※この作品はR-18です。

マブラヴ・オルタネイティヴ・OW   作:京勇樹

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危機

『クソッ! この数が、どうして観測所の監視を抜けて現れやがった!? 観測所の連中寝てやがったのか!?』

 

『言ってる暇があったら、もっと撃てよ!』

 

『クソッ!? ダメだ、この数……我々だけでは抑えきれない!!』

 

その部隊は、BETA群の中に突撃し、攻撃を繰り返していた。しかし、BETAの数は正に無数。撃破してもそれ以上の数が、ドンドンと地中から現れる。

そこに

 

『CPより、最前線の各戦術機部隊に通達する! これより、戦車隊、MLRS隊による支援砲撃を行う! 大至急、指定範囲より退避せよ!!』

 

『聞いたな!? 後退戦闘をしながら、離脱するぞ!』

 

『了解!』

 

通信将校の指示を受けて、突撃していた戦術機部隊は後退を開始した。その頃、最前線から約2km程後方の地点。

 

『どうでした、ジアコーザ少尉、ブレーメル少尉』

 

『……ああ、ビンゴだ』

 

『? どういうことだ?』

 

尚人の問い掛けにVGが答えると、ユウヤが不思議そうにした。今から少し前、尚人、VG、ステラの三人は護衛として同行していたジャール大隊の副隊長のナスターシャ・イヴァノワ大尉を敢えて挑発するような言動をしていたのだ。

 

『なあ、ユウヤ……ここの連中、いやに練度が低いとは思わないか? 最前線の筈なのに』

 

『あ、ああ……確かに気になったが……』

 

『それを確認するために、さっきは敢えて大尉を挑発したの……ログは残ってなかったけど』

 

『残ってなかった? じゃあ、何も無かったんじゃあ……』

 

『いや、不自然に消した後がある。空白を見つけた……恐らく、俺達が来る数日前にBETAの地下侵攻があって、それで不意討ちを喰らって大打撃を受けたんだ』

 

『んで、その地下侵攻の時に掘られてた孔は、中途半端に埋められてたか……それなら、今回の直前まで気付かなかったのも頷けるわな……』

 

VGとタリサの推測を聞いて、ユウヤは言い様の無い不安に駈られた。まるで、何かを見逃しているような感覚がしてならなかった。

 

『……来たぞ。凄い団体客だ』

 

その時、レーダーと振動計がBETA群を捕捉した。

 

『おいおい、なんだこの数は……!』

 

ユウヤが驚いたのは、レーダーに表示されたBETAを示す赤い光点だった。最早、数える気すら起きない程の数だった。

 

『どうやら、サッチウェーブをやってるみたいだが、焼け石に水だな……』

 

サッチウェーブというのは、機動戦法の一つで、複数の戦術機部隊で一撃離脱戦を繰り返し行うのだ。

その時、部隊の頭上を数十発もの砲弾やミサイルが飛翔していく。

 

『支援砲撃か。ようやく、支援砲撃部隊が配置に付いたようだな』

 

『これで、少しは減ってくれりゃあ……』

 

とVGとタリサが呟いた。その直後、全員の視界にそれが表示された。光線注意報と。その瞬間、飛翔していた砲弾が次々と閃光に撃墜されていく。

 

『なっ……』

 

『ちいっ!? 光線級まで展開しやがったな!?』

 

『まずいですね……長年この地を支えてきた爆撃機が使えなくなります……相当数が、抜けます』

 

光線級。それが、人類から制空権を奪い、劣勢を強いらせる強敵。それが、カムチャツカ半島防衛線に現れた。

その頃、基地にて

 

「……なんだか、嫌な予感がする」

 

一人、99式のハンガーに向かっていた。先程まではドーゥル中尉と話していて、ドーゥル中尉は最前線の状況を知る為に基地の司令部に向かった。そして唯依は、99式が動かない原因を把握しようとハンガーに向かっていた。

その時唯依は、ふと視線を上に向けて気づいた。基地全域に張り巡らしてある電線。それを支える鉄塔が、不自然に揺れていたことに。まさかと思った、その直後。基地全体に鳴り響く警報音。更に、右耳に装着してある通信用のヘッドセット。それから網膜投射で視界に表示されたのは、予想外のBETA襲撃を示すコード991。

 

「バカな!? こんな近くに来られるまで、気付かなかったのか!?」

 

新たに表示されたのは、BETA群が現れた位置。基地から、然程離れていない約15km地点に出現したと表示されている。

BETAの移動速度を考えると、大した時間も掛からずに基地に到着する。しかも、基地にはろくな戦力が残されていない。そこから導きだされる答は

 

「くっ……基地の放棄、総員脱出だと!?」

 

視界に表示されたのは、基地の放棄、総員脱出を示すコード661。

 

「バカな! あまりにも、早すぎる!」

 

唯依は、その決断が早すぎると思った。確かに、今の基地にはろくな戦力が残っていない。しかし、残存戦術機部隊と戦闘ヘリ部隊を合わせれば、なんとか二個中隊規模にはなり、巧く連携して遅滞戦闘を繰り返し、味方が後退する時間を稼げば、まだ保つ筈である。

だというのに、即座に基地の放棄を決定。しかも、事前に決めていたとしか言えない各班ごとでのヘリ搭乗の割り振り。

 

「なんだ……何を企んでいる……!」

 

唯依はソ連軍が何を企んでいるのか考えながら、ハンガーに向かって走っていた。その時

 

「篁中尉! 乗ってください!!」

 

唯依のすぐ近くに、ヴィンセントが運転する車が一台止まった。

 

「99式のハンガーに向かってくれ!」

 

「はい!」

 

唯依の指示に従い、ヴィンセントは車を猛発進させた。そうしてヴィンセントは、自分の右耳を指差しながら

 

「篁中尉、気付いてますか?」

 

と問い掛けた。主語が抜けてる問い掛けだったが、唯依には通じた。

 

「ああ……近距離通信だけでなく、遠距離通信も使えん」

 

唯依はそう言って、役立たずになっていたヘッドセットを外すと、無造作に放り捨てた。唯依はコード661が発令された際に詳細を聞こうと、司令部に問い合わせようとした。だが通じず、司令部だけでなくアルゴス小隊のハンガーにも通じなかった。

 

「司令部の通信要員が、退避する際に焦ってジャミングでも発しましたかね?」

 

「わからん……だが、今は緊急事態だということは確かだ」

 

「ですね」

 

「アルゴス小隊の試験データは?」

 

「今から回収しに行くところです。最低でも、弐型のデータだけは回収したいところです」

 

唯依が問い掛けると、ヴィンセントは後部座席を親指で指差した。視線を後ろに向けると、後部座席に無造作にノートパソコンが置いてあった。どうやら、据え置き型からそちらにデータを移すつもりらしい。

そうこうしている内に、99式のハンガーに到着し、車は止まった。唯依が降りると

 

「機体のデータを回収したら、迎えに来ます!」

 

とヴィンセントが言ってきた。だが唯依は

 

「いや、ローウェル軍曹もすぐに避難しろ。貴様も、失うわけにはいかない人材だからな!」

 

と言って、ハンガーの中に入っていった。

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