「久しぶり……というべきかしらね……」
「そう、なるかな……俺は、覚えてないけど……」
陽光の言葉に、武は頭を掻きながらそう答えた。
今居るのは、煌武院家の一室だ。他の面子は別の部屋で話し合っている。
「……まあ、なんとなく予想はしてたんだよな……近衛関係じゃないかって」
「どういうこと?」
武の言葉に、陽光は思わず首を傾げた。
すると武は
「……前の世界で、ある時に近衛……月詠中尉に詰め寄られたことがあるんだ……なぜ死人が居る……宮内庁のデータベースがどうたら言ってた……いくら何でも、戸籍情報管理が宮内庁だとは思えない……だったら、有り得るのは……両親か親族の誰かが近衛関係ってこと……だけど、親父は違うのは覚えてる……だったら、考えられるのは……母親しかない……まあ、母さんの顔や名前を覚えてなかったから、どうしようもなかったけど……」
武はそう言いながら、肩を竦めた。
武の考察を聞いた陽光は、少し驚いた様子で
「……武も、影行さんの子供ね」
と何処か納得していた。
武が不思議そうにすると、陽光が
「影行さんも、頭の回転は早かったから……今の武みたいにね」
と語った。
どうやら、親子で似た特徴があるようだ。
「……恨んでる?」
「は?」
陽光の問い掛けに、武は思わず首を傾げた。すると、陽光が
「どんな理由があるにせよ、私が武を捨てたことには変わらない……それを、恨んでる?」
と再び、問い掛けた。
それを聞いた武は、後頭部を掻いて
「いやまあ、母さんが京守家当主代理って時点で、何となく分かる……本来の当主が、亡くなった?」
と視線を向けた。
「……もう、戦えない体になったのよ……」
陽光はそう言ってから、訥々と語りだした。
京守家現当主、
彼は先代当主とそこに嫁いだ陽光の実家、十村《とむら》家の先代当主の姉との間に出来た子で、陽光にとっては従兄に当たる。
しかしその忠次が、武が産まれた頃に病気に掛かってしまったのだ。
それにより、二度と戦場に立つ処か日常生活に支障を来すレベルになってしまった。
それを受けて、陽光が当主代理に選ばれた。
戦術機適性だけでなく、白兵戦能力も高かったので、斑鳩中佐の護衛に適任とされたのだ。
「……つまり、親父との不仲が原因じゃないんだよな」
「当たり前よ……今でも、その心は変わらない……」
武の言葉に、陽光は胸元を強く握った。
もしかしたら、ロケットがあるのかもしれない。
時々会う父親が、男には似合わないロケットを首にしているのを見たことがあるのだ。
星の形をしたロケット、もしかしたら、お揃いで買ったのかもしれない。
「……もしかして、親父が新型開発に意欲を出してるのは、母さんが関わってるのかもな……」
武はそう言って、頭を掻いた。
そして、空いている窓から蒼穹を見上げて
「母さん……一度でいいから、親父に会ってやって……」
と呟いた。
武の言葉を聞いて、陽光は武に視線を向けた。
すると
「多分、親父は自分に誓約してるんだ……母さんに最高の機体を送るまでは、自分からは会いに行かないって……」
と武は、確信した様子で語った。
やはり、親子だからだろう。
「でもさ、母さんから会いに行っちゃいけない……ってわけじゃないよな」
「……誰に似たのかしらね、その屁理屈は……」
武の理論を聞いて、陽光は額に手を当てた。
覚えが有るのかもしれない。
「はっはっは」
「誉めてない」
武が笑っていると、武の頭に陽光は拳を落とした。
そして、隊長達の会談が終わったらしく
「……なにやってるんだ、お前は」
とマークが、頭を抱えて踞っている武を見て、呆れていた。
そんな武の首根っこを、マークは掴み
「では、また何時か会おう……それまで、決してこいつを死なせはしない……」
と言って、外に出ていった。
それを見送り、陽光は
「……影行さんの若い頃に、そっくりね……」
と溜め息を吐いて、懐かしむように呟いた。