ソ連軍に勾留されてから、約1ヶ月後。
演習区域
『アルゴス1 チェックポイント4通過、タイム、プラス0.4秒』
「ちいっ!」
ニイラムから告げられた内容を聞いて、ユウヤは舌打ちした。今ユウヤは、アメリカ製のパーツが使われた不知火弐型の実機を使った演習をしている最中で、内容としてはJIVESを使ったハイヴ内の一定のチェックポイントを通過するタイムアタックだ。
しかし結果は、ユウヤの予想を反していた。
そして、演習終了後。
「やっぱり、あの部品は不要じゃないのか? 前より、バランス性が悪すぎる」
「そんなにか……まだデータを見てないから分からんが、ユウヤの感覚的には、どの位だ?」
「大体、マイナス4ってところだ」
「そりゃデカいな……分かった、こっちから篁中尉には上申しとく」
ユウヤの言葉を聞いて、ヴィンセントは持っていたバインダーの書類にサラサラと書き込んでいく。そこに
「ケッ、あんな大口叩いた割には大したことねぇじゃねぇかよ」
とマックスがケンカ腰で言ってきた。
「マックス……てめぇには言われたくないぜ。この間、
つい数日前、予備テストパイロットのマックスは、吹雪の実機訓練。JIVESを使った訓練の最中に、空中でバランスを失い、墜落。吹雪の頭を失ってしまったのだ。それにより、吹雪は予備パーツを使った修理の真っ最中である。
それだけでなく、一部の整備員とはケンカも絶えないほど仲が悪い。
「けっ、それはあの機体がオレに合わないだけだ。あんなポンコツを使わされる衛士が可愛そうだぜ」
マックスはバカにした表情を浮かべながら、修理されている吹雪を見た。今組み立てられた頭をクレーンを使って着けようとしている工程らしい。
そこに
「あれは、お前が操縦をミスっただけだ。このヘタクソ」
とタリサが、マックスを睨んだ。
「んだと!?」
「お前がユウヤと同じ部隊に居たなんて、未だに信じられないぜ。お前、かなりしたっぱだろ?」
「てめぇ……もう一度言ってみろや……ぶっ殺すぞ……!」
「おーおー、何度でも言ってやらぁ! このヘタクソ! てめぇに付き合わされるこっちの身にもなりやがれ、したっぱ!」
タリサがそう言った直後、マックスは何処からかナイフを抜いてタリサに飛び掛かった。しかし
「はい、そこまでです」
と間に入った尚人が、マックスの腕を掴んでナイフを止めた。
「てめぇ、離しやがれ!?」
「ナイフはやり過ぎです。それと、貴官のことをドーゥル中尉が呼んでいます。何でも、昨夜の件でと言っていましたが」
尚人がそう言うが、マックスは無理やり腕を振って拘束から離させると
「知ったことかよ! てめぇから、ヤッてやらぁ!!」
と尚人に飛び掛かった。
「仕方ありませんね……」
尚人は嘆息しながら、腰を落とした。そして、マックスが突き出したナイフを持った腕を掴むと、まずは一瞬逆関節にさせて、ナイフを落とさせた。そこからは、早業だった。足払いさせながら、マックスの右肩を押して、顔から床に押さえ付けたのだ。
「ちくしょうっ! 離しやがれ!!」
「そういう訳にもいきません。貴方を、ドーゥル中尉の下まで連行します」
尚人がそう言うと、数人のMPが駆け寄ってきて、マックスを拘束。連行していった。
「やれやれ……ああいう人の相手は疲れますね」
「すまない、神田少尉……あいつに関しては、本国でも手を焼いていたんだ……札付きの厄介者でな……」
尚人が服の乱れを直していると、ユウヤが頭を下げてきた。どうやら、同じアメリカ軍人としての謝罪らしい。
「まあ、あの様子では相当でしょうね……ああ、皆さんに通達事項があります。二日後、Aー38演習区域で訓練を行います。詳しくは、後程書面で通達されるかと」
「了解!」
尚人の通達を聞いて、その場に居たアルゴス小隊の一同は敬礼した後にハンガーから出ていった。それを見送った尚人は小さく
「まったく……篁中尉は、不器用なんですから……」
と首を振って、何人かの整備員に話しをしに向かった。二日後のことを、話しに行ったのだ。
そして二日後、該当演習区域、
そこに、アルゴス小隊の機体が集結していた。だが、一同には、演習の内容は教えられていなかった。
「しかし、どんな演習をやるつもりだ?」
『そうね……この感じからしたら、JIVESを使った対BETA戦ってところかしら?』
『確かにな、
『だなぁ……どんな想定なんだか』
ユウヤの話に、アルゴス小隊の一同が議論を始めた。
その時だった。アルゴス小隊のレーダーに、高速で接近してくる戦術機の反応があった。
『接近してくる所属不明機に告げる。この演習区域は、現在アルゴス小隊が使用中につき、目的を告げよ』
『おい、CPと通信が出来ないぞ』
ステラが警告するが、接近する戦術機は止まらない。そしてヴァレリアの言った通りに、CPと通信が出来ず、それに伴ってデータベースにアクセス出来なかった。
それにユウヤが嫌な予感を覚えていると
『待って、ユウヤの機体のデータベースに接近してくる戦術機のデータがあったわ』
とステラが告げ、ユウヤは反射的にそのデータを呼び出した。近づいてくるのは、日本帝国近衛軍00式戦術機
「武御雷!?」
山吹色の武御雷が、アルゴス小隊の前に立ちはだかった。