模擬戦から数十分後
「おーい! ユウヤ!!」
「ヴィンセント!? お前、今まで何処に居たんだよ!?」
帰還したユウヤ達を、ヴィンセントが出迎えた。のだが、実は居場所が分からなくなっていたのだ。
「いや、それがさ。日本帝国の整備士達とつい話し込んじまってな……ってそれより、近衛軍の0式と戦ったんだって!? ちくしょう、見たかったぜ!!」
どうやら、武御雷や隼鷹の整備士達と意気投合し、話し込んでいたらしい。ある意味で、ヴィンセントらしいと言えるだろう。
「ああ、まあ……確かに戦ったがな……」
「侮ってたつもりは無いけど……流石最前線の国の衛士ね……まさか、一撃で無力化されるだなんて……」
ヴィンセントの言葉に、VGとステラは苦い表情を浮かべ
「ちくしょう! 悔しい悔しい!! お姫さまにしてやられた!!」
とタリサは、心底悔しそうに地団駄を踏んでいた。まあ、いの一番に無力化されたのだから、その悔しさはひとしおだろう。
「うるせぇぞ、シュラスコ」
「あー!? また変なあだ名を……って、シュラスコ?」
実はユウヤには、少し変なあだ名を着ける癖があり、タリサのことを度々チョビと呼んでいたのだ。
「だっはっはっは!? お前、それ串刺しって意味だよ!」
「やーめーろー!? そのあだ名だけはやーめーろー!?」
「ん……あぁ、なるほど……あれが、シュラスコの理由か」
タリサ暴れてるのを尻目に、ヴィンセントは運ばれてきたタリサ機を見て、その理由を察したらしい。
「まあ、あの位置なら整備もしやすいな。明日の昼頃には直るだろ」
「VG機とステラ機は?」
「あー……それぞれ、その部分を丸々交換だからな……まあ、同じ位には直ってるな」
ユウヤの言葉を聞いたヴィンセントは、タリサ機に遅れて搬入されてきたVG機とステラ機を見て、少し苦い表情を浮かべながらそう判断した。
だが、また悔しそうな表情を浮かべて
「しかし、やっぱり0式が動いてるところを見たかったぜ! 近衛専用機の情報は、中々見られないからな!!」
帝国近衛軍最新鋭機、00式第三世代戦術機、武御雷。その情報は、驚く程に外国には知られていない。これは、近衛軍が天皇と政威大将軍専守防衛の為なのと、近衛軍が秘密主義にしているからだ。徹底した情報統制を敷いて、近衛軍のあらゆる情報が外に漏れないようにした結果であった。
一説には、武御雷の情報を得ようとした某国の諜報機関の者を射殺した、という話も真しやかにされている程だ。
「しかも、中尉が乗ってたのは高機動のF型! 中々お目にかかれないレアな機体だ! 次こそは……!」
余程悔しかったらしく、搬入されてきた山吹色の武御雷を、ヴィンセントは睨んでいた。
その後、ある会議室にて。
「ふむ……計画に携わってる私としては、少々不満な結果ですね」
と不満を溢したのは、スーツ姿の男性だった。
「申し訳ありません、ハイネマンさん」
「いえいえ、中尉が謝るようなことではありません。おかげで、アクティヴの改修点が分かりましたし、タイプ94の設計案も浮かびました」
その男の名前は、フランク・ハイネマン。アメリカの戦術機開発メーカー、ボーニング社に於ける戦術機開発の第一人者であり、今アルゴス小隊が携わってるふたつの計画に大きく関わっている男だ。
「それで、中尉はあの
「はっ……確かに、優秀な衛士なのは間違いないかと思われます。最初は振り回されていたようですが、今では難なく操縦しているのを確認しています」
ハイネマンの問い掛けに、唯依は当たり障りの無いように返答した。
今でもだが、やはりアメリカの力を借りて機体の開発をするというのには、唯依は気が引けている。これは、唯依個人だけでなく、過半数の日本帝国の軍人なら抱えるだろうことだった。
それだけ、アメリカがやったことが許せないのだ。
日米安保条約の一方的な破棄と在日アメリカ軍の即時撤退。そして何より、明星作戦時の二発のG弾投下。それにより、横浜の地は半永久的な重力異常が起きて、植生が壊滅的大打撃を受けた。
唯依とて、許す気は毛頭無い。しかし、アメリカの技術力の高さは折り紙付きで、一年で新しい機体かアップデートパッケージを開発し、各国に売り込んでいる。
そしてその恩恵は既に受けており、不知火弐型は外見的な変化は無いものの、内部は多数の手が加えられ、当初から約一割近い性能の向上が見られている。
(流石はアメリカ……ということか……しかし、何よりも、フランク・ハイネマンという大物が出てきたことが予想外だった……いや、これも叔父様の先見の明か……)
フランク・ハイネマン、先に述べた通りにアメリカはボーニング社に於ける戦術機開発の第一人者で、今まで数多くの傑作戦術機を世に送り出した人物で、過去に日本から戦術機開発のために派遣された巌屋中佐、祐唯達の講師役だったという。
そして、以前に巌屋中佐から聞いた話では、戦術機開発に非常に貪欲で、先進的人物だと。
都合三回目の邂逅だが、それは唯依にも分かった。先程言ったアクティヴイーグルの改修点という言葉だが、唯依からしたら今のアクティヴイーグルも高い完成度に見えたからだ。
(それに、弐型の設計か……どうなるのか)
と唯依が考えていると、肩がトントンと叩かれたので振り向くと、尚人が居て
「篁中尉、今しがた整備班の方から、これを」
と言って、数枚の書類を差し出してきた。恐らくは、唯依が壊した三機の整備見積書だろう。サッと一読した唯依は
「わかった、私から直接頭を下げに行く」
と言った。だが、尚人も
「ならば、自分も同行します。篁中尉の案に賛同し、止めませんでしたし、これでも副責任者ですので」
と告げた。
「……分かった、行こう」
「はっ」
唯依が苦笑混じりに言うと、尚人は頷いてから唯依に同行した。