「煌武院か……」
「さて、どうやってアポイントメントを取るか」
篁少佐達との面会を終えると、マークとゼノンの二人は腕組した。煌武院家との連絡網が無かったからだ。
そこに
「煌武院家ですか?」
と祐輔が、首を傾げた。
「ああ、なんとかアポイントメントが取れないか考えているんだが……」
マークがそう言うと、祐輔が
「……もしかしたら、僕が何とか出来るかもしれません」
と呟いた。それから、数日後
「……まさか、お前から連絡が来るとは、思ってなかったよ。榊原元大尉……」
「まあ、使えるのは使う主義ですから……皇少佐」
祐輔達の前には、煌武院家補佐役の二家。皇家の当主代行の皇興平少佐と月詠家の月詠真耶が居た。
「智代さんは、お元気で?」
「ああ」
祐輔の問い掛けに、興平は短く返答しながら頷いた。
智代というのは、興平の嫁であり、本来の皇家の当主である。そして興平が当主代行をしているかと言えば、智代が病弱なために幼馴染みであり旦那になった興平が、代行を勤めることになったのだ。
そしてもう一人の、月詠真耶。
以前に会談で面会した、真那の従妹にあたる人物で、似た顔立ちに眼鏡を掛けている。
「お久し振りです、月詠中尉」
「……近衛から去ったお前に、中尉と呼ばれる筋合いはないぞ」
祐輔の言葉に、真那は視線鋭く突き放すように言った。
すると、興平が
「月詠中尉。お前とて、かの御仁からの報告は聞いているだろう。榊原家にて、不穏な動きがあったと……恐らく、それに関連している」
と忠告するように告げた。
それを聞いた祐輔は、心中で
(あの人かなぁ)
と、ある人物を思い浮かべていた。胡散臭いがトレンチコートを着た人物を。
それはさておき
「しかし、御館樣に会いたいとは……」
「は……なんでも、大事な要件だとか……」
祐輔がそう言うと、同行してきた結華がドアを開けて、車の中からマークとゼノン、武の三人が出てきた。
「マーク殿とゼノン殿は分かるが……」
と興平が、武を見ながら唸り始めた。
そこに
「通せ」
と新たな声が聞こえた。
全員が視線を向けると、家から月詠真耶が出てきた。
「久方振りです、月詠中尉。お役目は終わったので?」
「……今は、な」
祐輔の問い掛けに、真耶は短く返答した。
すると、真那が
「真耶……あの少年は、身元が……」
と抗議してきた。
しかし、真耶は
「問題ない……彼は、間違いなく国民だ……横浜の生き残りだよ」
と言いながら、武を見た。
横浜の生き残り、それを聞いた興平と真那は驚いた表情を武に向けた。
スピリッツと帝国軍の奮闘により、かなりの人数を助けることが出来た。しかし、全員を助けられた訳ではない。
かなりの人数が、犠牲となっている。
「……怪人の示唆によれば、名前は白銀武……曙計画に向かった技術者の一人の息子だ」
「……分かった」
(あの人かぁ……)
(やっぱり、居たかぁ……)
真那は不承不承という風体だが、武と祐輔は何やら悟った表情をした。
二人の脳裏には、共通の人物が浮かんでいた。
そして、真耶の案内で家に入り、ある部屋に通された。
そこには、家主たる煌武院悠陽以外に複数人居た。
一人目は、悠陽と同じ青の近衛服を着た斑鳩嵩継。
二人目は、その側役の真壁介六郎。
三人目は、武と祐輔の予想した人物で、トレンチコートを羽織り、スーツ姿の男性。その名前は、
そして、嵩継の背後に、真壁と同じ赤の近衛軍服を着た女性が居た。
身長は女性の平均的なもので、整った顔立ちに長い黒髪を後頭部で纏めている。
切れ長の目が、鋭利な印象を見るものに与えてくる。
「お久し振りです、傭兵の方々……そこにお座りください」
と上座に座っていた悠陽に促され、スピリッツ一同は用意されていた座蒲団に座った。
すると、嵩継が
「そういえば、
と女性士官に声を掛けた。
すると、京守と呼ばれた女性は、一歩前に出て
「お初に御目通りします。私は、斑鳩中佐の傍役を勤める京守家当主代行の
と礼儀正しく、頭を下げた。
「傭兵部隊スピリッツ総責任者にして、旗艦艦長のゼノン・ティーゲル」
「傭兵部隊スピリッツ、実働部隊総隊長のマーク・ギルダーだ」
「傭兵部隊スピリッツ預りの、白銀武です」
と三人が名乗ったのだが、武が名乗った時に陽光は僅かに顔を曇らせ、それにマークとゼノンは気付いたものの、流すことにした。
そうして、自己紹介が終わると
「私に要件が有ると伺いましたが、それは?」
と悠陽が首を傾げた。
これが、思わぬ再会に繋がる。