新装備を確認したユウヤは、自分達に割り振られた部屋に向かうために歩いていた。その脳裏にあるのは、見せられた新装備だった。
(あれ程の試作武装……本来なら、機密性も非常に高く、日本国内のみで試験を済ませたかった筈だ……それを、国外に持ち出した……となれば、俺がやるべきことは一つだけ……! なにがなんでも、弐型を完成させる! 一切の妥協なく、世界でも最高峰の機体を!)
ユウヤはそう決意しながら、ある戦術機ハンガーの前を通り過ぎようとした。その時、声が聞こえて
「……こっちか?」
その声がただならぬ声だったために、ユウヤは気になってそのハンガーの横の道を通って奥に向かった。
「おーおー、でけぇ胸してんな! 体は小さい癖によ?」
「なーなー、こいつら第31ハンガーの前の金網に縛らねぇ?」
「第31って、あのロリコン共かよ。お似合いじゃね?」
「やだ、クリスカァ!」
「くそ! 離せ、貴様ら! 同志に対して、こんなことをして!?」
「クリスカとイーニァ!?」
奥からクリスカとイーニァの声が聞こえたユウヤは、駆け出した。そして見つけたのは、数人の子供達に身動きが出来ないように抑え込まれている二人だった。
「てめぇら! その手を離しやがれ!!」
それを見たユウヤは、イーニァを捕まえていた二人を殴り飛ばし、更にはクリスカを抑えていた三人に次々と蹴りを繰り出した。
「ガッ!?」
「んだ、てめぇ!?」
「国連の腰抜けがでけぇ顔すんじゃねぇ!!」
子供達は悪態を吐きながら、鉄パイプやナイフを構えながら布陣。その配置と胸元のウィングバッチからユウヤはその子供達が衛士だと気付いて
「まさか……お前ら、衛士か!?」
と驚いた。どう見ても、10代前半にしか見えない子供が、衛士だとは予想していなかったのだ。
「それがどうした!?」
「てめぇ……タダで済むと……!?」
子供衛士達は、睨みながらジリジリと迫ってきた。その時
「お前達、何をしている」
と新たな声が聞こえ、子供衛士達はナイフを仕舞い、鉄パイプを放り投げると、直立不動の姿勢になった。ユウヤも声のした方向を見てみれば、そこには一人の女性軍人が居た。襟の階級章を見てみれば、なんと中佐。
「お前達……確か私は、自分の機体の整備状況を確認しろと指示した筈だが……それは終わったのか?」
「は、いえ、その……」
中佐の問い掛けに、一人がシドロモドロになって視線を逸らした。それを見た中佐は、深々とため息を吐いてから
「だったら、こんな所でレクリエーションをしている場合か!? 駆け足!!」
『はっ!!』
中佐の怒鳴り声に返礼すると、子供衛士達は一斉に駆け足で去っていった。それを見送ると、ユウヤは
「すまない、中佐。助かった」
と言葉を掛けた。すると中佐は、ジッとユウヤを見て
「客なら客らしく、少しは分相応な態度を取れ……でなければ、不要な事態になるだけだ」
とだけ言って、去っていった。それを見送ると、イーニァが
「クリスカ!」
とクリスカに抱き付いた。イーニァの声を聞いたユウヤは、思い出したように
「クリスカ、大丈夫か?」
と座り込んでいるクリスカに、歩み寄った。
「ああ、問題ない……しかし、ブリッジス……なぜ、ここに」
「あぁ……篁中尉に新しい武装のことで説明を受けて、部屋に向かう途中で声が聞こえてな……少し気になって見てみたら、あの場面だったんだ」
クリスカを助け起こしながら、ユウヤはクリスカの問い掛けに答えた。どうやら、怪我等は無いらしい。
それを安堵しつつ、ユウヤは
「しかし、あんな子供まで衛士なのか……」
と先程見た子供衛士達を思い出した。
「ソ連軍では、何ら珍しいことではない……一定年齢まで育ったら軍に引き取り、軍事教練を施す……そうやって、最前線を維持している」
「……最前線故……か……」
クリスカの説明を聞いたユウヤは、改めて今居る場所が最前線だと認識し、更に言えば唯依と尚人の二人もかなり若いということを思い出した。
アメリカ軍では志願式で、年齢層はかなり幅広い。しかし、志願式というのは後方国だからこそと言っても過言ではない。
最前線を担う、中華統一戦線、大東亜連合、ソ連、欧州連合、日本帝国では召集式を採用しており、だからこそ、まだ10代前半という幼い年齢で最前線に立っている者が多いのだ。
(そうか……俺はまだ、この世界のことを、殆ど知らないんだな……)
ユウヤは改めて、自身が世間知らずの類いなんだなと自覚し、世界を知ろうと決意した。