※この作品はR-18です。

マブラヴ・オルタネイティヴ・OW   作:京勇樹

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最前線の現状

ハンガーで起きているどんちゃん騒ぎを尻目に、ユウヤは夜空を見上げていた。

対BETA戦初陣で、撃破数3000オーバー。これは、初陣衛士では類を見ない撃破スコアで、更に言えば一回の戦闘での撃破スコアとしても史上初とも言える快挙だった。結果、今回の迎撃戦の被害は驚く程少なく、ソ連上層部はユウヤに勲章の授与を決定。そして基地の要員には、モドキではない天然物の高級品のウオッカを大盤振る舞いで振る舞ったのだ。

結果、始まってから一時間は経つというのに、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎがまだ続いている。

ユウヤはトイレに行くフリをして、外に出てきたのだ。

 

「今回の戦果……あの電磁投射砲(レールガン)があったからだ……俺は……近接戦がしたい……」

 

それが、ユウヤの本心だった。

それは、ユウヤが電磁投射砲を撃ち終わった後になる。確かに、ユウヤが撃った電磁投射砲により、残存BETAの殆んどが撃滅できた。しかし、少なからずBETAは残り、その残存掃討に近接戦闘も起きていた。

特に、乱戦時や戦車や戦術機に取り付いた戦車級の排除時には、格闘戦が要求される。

アメリカ軍では、もはや補助的にしか扱われなくなった近接格闘戦。

ユウヤも少し前までは、近接格闘戦をする他国の軍隊の気がしれない。という部類だった。

しかし、ユーコン基地に来て、前線衛士達の力量を見て、気が変わり始め、そして今回の初陣で完全に変わった。

取りつかれたりした場合、IFFもあって撃てない。特に乱戦となると、複数の味方が存在し、敵が目前に居るのに、射線上に味方が居たら、撃てなくなってしまう。

そうなったら、格闘戦の重要性が一気に跳ね上がる。

最近ユウヤは、刀に関しては尚人から基本的な構えや振り方、扱い方を習い、ナイフはタリサに習い始めた。

 

「グルカか……アラスカにグルカ出身の衛士は他に居たか……?」

 

グルカ。それは、旧ネパールの山岳を出身地とした兵隊を指し、タリサも優秀なことには間違いない。しかし、やはり体格差は如何ともし難く、多々参考に出来ない動きがある。

そこを考えると、やはり近い体格の人物に教わるのが望ましい。

そんなことを考えていると

 

「今日の主役が、こんなところに居ていいのか?」

 

と声を掛けられた。気付けば、すぐ近くにラトロワ中佐に居た。

 

「ラトロワ中佐……」

 

「今日は貴様のお陰で、上物のウオッカが飲めた。礼を言おう、英雄殿」

 

「やめてくれ……あれは、あの電磁投射砲があったからだ……俺個人の戦果とは……」

 

「だが、アレを撃ったのは、間違いなく貴様だ……アレのお陰で、我が隊にも被害は少なかった。それは事実だ……胸を張れ」

 

ラトロワの言葉にユウヤは否定の言葉を口にするが、ラトロワはユウヤの背中を強く叩いた。

 

「……中佐、あんたに聞きたい……」

 

「なんだ」

 

「……どうすれば、あんたみたいに近接格闘戦をこなせるようになる……」

 

「……やはり、経験だな。経験が何より大事だ。間合いの取り方、攻撃のタイミング、回避するタイミング……一朝一夕では身に付かん……何度でも繰り返せ……」

 

ラトロワの言葉を聞いたユウヤは、拳を握り締めた。

 

(やはり、経験か……本国に帰ったら、近接格闘戦を得意とする部隊に渡りを着けるか……)

 

ユウヤがそう考えていると、スキットルでウオッカを一口飲んだラトロワが

 

「ソ連軍には、異様に少年兵が多いと思わなかったか」

 

とユウヤに聞いた。

 

「あ、ああ……確かに、思ったが……」

 

ラトロワの問い掛けに、ユウヤは今居る基地で見たら人員を思い出した。大人は、部隊の隊長や班長といった人員のみで、構成員の殆んどが幼さが残る子供ばかりだった。10代前半ばかりだった。

 

「ソ連軍では、ある年齢に達した子供を親から引き離し、兵士養成キャンプに無理矢理入れて鍛える……何故か分かるか?」

 

「……いや」

 

ユウヤは少し考えたが、見当も付かなかったので首を左右に振った。するとラトロワは、スキットルをギリッと強く握り締めて

 

「共にキャンプで育った仲間を家族という認識にさせ、戦う理由にさせるためだ……」

 

夜空を見上げ、呟くように告げた。

 

「確かに、誰かを守るためにならば戦えるだろう……しかし、後方に家族が居ると家族に会いたいという思いから死にたくないという気持ちが生まれ、戦えなくなる場合が多々あることが分かった……そこからソ連上層部は、子供が親の顔を覚える前に引き離し、兵士として鍛え上げる方針を固めた……私の隊だけではなく、全隊がそうだ……更に言えば、最前線の部隊に配属となるのは、披支配民族の出ばかりだ」

 

「なに……?」

 

「ソ連という国は、多数の国が集まって出来ている……その中で、隊長や基地司令といった要員に宛てられるのは、ロシア人だけ……部隊の隊員の殆んどは、披支配民族……ロシア人以外が配属となる……私の隊の子供達もだ……」

 

「あいつらが……」

 

ユウヤの脳裏に過ったのは、ジャール大隊の隊員達の姿だった。その子供達は、親の顔すら知らないで育ったという。

 

「そうやって、ギリギリの状態で最前線を維持している……そうしなければ、維持出来ない……開戦初期に、多くの兵士を喪い、兵器を喪い、領土を喪い……アメリカに間借りしてまで生きている」

 

アラスカのユーコン基地。実は敷地の東側に、ソ連軍の本部が置かれているのだ。

 

「だからあまり、問題を持ち込むな……我々は、綱渡りで生きているんだ……」

 

ラトロワはそう言うと、ユウヤに背中を向けて離れていった。そんなラトロワを見送ったユウヤは、何も言えなかった。知らなかったのだ、最前線の国の現状を。

 

「もしかして、日本も……なのか……」

 

日本もまた、ソ連や最前線の国と同じように自国の領土内にハイヴを有している。しかも日本は、約三割近くがBETAに占領され、それに伴うように国民や軍が大打撃を受けている。少し前に日本が発案した作戦で世界で唯一ハイヴを攻略し占拠したらしいが、それでもフェイズ4ハイヴ。佐渡島ハイヴがある。

そして何より、唯依と尚人の若さ。聞いた話では、唯依が17歳。尚人が16だという。

ユウヤも若い方だが、マックスは25歳だ。

アメリカ軍は志願制を採用しており、軍に在籍している年齢は幅広い。それは、後方国ならではだろう。

最前線の国々は、ほぼ例外なく徴兵制となっている。

それを思い出したユウヤは

 

「……俺は、知らなさ過ぎる……!」

 

最前線をまだ知らないということに気付き、拳を握り締めた。

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