「では、本日の議題ですが……スピリッツは、どのようにお考えですか?」
とまりもが問い掛けると、ゼノンが
「こちらとしては、日本と契約したいと思っている」
と言った
それを聞いて、政威大将軍は眉を潜めた
「帝国と……ですか?」
政威大将軍の疑問に、ゼノンは頷きで答えた
それを見た政威大将軍は
(傭兵というからには、本来は条件の良い所と契約するはず……なぜ?)
と疑問に、思った
すると、マークが
「帝国と契約するに至った理由ですが……今の世界情勢……何より、帝国主導の計画を援護した方がいいと判断しました」
と言った
その直後、帝国側に動揺が走った
それを見計らったように、ゼノンが
「オルタネイティヴⅣ……通称、第四計画」
と言った
それにより、更に強く動揺が走った
オルタネイティヴⅣとは何か
それは、BETA大戦勃発前まで時を遡ることになる
当初人類は、火星で捕捉したBETAを新たな生命体と発表し、歓喜した
人類は、広い宇宙で孤独ではなかったと
それにより、国連主導でBETAと友好的接触を計る計画
オルタネイティヴ計画が立案された
当初は、人類が取れるあらゆる手段で、BETAと友好的に接しようとした
しかし、その悉くが失敗
その最中に、月面の悲劇
サクロボスコ事件が勃発
BETAとの交戦に突入した
それにより、オルタネイティヴ計画は第二段階
通称、オルタネイティヴⅡに移行した
このオルタネイティヴⅡから、BETAへの対抗手段の模索に変わった
だが、第二計画も第三計画も、抜本的な解決策を出せなかった
そして、日本主導の第四計画が始まったのだ
「……よく、ご存知で……」
「こちらには、電子戦が得意な者が居ましてな……その者達が、国連のサーパーから見つけました」
政威大将軍の言葉に、ゼノンはそう答えた
軽く言ったが、国連のサーパーもかなりのセキュリティを誇る
それを突破したのだから、驚異的だろう
「そして、アメリカが予備案として発案した、第五計画……我々は、これに嫌な予感を感じました……」
アメリカ主導の第五計画
それは、宇宙に巨大な宇宙船を多数建造し、それにより選ばれた10万人のみを人類を別の惑星に移民させ、残った約10億人でBETAに最終決戦を挑む
というものだった
しかもその最終決戦には、詳細不明の新兵器を使うと公言していた
BETAから奪取した、BETA由来物質を使った爆弾
通称、G弾を地球各地のハイヴに投下
その後に、一気に進攻する
という計画だった
これを知った時、見ていた隊長陣は背筋に悪寒が走った
《これは、確実に大変なことに繋がる》
そんな確信があった程だ
だからスピリッツは、日本主導の第四計画を全力で支援することを決めたのだ
「……我々と契約するとして、そちらが提供出きるのは?」
「戦力として、特装艦と汎用工作艦の二隻と機動兵器約一個大隊……そして、技術提供です」
政威大将軍の問い掛けに、ゼノンはそう言って懐に手を入れた
その瞬間、側役達が一斉に身構えた
だが、ゼノンは気にした様子もなく
「こちらを」
と一つの、USBメモリを机の上に置いた
それは、この世界でも広く使われている形式のUSBだった
それを受け取ったまりもは、視線を政威大将軍に向けた
すると政威大将軍は、無言で頷いた
それを見たまりもは、手元のパソコンにUSBメモリを接続
パソコンの操作を開始した
すると、部屋のモニターが点灯し、ある設計図が表示された
それを見た巌谷が
「これは……短刀か?」
と呟いた
それを聞いて、ケイが頷き
「ええ……そちらに分かりやすく言うと、高周波短刀になるね」
と言った
その直後、巌谷と祐唯がその設計図を食い入るように見た
「この短刀は、柄に大容量バッテリーが内蔵されていて、通常出力なら半日は持つ……最大出力にすると、プラズマソードが形成される……ただし、最大出力だと約20分が稼働限界だ」
ケイがそう説明すると、実際の映像が流された
使っているのは、一機の陽炎だった
その陽炎は、一太刀で要撃級を次々と両断していた
その映像に、帝国側は声を漏らした
短刀は帝国で一般的に採用されており、これを採用するだけでも大幅な戦力増強に繋がるのは、一目瞭然だった
「なんと……」
と漏らしたのは、祐唯だった
やはり、開発に携わっているだけあるようだ
目を見開いていた
そして、次に表示されたのは、大砲
バズーカだった
「こちらは、400mm無反動砲……この威力は、既にご存知かと」
とマークが言うと、政威大将軍は頷いて
「ええ……突撃級が、一撃で吹き飛んだ……と」
と言った
突撃級は前面に、強固な装甲殻を有している
戦術機の保有する最大火力は、肩に装備するMLRSだ
それならば、二発も撃ち込めば撃破出きる
しかし、一般的に使われている複合突撃砲の120mmでは、数発撃ち込む必要がある
だが、その無反動砲ならば一撃だ
「……口径が、もはや戦艦の主砲並だ……だというのに、それの無反動……」
つまりは、照準補整の時間が短く済むということだ
それは、戦闘には大きく働く
「更に言えば、複数の弾頭の使用も可能です。通常留弾、散弾、焼威弾……他にも」
マークがそう説明すると、もはや無言で聞き入っていた
それ一つ持たせただけで、様々な局面に即応が可能になる
スピリッツの技術は、まさしく宝の山だ
そこで気を取り直して、政威大将軍は
「それで……そちらは何を望むのですか?」
と問い掛けた
それに対して、ゼノンは
「物資と活動拠点……そして、人員」
と言ったのだった