※この作品はR-18です。

マブラヴ・オルタネイティヴ・OW   作:京勇樹

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釈放

「っつ!? はぁ……はぁ……はぁ……クソッ、なんつー夢だよ……」

 

飛び起きたユウヤは、悪態混じりにそう言った。

独房に入れられたユウヤは、何もすることが無かったのでそそくさと眠ったのだが、見た夢が余りにも悪かった。

ユウヤの実家、ブリッジス家は優秀な軍人を多数輩出した名門軍人の家系で、ユウヤも見事にその血を引いて衛士としては優秀な腕を有する。

しかし、アメリカ人ということを誇りにしており、日系アメリカ人だったユウヤに対して辛く当たっていた。

そんなユウヤを守っていたのは、母親たるミラ・ブリッジスだけだった。

しかし、そのミラが死亡(アメリカではそうなっている)した後は、一人で生きざるを得なかった。叔父や祖父からは虐待され、それは自分がアメリカ人ではないからか? と考えて、中学校卒業後は陸軍に入隊。衛士となった。しかし、そこでも衝突が頻発した。

それが理由か、実家で辛く当たられていたのはどうも違うと分かった。

その理由が、日米安保条約の破棄にあった。

考えてみれば、ミラが自殺したとされている時期は日米安保条約破棄から約一ヶ月後のことだった。

アメリカ国内では、日米安保条約は日本側が一方的に破棄したとされている。

しかし、ユウヤが一度会ったアメリカ海軍と縁深い奴曰く

 

『あれは、アメリカにも問題がある』

 

という証言が得られている。

どうにも、その辺が原因だとユウヤは察していて、それ以降は一度も実家には帰っていないし、帰る気もない。

 

「ちっ……本当に、嫌な夢だ……」

 

ユウヤは舌打ち混じりに簡易ベッドに腰掛けると、筋トレしようかと考えた。

余りにもやることが無いので、暇なのだ。

ソ連軍MPに捕まった後、尋問を受けたが、たったの10分程度で独房に入れられた。

 

「……早く国連軍側にでも引き渡してくれねぇかな……メシが合わねぇ……」

 

ユウヤは朝食にと用意された食事を食べたのだが、どうにも味付けが合わず、無心になって掻き込んだ。その後が暇だったので、筋トレしようと腕立て伏せの態勢になった。その時

 

「出ろ」

 

と独房のドアが開けられた。

 

「なんだ? また尋問か? それとも、国連側に引き渡しか?」

 

とユウヤが問い掛けると、ソ連軍MPは脇に抱えていたバインダーをユウヤに差し出して

 

「これにサインしたら、釈放だ」

 

「あ?」

 

余りにも予想外の言葉に片眉を上げながら、ユウヤは差し出されたバインダーの書類に目を落とした。要約すればその書類には、《双方共に酔っていて、イザコザを起こしました。ごめんなさい》ということが書かれていた。

思わずユウヤが目を向けると、そのMPは

 

「お前、この前イーダルとイザコザを起こしたアルゴス小隊の奴なんだろ? 国連軍広報部からの仲介で、こうなった。運が良かったな」

 

と説明してきた。つまり、国連軍広報部がソ連軍と何らかのやり取りをして、ソ連軍にユウヤをすぐに釈放するように要請したのだろう。そしてその裏には、ユウヤが着任した時に起きた問題が関わっていて、それに関してはソ連軍も重く判断していたらしい。

ユウヤは知らなかったが、ユウヤ達が着任する時、タリサと紅の姉妹は国連軍広報部からの要請で東西の戦術機を使った写真撮影をしようとしていたのだ。

しかし、顔合わせした際にちょっとしたイザコザがタリサと紅の姉妹の間で起きており、それを根に持っていたタリサが、飛行中にちょっとした悪ふざけで紅の姉妹機に照準レーダーを照射した。

そこから、一気に事態が動いた。

紅の姉妹機が、突如としてドッグファイト機動を開始し、更には複合突撃砲を撃ったのだ。

その後は、ユウヤも知る通りの事態が起きた。

今回国連軍広報部は、そのカードを使ってユウヤを釈放させたのである。確かに、発端はタリサかもしれないが、先に発砲したのは紅の姉妹に他ならない。

そこを突かれたら、幾ら不法侵入(イーニァにも非があるが)したのがユウヤとは言えども、釈放に応じざるを得なかったのだ。

 

「……神田少尉」

 

「迎えに来ましたよ、ブリッジス少尉」

 

そして釈放されたユウヤを迎えに来たのは、尚人だった。

 

「あんがとよ」

 

「いえいえ……まあ、自分と篁中尉、ドーゥル中尉は事情を知っていますので、安心してください」

 

ユウヤが車に乗ると、尚人は少し走らせてからそう言った。

 

「……」

 

「どうやら、イーニァ少尉の嘆願もあったそうです。悪いのは、自分だからって。それと、国連軍広報部が仲介したので、早期釈放に繋がりました」

 

「イーニァが?」

 

尚人の説明に、ユウヤの脳裏にイーニァの姿が映った。確かに、最後の必死さを思い出すと、十分にあり得る話だ。

 

「そこからは、まあいわゆる事なかれの展開ですね……本来は嘆くべきでしょうが、ここは多国籍の軍隊が集まるユーコン基地……つまり、そういった事態は日常茶飯事。そこに滑り込ませることは、造作もないこと……そして上官が迎えに来ないのは、事態を重く見せないための配慮です……まあ、後程反省文を書くかもしれませんが、中尉達からは何のお咎めはありません。まあ、彼女達からは別かもしれませんが」

 

そうこう話している内にアルゴス試験小隊の隊舎に到着し、唯依とドーゥルの二人に謝罪した後ハンガーに行こうとしたら、タリサがドロップキックをかましたのは別の話。

 

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