
「それだけでなく、照射対象を選んでいる模様!」
「照射対象の選択!?」
「間違いありません! AL弾の約九割を無視し、榴弾と炸裂弾を重点的に迎撃しています!」
観測班からの続けての報告に、グネーシン中佐は思わず後退りした。
「そ、そんな……今まで、あらゆる砲弾を迎撃していたのに!?」
「やはりな……」
「同志中将?」
「恐らくは、佐渡ヶ島とヨコハマ基地でも同様の事態が有ったのが、オリジナルハイヴ攻略を決めた要因……だから私は、佐渡ヶ島攻略作戦に参加すべきと上申したのだ!! 得難い経験に、帝国軍が新たに投入した新兵器の数々が見れると! それを、戦力の温存と銘打って引き篭もった結果がこれだ!! 今までもそうだ! 未発見元素を多く得る為と、ハイヴ攻略作戦を先延ばしし続けた結果が此のざまだ!! 先の極大照射……あれは恐らく、大気圏降下してくる部隊……特に、Aー04用の切り札だろう……超重レーザー級は、BETAが用意した大気圏降下部隊用の切り札……!」
リトヴィネンコ中将の言葉に、グネーシン中佐は絶句していた。
あり得ないと言いたいのに、観測班からの報告を鑑みれば、否定出来なかったからだ。
「戦力の再編はどうなっている!!」
「超重レーザー級の後に出現した旅団規模BETA群により漸減されつつあり、遅々として……」
「こうなったら、核を使うしか……」
「同志中将、それは!?」
極東ソ連軍の切り札、第一艦隊と第二艦隊のミサイル発射艦に配備されている戦術核ミサイル。計16発。
アラスカという地で開発される極限られた核。
今現在極東ソ連軍に配備されている内の、約2割の核ミサイルを使うとリトヴィネンコ中将は決意した。
「全ての責任は私が背負う!!」
リトヴィネンコ中将はそう断言し、核ミサイルを使用可能にするように指示を出そうとした。
その時
「超重レーザー級並び重レーザー級、初期照射開始!!」
「何!?」
「狙いは!?」
「オリジナルハイヴ攻略艦隊の第一から第三戦隊の模様!」
観測班がそう言った直後、空に向けて一斉にレーザーが放たれた。
「軌道爆撃艦隊か!?」
「……被害は?」
「第一戦隊、98%轟沈! 第二戦隊は半数が轟沈した模様!」
「同第三戦隊は約3割消滅!!」
データリンクから得られた情報に、グネーシン中佐は言葉を喪った。
今までは徹底的に無視していた軌道艦隊。しかし今回は、集中して狙った。
「爆撃の為に高度を下げたタイミングで狙ったのか……!」
「ば、バカな……!? BETAが、優先対象を決めて攻擊!? 知能は昆虫並みだった筈だろう……」
グネーシン中佐は、端末に表示された被害を見て、顔面蒼白になった。
約30年掛けて得てきたBETAの習性や情報が、尽く否定されたようなものだったからだ。
「中将! 国連を通して、帝国軍から通達! 指定範囲より退避せよと!」
「なに!?」
「帝国軍が!?」
「範囲は……超重レーザー級の位置です!」
指定範囲が戦況マップに表示され、攻擊までの時間も表示された。元々まだ味方も展開していないから、リトヴィネンコ中将は見守る事にした。
そして、表示されていた時間が0になった瞬間、天から眩い閃光が降り注いだ。
「な、何だ!?」
「まさか……攻擊用レーザー砲!? 帝国は、そんな物まで実用化したというのか!?」
艦橋に居た要員は全員が眩しさに驚いたが、リトヴィネンコ中将はそれがレーザー攻擊だと見抜いた。
「味方への被害は!?」
「甲板に居た者達の何人かが、眩しさで目が見えなくなったと!」
「直ぐに収容させろ! 状況は!?」
「超重レーザー級並び、超重レーザー級周辺のBETA群の消滅を確認!!」
リトヴィネンコ中将は閃光が止んだ瞬間に把握を開始し、今がその時と確信した。
「極東ソ連軍全軍に通達! 最終作戦域に全力攻擊!! 奴らを徹底的に叩け!! これを最後の攻勢と思え!!」
『了解!!』
此の後、リトヴィネンコ中将率いる極東ソ連軍は予備戦力を含む全戦力の内の約四割の戦力を損耗するも、次々と現れるBETA群を駆逐し、約80万体という数を撃破する事に成功し、夏の作戦に先駆けて橋頭堡の確保に成功する事になる。