「ここは……右京……だったか……」
と直哉は、瓦礫の中を歩いていた
もはや、右京のどの辺りを歩いているのかすら分からない
それほどに、歴史ある街
京都は、破壊されていた
そんな京都の至る所に、包帯を巻いた人々が座り込んでいる
どうやら、近くに野戦病院があるらしい
「……酷い有り様だな……」
と直哉が呟いた時、見覚えのある人物達が見えた
山城上総と篁唯依の二人だった
ボディーアーマーを装着し小銃を持っていることから、警備担当なのだろう
よく見れば、二人の目元が赤くなっている
もしかしたら、泣いたのかもしれない
その二人に近づき
「よ、お疲れさん」
と声を掛けた
すると、二人も気づいたようで、敬礼しながら
「神崎さん!」
「昨日は、ありがとうございましたわ」
と言ってきた
それを聞いた直哉は、手をヒラヒラとさせながら
「正規軍人じゃないから、敬礼はいらんし、感謝の言葉もいい……俺達は、仕事しに来ただけだからな」
と言った
しかし、上総は
「それでも、貴殿方のおかげで、私達は助かりましたわ……それは、事実です」
と言った
それに続くように、唯依も
「はい。私達だけでなく、多くの民や友軍も助けられました……ですから、ありがとうございました」
と頭を下げた
それを聞いた直哉が、頬を掻いていると
「っと、失礼します。榊原大尉から、通信が……」
と唯依は、右耳に手を当てた
そして、少しすると
「は、了解しました」
と答えて、視線を直哉に向けた
「今、代わりの歩兵部隊がこちらに来るそうです」
と言った
どうやら、交代のタイミングのようだ
それを聞いた直哉は
「なるほど。だったら、俺は別の場所に行こう」
と別の場所に行こうとした
だが
「いえ、少し待っていてもらえないかしら?」
と上総が、呼び止めた
不思議に思った直哉が、振り向くと
「実は、貴方と話がしたかったのです。よろしくて?」
と言った
それを聞いた直哉は
「まあ、目的地とかも特に決めてないからな。構わないが……」
と、上総の提案を承諾した
その後、上総と唯依の二人は新しく来た歩兵と、警備任務を交代
仮設基地に戻って、兵装を返却
そして、三人はある場所に向かった
そこは、以前まで二人が通っていた旧近衛訓練校だった
戦闘の余波でか、幾らか崩壊しているが、まだ形を残している
「訓練校か……二人が?」
「はい……私達を含めて、多くの近衛士官候補が通いました……」
「まあ、その話はまた今度に……」
直哉の問い掛けに二人はそう言うと、窓枠に腰かけた
そして、直哉を見て
「私が聞きたいのは、貴殿方が使っている機体……MSに関してです」
と唯依が言った
「貴殿方のMS……あれらは、私達の戦術機よりも遥かに高い性能を有しています……あれほどの機体、一体何処で開発を……」
「……独自開発……に、なるかな」
唯依からの問い掛けに、直哉はそう返却した
詳しくは言えないと思ったからだ
しかし、唯依は
「あれほどの機体を、独自開発……何処の国や企業の力も借りずに? それは、有り得ません。今私達が知る最高の戦術機は、アメリカが配備しているFー15E。ストライク・イーグルです。しかし、貴殿方が使っているMSは、それすら圧倒的に凌駕していました……ビーム兵器に機体内蔵式の原子炉……」
と指摘を開始した
「それらを開発する技術力……帝国だけでなく、アメリカ……いえ、世界中の何処を探してもありません……その技術……何処で入手したんですか」
その問い掛けに、直哉はしばらく黙った
そして
「すまんが、今は答えられない……俺はスピリッツという軍隊に所属する兵士だ……機密を喋ることは出来ない」
と言った
それを聞いた唯依は、ハッとして
「す、すいません……出すぎたことを」
と頭を下げた
真面目な彼女らしい
「いや……今は無理だが、何時かは話そう……俺達と敵対しなければ、幾らでも機会はあるさ」
直哉のその言葉を聞いて、唯依と上総は背筋に悪寒を感じた
スピリッツと敵対
そうなったら、間違いなく帝国軍は蹂躙される
そんな確信があった
兵器の性能だけでなく、隊員一人一人の練度
それが、遥か高みにあると思った
パイロット、艦の操舵や指揮、機体整備
それら全てが、遥か高みにある
そうして、スピリッツという傭兵達は成り立っている
「篁少尉からの話は、以上かな?」
「あ、はい。そうです」
直哉からの問い掛けに、唯依は頷いた
そして直哉は、視線を上総に向けた
すると上総は
「神崎さん、貴方は……何年戦っているんですの?」
と問い掛けた
「貴方の年齢は、私達と大差ない筈ですわ……しかし、その風格や腕は、ベテランの域……少なくとも、一年以上は戦っている筈ですわ」
上総のその問い掛けに、直哉は
「んー……もう、三年は越えるか……? あ、俺は一応16だ」
と答えた
それを聞いた唯依と上総は、驚きで目を見開いた
三年
文字にしたら、たった二文字だ
しかし、その時間はかなり長い
しかも、少し悩んだ様子からも、更に長いのは容易にわかった
(はて、三年以上は確実……どのぐらいだ?)
直哉は詳しく思いだそうとするように、更に首を捻っている
すると、上総が
「つまり、13から実戦に……」
と呟いた
そうして
(しかし、三年も前から活動していたのなら……私達が知らないのはおかしいですわね……スピリッツにMSという機体……噂すら、聞きませんでしたわ……余りにも荒唐無稽ですが、もしかしたら、彼等……この世界の者じゃない?)
と考えていた
だが、すぐに
(まあ、もう私には関係なくなりそうですわね……お祖父様のあの様子では……)
と思った
しかし、直哉を見て
(スピリッツ……選択肢の一つ、ですわね)
と思ったのであった