※この作品はR-18です。

マブラヴ・オルタネイティヴ・OW   作:京勇樹

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明星作戦3

『……これは、どう考えても脱出は無理だな……』

 

と呟いたのは、ハイヴに突入した部隊の一隊。国連軍オルタエイティヴⅣ直属部隊Aー01連隊大隊長の一人、碓氷佳代子(うすいかよこ)少佐だった。

彼女率いる大隊はハイヴに突入し、国連呼称アトリエを押さえる任務を帯びていた。

しかし、ハイヴの深さが想定外に深かったために到着が遅れ、被害は拡大。率いていた大隊は、途中で分派したこともあり、残っているのは小隊のみ。

 

『クソッ! アメリカめ……!』

 

『隊長……』

 

部下の殆どが毒吐く中、副官たる中里悠里(なかさとゆうり)中尉が佳代子に視線を向けた。

佳代子は悠里が言わんとしていることは、察しているつもりだった。

自分達が居るのは、敵地の中枢たるハイヴであり、弾薬等の残量も最早少ない。

進退窮まった状態で、取れる選択肢は実質的に一つのみ。

 

『……死力を尽くして任務にあたり、生有る限り最善を尽くし、決して犬死にはするな……』

 

佳代子が呟いたのは、Aー01連隊の隊訓だ。

簡単に言えば、容易に死ぬことは許さない。死ぬ直前まで死力と最善を尽くし、戦え。ということだ。

そしてもし死ぬならば、後続の味方が有利になるようにせよ。

だから佳代子は、全員を見た。

部下達も、覚悟を決めたらしい。全員が無言で頷いている。

だから佳代子は、自爆システムを起動させようとした。その時

 

『待ってください! こちらに接近する部隊を確認! この速度……速い!?』

 

と悠里が驚きの声を上げ、その声を聞いた佳代子は反射的にレーダーを見た。確かに接近してくる部隊の反応があった。数は9。その速さは、現行のあらゆる戦術機のどれよりも速い。

 

『……まさか』

 

そんな機動を可能にする部隊を、佳代子は一つだけ知っていた。

だが同時に、有り得ないとも思えた。あの傭兵部隊は、日本帝国に雇われており、幾ら友軍だからと国連軍を助ける理由が無いと。

だが、その考えは少し離れた位置の壁を撃ち抜いた閃光によって否定された。

堅い壁を容易く抜く兵器など、今の世界中のどの軍にも無い。出来るとしたら、地殻貫通(バンカーバスター)ミサイルか、戦術核に匹敵する威力を有する高性能爆薬を使った、Sー11位だ。

だが、そのどちらでもない。

 

『なぜ、ここに居る……スピリッツ』

 

『なに……ハイヴ内部を知るためという意味もある』

 

佳代子の問い掛けに、若い男が答えた。

その声音には何ら気負った様子は無く、まるで近所に散歩に来た。という気楽さすら感じられた。

 

『だが、どうするつもりだ……最早、脱出は間に合わん』

 

『何、生き残る確率はまだ有る……確認するが、アトリエはこの先であっているな?』

 

『あ、ああ……ここから、約300m程先だが……』

 

『ならば、先導を頼む。何分、慣れてないからな』

 

『……分かった。して、私は貴官をどう呼べばいい?』

 

『トライアド1と呼んでくれ。スレイヴ1』

 

佳代子の問い掛けに、トライアド1こと直哉はそう答えた。そしてトライアド隊は、佳代子の先導でアトリエに到着。中に居たBETAをあっという間に殲滅し

 

『さて、スレイヴ1。アメリカ軍が投下したのは、G弾と言ってな……BETA由来元素のG物質を使った兵器らしくてな……』

 

『BETA由来元素を使った兵器……だと?』

 

直哉の説明を聞いた佳代子は、理解出来ないという声を漏らした。

 

『詳しい原理はよく分からんが、重力変動を起こして、爆発範囲の物質を消し飛ばすという兵器らしい』

 

『つっ……そんな物を、事前通告も無しにとは……ふざけたことを……!』

 

佳代子が怒りの声を漏らしている間に、直哉は機体の腰部アーマーの中からある機械を出して、そこら辺に転がっていたG物質に着けた。

 

『……それは?』

 

『ウチの科学者二人が作った物でな……簡単に言えば、一瞬だけ別の次元に逃げる装置……らしい』

 

束と簪謹製の発明品で、G元素を使って一時的にワームホールを作り出して、そこに避難するという装置だ。

しかし、理論上では可能でも、ぶっつけ本番の一発勝負。賭けの要素が強く、無事に帰還出来るかは不明だった。

 

『開発者からのアドバイスは、自分を強く持てとのことだ……さあ、G弾の起爆まで残り30秒……行くぞ覚悟を決めろ』

 

戦術データリンクで、G弾の起爆までの時間が減っていく。

そして、0になった直後だった。その場に居た全員は、言い様の無い感覚に襲われた。

自分の全てが曖昧になり、消えてなくなりそうになる。そんな感覚に。

そこで思い出したのは、先の直哉の言葉。

自分を強く持て。つまり、自分という世界を強く維持すること。

それが、重要なのだ。

今居るのは、次元の狭間。あらゆる並行世界に繋がっていて、そこに居る自分達に引っ張られ、または拒絶される。

そこで消えれば、自分が居たという証拠すら無くなる。

 

『ぎ、が……』

 

『消えて……たまるか!!』

 

それは、誰が言ったかは分からなかった。

だが、その言葉を切っ掛けに全員は自身を強く意識した。まだ消える訳にはいかないと。

そして、どれほど経ったのか。気付けば、その感覚は無くなっていた。どうやら、無事に終わったようだ。

 

『二度と……やりたいとは、思わんな……』

 

直哉はそう言いながら、戦術データリンクで全員の無事を確認。きちんと、9機居ることを確認。佳代子達も4機居る。

全員無事に、生還したようだ。

この後、アメリカ軍が投入した戦術機部隊により、横浜ハイヴは完全に制圧され、明星作戦は一応の成功を納めた。

しかし、日本帝国内に於ける反アメリカ感情は極限に達し、アメリカは帝国と大東亜連合から非難の嵐を受けた。

そして、一度は予備計画の一時凍結すら考えられた。

その大きな理由が、無断投下したG弾がアメリカが以前に発表していたよりも、戦果を上げていなかったからだ。

二発もあれば、ハイヴの地上構造物たるモニュメントは完全に破壊出来て、地上とハイヴ内部のBETAは完全に殲滅出来る。と発表していた。

しかし実際は、モニュメントは基部部分を残し、BETAは地上に展開していたのは全滅したが、ハイヴ内部には数千体は残っていた。

そして何より、ハイヴ内部にて生き残った部隊が見つかった。

数は僅か13機のみだが、確かに生き残っていた。

その存在により、G弾脅威論とG弾のデータが正確性を欠いているとの指摘が国連内部で広がった。

そしてアメリカにとっても予想外だったのは、自国内でもG弾への不信論が大きくなったのだ。それの後押しがあったからか、アメリカ軍内部に居たG弾を信じていなかった勢力がG弾派を糾弾した。

無断投下だけでなく、威力が想定に届かなかったこと。それらを指摘し、運用を全面的に見送るべきだとした。

これらによってかは不明だが、第5計画派は発言力が一時的に弱まり、今まであった計画の移行要請は無くなり、今すぐに第5計画の発動という可能性は無くなったのだった。

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