99式のハンガーに入った唯依は、整備員達の姿が無いのを確認すると
「既に、全員避難したか……」
と呟いて、99式のコンソールに駆け寄って操作した。
「一体、どうして……」
なぜ、一切操作を受け付けないのか。せめて、その原因を確かめないと、どうしようもない。そしてモニターに、あるコードが表示された。
そのコードとは、コード0001
「コード0001……外部からの不正アクセスか!?」
コード0001は、外部からの不正アクセスに対する防衛機構の作動を意味する。そうなると、唯依に与えられた権限コードでは、どうしようもなく、一度帝国に送る必要があった。
「まさか、ソ連軍が99式のデータを奪いとろうとしたのか……! いや、下手な勘繰りは後回しだ。今から、トレーラーでの運び出しが間に合うか……!?」
唯依は急いで99式が載せられてる大型トレーラーの、運転席に向かおうとした。そこに
「篁中尉ですね?」
と声が掛けられた。振り向くと、数人のソ連軍兵士が居た。
「何用か?」
「避難誘導に来ました。篁中尉で最後です、お急ぎください」
唯依が問い掛けると、兵士の一人が外を示しながらそう告げてきた。気付けば、少し離れた位置の広い場所に一機のヘリが駐機されている。
「すまんが、これを搬出しないといけない」
「しかし、もうBETA群は約2km先にまで迫ってきています!」
「ちいっ」
兵士の告げた距離に、唯依は歯噛みした。最早、搬出は間に合わないと考えたほうがいいだろう。そう考えた唯依は、もう一度コンソールに触れてある程度操作すると
「では、急いで離れるぞ。自爆装置を作動させた……」
「自爆装置ですか!?」
「ああ……最大半径、2kmは吹き飛ぶぞ」
「2km!?」
唯依の告げた距離を聞いて、兵士は耳元に手を当てて何か話し始めた。どうやら、ヘリのパイロットに即時発進出きるように伝えているようだ。
(なるほど……そちらは、通信出来るのか……)
いよいよ以て、唯依はどうすべきか考え始めた。そうして、ヘリに乗り
「よし、出せ!!」
と兵士がヘリパイロットに、発進するように促し、ヘリが高度を上げ始めた。その直後
「すまんが、忘れ物があった」
と言って、唯依はヘリから飛び降りた。
「篁中尉!?」
兵士が慌てた様子で手を伸ばすが、唯依は既に飛び降りた後。着地し、飛び差っていくヘリを見送った。
「急がねば……!」
そして唯依は、急いで99式のハンガーに向かい、まずはドアを閉じて固定した。BETA相手には大した意味は無いが、やらないよりはマシである。
「せめて、ソ連軍に持っていかれるのは未然に防がねば……!」
唯依はそう決断し、どうすべきか方法を模索した。
「……BETAの習性を利用するしかない……」
BETAの習性。つまりは、高い演算能力を有するPCと人が一緒に居ること。そうすると、BETA群はそれを優先的に攻撃することがわかっている。
それを為すには、ブラックボックス化されたPCの近くに居なければならない。
「……整備用のハッチから、中に入る」
そう判断した唯依は、急いでラッタルに駆け寄ろうとした。その直後、激しい砲撃音が聞こえた。
「なに!? 場所は……地下!?」
と唯依が、地面を見た直後。コンクリートを突き破って人型が三機現れた。
「な……あれは!?」
唯依は、その三機を知っていた。だが、驚いたのはそれだけが理由では無かった。何せ、唯依が知っているのよりも遥かに小さかったからだ。
「スピリッツ……トライアド隊!?」
地下から現れた三機、フレスベルグ、XXXX、バーストの三機は着地すると
『お、居た居た』
『パッケージ確認』
『さて、こっからだな』
と唯依に近づいた。
「なぜ、ここに……」
『あー、その前にな』
フレスベルグは頭部を孔に向けると、頭部バルカン砲を発射。孔を崩落させた。
『気づいてなかったのか? 地下から小型種が大分基地内に侵入してきてるぞ』
「なっ!? もう小型種が!?」
孔に近寄ると、確かに幾らかの千切れた腕が見える。恐らくは、兵士級だろう。BETAの中では最弱の部類で軽機関銃でも十分に撃破可能だが、機械化歩兵でないと相対するのは絶望的で、その腕は容易く人間を引き裂く程で、顎の力は骨すら噛み砕く。
「くっ……せめて、99式の処分を……」
『すまないが、俺達は君を死なせるな、と依頼を受けている。まあ、君だけではないがね。篁少尉……ああ、いや、中尉だったな』
フレスベルグはそう言って、頭部の装甲を解除。直哉としての顔を出した。
「久しぶりだな、篁中尉。二年振りになるかな?」
「確かに、その位になるか……しかし、貴官達と再会の喜びを感じる隙は……」
「わかっている。こちらも、動く」
直哉はそう答えると、目を閉じて
「全機起動、プライオリティを各パイロットに移譲。集結、戦闘態勢」
と告げた。それから数秒後、大きな甲高い音が鳴り響き、地響きが鳴った。
「なっ……あれは!?」
唯依が窓から見えたのは、唯依が知っている20mサイズのガンダムだった。