※この作品はR-18です。

マブラヴ・オルタネイティヴ・OW   作:京勇樹

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嵐

南の島での耐環境試験は、ある意味で順調だった。耐環境試験の要は、整備士達にあり、衛士達は広報部からの任務を消化しつつ、バカンス気分を味わっていた。

しかし、中には問題も起きるもので

 

「確かに後方の南国だけどよ、気分までバカンスになってないか? ここの軍人達?」

 

「そうね……物資の不手際、連絡の不備……挙げたらキリが無いわね」

 

タリサとステラは、この二日間で起きたトラブルを思い出して、深々とため息を吐いた。

食料品の配達ミス、衛士への確認不足、物資の遅配等、挙げたらキリがなく、その何れもが初歩的なヒューマンエラーで、通常ではあり得ないことだった。しかも、この基地の軍人達は然程気にした様子すらないことから、もう常態化してしまっているということを示唆している。

確かに、一切戦闘も起きない後方の南国基地ではあるが、違う基地の人員が来る時位は少し気に掛けてほしいところだ。

そして今現在、アルゴス試験小隊は、タリサ以外はほぼ全員が水着姿で、タリサは強化装備を身に纏っている。

そして驚いたことに、唯依が水着姿であった。とは言うものの、それは任務としてである。

クリスカとイーニァの二人はタリサと写真撮影が終われば、次は唯依との写真撮影が行われる予定になっている。

とは言え、その写真撮影までまだ間が有るので、唯依を含めた一行は余興に興じていた。具体的には、ビーチバレーやボートレースになる。

そんな中、ユウヤは隣に居たVGに

 

「VG、その顔は何があった?」

 

と問い掛けた。VGの顔は、一部が赤くなっている。まるで、その部分だけが火傷を負っているように見える。

 

「いや何な、ちょっとシャワーの温度調整をミスってな」

 

VGはそう言うが、ステラが深い笑みを浮かべている。

 

(流石だ、ステラ……あれだけの忠告で、効果的な迎撃をしたようだ)

 

実はつい先日、ユウヤはVGが女性陣のシャワーを覗き見ようとしていることを知った。知ったのだが、それが誰だか分からなかったので、取り合えず忠告出来る女性陣全員にしていたのだ。

そしてどうやら、VGはステラのシャワーを覗き見ようとしたが、事前にユウヤから報されていたステラは、シャワーの温度を一気に上げて迎撃に使った。ということのようだ。

そうこうしている間に、タリサとクリスカ・イーニァ達の写真撮影が終わったらしく、三人が水着に着替えて現れた。

ここから、唯依達の写真撮影まで少し待つことになるので、その間は体を動かす一行、それにクリスカとイーニァの二人も加わったのは、彼女達の上官。イェジー・サンダーク中尉の意向らしい。曰く、彼女達は少し、コミュニケーション能力面に不安があるので、少しでも緩和したい。ということらしい。

まあ、この基地に居る間は度々広報関連の任務が入っており、それはアルゴス試験小隊も深く携わるので反論の余地は無かった。

 

「しっかし、こう見ると美人ばっかりだな」

 

「ヴィンセント、整備は終わったのか?」

 

「おうよ、一段落したからな。俺も息抜きだ」

 

ユウヤの問い掛けに、ヴィンセントは答えるとカメラを取り出した。そして気付けば、ヴィンセントの腕には撮影係という腕章があった。

 

「撮影係?」

 

「おうよ! 我等がアルゴス試験小隊の活動を記録する役割を、ドーゥル中尉から仰せつかったのよ? いやぁ、ドーゥル中尉もそういう欲があったって証拠だな!」

 

ヴィンセントはそう言って、ビーチバレーに興じているステラ、タリサ、唯依を次々と撮影していく。恐らく、ドーゥルはそういう考えで命じた訳ではないだろう。

 

(後で、こいつは呼び出しかな……?)

 

ユウヤは半ばそう確信しながら、交代として呼ばれたビーチバレーに向かった。

事が起きたのは、それから約一時間後のことだった。

その時ユウヤは、ヴィンセント、VGと一緒にボートを漕いでいた。しかし、天候が悪くなってきていたので、砂浜に戻ろうとしていた。だがその時、クリスカ、唯依、尚人の三人が乗っていたボートが少し可笑しいことに気付いた。

 

「なんだ? あっちで、何があった?」

 

「なに?」

 

ユウヤの声に気付いたVGが、ユウヤと同じように三人の乗ったボートの方を見た。しかし、少し距離が開いていたのと、徐々に荒れてきていた波のせいで、上手く分からなかった。

 

「仕方ねえ……おい、俺はあっちに行く! 二人は戻れ!」

 

「なに!?」

 

「おい、ユウヤ!?」

 

ヴィンセントが呼び掛けてくるが、ユウヤは無視して海に飛び込んだ。そして、三人のボートに取り付くと

 

「中尉! 何が起きた!?」

 

と唯依に問い掛けた。

 

「ブリッジス少尉か!」

 

「それが、ビャーチェノワ少尉が急に具合が悪くなったんです!」

 

尚人の説明を聞きながら、ユウヤはクリスカの顔を見た。確かに、顔面蒼白だ。

 

「今からじゃ、基地に戻る前にボートが転覆する……あの島に行くぞ!」

 

ユウヤは近くに別の島を見つけると、唯依と尚人にそう言って、オールを掴んだ。その後、何とか大時化になる前に何とかその島に到着し、四人はその島に上陸し、嵐が収まるまで待つことにしたのだが

 

「クソっ!! ここまでバカかよ!!」

 

ユウヤはボート据え付けの緊急用ビーコンを起動させようとしたが、電池切れが壊れているかで一切反応しないビーコンを叩いた。

そういったビーコンは、国際規定で約一ヶ月毎に点検・整備することが義務化されている。だというのに壊れているとなると、ちゃんと点検・整備がされていない証券になる。

 

「ブリッジス少尉! ボートを繋ぎ停めましょう!」

 

「そうだな!」

 

激しくなる嵐に負けないようにと、尚人とユウヤは大声で示し合わせてからボートを運ぼうと押し始めた。そこに

 

「私も手伝おう!」

 

と唯依が駆け寄ってきた。

 

「中尉! ビャーチェノワ少尉は!?」

 

「少し行った所に、手頃な洞窟を見つけて、そこで休ませている! 問題ない!」

 

尚人の問い掛けに、唯依はそう答えながら二人と一緒にボートを押し始めた。それにより、少しずつだがボートが動き始めた。そして、どうにか木の近くまでボートを押し、後少しという距離になった時、唯依がガクッと姿勢を崩した。どうやら、砂に足を取られてしまったらしい。

 

「中尉!」

 

「私は大丈夫だ! ロープを!」

 

唯依の言葉を聞いたユウヤと尚人は、二人でボートのロープを結んだ。そして簡単に解けないのを確認し

 

「よし、その洞窟に向かおう!」

 

「はい……中尉!?」

 

ユウヤと尚人の二人は、唯依が踞っていることに気付いた。二人が歩み寄ってみれば、唯依が押さえている右足首が、赤く腫れているのが分かった。どうやら、先程挫いたようだ。

 

「神田少尉!」

 

「はい!」

 

二人は短く会話すると、唯依に肩を貸して立ち上がった。

 

「お、おい。私なら、一人で」

 

「今は、時間が惜しいんだ!」

 

「それに、洞窟の場所を知っているのは中尉だけです! 案内をお願いします!」

 

「……分かった。一時の方向、距離約800だ」

 

二人は唯依の告げた方向に向かい、歩幅を合わせて歩き続けた。少しすると、確かに人が数人入れる洞窟を見つけた。そこに着いた時には、雨は激しく、横殴りで降ってきていた。間に合って一安心だった。

こうして、四人の遭難が始まった。

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