小柳だが、約10分程で物資を乗せたトラック数台と予備大隊を一緒に連れてきた
そこに、黒い装備を身に纏った一団
特殊作戦軍が合流し、千葉達と一緒に補給を開始した
その時だった
『千葉。聞こえるか、千葉。私だ』
と知った声が聞こえた
新潟方面軍最高司令官、
「は、なんでありますか。閣下」
『もう、状況は聞いている筈だ』
千葉が答えると、荒巻中将はそう言ってきた
それを聞いた千葉は
(……なるほど)
とあることに気づいた
そして
「は……」
と短く答えた
『今は補給中だと思うが、後どれ程で補給は完了する?』
荒巻中将からの問い掛けに、千葉は視界の端で補給する一番若い部下
神那は今、自動補給機では補給出来ない多目的グレネードと対戦車ロケット弾を一発ずつ装填している
その神那だが、少し前まで軍の病院に入院していた
彼女は訓練明けすぐの四国防衛戦で、同期が全滅
それが理由で、精神が不安定になって入院していた
その病院に、部下の見舞いに千葉が行き、神那を見つけた
すると千葉は、その神那を自分の部隊に引き取った
引き取った理由だが、その名前と顔が、死んだ妻と瓜二つだったのだ
千葉はBETAが日本に侵攻してくる数年前に結婚し、子供にも恵まれた
しかし妻と子供は、BETAの九州侵攻により死んでしまった
その時彼は、最前線で戦っていた
そして生還して妻と子供の死を知った時、彼は叫んだ
なぜ、最前線で戦っていた自分は生きて、避難していた筈の妻と子供が死ななければならなかったのか
そのことに絶望し苦悩した
なぜ、二人が死ななければならなかったのかと
だが、死ぬことは出来なかった
古参兵士として、隊長として生きた
そんな矢先に、神那と出会った
偶然なのかもしれない
しかし千葉は、その名前と顔に死んだ妻を重ね、部隊に引き取った
名目上は、部隊の補充要員
実際は、彼女を精神の拠り所としたのだ
「あと、80秒で推進材の補充が終わります」
『そうか……』
荒巻中将はそう言うと、深呼吸してから
『命令!』
と言ってきた
「はっ!」
『千葉曹長率いる部隊は、補給完了後、予備大隊に万代橋防衛任務を移譲して、万代橋を渡り、指定ポイント範囲内に居る全レーザー種を殲滅せよ! そのためならば、取れるあらゆる手段を行使せよ! 予定開始時刻は、1615! 予定終了時刻は、1650!』
千葉が返答すると、荒巻中将はそう言った
すると、千葉は
「確認したきことがあります!」
と言った
『許可する。言ってみろ』
「戦術機部隊の投入は?」
『無理だ。そちらに回せる余力が無い』
「では、砲撃支援は?」
『……123砲兵部隊と随時直接交信を許可する。場合によっては、重破砕弾の使用も許可する』
そこまで確認した千葉は、一旦目を閉じて
「わかりました……閣下、撮影の準備は大丈夫ですか?」
と問い掛けた
すると、少しの間を置いて
『本当に……なぜお前が曹長という立場なのか、理解に苦しむよ……』
と荒巻中将が言った
すると、千葉は
「閣下にこのような質問をするからでありますよ」
と答えた
すると、荒巻中将は
『……健闘を祈るぞ、千葉』
「はっ! 我等帝国陸軍の勇猛さを、国民の皆さまにお伝えください!」
それを最後に、中将との通信は終わった
なぜ、撮影されると分かったのか
それは、少し考えれば分かることだった
今、帝国軍は九州以前
それこそ、大陸派兵時から負けに負け続けており、国民からの印象と求心力はがた落ちだった
今回の佐渡島陥落でも、求心力の低下は避けられないだろう
だが、今回のフェリーの防衛のために、海軍と陸軍が多大な犠牲を払いながらもフェリーの防衛のために奮闘した
そういう画を撮り、国民に喧伝する
それにより、国民の求心力の低下を少しでも緩和しようと考えたのだ
「班長、集合!」
千葉がそう呼び掛けると、二人の分隊隊長が集まってきた
すると、その二名
楠本総司軍曹と田中祐二軍曹が
「まあ、最悪だけは避けられたな」
「ああ。砲撃支援があるだけ、まだマシだな」
と言った
それを聞いて、千葉は
「まあな……これで砲撃支援すら無かったら、絶望的だった」
と同意した
しかし、千葉は
「だが、今回の命令を遂行出来ても、全滅する確率が高い……だからな、お前ら……Sと手を組む」
と言った
それを聞いて、楠本と田中両名は驚いた
この新潟西港防衛戦に参加している、帝国陸海、近衛
そのどれの指揮系統からも外れている、特殊作戦軍
その特殊作戦軍が、新潟西港防衛戦に参加している理由は、総理大臣からある命令を受けているからだ
その命令内容を知っているのは、今現在千葉のみ
「そうなれば、特殊作戦軍が投入した戦術機が動く……そうすれば、生き残る確率が高まる」
だがそれは、中将の命令に逆らうことになる
そうしたら、反逆罪に問われる可能性が高い
しかし、生きて帰れる可能性がある
「もし罪に問われたくないなら、そのことを知らなかったことにしろ……そうすれば、最悪俺だけが銃殺刑になるだけで済む」
千葉がそう言うと、楠本が
「馬鹿を言うなよ、千葉……お前に死なれたら、俺の夢見が悪くなる」
と言いながら、千葉の肩を叩いた
それに同意するように、田中が
「そうだぞ、千葉……お前だけを、死なせるものかよ」
と言った
「お前ら……」
「今や、生き残ってる同期の桜は、この三人だけだ……」
「だったら、最後まで一緒に居てやるよ」
二人がそう言うと、千葉は
「……すまん」
と謝ってから、特殊作戦軍の作戦内容を伝えた
それを聞いた二人は
「なるほど……」
「それに協力すれば、生還率が上がるのか……」
と頷き、特殊作戦軍と手を組むことに決定した
そして千葉は、強化外骨格を身に纏い
「小柳、聞こえるか」
と呼び掛けた
『はい、どうしました?』
千葉の呼び掛けに、後方の予備大隊の指揮を執ることになった小柳が出た
「小柳……橋の爆破装置には、手を触れるなよ? これは、命令というよりも、お願いだ」
『いきなりどうしたんですか? まあ、俺も触りたくないですが……』
「頼む」
『……わかりました』
それを最後に、小柳との通信を終了させ
「Sの旦那……今から、そっちに爆破装置の起動コードを伝える」
『了解した……任せろ。お前達のことは、悪いようにはしない……』
「特に、神那を恃む……」
『分かった……戦術機は、虎の子のS9とS10が来た……』
特殊作戦軍新潟西港防衛戦最高指揮官たる新田隆司大尉の言葉を聞いて、千葉は
「噂の傭兵部隊改修機か……なるほど、期待する」
千葉はそう言うと、光線と砲弾飛び交う戦場を見た