※この作品はR-18です。

マブラヴ・オルタネイティヴ・OW   作:京勇樹

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なにをかって? 精神をです
つまり、心折任務()


幕間 へし折るだけの簡単な任務です

「丁度良かったわ、白銀。新OSのシミュレーション、手伝いなさい」

 

「もう出来たんですか」

 

ある日、確認のために横浜基地に訪れていた武は、夕呼に邂逅一番にそう言われた。

 

「ええ。私を誰だと思ってるのよ」

 

「人類でもトップランクの天才ですね」

 

「分かってるじゃないのよ」

 

武の言葉に返答しながら、夕呼は武に新OS。XM3のことを説明した。

 

「あんたの要望通り、キャンセル、先行入力、コンボが出来るようにしたわ」

 

「流石は夕呼先生」

 

夕呼を賞賛しながら、武は受け取った詳細な設定が書かれた書類を一読し

 

「それじゃあ、着替えてシミュレーションルームに行きます」

 

と夕呼に告げて、退室した。この時、武は気づくべきだったのだ。夕呼の口元が、ニヤリと笑っていたことに。

同時刻、武が使うのとは別のシミュレーションルームにて

 

「それで、少佐。次のシミュレーションはどういった内容で?」

 

「私も詳しくは聞いていないが……なんでも、試作の新しいOS設定を試したいそうだ」

 

「なるほど……つまり、結果如何によっては、私達がその新OSの試験をするかが決まる……そういうことですね?」

 

「恐らくな……」

 

少佐と呼ばれた人物は、部下の質問に答えた後、腕組みして

 

(しかし、あの副司令のことだ……一筋縄ではいかないだろうな)

 

とこの先起こるだろうことを、予想した。しかしまさか、その予想を上回るとは思いもしなかった。

 

『全機のシミュレーターの起動を確認。ステージは、廃都市……シミュレーション開始!』

 

通信将校たる涼宮遥(すずみやはるか)中尉の言葉の後、部隊。国連軍第四計画直属部隊、Aー01連隊。

今は過去の作戦により二個中隊しか残ってないが、全員が紛れもなく精鋭だ。

そのAー01連隊は、一気に動き始めた。

一糸乱れぬ動きで、レーダーが捕捉している敵機に接近していく。

 

「アストレア1より総員に通達する! 敵は単機だが、油断するな! セオリー通り、半包囲で攻める! 陣形は、鶴翼参陣(フォーメーション・ウィングスリー)!」

 

碓氷佳代子がそう言って、視線を前に向けた時、遥か先で放火が一瞬瞬いた。それを見た佳代子は、背筋に悪寒が走って

 

「風間、避けろぉぉぉ!!」

 

と怒号染みた命令を下した。

 

『え?』

 

呼ばれた風間梼子(かざまとうこ)少尉は、佳代子の命令に従い、機体を横に滑らせようとした。だがその直後、風間機の胸部に孔が空いて、風間機は地面に激突・爆散した。

 

『ば、バルキリー8、被弾! 大破と認定!』

 

『嘘だろ!? まだ約8000は離れてるんだぞ!?』

 

いきなり一機撃墜されたことに、味方が浮き足だった。だが

 

「動きを止めるな! 狙撃されるぞ!!」

 

『り、了解!』

 

佳代子の号令により、部隊は即座に態勢を建て直した。だが、ほんの僅かな間、意識が敵機から離れた。その間に、敵機は音響欺瞞(ノイズメーカー)を撒いたらしく、音響探査装置は敵機の位置を見失った。

 

「慌てるな、レーダーと熱探知に切り替えろ!」

 

『了か……』

 

『慎二!?』

 

新たな指示を下した直後、佳代子機の右隣に居た平慎二機が、砲弾の直撃を受けて爆散。

 

「つっ!? どんな化け物だ!?」

 

敵の離れ業に、佳代子は思わず言葉を漏らした。敵の戦い方は、佳代子からしたら予想不可能としか言えなかった。

 

「見えた! 全機、兵器使用自由! 撃ちまくれ!」

 

『了解!』

 

『慎二の仇だ!』

 

様々な角度から、敵機。白銀色の不知火に砲弾や自律誘導弾が放たれる。だが次の瞬間

 

『なっ』

 

『よ、避けられた!?』

 

放たれた砲弾の悉くが、避けられた。佳代子は、自分の目が信じられなかった。白銀の不知火は、砲弾の間をすり抜けるように回避したのである。

 

「この機動性は!?」

 

『このぉ!』

 

『よせ、速瀬!?』

 

一機の不知火、速瀬水月(はなせみつき)が焦れたように、長刀を振りかぶりながらその白銀の不知火に突撃した。だがその不知火は、速瀬機の長刀を有り得ない早さで旋回回避し背後に回りこみ、その無防備な背中に短刀を突き刺した。

 

『バルキリー2、コクピットブロックに致命的損傷! 機能停止!』

 

『うっそだろ!?』

 

鳴海隆之は驚愕の声を上げながらも、白銀の不知火に向けて突撃砲を撃ったのだが、既に居ない。

 

『何処に!?』

 

『バルキリー11、上だ!』

 

隆之機は周囲を見回すが、別の機体。宗像美冴(むなかたみさえ)が、上に突撃砲による対空射撃を開始した。佳代子も上に突撃砲を乱射するが、白銀の不知火は乱立するビルの壁を蹴ってまるでジャングルの中を跳ぶ猿のように、砲弾を回避。

それだけでなく、120mm滑空砲の榴散弾(キャニスター)を発射し、宗像機と隆之機を同時に撃破した。

 

「バルキリー1、合わせろ!」

 

『了解!』

 

佳代子は生き残ってるメンバーの中では、佳代子に次ぐ腕前の伊隅(いすみ)みちる大尉と白銀の不知火に攻撃を仕掛けた。二機連繋(エレメント)による機動攪乱戦法。普通だったら、単機の敵には有効な戦術だ。

しかし、敵は普通じゃなかった。

白銀の不知火は、普通では有り得ない機動で二機の波状攻撃を回避。

そして、短刀を投擲して伊隅機のコクピットブロックに命中。佳代子機は連射された榴散弾が避けきれずに命中。二人はほぼ同時に撃破された。

その後、残った部下も一分と経たずに撃破された。

たった二分程で、二個中隊はたった一機の不知火に全滅させられた。

時は経って、夕呼の部屋

 

「夕呼先生……今回の相手……Aー01連隊でしたね……?」

 

「そうよ? 別に隠してるわけじゃあるまいに」

 

武の問い掛けに、夕呼は確信めいた笑みを浮かべながら返答した。確かに、武が問わなかったから答えなかっただけで、夕呼は別にAIが相手だなんて、一言も言っていなかった。

 

「それで、新OSはどうだったかしら?」

 

「……文句なしでした」

 

武はそう答えながら、やっぱり夕呼には勝てないと思ったのであった。

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