※この作品はR-18です。

マブラヴ・オルタネイティヴ・OW   作:京勇樹

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傷を負う者

「はあ……はあ……はあ……」

 

部屋に戻った一夏は、背中を壁に預けながら荒く呼吸していた

エウクレイデスに侵入してきた敵を排除した

それに使ったのは、一本の刀だ

 

「……すいません、師匠……!」

 

一夏は、両膝を抱えながらそう溢した

一夏が使う、篠ノ之流剣術

それは、活人剣

つまりは、人を生かすための剣術だ

だが、一夏使うのは最早別物たる殺人剣

その根幹になっているのは、やはり篠ノ之流剣術だ

かの世界で生きるためとは言え、活人剣だった篠ノ之流剣術を殺人剣に変えてしまった

それを、悔いていた

 

「俺は……!」

 

と一夏が再び、声を漏らした

そこに

 

「……何をやっている……一夏」

 

と声が聞こえ、一夏は弾かれるように顔を上げた

ふと気付けば、目の前に箒が居た

いつの間にか、ドアから入ってきたようだ

 

「箒……」

 

「刀……血に濡れているな……」

 

一夏が呼んだ時、箒は鞘から刀を抜いていた

勿論、白刃に血は残っていない

鞘と柄に、血が残っているのだ

それに気付いたのだ

 

「部屋から出るなという指示があったが……侵入者だったのか……」

 

「ああ……何処の誰かは、分からなかったがな……全員、殺した……」

 

一夏はそう言うと、立ち上がってから箒から刀を取った

そして一夏は、刀をロッカーに入れた

そのロッカーの中には、今仕舞った刀の他に、様々な武器が仕舞ってあった

そのどれもが、使い込まれた形跡がある

 

「……何を、落ち込んでいたんだ?」

 

「……」

 

箒の問い掛けに、一夏は何も答えない

だが、箒は

 

「篠ノ之流を……変えてしまったからか?」

 

と言った

その言葉に、一夏の体が震えた

それを見た箒は

 

「幾らなんでも、私でも気づく……ナイフでも、技の端々に篠ノ之流の技の癖があった……」

 

と言って、一夏に歩み寄った

そして、一夏に

 

「篠ノ之流は活人剣……一夏が使っていたのは、殺人剣になっていた……だがな、一夏……篠ノ之流剣術は、一夏を守ったんだ……だから、活人剣としては本懐だ……」

 

と言った

それを聞いた一夏は、肩を震わせた

実は箒は、前の世界

つまり本来の世界で戦争になる前に、父親たる柳韻から免許皆伝を伝えられた

つまり箒は、師範代を名乗ることを許される立場になっていたのだ

その立場から、箒は一夏に言ったのだ

赦すと

同じ篠ノ之流剣術の使い手として

何より、篠ノ之流の師範代の一人として、殺人剣に変えた一夏を赦すと言ったのである

 

「だからもう……気にするな……今は、泣いていい……」

 

一夏にそう言って、箒は膝を突いた一夏の頭を抱いた

そして、気付いた

一夏達三人は、本来だったら穏やかに過ごすべき中学生時代を、戦争という異常の中で生きてきた

日常が異常に変わり、異常が日常になる

そんな中で生きてきて、普通でいられるのだろうか

と

答えは、否

誰かしら、何かが壊れるかタガが外れてしまうもの

もっとも多いのは、人を殺すことに罪悪感を感じなくなり、楽しく感じてしまうこと

つまり、殺人鬼になる

だがスピリッツに居るのは、違う

殺人鬼にはならず、人として生きている

しかし、殆どが大人か軍人だったもの

カチュアやシスという子供は居るが、彼女達は生まれながらにしてサイキッカーだった

しかし一夏達は、普通の学生だった

その学生だった三人が、戦争という異常の中で生きる

それが、どれほど精神的負荷を掛けてきたのか

箒には、想像すら出来なかった

場所は変わり、直哉の部屋

直哉が部屋に入ると、奥から

 

「はーい、おかえりー」

 

と電気ネズミの服を着た本音が、出迎えた

本音を見た直哉は、思わず

 

「……どうやって、入った」

 

と問い掛けた

すると、本音は

 

「んー? 私だって、裏の家系だよー? ハッキングは出きるのだー」

 

と言った

それを聞いた直哉は、深々と溜め息を吐いた

すると、本音が

 

「ねえ、なおなおー……前に、一人で抱え込まないでって、言ったはずだよねー?」

 

と問い掛けた

それを聞いた直哉は

 

「……確かに、言っていたな」

 

と頷いた

すると、本音は

 

「だったら、ちゃんと頼ってほしいなー……そんな目をしたなおなおは、見たくないんだよー?」

 

と言いながら、直哉の両頬に手を添えた

その直哉の目は、人殺しの目

光が、無くなっていた

 

「……ほら、血を流してきなよー。服は、洗濯に回しておくからー」

 

本音はそう言って、直哉の背中を押した

直哉は言われるがままに、シャワールームに入って、血に濡れていた服を脱いで籠に入れた

それを外に出すと、本音が直哉の寝間着変わりのジャージを籠に入れて、血に濡れていた服を回収した

それを視認しながら直哉は、シャワーで血を流し始めた

髪や手に付いていた血が流れて、シャワールームの床を流れていく

それを見ながら直哉は、手を握り締めた

自身が殺した相手の感触が残る手を

首を折った

喉を切り裂いた

胸を突き刺した

その感触が残る手を、爪が食い込むほどに強く握り締めた

そうして直哉は、シャワールームから出た

すると、本音が

 

「はーい、こっちに来てー」

 

と直哉を手招きした

素直に行くと、本音は

 

「手、見せてー」

 

と言った

どうやら、気づいていたようだ

直哉は、ゆっくりと開いた

爪が食い込み、血がうっすらと流れる手を

それを見た本音は

 

「やっぱりねー……匂いがしてたし……」

 

と言うと、治療を始めた

包帯や薬を袖の中から取りだし、テキパキと治療していく

 

「ねえ、なおなお……なおなおは確かに、進化した人かもしれないよー……でもさ、人っていうのは、一人じゃ生きていけないんだー……」

 

それを聞いた直哉は、無言で頷く

すると本音は、目を開いて

 

「だからさ……頼ってね……私達を……少し、頼りないかもしれないけどねー……」

 

と告げたのだった

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