マーク達が帝国側の代表達と会談していた時、直哉は一人で行動していた
アストレイBF2nd水中仕様で、海中を進んでいた
「ここか……」
直哉はそう呟くと、機体を浮上させた
出たのは、海に面した崖
その時
『な……』
『まさか、海中からとは……』
『予想してたけど、凄いな……』
『これほどなんて……』
『凄い……』
と驚きの声
そして、直哉は
「一人二人は予想していたが……五人か……」
と呟きながら、コクピットハッチを開けた
そして
「まさか、こちらの通信コードを割り出していたとはな。驚いたよ、榊原大尉」
と祐輔に声を掛けた
すると、祐輔は
「まあ、仮にも裏の家系なので。そういう技術も持ってますよ」
と答えた
それは、マーク達が出発した後のことだ
祐輔達に貸し出した機体を、虚達が整備していたら、フェニックスゼロ・改に外部通信で、音声が入れられていたのだ
内容は
『是非会いたい、呉の荒島岬にて待ってます』
という内容だった
それを聞いた直哉は、アストレイBF2ndを水中仕様にしてその場所に向かったのだ
そうしたら、直哉の予想を越える人数がそこに居た
「しかも、一人は完全に知らない人物か」
直哉は機体の手を使って、崖に移動すると、その少女を見た
小柄な体躯に、ポニーテールにした茶髪
少し癖っ毛らしく、犬耳を彷彿させるように跳ねている
「は、初めまして! 綾崎つかさです! 少し前まで、嵐山基地の整備班に居ました!」
とその少女は、敬礼しながら名乗った
すると、祐輔が
「彼女は、僕と結華の幼馴染みでして。何処から聞いたのか、僕と結華が退役してスピリッツに行くのを知って、追い掛けてきたんです」
と説明した
BETAにより陥落した、帝国近衛軍嵐山基地
彼女はそこで、整備班に所属していた
無事だったのは、本当に奇跡だったのだ
彼女の所属していた班は、強化外骨格を使って戦術機の装甲の交換等をする班だった
その時も彼女は、強化外骨格を纏って撤退してきた帝国陸軍の戦術機の装甲を外していた
そこに、BETAが襲来
彼女は、班長の判断で基地から脱出を開始
間一髪で捕まらずに、脱出に成功
撤退していた友軍に救出され、後方基地に嵐山基地が陥落したことを教えられたのだ
なお嵐山基地整備班の生き残りは、彼女一人だけだ
「なるほどな……それに、君達までか……」
そう言った直哉の視線の先には、二人の少女
山城上総と能登和泉が居た
「お世話になりますわ」
「お世話になります……」
上総は何時も通りだが、和泉は少し落ち込んだ様子だった
なぜ、その二人が居るのか
上総だが、帰還した後に祖父と話す機会があった
しかし祖父は
『栄えある近衛軍の一人が、傭兵ごときに助けられるとは、情けない!』
と激怒
そんな祖父を、彼女の両親は必死に宥めた
しかし祖父は、耳を貸さずに
『お前のような者が居ては、譜代武家になるなど夢のまた夢! お前のような者、我が山城家には不要だ!』
と上総に勘当を言い渡したのだ
白の武家たる、山城家
山城家の目標は、譜代武家
つまりは、山吹色に家格を上げること
山城家はそのために、様々なことをしてきた
だが、中々上がらない
それに焦りを覚えていたのが、他ならぬ祖父だったのだ
その祖父からしたら、上総は不要だったらしい
その祖父からの勘当を、上総はまるで他人事のように感じていた
理由は分からない
確かに、近衛訓練校に入った頃は祖父と同じように家格の向上を念頭に置いて、行動していた
だが、実戦を越えたことが上総の考え方を変えた
(BETAの前では、家格など意味が無い……それを痛感しましたわ)
異星生物たるBETAにとって、家格など何の意味も無い
陸軍も近衛も、等しく撃破され、食われた
(……そもそも、実戦に於いて家格は大して役に立たない……そういうことですわね)
と上総は、冷静に自己分析していた
そして能登和泉だが、一夏と別れた後に家族と再会出来た
女中や母親は、許嫁たる忠道が戦死したことを慰めてくれた
しかし、父親は違った
父親は再会した和泉に、新しい婚約者を紹介しようとした
それがまるで、忠道を忘れろと言われたような気がして、和泉には受け入れられなかった
母親は和泉の側に立って、父親に反論した
しかし、父親は頑として譲らず結果、喧嘩に発展
二人の意見は合わず、和泉は家を出た
最低限の私物と忠道の形見を持って、家出した
その後、家を勘当された上総と偶然合流
そこに、何処からか二人が家を出たという情報を得ていた祐輔が二人に声を掛けて、今に至る
「まあ、スピリッツは訳ありばっかりだしな……」
直哉はそう言って、ヘルメットを脱いだ
そして、五人を見て
「最後に確認する……君達が進もうとしてるのは、間違いなく修羅の道だ……君達が背負うのは、日本だけでなく世界……つまりは、地球の命運になる……一度入ったら、中途半端に逃げることは出来ない……それでも、来るか?」
と問い掛けた
その問い掛けに五人は、無言で一歩前に出た
それは、無言の意志表明
ここまで来たのだから、今更確認の意味は無いと
それを見た直哉は、頷いてから
「では、ようこそ、スピリッツに……もう知ってるようだが、スピリッツは少数精鋭部隊……故に、君達のようなスタンドプレイヤーは大歓迎だ……君達の活躍に、期待する」
と言って、敬礼した
それを見た五人も、敬礼で答えた
すると直哉は、一度機体に搭乗して
「念のために、これを引いてきて正解だったな」
と機体腰部のワイヤーを引いた
すると、海面にそれが姿を見せた
球状の、一本の大きな物体
上下左右には、姿勢制御用らしいフィンがある
それを見た祐輔は
「まさか……人員の海中移動用の潜水船?」
と呟いた
祐輔の推測は、当たりだった
それは、スピリッツで使っている人員の水中移動用ポッドだった
姿勢制御フィンだけでなく、中はジャイロ機構も採用しており、中に居る人員が酔わない工夫が為されている
直哉は機体の手で、五人をその上に運ぶと、中に入れて
『シートベルトを締めておけ。安全運転を心掛けるが、何が起きるか分からないからな』
と注意勧告した
中に入った五人は、荷物を持ってからシートベルトを締めた
そして、ゆっくりと潜水
母艦に向かったのだった