「おいおい……こんなガキが上官だってのか? 帝国は、余程人材不足なんだな?」
と嘲るように言ったのは、あからさまなまでに侮蔑の表情を浮かべたマックスだった。
すると、唯依の後ろに居たもう一人の日本人が
「アメリカ軍では、上官に対してそのような態度をとっていいと教わったので?」
と言いながら、一歩踏み出した。
「ああ? 誰だ、テメェ?」
「今計画の日本側の副責任者、
神田尚人少尉。帝国近衛軍所属の衛士で、唯依と同じ技術研究厰の部隊に配属されている。
今回のXFJ計画に合わせて、唯依と一緒に国連に出向することになったのだ。
そんな尚人のことは、唯依もよく知っている。篁家の家臣に当たる家柄の出身で、唯依と祐唯のことを尊敬していると言った少年衛士だ。
そんな尚人を見て、マックスは
「けっ……どっちにしろガキじゃねぇか……ガキならガキらしく、家に帰ってろ!」
と罵倒した。次の瞬間
「やめねぇか、マックス……この狂犬野郎」
とユウヤが、マックスを制止した。
「んだと……」
「テメェがアメリカ軍の標準だと思われちまうだろうが……黙ってろ……失礼しました、中尉……こいつは、本国でも持て余すレベルのトラブルメイカーでして……後で、よく聞かせます」
マックスが睨むがユウヤは睨み返した後に、謝罪した。
すると唯依が
「……分かった。
と告げた。それを引き継ぐ形で、イブラヒムが
「……ブリッジス少尉とローウェル軍曹は、篁中尉達と共に
と言った。言われた通りに二人は、唯依と尚人に続いて、戦術機ハンガーに向かった。
そこには、二機の戦術機が駐機されていた。
一機は整備士達が駆け回って確認しており、もう一機は未だに運搬車に載せられた状態で、様々な部分の装甲が外されている。
「一機は……タイプ94みたいだが……もう一機は……見たことないな……」
「あれは、我が国の最新鋭試験機……試製99式、機体名は
ヴィンセントは運搬車に載せられた機体を、その形状から見分けたようだが、もう一機の方が分からなかった。
だがその疑問に、尚人が答えた。
「タイプX99?」
「ええ……今現在、我が国が有する技術の粋を投入して作った機体です。分類では、第二世代戦術機になります」
「……HI・LOWミックス構想のLOW側か……」
HI・LOWミックス構想。
それは、コストの高い機体とコストの低い機体を混ぜて運用する構想である。
日本帝国では、不知火と撃震の運用になる。
しかし、撃震では性能面で不足が否めなかった。そこで、スピリッツから提供された技術とスピリッツで技術を習得した技術者達が中心となって新たな第二世代相当の機体の開発を開始した。
そして、開始して約一年で計量級第二世代戦術機、隼鷹を開発したのだ。
その試験機の一機を、持ち込んだ形である。
「あの試験機は、僕の機体です……」
「性能知りてぇー!」
どうやら隼鷹の性能が気になるらしく、ヴィンセントは興奮しながら隼鷹を見ている。
「今回のXFJ計画は、我が帝国の主力機たる不知火の改修を行う……ブリッジス少尉、機体が組上がるまでは、高等練習機……吹雪で、我が国の機体の操縦方法を学んでもらう」
「高等……練習機?」
唯依の言葉に、ユウヤが困惑した表情を浮かべた。そこに、更に一台の運搬車が入ってきた。
「……一応言っておきますが、吹雪は本土でも戦力として運用されている優秀な練習機です……主機出力は不知火に比べて押さえられてますが、十分実戦運用に足る性能を持っています……扱ってみてください、ブリッジス少尉」
尚人がそう告げた時、運搬車のビニールが外されて、青く塗装された戦術機がその姿を現した。
97式高等練習機、吹雪が。