欧州、グレートブリテン島から出発した欧州連合軍西ドイツ陸軍第44戦術機甲大隊、通称ツェルベルスは母艦のグラーフ・ツェッペリンから次々と出撃し、リヨンハイヴへの攻擊を開始した。
「まさか、私達が生きてる間にオリジナルハイヴ攻略作戦が始まるなんてね……」
そう呟いたのは、ツェルベルス大隊では打撃支援を担当する衛士のイルフリーデ・フォン・フォイルナー少尉だ。
『そうなったのは、恐らく日本帝国に現れたという傭兵部隊。スピリッツでしょう……私も会ってみたいものですわ』
イルフリーデの言葉に続いたのは、ルナテレジア・フォン・ヴィッツレーベン少尉。
見た目や言動はまさにお嬢様なのだが、戦術機キチと呼ばれる程に戦術機が大好きで、通称で戦術機を婿にしたお嬢様と言われている。
『少なくとも、私達にも恩恵が来ているからな……有り難い』
そう言ったのは、ヘルガローゼ・フォン・ファルケンマイヤー少尉。
今欧州連合軍で配備が進んでいるEFー2000タイフーンだが、実は日本帝国から技術提供されて開発されており、推力が当初の予定より強化され、腕の固定兵装も、強度が上がっている。
更に、少し前に新しく採用された新兵器にバズーカもある。
日本帝国は密かに国連での影響力と発言力を上げる為に、色々と手回ししていたのだ。
その一部が、戦術機に関する技術と武装のデータの供与だ。
『総員傾注』
そう告げたのは、ツェルベルス大隊隊長。
ヴィルフリート・フォン・アイヒベルガー少佐だ。
二つ名は、黒き狼王。
『これより我々は、リヨンハイヴに攻勢を仕掛ける。これは、蒼穹作戦後支援攻擊だ……だが同時に、BETA共に占拠されている母国の大地を取り戻す戦いだ。我々貴族の務めを果たす』
ツェルベルス大隊の隊員は、全員が西ドイツ貴族で構成されている。
彼らからしたら、BETAに欧州を支配されてから生き恥を晒してきているのだ。
『私からお前達に言えるのは……何時ものように戦い、何時ものように帰還する。以上だ』
『了解!!』
ツェルベルス大隊は即応部隊として編成されており、普段から通称地獄門と呼ばれるドーバー海峡基地か、その基地を停泊港にしている空母に常駐している高い練度の部隊だ。
その証拠に、強襲上陸したと同時に目前に居たBETA群に突入し、要撃級を輪切りにし、戦車級の群れを突撃砲で薙ぎ祓い、突撃級の後ろから120mmで撃破して、あっという間に広い空間を確保した。
『こちらツェルベルス2。CP、橋頭堡を確保。本隊の上陸を開始せよ』
『こちらCP、了解! 本隊の上陸を開始する!』
ツェルベルス大隊2番機のジークリンデ・フォン・ファーレンホルスト中尉が要請すると、周囲の戦術機母艦から次々と戦術機が出撃を開始。
その中に、イタリア軍のレインダンサーズの姿があった。
『ダンサー1より全機へ! BETA共の真ん中で、華麗に踊りなさい!!』
『了解!』
レインダンサーズ
この部隊は試験機だったタイフーンを運用していた実績のある部隊で、その隊長はモニカ・ジアコーザ大尉。
アラスカはユーコン基地、アルゴス小隊に居たV・Gこと、ヴァレリオ・ジアコーザの実の姉である。
『ダンサー10! 私に遅れないように付いてきなさい!』
『了解!』
そして、要請によりアラスカから帰還したヴァレリオは、レインダンサーズに編入され、一緒に出撃していた。
『まさか、生きてる間にこんな一大反攻作戦が始まるなんてなぁ……あいつらも、頑張ってるかねぇ』
『ほらほら、余所見してると死ぬわよ! 前を見なさい! ヴァレリオ!』
『あいよ! 任せな、姉さん!!』
自国軍に帰った仲間達を思いながら、ヴァレリオは長刀を振り下ろして要撃級を撃破した、
その後、欧州連合軍と東欧連合軍は連携してリヨンハイヴに対して圧力を掛けた。
撃破するBETA群の数も右肩上がりに増えていき、同時に味方も撃破される。
しかし、オリジナルハイヴ攻略作戦というのが、彼らの士気を上げていた。
そんな時だった。
『HQより全軍に通達! リヨンハイヴ直下に、高熱源体確認!』
と司令部から、緊急通信が入った。
『まさか……』
誰かが呟いた直後、空に今まで見たことの無い極太の閃光が走った。
『今のは……レーザー……!?』
『新しく佐渡ヶ島で現れたという、新種か!!』
『なんてデカさだ……!』
そして、欧州連合軍と東欧連合軍が見たのは、リヨンハイヴ間近に現れた超重レーザー級だった。
その周囲には、新しいBETA群も展開している。
『全軍、超重レーザー級を攻擊せよ!』
『了解!』
指示に従い、全軍の攻擊は超重レーザー級に集中する。しかし、9つの眼から順繰りに放たれるレーザーと周囲のレーザー種により、艦隊と戦車隊から放たれた砲撃は全て撃破され、戦術機部隊も新たに現れたBETA群により進めない。
その事態に、誰もが焦り始めていた。その時
『国連を通じて日本帝国から緊急通信! 至急、指定範囲より退避せよ!!』
と通信で指示され、戦況マップに指定範囲が表示された。超重レーザー級を中心に、レーザー種を駆逐する範囲。
『ツェルベルス1より、全軍へ! 我々が殿を引き受ける! 後退!』
ヴィルフリートの言葉を皮切りに、欧州連合軍と東欧連合軍は後退を開始し、ツェルベルスは一機も欠ける事なく殿戦闘を成し遂げた。
その直後、空から閃光が超重レーザー級に降り注いだ。
閃光はすぐに消えて、超重レーザー級やその周囲に居たBETA群を消し飛ばしていた。
『日本帝国は、いつの間にレーザー兵器の実用化を……』
欧州連合軍の一人の呟きに、誰もが同意していた。
その時だった。
『HQより通達! 未確認の振動パターンを検知! 警戒されたし!』
『未確認の振動パターン? 先ほどの超重レーザー級ではないのか?』
『いえ、違います! 全くの別物です!』
ヴィルフリートの問い掛けに、通信将校は否定した。
その直後、地面を割りながらその巨体が姿を現した。見た目は、ブヨブヨとしたまるでブドウの房のようだった。
『何かする前に、やってやる!!』
『お止しなさい! 迂闊です!!』
ジークリンデが静止するが、東欧連合所属のニ個中隊が突撃し、その巨体に近づいた。すると、実の先端から液体を吐き出した。
その液体は広範囲に広がりながら、一個中隊に降り注いだ。すると、あっという間に戦術機が溶けていく。
『あ、熱っ……あがぁぁぁぁぁ!!』
『あ、ぎゃあぁぁぁぁぁ!』
『溶解液!? あいつ、溶解液を吐き出す新種!?』
溶解液の直撃を受けて、一個中隊は全滅。もう一個中隊の半数も、溶けた。
今まで、要塞級の衝角鞭でしか確認されていなかった溶解液を使う新種に、思わず誰もが足を止めた。
しかし、ヴィルフリート機が長刀を構え
『全機傾注……アレを倒さなければ、この戦線が瓦解する……我々は人類の剣にして盾……我々の務めを果たし、我々は帰還する!』
と宣言した。
それを聞いた欧州連合軍は、それぞれ武器を構えて陣形を組み、東欧連合軍も構えた。
『全機……突撃!!』
後方からの支援砲撃を合図に、戦術機部隊は一斉にその新種。後にトレビシェット級と呼ばれる個体に突撃していった。
この戦いにより、欧州連合軍と東欧連合軍に少なくない犠牲は出たものの、無事トレビシェット級の撃破に成功した。