だというのに、未だに高校生に間違われることがある俺
嘘やん……
接近するBETA群を警戒しながら、ステラは徐々に速度を上げていった。その時、不意にBETA群の先頭に居た突撃級の動きが止まった。
死んだ訳ではない。その理由を、ステラは気付き
『ユウヤ、凄い……』
と呟いた。ユウヤがやったのは、突撃級の脚を単発狙撃して破壊したのである。突撃級は左右に計8本の足が有り、それを規則的に動かすことにより時速180kmという高速で走ることが出来るのだ。
しかしそれは、足が1本でも喪われれば走ることが出来なくなるという証。
ユウヤは突撃級の左右最前の足を狙撃することで、突撃級の動きを阻害。それによる肉の盾を形成し、唯依を乗せたステラ機の脱出が確実に出来るようにしたのだ。
しかも、ユウヤ機が装備しているのは狙撃に向かない帝国式の複合突撃砲。一応アタッチメントを換装することで、狙撃仕様にすることは出来る。
しかし、ユウヤが装備しているのは通常仕様の複合突撃砲だ。
それでユウヤは、精密単発狙撃を次々と成功させていた。
ステラからしたら、まさに神業の域だった。ステラも砲撃が得意だが、ユウヤには勝てる気がしなかった。
『篁中尉、行くわ!』
その宣言の後、ステラ機は光線級を警戒してか50m以下の高度を保ちながら離脱を始めた。その後に、トライアド隊も続く。そんな中で
『篁中尉……余計かもしれないけど、これを』
と機内で、唯依に通信機を差し出した。それは、試験機に追随する
それを装着した唯依が見たのは、BETA群のど真ん中で背中合わせになって戦うユウヤ機と尚人機の姿だった。
『な、何を……何をやっている!?』
『中尉……通信機を着けましたか……これより自分とブリッジス少尉は、ブレーメル少尉機が安全圏に離脱するまで、陽動を行います……最悪、自分とブリッジス少尉は代えは効きますが、中尉は代えは効きません……』
『そういうことだぜ、中尉。ここは、俺達を残して離脱しろ!』
二人はそう言って、複数のBETAを挽き肉にしていく。
『篁中尉……神田少尉があのコアユニットを持ったのは、残る為だったのよ……これから離脱するのに、BETAを誘引するコアユニットを持って離脱は出来ない……なら囮になれば、BETA群を誘引して、私達が安全に離脱出来る……そう、提案してきたのよ』
それは、唯依が通信機を着けていなかったから知らなかったことだった。
『篁中尉……先程、ブレーメル少尉機のデータバンクに、運用データを送信しました……もしもの場合は、それを本国にお願いします……』
『待て、神田少尉! 簡単に死ねる立場ではないだろう!? 貴様も、私と同じ次期当主の立場だ!』
『それは……』
唯依の指摘に、尚人は口をつぐんだ。そう、唯依もだが、尚人も神田家の次期当主という立場なのだ。もし尚人が戦死すれば、神田家は実質上次期当主を失い、最悪は家が断絶することになる。
『しかし、今大事なのは計画責任者たる中尉と弐型のデータ……データに関しましては、ローウェル軍曹が既に運び出したことは確認済み……なれば……』
『だが貴様とて、試験機の運用を行っているだろう!?
それを放棄するつもりか!?』
『……恐らく、中尉はこう言ったら怒るでしょうが……自分の代わりは居ます……今本国では、一個連隊規模の試験機部隊が運用されています……中尉……試験機のデータをお願いします』
『神田少尉!!』
その会話を最後に、尚人ととの通信が切れた。
『頼む、ブレーメル少尉! 戻ってくれ! 今、彼等を失う訳には……!』
『無理よ、中尉……もう、弾薬と推進材の残量が……』
『つっ……!』
ステラ機の残弾と推進材の残量は、もはやこれ以上の戦闘するのは不可能だった。
『トライアド!』
『すまんが、俺達に下された依頼は、中尉の保護だ……中尉の安全確保が最優先される……一応、置き土産はさせてもらったが……』
唯依が呼び、直哉がそう答えた直後、数回の爆発が起きた。それは、日本帝国から試験運用を頼まれたSー11の技術を転用した地雷だった。その爆発に巻き込まれて、数十体のBETAが血煙を上げながら吹き飛んだ。
『ふむ、威力は上々だな……それに』
直哉がそう言ったタイミングで、突撃砲の残弾が尽きたらしい尚人機は、突撃砲を投棄。代わりに400mm無反動砲を構えた。それは、直哉機が念のためにと持ってきていた武装だった。それを、尚人機の空いていた武装パイロンに納めておいたのだ。しかし、弾は装填されている1マガジンの10発のみ。幾ら威力が高かろうが、焼石に水だった。
それも撃ちきり、尚人機はそれも投棄すると、長刀と高周波短刀の二刀流で戦い始めた。
そしてユウヤも、佇んでる訳ではなかった。巧みな砲撃でBETAを次々と撃破していき、尚人との連携も忘れない。
流石は、アメリカ軍衛士。やはり、そこらは徹底的に叩き込まれているようだ。しかし、二機に対してBETAの数は優に数千を超える。
尚人機とユウヤ機は互いに残弾が尽き、近接格闘戦に移行。
二機は、次々とBETAを切り捨てて、吹き出すBETAの血で機体は赤く染まっていく。
だが、幾ら二人が精鋭とは言えども、限界は訪れる。気付けば二機は、BETA群に包囲されていた。
『ブリッジス少尉……』
『逃げないぜ……逃げる位だったら、死んだほうがマシだ……!』
尚人が呼び掛けると、ユウヤはそう返した。それは、衛士としてのプライドだろう。
そうして、二機が突撃しようとした時
『随分と、威勢が良くなったじゃないか……坊や』
とその声が聞こえ、上空から砲弾の雨が降り注いだ。
『このIFFは……!?』
『ラトロワ中佐か!?』
二機が上を見ると、そこにはラトロワ中佐率いるジャール大隊が降下してきていた。