「間違いない……スピリッツのトライアド……しかし、それは一体……」
ハンガーの周囲に着地したガンダムを見た唯依は、今ここに居るのが直哉達トライアド隊だと気付いた。だがそれよりも唯依は、目の前の人間サイズのガンダムが気になっていた。
『まあ、そちらで言う強化外骨格といったところだな。性能は遜色ないが』
「……本当に、凄まじい技術だな」
唯依が知る強化外骨格は、全長はおおよそ3mほどで、かなりずんぐりとした見た目だが、直哉達が纏ってるガンダムは、約2mでスラリとしている。
(やはり、技術力の差なのか……)
唯依は技術研修から帰還した技士達の言葉を思い出した。
『あそこは、技術の宝庫です!』
『我々には想像つかない技術が、山ほどあります!』
戻ってきた技士達は、興奮しながら口々にそう言っていた。そして唯依も、その一端を知っている。なにせ、一度だけだがガンダムに乗ったのだから。
特に唯依が驚いたのは、機体に内蔵出来る原子炉。それが開発出来れば、戦術機のエネルギー問題は一気に解決する。しかしその分、管理には細心の注意が必要だろう。
『しっかし、まさかヘリから飛び降りるとは思わなかったぞ? 無茶したな』
『だな。おかげで、俺らも離脱出来なかったし』
「む、それは……」
『ああ、気にするな。この電磁投射砲をどうにかしたいんだろ? 大方、ソ連に渡さないためか?』
最初は一夏の言葉に謝ろうとした唯依だったが、直哉の言葉を聞いて頷いた。電磁投射砲の威力は既に実証済みで、しかも今は搬出するための余裕もない。
もしかしたら、ソ連側は破損していても構わないから、電磁投射砲一挺を確保するのに、基地を一つ失うのも惜しくないと判断したのかもしれない。
こうなると、日本国内には、アメリカだけでなくソ連の諜報員が潜伏している可能性が高まった。だがそちらは、情報省に任せるとして
『さて……レーダーが近づいてくるBETA群を捕捉した……ちいっ、なんて数だ……数万は確実だな』
直哉は視界端に表示されたレーダー情報を見て、思わず舌打ちした。既に、前線が抜かれたと思える数だった。
幾らトライアドが精鋭とは言え、その数とバカ正直に戦い、無事に済むとは思えなかった程だ。
ソ連軍には、長年カムチャツカ防衛線を支えた戦略爆撃隊が居るが、今表示されている数を撃滅するには、かなりの爆弾を消費することだろう。
『ん、これは……』
「どうした?」
『こちらに接近する部隊を捕捉した……数は、三機』
唯依の問い掛けに弾が返答した、その直後に唯依は聞きなれた音を聞いた。それは、戦術機の跳躍ユニットの音だった。それも、知った音だった。
その証拠に
『そこの所属不明機! 何者だ! 所属と官姓名を告げ、目的を言え!』
とユウヤの声が聞こえた。
『こちらは、傭兵部隊スピリッツのトライアド隊。すまんが、機密の関係で名前と目的は言えない。だが、そちらと敵対する意思は無い』
『傭兵部隊……だと?』
ラウラの言葉にユウヤがいぶかしんだ時、唯依はドアを開けて
「ブリッジス少尉!」
とユウヤを呼んだ。
『篁中尉! 無事だったか!』
『中尉、よくぞご無事で!』
ユウヤの後に尚人の声が聞こえ、唯依は軽く周囲を見た。他には、ストライクイーグルが一機。肩の識別番号からだと、ステラも来ている。
「なぜ……」
『ヴィンセントが、篁中尉がまだこの基地に残ってると聞いてな!』
『篁中尉を死なせる訳にはいかないと思い、こうして戻ってきました!』
何故戻ってきたのかが分からず、思わず呟くと、ユウヤと尚人がそう言った。どうやら、ヴィンセントは上手く脱出出来たようで、唯依は安堵した。
そして唯依は、計画の責任者として
「しかし、他はどうした?」
と問い掛けた。
『VGとタリサなら、指定された避難場所に居る。戦闘で推進材と弾薬を消耗してたからな』
ユウヤは周囲を警戒しながら、機体に膝を突かせた。
それを聞いた唯依は、何か気付いた様子で
「カーツ少尉はどうした?」
『……カーツ少尉ですが』
『あのバカなら、くたばったよ……』
唯依の問い掛けに、尚人とユウヤは少し気まずそうにしながら答えた。
少し時は遡り、迎撃戦の最中になる。機体の調整が終わったとは言え、一抹の不安があるユウヤ機は後方に待機し、その護衛に尚人機とマックス機。
最前衛でタリサ機とVG機が戦い、ステラ機がその援護で戦っていた。
だが、不意にもたらされた基地近くにBETAが地中から現れたという凶報。
その知らせに一同が気を取られた瞬間、マックスが単独で突出。BETAと戦い始めたのだ。
隊長として、ユウヤは後退するように指示したが、マックスは突っぱねた。その後の口振りから察するに、マックスはどうやら焦っていたようだった。白人主義者のマックスからしたら、下の存在でしかないユウヤが初陣3000オーバーキルという高い戦果。
それだけでなく、アラスカに着てから幾度も味わった敗北の屈辱。それらに耐えられず、マックスは独断で突出。BETAと戦い始めたのだ。
タリサとVG、ステラが援護しようとするが、それより先にマックスが機体のバランスを失い、そこに
「そうか……」
二人の説明を聞き終えた唯依は、それだけ言うと
「さて、この電磁投射砲をどうにかしないと……」
と電磁投射砲を見た。どうやら、マックスのことは一先ず後回しにする判断をしたようだ。
『急いだほうがいいわよ。もう、BETAがすぐそこよ!』
不意に、ステラからの報告が耳に入った。