「ったく……マークも、簡単に言ってくれるぜ……」
とボヤきながら、崖を登ったのはラナロウである
そしてラナロウは、軽く周囲を見回して
「うし……誰も居ないな」
と言って、着ていた服をアメリカ軍の制服に着替えた
今ラナロウが居るのは、アメリカ大陸
その西側海岸のある一角だ
そこまで、ABF2ndの水中仕様で来て、崖を登ったのだ
「さてと……行くか」
ラナロウはそう言うと、目的地に向かった
ラナロウがアメリカ大陸に居る理由
それは、マークの指示だった
日米安保条約を破棄したことで、アメリカで何が起きるのか
その情報収集が、ラナロウに与えられた指示内容だった
その為に、偽の身分も用意してある
アメリカ陸軍陸戦隊、大尉
勿論、束と簪がハッキングして造ったものだ
そして、歩き続けて数十分後
「ここか……」
ラナロウの目前に、ある基地の門が有った
「止まれ! 何者だ!」
とラナロウを制止したのは、門付近に立っていた警備兵だ
するとラナロウは、胸ポケットからIDカードを取り出して
「今日から三日、研修に来た。アーキッド・オルター大尉だ」
と名乗った
そのIDカードを受け取った警備兵は、少しすると
「大変失礼しました! どうぞ、お通りください」
とラナロウを中に入れた
その後ラナロウは、基地司令に挨拶
その後、情報収集を開始した
「なんつぅか……嫌な雰囲気だぜ……」
与えられた部屋でラナロウは、収集した情報を精査しながら基地の雰囲気を思い出した
ラナロウが来た基地には、多数の亡命してきた他国の人間が軍人になっていた
しかし、大抵が低い階級
しかも、激しい差別を受けていた
生粋のアメリカ人達は、亡命軍人達を見下していた
一応、ラナロウの偽身分は生粋のアメリカ人ということになっている
特に気になったのが、日系アメリカ人に対する差別
「……世界の中心は、アメリカね……やれやれ……思い上がりやがって……」
ラナロウはそう言って、カバンを閉じた
まだ、色々と情報収集を続けた
そして、三日後
「さってと……帰りますか」
なんの問題もなく、ラナロウは情報収集を終えた
そして分かったことの一つに、G弾に関することもあった
アメリカ軍内部でも、G弾に対して反対派閥の存在することが分かった
「まあ、ちゃんと現実を見てくれる奴も居て、よかったぜ……」
ラナロウはそう言いながら、機体が隠されてある崖を目指した
だが
「ん? なんだ……? この車は……」
その付近に、二台の車が停まっていた
一台は、アメリカでは広く使われている至って普通の車
しかしもう一台は、スモーク貼りの黒いセダン
それを見たラナロウは、気配を消しながら先に進んだ
すると崖付近で、一人の女性を複数の黒服を着た男達が追い詰めていた
「あいつらは……CIAかDIAって奴等か……」
ラナロウは黒服達の体さばきから、そう察した
それに対して女性の方は、完全に一般人
「……さて、どうするか」
ラナロウはそう言いながら、ジリジリと移動
どうするか考え始めた
すると
「もう諦めてください、ミラ・ブリッジスさん……」
「どうか、投降を……悪いようにはしない」
と黒服達が、懐に手を入れながら言った
だが、金髪の女性
ミラ・ブリッジスは、気丈に
「悪いけど……息子と彼に、迷惑は掛けられないわ」
と言って、後退りした
崖のほうに
「早まらないでいただきたい!」
「貴女は、合衆国に必要な方だ!」
それを見た黒服達は、慌てた様子でミラ・ブリッジスを制止した
だが、ミラ・ブリッジスは止まらず
「さようなら」
と言って、飛び降りた
「くそっ!?」
「なんてことだ!?」
それを見た黒服達は、崖から下を見た
見えるのは、激しく波打つ海面のみ
「大至急、海軍に捜索を要請しろ!」
「だが、この辺は海流が激しい……生きてる可能性は……」
リーダーらしい男が、携帯無線機を取り出したが、もう一人がその男の肩に手を置いて首を振った
すると、そのリーダーは悔しげに歯を鳴らして
「なんという失態だ……!」
と苛立たしげに、石を蹴り飛ばした
そして、ハンドサインで他の黒服達に撤収を指示
去っていった
それから、少しして
「うし……もう大丈夫みたいだな」
と、ラナロウが周囲を見回した
今居る崖だが、上から見えない形に反っている
ラナロウはそこに、機体を見えないように隠していたのだ
「あの……貴方は?」
「ん? 俺か? 俺の名前は、ラナロウ・シェイド。傭兵部隊スピリッツMS隊、フェニックス小隊の二番機を勤めてるんだ。よろしくな」
ミラ・ブリッジスの問い掛けに、ラナロウはそう答えた
そしてラナロウは、機体を動かしてミラ・ブリッジスと一緒にコクピットに入った
「悪いな、予備の椅子が無いから、俺の上で我慢してくれ」
「それはいいけど……一体、何処に?」
ミラ・ブリッジスが問い掛けると、ラナロウはABFを海中に潜らせながら
「日本だ」
と答えたのだった