※この作品はR-18です。

マブラヴ・オルタネイティヴ・OW   作:京勇樹

44 / 147
香月夕呼

煌武院家との会談から数日後、その煌武院家から夕呼との会談の準備が出来たと連絡が来た。

それを受けてスピリッツから、武、マーク、ゼノン、束の四人が夕呼と会談をするために向かった。

指定されたのは、帝都大学のある一室。

そこが、今夕呼に与えられた研究室だった。

オルタネイティヴ第四計画。通称オルタネイティヴ4総責任者にして天才量子物理学者、香月夕呼の研究室だ。

 

「さて、アンタらがアタシに会いたいっていう傭兵部隊ね?」

 

「傭兵部隊スピリッツ総責任者、ゼノン・ティーゲルじゃ」

 

「実働部隊総隊長、マーク・ギルダーだ」

 

「隊員兼科学者の篠ノ之束さんだよー」

 

「隊員、白銀武です」

 

夕呼の問い掛けに、四人は各々で名乗った。

そして、武が

 

「初めまして、世界最高峰の天才にして救世主の夕呼先生」

 

と呼び掛けた。

すると夕呼は、怪訝な表情をしながら

 

「生徒は持った覚えはないんだけど?」

 

と返した。

しかし武は、スッと指を天井に向けて

 

「アメリカさんの予備計画……進んでますよね……今なら、二隻目が建造中ですかね?」

 

と問い掛けた。その直後、夕呼の目尻がピクリと動いた。

それを見た武は

 

「10万人のみを逃して、残りの人達で生き残るかも分からない総特攻……使えば最後、地球は大規模な重力変動で人が住めるのは極一部だけ……香月レポート、出したのに信じて貰えなかった……」

 

と告げた。

その直後、夕呼が立ち上がり

 

「アンタ……何者……?」

 

と武を睨み付けた。

すると武は、ニヤリと笑みを浮かべて

 

「貴女の共犯者にして、曰く青臭い英雄……並行世界で、第四計画の主目標たるオリジナルハイヴを攻略した男です」

 

と答えた。

 

「……つまり、並行世界のアタシは……やり遂げた?」

 

「ええ……多大な犠牲を払って……具体的には、Aー01部隊の生き残りは……3人……」

 

Aー01部隊。正式名称は、国連軍オルタネイティヴ計画直轄部隊、Aー01連隊だ。

最大編成人数は、108人。武が覚えているのは、一個中隊の12人のみだった。

それが最後の作戦では武のみが生き残り、後の作戦に参加したのは3名のみ。

それを武は、変えたいのだ。

その時武は、俯いていた夕呼がフルフルと震えていることに気付いた。

 

「あ、少し離れたほうがいいかと……」

 

武はそう言って夕呼から離れ、他の三人も離れた。

その直後

 

「あはははははははは! やっぱり、アタシの理論は完璧だったわけよ! 見たか! 上層部のスケベ爺共!」

 

と高笑いを始めた。

 

「あー……やっぱりか……確か、夢物語だとか、非現実的だ、とか、金食い虫とか、散々言われまくったみたいだしな……」

 

未だに笑っている夕呼を見て、武は頭を掻きながら呟くように言った。

そして武は、小躍りしている夕呼に対して

 

「けど、夕呼先生……00ユニットの開発、全然上手くいってないんでしょ?」

 

と言葉を投げ掛けた。

その直後、夕呼の動きがピタリと止まり

 

「00ユニットまで知ってるのね……」

 

と武に鋭い視線を向けた。

すると武は、肩を竦めながら

 

「そりゃまあ、共犯者でしたからね……大変でしたよ、色々と……そして結論ですが、00ユニットは確かに成功で、失敗でした」

 

と告げた。その直後、夕呼は武に肉薄し

 

「成功はともかく、失敗ってどういうことよ!?」

 

と詰め寄った。

 

「情報が漏れたんですよ、00ユニットを介して」

 

「なん……ですって……?」

 

夕呼が固まっている間に、武は夕呼から離れて

 

「今BETAの情報伝達方法と言われてるのは、オリジナルハイヴを頂点に、近くのハイヴ、遠くのハイヴってことになってますよね?」

 

とホワイトボードに図を書いた。

それに夕呼が頷くと、武はそれを消して

 

「ですが、実際はこう。オリジナルハイヴを頂点に、全てのハイヴがその直轄として繋がっているんです」

 

と新たな図を書いた。

 

「そして、どこか所属のBETAが情報を得て生還すると、オリジナルハイヴに情報を送信。それをオリジナルハイヴの重頭脳級が精査し、分析。二週間程して対策を送ってきたハイヴに返信し、効果が上がったら、それを各ハイヴに送信する……これが、BETAの情報伝達構造です」

 

「……つまり、00ユニットがBETAと認識されて……こっちの情報がBETAに渡った?」

 

夕呼の問い掛けに、武は頷き

 

「そして、BETAの情報の送信方法はコアからエネルギーの補給時なんです……BETAはコアからエネルギーを補給するんですが、その時に情報をコアに送り、コアが重頭脳級に送るんです……」

 

武の言葉に、夕呼はギリッと歯を鳴らした。

 

「00ユニットに使われるグレイ物質に、ODL液……これらが、BETA各種のバッテリー兼頭脳と電気ということになります」

 

「……詰みに等しいわよ? それらが使えないなんて……」

 

夕呼がそう言うと、武は

 

「その為に、彼女を連れてきたんです……スピリッツに居た夕呼先生と同等かそれ以上の天才の束博士を」

 

と束を見た。

すると束が、夕呼に近づき

 

「武君に聞いたけど、君が欲しいのは、掌サイズの量子コンピューターってことだよね? それも、自己思考力を持つ」

 

と言った。

それに夕呼が頷くと、束は何処からともなく、一つの物を取り出した。

正に、掌サイズの不思議な色合いの球体だ。

 

「それは?」

 

「束さんが作ったコアでね……これ自体が思考し成長するし、意志を持ってる……しかも、量子通信による並列演算すら可能なんだ」

 

束の説明を聞いて、夕呼は物。ISコアを見た。

そのスペックは、正に夕呼が欲しかったものだった。

 

「……対価は?」

 

「俺が呈示するのは、戦術機用の新しいコンピューターの開発です」

 

武の呈示した条件に、夕呼は思わず片眉を上げた。

すると武は

 

「戦術機の新OSを作り搭載するには、現行のコンピューターではスペック不足なんです……その新OS……XM3も、オルタネイティヴ4の産物として出せる……」

 

そう聞いた夕呼は、黙考した。

そうすれば、第四計画の優位性も上がるかと。

そこに

 

「2001年12月24日」

 

と武は、年月日を告げた。

 

「その年月日は?」

 

「……期限ですよ。第5に移る」

 

武のその言葉に、夕呼は目を見開いてカレンダーを見た。

今は、1998年の11月頭。後3年あると安堵すべきか、後3年しかないと不安になるべきか。

しかし、夕呼にとって選択肢は決まっている。

 

「分かったわ……そちらの条件を飲みましょう」

 

「ありがとうございます」

 

夕呼の言葉に、武は頭を下げた。

こうして、スピリッツと香月夕呼の協力が決まったのだった。

なお、武は内心で

 

(よっしゃぁぁぁぁぁ! 夕呼先生に勝った!)

 

と歓喜していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。