基地に到着した翌日、アルゴス試験小隊とイーダル試験小隊はある会議室に集まっていた。集められた理由は、BETAの海底移動の兆候を人工衛星で確認したからである。それに伴い、試験区域の設定も発表され、更には護衛部隊の指揮官と顔合わせもした。ユウヤとして驚いたのは、その指揮官がつい先日、子供衛士達を叱責した中佐。フィカーツィア・ラトロワ中佐だった。
ラトロワ中佐率いるジャール大隊はカムチャツカでは精鋭として知られており、ラトロワ中佐は通称で氷の魔女と呼ばれていることも知った。
そして、それから二日後。人工衛星が移動する熱源と個体。つまり、BETAの移動を観測したために、迎撃作戦が発令された。
アルゴスとイーダル両試験小隊は、その迎撃作戦を利用して実戦試験を行う。
(初めての対BETA実戦……シミュレーターじゃあ、何回かやったが……)
実戦を意識したユウヤは、思わず唾を飲んだ。
BETAの大移動は、大きく別けて二つのパターンが考えられている。ひとつは、ハイヴに収容出来る個体数を越えたため、吐き出したパターン。そしてもうひとつは、ハイヴを増やすためとされている。ハイヴはおおよそ一定距離毎にハイヴを増やしており、今地球上には全部で26あり、その内のひとつが、今は国連軍の基地がある横浜だ。
どちらにせよ、かなりの数が移動するために、そうならないために飽和砲撃による数の漸減が行われる。
そして、説明が行われた数十分後、アルゴスとイーダル試験小隊はソ連軍と共に海岸線付近に展開していた。
『観測所より入電。海底を移動する震源を検知! 艦隊による爆雷攻撃を開始!』
『まあ、大して削れないだろうがな』
タリサがそう言った直後、数十km先の海面に幾つもの水柱が上がっていく。
『これが、実戦か……』
『なんだ、ルーキーかてめぇ?』
『俺達の仕事を増やすんじゃねぇぞ』
ユウヤの呟きが聞こえたのか、護衛に着いているジャール大隊の子供衛士達が侮蔑した様子で嘲笑ってきた。
なおアルゴス試験小隊だが、今のコールサインはアルゴス1がユウヤ、2がタリサ、3がVGで4がステラとなっている。そして今回、5としてマックスが練習機の吹雪で配置されている。そして臨時として、ホワイトファング2として隼鷹に搭乗した尚人も居る
『気にすんな、ユウヤ。誰もが通る道だ』
『だな。俺も緊張したさ』
ユウヤを気遣ってか、タリサとVGがユウヤに声を掛けた。なおタリサの機体は、修理が終わったアクティヴイーグルで、VGがドーゥルが乗っていたアクティヴイーグルだ。
『データリンク、接続正常……
ステラがカウントダウンを開始した時、戦車部隊と自走砲部隊が動いた。砲身の角度を上げ、砲撃の準備をした。そして、カウントダウンが残り10秒に差し掛かった時、轟音と共に砲撃が開始され、0と共に波打ち際に砲弾が雨霰と殺到した。
『うおぉぉぉ……!』
スウェイキャンセラーの機能を越えて、ユウヤの体が揺れる。今まで見たことのない密度の砲撃が、水柱を乱立させる。
『す、すげぇ……これなら、かなりの数が……』
『いえ、これはおかしい……』
期待した様子のマックスの言葉を、尚人が即座に否定した。
『ホワイトファング2、どういう……』
『おい、これが本当に最前線の砲撃か?』
『これは、相当数が抜けるわよ!?』
VGとステラがそう言った直後、ユウヤの視界にBETAが姿を現した。
場所は変わり、基地指令部。
「サンダーク中尉。これはどういうことか?」
「私も詳しくは聞いていない。少し前に砲撃部隊に損害が多数出て、こちらが到着するまでに補充を終わらせておく、とは聞いたが……」
「だったら、今すぐにその状況を問い合わせていただきたい!」
「……確かに、これは此方の落ち度だ。少々待っていただく」
ドーゥルが怒鳴るように言うと、サンダークは一旦その場を離れた。
「篁中尉」
「これは、補充兵の連携訓練も十分でなく、更には補充も完全ではないんでしょう」
ドーゥルが視線を向けると、唯依は戦況マップを見ながら冷静に告げた。唯依とドーゥルが見ている限り、戦車部隊と自走砲部隊の砲撃は時々、撃破した個体に当たっていたり、同じ個体に集中していることもあった。
(なにか、我々には伝えられてないことがある……)
唯依は無事の帰還を願いながら、戦況マップを見るしかなかった。